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転職市場の展望【2020年版】

転職市場の展望イメージ(空と都心のビル群)

2020年に見込まれる主要業界の求⼈・求職者の動きを、リクルートのHR統括編集長である藤井と、それぞれの業界に精通したコンサルタントがレポートします。
「2020年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。

【関連記事】転職市場の展望【2019年版】

2020年の転職市場はどうなる?

デジタル・トランスフォーメーション(DX)、XaaS(X as a Service)化の加速で、カスタマー・サクセスなど新職種も登場。 “透明で柔軟”が採用の成否を分ける

2020年も、事業変革を推進し企業の競争優位を生み出す人材の “異業種間・異規模間獲得競争”が加熱してゆく様相だ。それによって企業も変革を迫られている。

まずは、HR統括編集長である藤井が、転職市場における環境の変化と採用成功を実現している企業の共通項を紹介する。

HR統括編集⻑ 藤井 薫

1988年リクルート⼊社。TECH B-ing編集⻑、Tech総研編集⻑、アントレ編集⻑を歴任。2008年からリクルート経営コンピタンス研究所、14年からリクルートワークス研究所兼務。変わる労働市場、変わる個⼈と企業の関係、変わる個⼈のキャリアについて、多様なテーマ(AI全盛時代の採⽤戦略、多中⼼時代のHRM、アントレプレナー・パラレルキャリアの⽣き⽅など)をメディアで発信中。近著『働く喜び未来のかたち』(⾔視舎)。

異業種間・異規模間の人材獲得競争は益々激化

あらゆる産業がDX、XaaSモデルへの転換を加速しつつある現在、転職市場でかつて機能していた業種の概念はことごとく融解している。自動車メーカーから、MaaS(Mobility as a Service)への転換をはかる自動車産業を筆頭に、FinTech、不動産Tech、EdTechなどあらゆる産業がサービス化し、自社にない異能人材を争奪しあう“異業種間人材争奪戦”が過熱している。

こうした背景から、新規事業開発・事業企画の募集や、これまで社内に無かったカスタマー・サクセスなど新たな職種の募集も見られるようになった。CTOやデータサイエンティスト、法務知財関連職種など、中長期の企業価値を高める高度専門人材を求める“ピンポイント採用”も増加傾向だ。今後企業はこれまでの業種や企業規模の概念を超えた、想定外の採用競合と争奪戦を繰り広げることが増えるだろう。

異業種転職の推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

採用成功する企業に共通する3つのポイント

激化する異業種間・異規模間の人材獲得競争の中で、採用成功を実現している企業には以下の共通項がある。これらは転職先を検討する際にも役立つだろう。

1. 明確な採用要件定義

まず、業種にこだわらない明確な採用ターゲット、粒度の細かい職務要件、具体的な役割、期待成果の設定力が挙げられる。本当に採用しなくてはいけないポジションなのか?採用できないままでも困っていないポジションはないか。採用成功を実現している企業は、現場と人事が協働し、注力採用ポジションを見極め、市況と照らしつつ、現実的に譲れる・譲れないレベルでのターゲット設定をしている。

2. 超柔軟な条件変更

次に、個人のキャリアやライフステージに応じて、働き方を変えられる柔軟性が挙げられる。採用競合が多数になり競争が激化している環境では、個人のキャリア志向や生活環境の変化に合わせて、従来では考えられなかったような、役割・勤務時間・処遇などの人事制度も含めた変更を企業自ら柔軟に行えることが、求職者から選ばれる要因になってきている。

3. 超透明な情報提供

最後に、求職者に対して社内の実情をリアルに伝える、「超透明な情報提供」を行っている。Webサイトなどでは法人主語での情報提供がなされていることが多いが、最近では企業内個人が話者となり、一般的には知ることのできない生々しい社内の実情を課題も含めて包み隠さず公開することで、結果として安心や信頼に繋がっている。

2020年は、激化する人材争奪戦の中で、業種を超えた越境採用、新たなポジション採用が拡大する。その新たな仕事・ポジションを、異能人材に向け、どこまでリアルに伝えフレキブルに迎えられるか?その“透明で柔軟”な採用体制の在り方が、その後の企業のビジネス変革の成否を分けるだろう。

