
企業に応募する際、多くの場合、履歴書と職務経歴書、両方の提出が求められます。履歴書と職務経歴書の役割の違い、各項目の書き分け方、よくある疑問について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。履歴書と職務経歴書の複数パターンのフォーマットもダウンロードしてご活用ください。
目次
履歴書と職務経歴書の違いを正しく理解する
企業に応募するにあたり、一般的には履歴書と職務経歴書の両方を提出する必要があります。履歴書と職務経歴書の役割を簡潔に表現すると、
履歴書……「身分証明書+自己紹介」
職務経歴書……「自己PR+提案書」
それぞれの役割・特徴は以下のとおりです。
項目 | 履歴書 | 職務経歴書 |
目的 | 「基本的な情報」を伝える | 「職務経験」と「スキル・強み」を伝える |
書式 | 定型がある | 自由に構成できる |
重要な要素 | 正確性・簡潔さ | わかりやすさ・アピール力 |
採用担当者の読み方 | 採用要件との基本的な合致度を確認 | 具体的な経験・スキルや実績の確認 |
企業のメリット | 基本情報をすぐに確認できる | 採用に直結した情報を得られる |
履歴書は「あなたの社会的な基本情報」
履歴書は、採用担当者が応募者の基本的なプロフィールを確認するための書類です。職務経歴については、これまで所属した企業・部署程度の記載にとどまることが多く、詳細は職務経歴書に記載します。
とはいえ、採用担当者はまず履歴書に目を通し、その時点で採否を判断して、職務経歴書まで見てもらえない可能性もあります。履歴書だけでもアピール力を持たせられるような内容にすることを心がけましょう。
なぜ履歴書が必要なのか?
企業は応募者がこれまでどのような教育を受け、どのようなキャリアを歩んできたのかを、すばやく把握したいと考えています。そのため、履歴書の「学歴」「職歴」欄を重点的に確認します。
企業が履歴書で見るポイント
企業が履歴書を見る際には、職務経歴を確認するだけでなく、以下のポイントにも注目していることがあります。
- ミスなく、正確に書かれているか
- 丁寧さ・誠実さを感じられるか
- 文章力・構成力・論理性などがあるか
職務経歴書は「あなたの強みや魅力を伝える書類」
職務経歴書では、これまで担当した職務やプロジェクト、チーム内での役割、成果・実績など、キャリアの詳細を記載します。また、「自己PR」欄を設け、自身の得意分野・スキル、仕事への取り組み姿勢、大切にしている仕事観といったものを記載します。つまり、ビジネスパーソンとしての「強み」「魅力」をアピールするものです。
なぜ職務経歴書が重要なのか?
企業が注目しているのは、「自社が求める人材像にマッチしているか」です。採用するポジションに必要な能力・スキルを備えているか、自社の社風や価値観になじめるかといったポイントを、職務経歴書からも判断しているでしょう。
企業が職務経歴書で見るポイント
企業が職務経歴書を見る際には、具体的な業務経験、身につけているスキル、成果・実績などに注目します。それらを「有している」というだけでなく、「経験・スキルを自社で活かせるか」「これまでの成功体験を自社で再現できるか」を見極めようとしているでしょう。
履歴書と職務経歴書の各項目の書き分け方
応募書類に記載する主な項目として、「学歴・職歴」「資格・免許・スキル」「志望動機」「自己PR」が挙げられます。それぞれの項目について、履歴書と職務経歴書でどのように書き分ければよいかをご紹介します。
学歴・職歴
「学歴」は、履歴書のみに記載し、職務経歴書には記載しません。履歴書の学歴欄には、高校卒業以上の学歴のある方は、高校入学・卒業から最終学歴までを書くとよいでしょう。学校名、学部・学科は省略せずに、正式名称を書きましょう。
「職歴」は、履歴書にはこれまで勤務した「企業名」と「入退社年月」を時系列で記載します。異動・転職歴が少なく、スペースに余白がある場合は、所属部署や担当職務、昇進・昇格などを簡潔に記載してもよいでしょう。退職の経験があれば、理由も簡潔に書き添えます。最後の職歴の後には「以上」と記載します。
職務経歴書には、より詳細な職務経験を記載します。これまで経験した業務ごとに「役割・役職」「具体的な仕事内容」「成果・実績」などを整理してまとめます。応募企業に貢献できる経験・スキルを持っていることを伝えるのが目的ですので、応募企業や応募職種とあまり関係がない経験は簡潔にまとめ、応募企業で活かせる経験を厚めに記載するなど、メリハリをつけてアピールする工夫が大切です。
- 学歴欄の具体的な記載例と書き方のポイント、ケース別の学歴の書き方はこちらをご覧ください。
- 職歴欄の書き方と注意点、部署異動や派遣社員からの転職などの書き方、状況別の対処法などはこちらをご覧ください。
資格・免許・スキル
履歴書には「資格」欄が設けられています。ここには国家資格のほか、仕事に関連する資格・検定などの情報を、取得年月とともに記載します。
職務経歴書では、「活かせる経験・知識・技術」などの欄を設け、応募企業で活かせる資格をはじめ、身につけているスキルを記載します。システムやツールなどの操作スキルも、この欄に記載しておくとよいでしょう。
- 履歴書への免許・資格の書き方の見本、書き方のポイント、「運転免許を書くべきか」などについては、こちらをご覧ください。
- 職務経歴書の資格・免許の書き方、記入例、注意点、アピールのコツなどについては、こちらをご覧ください。
志望動機
履歴書には「志望動機」欄が設けられているフォーマットもありますが、スペースが限られているため、100~200字程度にまとめます。ポイントを簡潔に伝えるにあたり、「応募企業に魅力を感じた理由」「応募企業で活かせる経験・スキル」「入社後に実現したいこと」の3点を押さえておくとよいでしょう。
