
転職活動を始める前に、転職活動の進め方やスケジュールの目安を知っておくと、効率的に進めることができます。特に、仕事を続けながら転職活動をする場合は、限られた時間の中で面接の日程を調整する必要があるので、スケジュールを立てて計画的に進めたいものです。そこで、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、転職活動の全体の流れと具体的な計画の立て方について伺いました。
転職活動期間の目安は?
転職活動期間のうち、以前は面接の日程調整に時間がかかっていましたが、オンライン面接が増えているため、以前よりも短縮しています。働きながら転職活動する場合と、辞めてから転職活動する場合の、転職活動期間の目安をご紹介します。
働きながら転職活動する場合
働きながら転職活動をする場合は、現職との兼ね合いで面接の日程調整が難航する傾向があるため、転職活動の期間が比較的長くなります。転職活動を始めてから内定を獲得し、転職先の企業に入社するまでの期間は、およそ3カ月~半年程度が目安になります。
辞めてから転職活動する場合
辞めてから転職活動をする場合は、すぐに面接を入れることができるので、転職活動期間が短くなる傾向があります。転職活動を始めてから内定を獲得し、転職先の企業に入社するまでの期間は、およそ1カ月~3カ月程度が目安です。ただし、面接をすぐに入れることができても、現場の責任者や役員クラスの日程が取れずに時間がかかったり、入社日を1日や15日などに固定している企業もあったりするため、想定以上に入社までに日数がかかる可能性もあります。
転職活動の進め方は?
転職活動は、大きく「①事前準備」「②求人検索・応募」「③面接」「④内定・退職・入社手続き」の4つのフェーズに分けられます。事前準備を行ってから求人検索・応募に進み、面接、内定…と進めるのが一般的ですが、とりあえず求人に応募して、面接の準備を進めながらキャリアの棚卸しを進めるなど、転職活動の順序は人それぞれです。また、応募した企業に面接で話を聞くうちに転職の希望条件が変わり、求人検索や応募書類の作成に戻るというケースもあります。転職活動の進め方に正解はないので、自分が進めやすい方法を選択しましょう。
①事前準備
転職活動を始めるための準備を行います。キャリアの棚卸し・自己分析は、すでに転職の方向性が決まっていたり、強みやアピールポイントが分かっていたりする場合は省略しても問題ありません。
スケジュール作成
転職活動全体のスケジュールを作成しておくと、退職までの進め方を整理することができます。一般的な転職活動では、事前準備に2週間、求人検索・応募に2週間、面接に1カ月、引き継ぎや有給消化に1~3カ月程度かかるのがスケジュール作成の目安となります。
なお、仕事を続けながら転職活動を始める場合は、退職希望日を決めて逆算するという方法もあります。就業規則に「退職希望日の○日前までに意思を伝える」と定めている企業が多いので、まず就業規則を確認し、いつまでに退職の意思を伝えなければならないのか確認します。
そして、現職の業務を考えて、現実的な退職希望日を設定します。ボーナスを受け取ってから転職したい場合は、ボーナスの受取日や査定対象日などを確認しましょう。退職希望日から逆算して、残っている有給休暇日数、引き継ぎにかかる期間などを足していくと、残りが転職活動期間になります。
ただし、転職活動は選考の進み方次第で期間が変わるので、スケジュールはあくまでも進捗の目安として、選考状況に合わせて調整しましょう。
キャリアの棚卸し・自己分析
自分の強みや転職の方向性が明らかになっていない場合は、キャリアの棚卸しを通じて得意分野や強み・弱みを見つけましょう。事前に自分自身と向き合っておくと、転職に求める条件が明確になるので、優先順位を決めることができます。また、アピールポイントが分かるので、応募書類の作成や面接の事前準備にも役立つでしょう。
情報収集
転職の方向性や軸が明らかになったら、情報収集を行います。特にキャリアチェンジ転職の場合は、自分が向いている業界・職種を見極めるために、業界研究が必要です。すでに志望業界や志望職種が決まっている場合は、企業分析を進めましょう。
応募書類作成