ここからは、主要な業界ごとに、業界・企業側の動きと求職者側の動きを見ていこう。

IT通信業界の動向

【Point】採用の成否が二極化し「ITエンジニア採用 コミット競争」が起きる。売り手市場ではあるものの専門性の高いピンポイントな求人も増加傾向。

業界・企業側の動き

2020年も構造的な人材不足により全体的には売り手市場になるだろう。基幹システムの刷新・クラウドへの移行案件は引き続きニーズがある。デジタルトランスフォーメーション(DX)事業に取り組む企業は増えているが、求める人材が市場に少ないため、人材争奪戦は過熱。ITエンジニア採用の難易度が非常に高いだけに、採用充足に本気で経営・人事・現場が一体となってコミットし施策を実行し続ける企業と「いい人がいればいるだけ」と目標意識が薄い企業で明暗が分かれそうだ。

コンサルティング企業のSI事業への参入も進んでおり、SIerの採用競合関係になってきている。また、新卒・若手を多く採用した企業では、採用した若手を育てマネジメントするポジションとして40代を採用している動きが大きくなっている。今後も40代以降の採用は進む可能性がある。働き方改革・ダイバーシティ推進が進んでいる企業では、企業側が個人に労働条件を合わせ採用成功している動きもある。

求職者側の動き

コンサルティング企業・大手事業会社が依然として人気である。中堅・中小SIerや技術派遣の企業から大手SIerやコンサル、ユーザー系やベンチャーなどへ転職していく例も多い。転職後のキャリアパスが多様であることを打ち出す企業も出てきており、身に付くスキル、卒業後のキャリアイメージなど、透明性の高い情報提供が求職者を惹きつけている。

40代以上のミドル・シニア転職では、「企業の将来戦略と共に、挑戦しがいのある事業課題が包み隠さず明示されていること」も重要だ。自分のどのような経験・能力が貢献できるのか気になる求職者が多く、こちらも透明性が求められる。「副業」への関心も高まっている。決定軸になっているわけではないものの、能力開発の多様な選択肢を支援する「副業可」求人への転職者への反応は良い傾向。差別化が難しいITエンジニア採用において、能力開発支援の姿勢は差別化ポイントになる。

IT通信業界 転職マーケット状況

IT通信業界出身者 転職決定数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

福井 耕造

福井 耕造

広告会社を経て、リクルートエージェント(現:リクルート)に入社。製造業系領域を経て、IT・コンサルティング領域の企業側アドバイザーを担当。入社から一貫して企業側アドバイザーを担っており、担当クライアントとしても製造業界、IT/コンサルティング業界の大手~ベンチャー系企業まで幅広く担当。

岡崎 遼馬

岡崎 遼馬

新卒で大手SIerに入社。データセンターで常駐運用に従事後、ソリューションセールスとしてクラウドサービスやシステム運用の営業を担当。リクルート(旧:リクルートキャリア)入社後は、一貫してハイキャリアIT人材の転職を支援。

コンサルティング業界の動向

【Point】引き続き採用意欲は高い傾向。未経験からコンサルティング業界へのチャレンジが増加。企業側は働き方改革などライフフィットへの動きが目立つ。

業界・企業側の動き

2020年も、大手から独立系のコンサルティング企業まで、コンサルタント、ITエンジニアの求人需要は高い。事業会社には、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進できるCTOがいない企業は多く、引き続きDX関連のコンサルティング案件の引き合いは多い。金融、製造流通、小売サービス領域では、新しいマーケットの獲得やコスト削減の案件が増加している。

また、コンサルティング未経験で業界へ転職するケースが非常に増えており、この流れは2020年も続くだろう。背景には、コンサルティングへの期待が「クライアントのコアビジネスの変革」になり、実際の顧客のビジネスを知っている事業会社出身者を求める動きがある。また、AIの導入の段階も、各社PoC(Proof of Concept)を経て実際にビジネス実装をしていく段階に入る。そのため、AI関連の案件を見越してコンサルティング企業出身者だけでなく、AIを導入した際に具体的に現場で何が起こるかを想定できる、事業会社出身者を採用するケースも増えてきている。

求人の変化としては、データサイエンティスト・マーケティング・商品開発経験者をターゲットとした「カスタマーインサイト分析からビジネス提案をしていく」ような、今までに無かった求人も出始めている。ここ数年で働き方改革が進み「UP or OUT」のイメージは薄れてきたが、各社は働き手一人ひとりのライフステージに見合った働き方に合わせる、ライフフィットの施策が加速しており今後もこの流れは続くだろう。

※「概念実証」。主に新たな理論やアイディアなどを開発、実践する際、前段階において本当にそれが実現可能なのかを確かめることであり、とりわけIT業界では必要不可欠な工程

