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「今は会社を辞めない方がいい」と転職エージェントがアドバイスするケースとは?

辞めない方がいい会社

「会社を辞めたい」と思いながらも、「本当に辞めてしまっていいのだろうか」「転職に踏み切ってもいいのだろうか」と悩むケースは多いようです。会社を辞めるかどうかは最終的に本人が決断するものですが、転職エージェントのキャリアアドバイザーが客観的に見て「安易に辞めない方がいい」とアドバイスすることもあります。理由・状況別に、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。

「会社を辞めない方がいい」ケース

転職エージェントのキャリアアドバイザーが、「今の会社を辞めたい」と相談を受けたとき、「辞めない方がいい」と断言することはありません。辞めるか辞めないかを考えて決断を下すのは、ご本人の意思が尊重されるべきだからです。

ただし、相談者の視野が狭くなっている状態だと感じたら、「安易に辞める決断をせず、辞めずに済む方法を探りましょう」と提案します。そこで、辞めたい理由・状況ごとに、見つめ直してみるべきポイントや課題を解決できる可能性について、実例を交えてお伝えします。

人間関係がうまくいっていない

人間関係がうまくいっていないときは、感情的になり、視野が狭くなりがちです。まずは、「人間関係がうまくいかないことにより、仕事にどのような影響があるのか」「うまくいかない相手が誰で、どのような点でうまくいっていないのか」など、状況を整理してみましょう。

「仲が悪い」と思っていても、実はちょっとしたコミュニケーションのすれ違いで誤解が生じているだけのケースもあります。「1対1でじっくり対話してみる」、あるいは「第三者に相談し、間を取り持ってもらう」などの方法で解消できることもあります。

Aさん(20代)の事例をご紹介しましょう。Aさんは営業職として中途入社した企業で、上司や先輩との人間関係に悩んでいました。営業未経験からのスタートだったAさんは、「まだ仕事に慣れていないのに、顧客先に1人で行かされてつらい」と人事に相談。「自分は嫌われていて、避けられているのでは」と思い込んでいました。

しかし人事担当者が上司との面談を促してみると、あっさりと誤解が解けたのです。1人で顧客先に送り出すのは、その上司の「育成方針」であること、そして自分に期待を寄せられていることに気付きました。

もちろん、話し合っても上司への不信感が拭えず、関係を改善できないこともあります。その場合は、辞める前に部署異動の可能性を探る方法もあると思います。

人間関係の悩みは、どんな会社に行ったとしても生じ得るものです。仕事にやりがいを感じているなら、人間関係だけを理由に辞めてしまうのはもったいないことです。まずは関係改善を図るか、異動などによって離れることをお勧めします。

労働環境に不満

「残業が多い」「有給休暇をとりにくい」など、労働環境に不満を感じている場合、「他社と比較してみる」ことで考えが変わるケースが少なくありません。

金融機関で経理職を務めていたBさん(20代)の場合、「残業が多いので、今の会社を辞めたい」と相談に訪れました。ところが、月の残業時間数をお聞きすると、同業他社よりもずっと少なかったのです。厚生労働者が発表している業界の労働時間のデータを見て、「世の中の相場」を知ったBさん。「同業界内で転職しても改善の見込みは薄い」と、現状を受け入れたのでした。

もちろん残業時間に対する受け止め方は人それぞれですし、実際に労働環境が過酷であるケースもあります。その場合、「仕事のやりがい」「身に付くスキル・キャリア」「職場の人間関係」など、魅力を感じるポイントがあるかどうか、他の要素とのバランスを見ながら労働環境の改善をどう位置づけるのか…を考えてみてください。

なお、コロナ禍以降は、「リモートワーク」ができないことに不満を感じ、退職を考える人も増えています。その場合、辞める前に、会社に対してリモートワークの導入を願い出てみてはいかがでしょうか。

上層部は「やり方がわからない」「導入するメリットが明確ではない」などの理由で導入を検討していないケースもあります。具体的な導入方法を示し、「これだけ生産性を上げられます」「まずは週1回から試してみましょう」などと提案すれば、実現するかもしれません。同僚に呼びかけて賛同者を集め、集団でリモートワーク導入を要請する手段もあるでしょう。

待遇・給与額に不満

待遇・給与に不満を抱いた場合は、先ほどの「労働環境」と同様、「世間の相場」「業界の相場」と照らし合わせてみましょう。平均水準以上の給与を得ている人が不満を抱いているケースは意外と多いものです。

大手メーカーに勤務するCさん(20代)は「給与が低い」と不満を抱いていました。しかしCさんは、金融機関やコンサルティングファームなど、給与水準が平均より高い業界で働く友人と比較していたのです。

よくよく状況を整理してみると、高収入の友人たちと比べ、Cさんの会社は労働時間が短く、休日が多く、住宅手当などの福利厚生も充実しています。「自分は恵まれている」と気付き、転職を思いとどまったのでした。

また、給与・待遇に不満を抱く方からは「会社から評価されていない」という声をお聞きすることもあります。その場合、会社の「評価軸」を確認してみてください。中には、会社が社員に期待していること=評価軸とは異なる方向で努力していた結果、「頑張っているのに評価されない」と嘆くケースが見られます。