転職活動で必要な書類は、履歴書と職務経歴書が一般的です。デザイナーなど一部の職種では、自分の作品をビジュアルで伝える「ポートフォリオ」が求められることもあります。履歴書はアルバイトなどでも作成する機会がありますが、職務経歴書は転職活動で初めて作成する書類です。書き方が分からない場合は、職務経歴書の見本を参考にまとめてみるといいでしょう。
②求人検索・応募
事前準備を終えたら、いよいよ求人への応募です。数多くの求人から自分に合った仕事を見つけるために、探し方のコツを知っておくと効率的です。
求人検索
求人は、企業の採用ページや転職サイト、求人特化型検索エンジンなどから探します。多くの転職サービスでは、絞り込みに便利な検索軸が設定されているので、業界や職種、希望勤務地など、転職先に求める条件をあらかじめ決めておきましょう。
転職サービスによっては、自分で求人を探すのではなく、登録したレジュメにマッチしたオファーが届くサービスもあります。オファーを受け取りたい場合は、できるだけ具体的にレジュメを登録しておきましょう。また、転職エージェントに求人を紹介してもらうという方法もあります。
応募
興味のある求人が見つかったら、早速応募してみましょう。応募時に履歴書や職務経歴書、指定のエントリーシートなどが必要なケースもあります。必要な書類は求人に記載しているので、もれなく準備しましょう。なお、企業の採用ページや転職サイトなど、複数の方法で応募する場合は、応募状況を把握しておくために、いつ・どのサービスの・どの求人に応募したのかをメモしておくといいでしょう。
③面接
企業にもよりますが、面接回数は1~3回程度行われることが一般的です。選考が進むと何社も面接を受けることになるので、スケジュールの確認と事前準備を念入りにしておきましょう。
面接
面接では、「転職理由」「志望動機」「自己PR」を必ず聞かれます。面接までに、自分の言葉で話せる準備をしておきましょう。オンライン面接を導入している企業も多いので、時間ギリギリに接続するのではなく、早めに接続を確認しておくことも重要です。対面面接の場合は、当日の面接のマナーや服装にも気を配りましょう。
なお、面接は企業が自社にマッチした人材を選考する場ですが、求職者も同様に、自分の希望する働き方や条件にマッチするかどうかを確認する場でもあります。準備不足で慌ててしまうと、十分に確認できなくなる可能性があるので、余裕を持って臨みましょう。
条件交渉
企業によっては、内定前後に条件面談を設定するケースもあります。年収や勤務地、入社日などの条件を考慮して内定のオファーを出しているケースが多いので、もし譲れない条件がある場合は、条件面談時や内定が出る前に希望条件を伝えておきましょう。
④内定・退職・入社手続き
選考を通過し内定が出たら、あとは入社までの手続きを進めます。このフェーズで重要なのは、退職交渉です。所属企業に退職を伝えたところ、思わぬ引き留めにあって退職手続きが難航するケースも多いので、退職が決定するまで慎重に進めましょう。
内定(承諾)
企業から内定が出たら、労働条件通知書などに記載されている条件に問題がないか確認し、承諾するか判断しましょう。複数の企業で選考が進んでいる場合は、内定辞退の連絡をしたり、内定承諾期間を延ばしてもらったりすることもあります。内定承諾は、限られた期間で意思決定をすることになるため、転職に迷いが生じる方も多いようです。悔いのない選択をするために、気になることは面接の段階で確認するようにして、優先順位を明確にしておきましょう。
退職手続き
内定が出たら退職手続きです。残っている有給休暇日数や引き継ぎにかかる日数などを考慮して、最終出社日を決めておきます。そして上司に退職の意思と退職希望日を相談しますが、強い引き留めにあう可能性があるので、退職する意思が固まっている場合は、覚悟を決めてから退職を伝えましょう。
また、パソコンや携帯電話、名刺や入館証など、所属企業から貸与されているものがあれば、全て返却します。円満退職のために、退職手続きは余裕を持って丁寧に進めましょう。
引き継ぎ