職務経歴書では「志望動機」欄を設け、より詳細な志望動機を記載することができます。上記3点を押さえつつ、背景にある具体的な体験エピソードを添えておくと、説得力が高まるでしょう。
- 54種の志望動機の例文集、志望動機の書き方のポイントなどは、こちらをご覧ください。
- 営業職・事務系職種・未経験者の志望動機例文、職種別の志望動機の例文、思いつかない場合の対処法については、こちらをご覧ください。
自己PR
履歴書のフォーマットによっては「自己PR」欄が設けられていますが、やはりスペースが限られています。そのため、「応募企業で活かせる強み」として、より優先度が高いものにポイントを絞り、簡潔にまとめましょう。
職務経歴書は書式が自由であるため、「自己PR」欄のスペースを十分にとれます。まず職務経歴書に記載する自己PRを作成し、その内容のコンパクトにまとめて履歴書に記載するとよいでしょう。それにより、自己PR内容に一貫性を持たせられます。
自己PRには、「応募企業で活かせる強み」「これまでの経験でその強みを発揮したエピソードと、その成果」「強みを活かして応募企業にどのような貢献ができるか」を盛り込みましょう。
- 強み別・職種別の自己PR例文、履歴書用自己PRの作り方、効果的な書き方については、こちらをご覧ください。
- 自己PRを3ステップで作れるテンプレート、職種別自己PR例文、強みが見つからない場合の対処法、面接での自己PRの注意点などについては、こちらをご覧ください。
履歴書と職務経歴書のフォーマットダウンロード
下記から履歴書と職務経歴書のフォーマットをダウンロードできます。
履歴書には、厚生労働省が作成した様式のほか、数多くのテンプレートが存在します。ここでは基本のテンプレートと、アピールしたい内容に合わせた3パターンのテンプレートを紹介します。自分に合った形式をダウンロードして活用ください。
履歴書のテンプレート4種類

履歴書テンプレートの種類(A4判※見開きA3サイズ) | ダウンロードリンク | 見本 |
1)基本のテンプレート(厚生労働省様式)(※) | Excel | 見本 |
2)長所や個性をアピールしたい方向け | Word | 見本 |
3)いくつかのポイントで自分をアピールしたい方向け | Word | 見本 |
4)志望動機をアピールしたい方向け | Word | 見本 |
(※)出典:「履歴書・職務経歴書の書き方」(ハローワーク インターネットサービス)
職務経歴書のテンプレート3種類

職務経歴書テンプレートの種類 | 特徴とメリット | ダウンロードリンク |
編年体形式の職務経歴書 | ・キャリアや実績を経験した順に書くためキャリアアップの過程を伝えやすい。 ・第二新卒や社会人歴が短い人におすすめ。 |
Word形式 |
逆編年体形式の職務経歴書 | ・最も一般的な形式。 ・現在から過去にさかのぼって記載するため、転職で重要視される直近の能力やスキルがはじめに目に入りやすい。 ・効率よくスキルを一覧で示したい人におすすめ。 |
Word形式 |
キャリア形式の職務経歴書 | ・業務内容やプロジェクトごとに分類して記載するため身につけたスキルをアピールしやすい。 ・複数の会社や複数の部門で一貫したスキルを身に着けてきた人におすすめ。 |
Word形式 |
履歴書と職務経歴書に関するQ&A
履歴書と職務経歴書について、よくある質問に回答します。
履歴書と職務経歴書の両方提出するべき?
企業の応募条件に従いましょう。一般的に、履歴書と職務経歴書の両方の提出が求められます。
- 転職活動で職務経歴書が必要とされる理由、履歴書と職務経歴書の役割の違いについては、こちらをご覧ください。
職務経歴書にはどこまで記載をするべき?
担当した職務の詳細、実績・成果、仕事を通じて身につけたスキルなどを記載し、自分の強みをアピールします。顧客企業名などは、守秘義務がある場合は個社名の明記を避け、「大手電機メーカー」など、業種・規模が伝わる表現で記載しましょう。
職歴が多い場合、省略してはいけないもの、省略してもよいものがあります。在籍した企業名は、短期間で退職していたとしても省略は不可です。グループ会社などへの出向・転籍経験も記載しましょう。一方、職務内容が変わらず、他拠点などへ異動した経歴は省略してもよいでしょう。
- 転職回数が多い場合の職務経歴書の書き方、転職回数が多い場合の自己PR例文、転職回数が多い場合の職務経歴書の書き方の注意点などについては、こちらをご覧ください。
履歴書と職務経歴書の一体型はどうなの?
応募企業が一体型での作成・提出を認めている場合は、使用してもかまわないでしょう。
履歴書と職務経歴書をメールで送る場合のマナーは?
企業から送付について指示があったら、すぐに送りましょう。送る際は個人情報を含む書類となるため、企業から特別指示がない場合にはパスワードをかけ、本文とパスワード通知の2通を送ります。採用担当者が着信を見落とさないよう、メールの件名は「応募書類のご送付/氏名」「履歴書・職務経歴書のご送付/氏名」など、わかりやすく記載しましょう。
なお、応募企業のPC環境との違いによる書式崩れなどを避けるため、PDF形式で送付するのが望ましいでしょう。
- 履歴書をメールで送るときの注意点、メール文面の作り方、例文などについては、こちらをご覧ください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年03月30日
記事更新日:2025年06月24日 リクルートエージェント編集部
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。