
転職活動を経験したことがないと、「何から始めたらいいのか」「どのくらい時間がかかるのか」など、分からないことが多くて不安を抱える方が多いようです。
そこで、転職活動の流れや全体スケジュール、やるべきことや注意点などを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏にお伺いしました。
転職活動の流れと期間の目安
転職活動は、大きく分けてキャリアの棚卸しや応募書類の作成などの「事前準備」、求人を探し応募する「応募~面接」、内定が決まり退職手続きや引き継ぎを行う「内定~入社」の3つのプロセスで進みます。
事前準備から内定までは「3カ月〜半年程度」が目安です。もちろん、すでに退職していて面接日程に柔軟性があったり、条件が多く希望の求人が見つからなかったりして、目安よりも前後することはありますが、早くても2カ月程度、通常は3カ月程度、長引いて6カ月程度が一般的です。
転職活動の流れ | 期間の目安 |
事前準備 | 2週間~1カ月 |
応募~面接 | 1カ月~3カ月 |
内定~入社 | 1カ月~3カ月 |
事前準備
転職活動の事前準備を3つに分けて解説します。特に、転職の軸が決まっていない場合は、キャリアの棚卸しをしておくと、ブレずに転職活動を進めることができるでしょう。
キャリアの棚卸し
キャリアの棚卸しとは、過去の経験・スキルを振り返って、自分の強みや得意分野を明らかにする作業です。自分の強みや得意分野が分かれば、それに従って仕事を選ぶことができます。また、転職先に求めることや優先順位をつけることができるでしょう。
情報収集・企業研究
情報収集と企業研究は、仕事や企業選びになくてはならないものです。経験を活かして同業界・同職種に転職する予定で、業界や職種事情を詳しく知っている場合は、情報収集は不要かもしれませんが、企業研究は志望動機を考える上で重要な作業です。また、未経験業界・職種に転職を希望している場合は、転職市場の相場観や採用動向、仕事内容や求められるスキルなどの幅広い情報収集が必要になります。
転職エージェントを活用すると、転職市場の動向や採用企業の具体的な情報などを教えてもらうことができるので、転職活動を効率的に進めることができます。また、セミナーや説明会、転職イベントに参加している企業もあるので、参加して話を聞いてみるという方法もあります。
応募書類の作成
キャリアの棚卸しや情報収集が終わったら、応募書類の作成に進みます。転職活動で求められる書類は「履歴書」と「職務経歴書」の2つが一般的ですが、クリエイティブ系の職種では、過去の作品をまとめた「ポートフォリオ」を求められることもあります。求人を確認して、必要な書類を準備しましょう。
特に職務経歴書は、書類選考通過を左右する重要な書類です。自分の経験・スキルや自己PRを分かりやすくまとめる必要があります。できれば人事経験者や転職エージェントなどに見てもらって、アドバイスを受けるようにしましょう。
企業への応募~面接
応募から面接のプロセスには、求人の選び方から筆記試験の準備、面接対策があります。それぞれ解説します。
応募企業の選び方
書類選考の通過率は、応募者の経験・スキルや応募する企業によって異なります。1社1社応募していると傾向を掴むまでに時間がかかるので、できれば複数の企業に同時に応募して、書類選考の通過率を見て応募社数を調整しましょう。また、一括で応募することで、選考が同時にスタートするため、企業によって多少の差はありますが内定時期を揃えることができます。複数社の内定の中から最適な企業を選ぶことができるので、比較検討の結果、後悔の少ない決断をすることができるでしょう。
筆記試験の準備
筆記試験を行う企業もあります。応募企業から筆記試験についての案内が届くので、試験内容を確認し、試験対策をしておくことが大切です。なお、一般的に筆記試験の種類は3つあり、「能力・性格検査」「一般常識」「論文・専門領域」が挙げられます。
面接対策
中途採用の面接は、1~3回程度行われることが一般的です。面接は、人事、現場の責任者、役員などが担当し、聞かれることは担当者によって異なりますが、「志望動機」「転職理由」「自己PR」は必ず聞かれる質問になるので、事前に鏡の前などで練習しておきましょう。事前に面接対策を行うことで、話す内容が伝わりやすくなるだけでなく、面接当日の緊張を和らげることができます。また、オンラインで面接を行う企業が増えているので、聞き取りやすい話し方や表情の作り方なども練習しておくといいでしょう。できれば練習風景の動画を録画しておくと、自分では気づかなかった話し方のクセに気づくことができるので、面接対策が万全に近づきます。
内定~入社
内定~入社は転職活動の最終段階です。内定から入社までの流れと手続きの内容について解説します。
内定承諾