退職日が決まったら、業務一覧と引き継ぎスケジュールを作成します。上司に後任の着任時期を確認し、それまでにマニュアルや引き継ぐ書類をまとめておきましょう。営業やコンサルタントなど、顧客やパートナーなどがいる場合は、後任とともに引き継ぎの挨拶ができるようにスケジューリングしておきます。職場や顧客・取引先が困らないように、しっかりと引き継ぎを行ってから有給消化に入るようにしましょう。
入社手続き
転職先企業に入社するための書類を準備しておきます。入社に必要な書類は、源泉徴収票や健康診断の結果、資格の証明書など、転職先企業によって異なります。指定された書類と提出期日を確認しておきましょう。
転職活動やることリスト
転職活動全体の進め方が分かる「転職活動やることリスト」を用意しました。できたところからチェックを入れていきましょう。
□ | スケジュール作成 |
□ | キャリアの棚卸し・自己分析 |
□ | 情報収集 |
□ | 転職サービスへの登録・転職エージェントの申し込み |
□ | 応募書類作成 |
□ | 求人検索 |
□ | オンライン面接準備(接続環境など) |
□ | 対面面接準備(服装・鞄・靴・持ち物など) |
□ | 面接対策 |
□ | 内定承諾 |
□ | 退職の意思を伝える |
□ | 退職手続き |
□ | 引き継ぎ準備 |
□ | 入社手続き |
転職成功のポイント
転職を成功させるためのポイントを4つご紹介します。
転職理由を明確にする
転職理由とは、「転職で実現したいこと」です。例えば、「マネープランも提案できる営業になりたい」「自社サービス開発に携わりたい」など、転職理由を明らかにしておけば、転職の軸が定まります。逆に、「将来性が不安」「人間関係が悪い」など、不安や不満解消が転職理由になってしまうと、転職の軸が定まらず、転職先で同様のことが起こった場合に転職を繰り返してしまう可能性があります。不安や不満が転職のきっかけであることは問題ありませんが、その先にある「転職で実現したいこと」は必ず明らかにしておきましょう。
希望条件の優先順位を決めておく
全ての希望条件を叶える企業を探そうとすると、マッチする求人が見つからなくなってしまいます。また、希望条件の優先順位を決めておかないと、「この企業は年収が高いけど残業が多い」「この企業は通勤範囲だけど仕事内容が合わない」など、入社する企業を絞り込むことができなくなります。希望条件は、「絶対に譲れない条件」と「できれば叶えたい条件」の2つを設定して、「絶対に譲れない条件」は2~3個までにしておきましょう。
内定時期をできるだけ揃える
興味のある企業を1社1社厳選して応募し、選考を通過しなかったらまた1社応募するという転職活動をする方がいます。この方法だと、応募する求人は最小限で済みますが、選考を通過しなかった場合は振り出しに戻ってしまうので、転職活動が長期化してしまう可能性があります。また、同じ時期に複数社の内定を揃えることができないので、比較検討して転職先企業を決めることができません。意思決定をする際は、複数から比較して選ぶと納得度が高まります。できる限り同時期に複数の企業に応募し、内定時期を揃えるようにしましょう。
円満退職を目指す
退職する際は、できるだけ双方が納得できる形を目指すことが重要です。円満ではない形で辞めてしまうと、その後どこかでかかわりがあった場合に、気まずい思いをする可能性があります。また、応募者の同意を得たうえで前職(現職)の企業に人柄や実績を確認する、リファレンスチェックを行う企業もあります。円満ではない退職をした場合、リファレンスチェックの回答が思わしくなく、キャリア形成が不利になる可能性があります。トラブルを回避して、できるだけ円満退職を目指すようにしましょう。
転職活動に不安がある場合は転職エージェントに相談を
転職活動の進め方に不安がある場合は、転職エージェントを利用するという方法があります。転職エージェントは豊富な転職支援実績があるので、求職者の希望条件や状況に合わせて適切なアドバイスをすることができます。また、マッチする求人を紹介してもらえるので、自分に合う企業が分からないという方にも向いています。
オンライン面談を導入している転職エージェントも多いので、もし転職活動の進め方が分からない場合は気軽に相談してみましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。