そうした場合は上司に面談を申し出て、自身に期待されていることは何かを確認してみてはいかがでしょうか。

仕事がつまらない

仕事を「つまらない」と感じるなら、「何がつまらないのか」を具体化してみましょう。自身の固定観念や先入観などで「つまらない」と決めつけてしまっているだけかもしれません。つまらない理由によっては、転職しなくても、今の仕事への向き合い方を変えることで面白くなる可能性があります。

例えば、「習熟しきっていてマンネリ化している」状態であれば、自ら新しいプロジェクトを起案してプロジェクト責任者に手を挙げたり、あるいは部署異動・職種転換したりして、社内で新たなチャレンジの機会を作れるかもしれません。

「成果につながらず、達成感がない」のであれば、成果を出している先輩や同僚に相談し、アドバイスを受けることで打開できることもあります。

「やりがいを感じられない」場合は、社内外で生き生きと働いている人と対話する機会を作り、仕事に対してどのような価値観を持っているかを聞いてみてはいかがでしょうか。新たな視点を得られる可能性があります。

今の仕事で成長を感じられない

先ほどの「つまらない」と同様、今の会社内で新たなチャレンジをするチャンスを得られることもあります。

たとえば人材会社で経理職を務めていたDさん(20代)の場合、5年ほど経験を積んだところで「新たに学ぶことがなくなった」という感覚を抱くようになりました。転職活動を始めたDさんでしたが、同時に社内で新たな業務を経験する可能性を探ったところ、M&A関連業務に携わるチャンスをつかみました。

転職をやめて会社にとどまったDさんは、経営企画としてのキャリアを積むことができ、後に「あのときに辞めなくてよかった」と振り返りました。成長に行き詰まりを感じたら、まずは上司や人事に相談してみるなどして、社内で新たな成長機会を探ってみてはいかがでしょうか。

会社の経営状況が悪い・将来性がない

経営状況が悪い・将来性がないと判断する材料は何なのか、分解して考えてみましょう。産業構造の変化によって需要が縮小していく業界なのか、一時的な景況悪化の影響を受けているのか、現在の経営陣の戦略が誤っているのか…など、背景は大きく異なるはずです。

大手企業でも一時期は業績不振に陥ったものの、復活して大躍進を遂げた例もあります。早々に見切りをつけず、慎重に判断しましょう。

また、業界・企業の先行きと、「自分自身のキャリア」を別物として捉えた方が良いケースもあります。Eさん(30代)は小売業の事業企画職。ネット通販が台頭する中で、百貨店の業態は先行きが厳しいと言われているのに加え、コロナ禍の影響でさらに打撃を受けました。

しかし、Eさんの会社は新たなビジネスチャンスを生み出すためにDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に着手。EさんはDXプロジェクトの経験を積むことで、転職市場において「市評価値が高い」キャリアを築くことができています。

自社が早期退職制度などを実施すると、経営状態に不安を抱くこともあるかもしれません。しかし、組織がスリム化し、ポストに空きが生まれれば、自身が裁量権を持って新たな取り組みをするチャンスが生まれることもあります。

自身の経験・スキルを磨くために、今の会社を活用できる可能性があるならば、安易に退職しない方がいいかもしれません。

他にやりたいことがある

「他にやりたいことがある。今の会社ではそれができない」と判断し、退職を考える方もいらっしゃいます。この場合、会社を辞めてすぐに「やりたいこと」ができるのか、実現可能性を見極めることが大切です。場合によっては、今の会社でしばらく経験・スキルを身に付けた方が、「やりたいこと」の実現可能性が高まることもあります。

IT企業に就職して2年目のFさん(20代)は、「SDGs」に貢献するビジネスへの思いを強め、退職を考えていました。

具体的に狙っている分野はあったものの、求人は少なく、転職の実現可能性は低い状況。また、そのビジネスを発展させるには、必ずIT技術も必要となってきます。Fさんは「すぐにでもやりたい分野へ飛び込みたい」という衝動を抑え、まずは現在の会社でITスキルを身に付けることにしました。

それでも会社を辞めたいと思ったときにやること

ここまでお話ししてきたポイントを踏まえて考えた結果、「やはり辞めたい」と思ったなら、次のステップとして、第三者にも意見を聞いてみましょう。

上司や家族に相談する

「辞めたい」と思うきっかけとなった不満を解消・改善する方法があるか、あるいは、辞めてやりたいことを本当に自社で実現できないのか、自分一人で考えても正しい判断ができないこともあります。一度、上司に相談してみましょう。相談できる関係を上司と築けていない場合は、さらに上の上司や人事に相談してみる手もあります。

また、家庭を持つ方であれば、会社を辞めることによって生活も大きく変化する可能性があります。家族とも相談し、収入や居住地など、「変えられないもの」「変えられるもの」の条件を洗い出しておくといいでしょう。辞めるべきかどうかの判断材料となり得ます。

キャリアアドバイザーに相談する

上司や家族と相談すると、つい感情が先走り、冷静な話し合いや判断ができないこともあります。キャリアアドバイザーに相談し、客観的視点での意見を聞いてみることをお勧めします。

「辞める・辞めない」で悩んだら転職エージェントに相談してみよう

価値観は人によって異なりますから、「辞めた方がいい会社」「辞めない方がいい会社」は、一概には決められません。

しかし、多くの人の転職事例やキャリアパスを見てきた転職エージェントからは、中長期視点から「目指すキャリアに近づくために、今どのような経験を積むとよいか」のアドバイスを得られることもあります。

自身では気付かない観点を得るためにも、相談してみてはいかがでしょうか。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏


約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

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