内定通知が届いたら、労働条件通知書を確認し、承諾するかどうかを判断します。他の企業の選考が残っている場合は、内定の回答期限に間に合うか確認を。内定の回答期限までに他社の選考結果が届かない場合は、他社の選考結果を早めてもらうか、内定企業に回答を延期してもらいましょう。
内定承諾は、現職に残るかどうかも含めて判断しますが、迷っている場合は内定先企業の人事担当者に先輩社員との面談やオフィス訪問などを相談することもできます。後悔することがないように、判断材料を揃えて比較検討して決めましょう。
入社する企業が決まったら、現職企業の就業規則の退職の申し出期間を確認し、内定承諾書を提出して入社日と退職日を確定します。
退職・入社手続き
現職企業に退職の申し出をして、退職の手続き方法について相談します。場合によっては、ここで引き留めが発生する可能性があるので、退職理由を事前にまとめておいて、交渉の余地を残さないようにしましょう。また、円満退職のために十分な引き継ぎを行うことも重要です。退職スケジュールを作成し、引き継ぎと有給消化をどのように実現するか確認しておきましょう。
入社手続きは、転職先の企業から案内があります。源泉徴収票や雇用保険被保険者証など必要書類を準備し、マイナンバーや基礎年金番号なども伝えましょう。なお、雇用保険の基本手当を受給している場合は、転職先が決まったことをハローワークに報告する必要があります。
働きながら転職活動をするメリット・デメリット
働きながら転職活動をするかどうか迷う方もいるようです。現職企業と転職活動と並行する場合の、メリットとデメリットを解説します。
メリット
働きながら転職活動するメリットは、まず「転職活動を中止して現職に残る」という選択ができることが挙げられます。転職活動を続けていると、今まで気づかなかった現職企業の魅力に気づいたり、希望条件が転職市場では受け入れられなかったりすることもあります。退職してしまうと現職には戻れないため、転職活動を並行して様子を見ることができる点がメリットです。
次に、「空白期間が生じない」こともメリットに挙げられます。空白期間が長くなると、応募企業から「企業からの評価が低い人物なのでは」「行き当たりばったりで行動するタイプなのでは」と懸念され、選考で不利に働く可能性が出てきます。また、雇用保険の受給期間にも限りがあるため、収入が不安定になると焦りが生じ、意に沿わない企業にも応募し入社することを優先するケースが増えていきます。仕事と転職活動を並行すると「時間がない」というジレンマがあるかもしれませんが、働きながら転職活動をすることで、先の見えない不安などは感じずに済むでしょう。
デメリット
仕事と転職活動を並行するデメリットは、多忙になることと面接の日程調整が難しく、転職活動が長期化することです。ただし、近年はオンライン面接を実施する企業が増えており、以前よりも面接の日程調整がしやすくなっています。どうしても時間が取れない場合は、有給休暇を活用したり、繁忙期を外して転職活動を始めたりするなどの工夫が必要です。
仕事をしながら転職活動する際に避けた方が良いこと
仕事をしながら転職活動する場合に、気をつけた方がいいことをまとめました。
業務時間内に応募企業とやり取りする
現職企業の業務時間内に転職活動をするのはやめましょう。不審に思われたり、通話内容を聞かれたりして転職活動をしていることが発覚する可能性があります。あらかじめ応募企業には、「在職中のため、メールのやり取りを希望します」「電話は○時~○時であれば通話可能です」などと伝えておきましょう。
SNSに転職活動に関する情報を投稿する
仕事の関係者とつながっているSNSアカウントで、転職活動の情報を投稿するのはやめましょう。また、応募企業に面接に行った際に、建物の外観や社内の様子を撮影してSNSにアップしたり、面接で話した内容を書き込んだりすることも控えましょう。もし応募企業に知られた場合は、「情報管理意識が低い人物」と評価され、選考に影響する可能性があります。
転職活動に会社支給のパソコンや携帯電話を使用する
現職企業のパソコンや携帯電話を使用することも控えましょう。パソコンや携帯電話はあくまでも現職企業の業務遂行に必要だとして貸与されているものです。また、アクセスログから転職活動をしていることが明らかになる可能性もあります。転職活動に使用するパソコンや携帯電話、メールアドレスなどは個人所有のものに限りましょう。
迷ったら転職エージェントに相談してみよう
転職エージェントは数多くの求職者の転職サポートを行っているため、求職者の悩みや状況に合わせたアドバイスを得意としています。転職活動の進め方が分からない場合は、転職エージェントに相談してみましょう。応募書類の添削や模擬面接なども行っているので、スムーズに転職活動を進められるだけでなく、選考の通過率もアップするかもしれません。

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。