求職者側の動き

ここ数年で新卒採用におけるコンサルティング業界の人気が上がってきていることも相まって、第2新卒採用でコンサル業界へ転職するケースが増えている。ライフフィットの動きも進んでいるため、30代・40代の入社も増えてきており成長意欲のある転職者に選ばれる傾向にある。

コンサルティング業界 転職マーケット割合

コンサルティング業界 転職決定数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

横山 賢太郎

横山 賢太郎

新卒でメガバンクに入社。その後リクルート(旧:リクルートキャリア)に入社し大手顧客担当として金融、IT、スタートアップ、コンサルティングなどの業界を担当。Digital組織の立ち上げ支援、AI、IoT、クラウドなどエマージングテクノロジーを活用したトランスフォーメーション支援などの実績を多数創出。自身の転職体験も踏まえて「日々を生き生きと働けるフィット感の高い転職」をモットーに活動。

インターネット業界の動向

【Point】ベンチャー企業の採用が伸びる傾向。新たな職種も生まれ変化の年へ。

業界・企業側の動き

ネット企業の人材募集は、2020年も引き続き高い採用意欲であろう。特にWebエンジニアは、ネット企業以外からの引き合いも強く、人材獲得競争は過熱する。そのため企業情報の【超透明性】が採用の成否を分けるキーワードになりそうだ。企業内の発信力のある個人が生々しい情報を公開し、求職者に対して社内の実情をリアルに伝える「顔の見える採用」で差別化を図っている企業もでてきている。更に採用が上手くいっている一部の企業では、求人要件の細分化をし、職種定義を明確に、ターゲットに合わせた職務を提案できている印象がある。

求人面での新たな動きとしては、カスタマーサクセス関連部署の新しいポジションでの募集が増えそうだ。ユーザーのニーズも多様化し、企業のビジネスモデルがSaaS型へ変化。ビジネス開発でも営業でもない、新しいキャリアとしても注目される。

求職者側の動き

2019年に引き続き、Webエンジニアは多くの業界から求められているため、異業界への転職は増加傾向。ネット業界内での転職については、今まではBtoCサービス企業が人気である傾向だったが、最近ではBtoBサービス企業への転職事例が増えてきている。これは、ネット業界の主要プレイヤーがBtoBサービスにも注力するようになったこと、一般的にBtoBサービスの方が商品の安定性が高く市場規模も大きいため、安定を求めたいエンジニアや技術面での広がりに魅かれるエンジニアに選ばれていることが考えられる。また、40代以降の転職実績も増加傾向で、ミドル・シニアの転職例も生まれてきている。求職者側の要望として、リモートワーク可・在宅勤務可・副業可の環境があることは前提になりつつあり、スキルのある人材を採用するために各社が制度を整えている。引き続きWebエンジニア採用は激しい争奪戦になるだろう。

インターネット業界 転職マーケット割合

インターネット業界出身者 転職決定者数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

内堀 由美子

内堀 由美子

一貫してインターネット領域における転職支援および企業の採用支援に従事。現在は、企画・デジタルマーケティング等のインターネット専門職専任コンサルタントを担当。

茨木 涼子

茨木 涼子

通信キャリア、SIer、インターネット企業向けの営業、人材支援を経験した後、リクルート(旧:リクルートキャリア)入社。以降一貫して、IT・デジタル領域のコンサルタントを担当。

自動車業界の動向

【Point】「CASE」推進が進み、特に「E(Electric)」分野が活発。厳しい人材争奪戦の中で、難易度の高いポジションほど現場の協力が不可欠に。

業界・企業側の動き

産業の大変革期である自動車業界。自動車メーカーは新卒文化が強かったものの2019年に引き続き中途採用強化へ舵をきっている。2020年も引き続き「CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)」と呼ばれる新技術を推進するために、ソフトウェアやパワーエレクトロニクス、クラウドといった領域において、異業種からの人材募集が積極的に行われるだろう。

特に「E(Electric)」分野の採用意欲が高く、製品開発分野の人材のニーズは非常に高い。自動車部品メーカーではこの流れを受け、今後ニーズが減少するであろう部品や技術から新しい技術領域へ事業のピポッドを図っており、事業開発ポジションも求人がでてきている。特に事業の中核になる管理職の採用に力を入れる企業が出てきており、経験豊富なミドル・シニアの採用で成功している企業もある。

また、近年未経験者の採用を進めてきたため、組織バランスとしてリーダークラスの経験者のニーズが高まっているが、非常に難易度が高く苦戦をしている。その中でも採用が上手くいっている企業は、人事が現場の協力を上手く得ており、本当に採用しなくてはいけないポジションについては市況感に応じたターゲット設定を現場・人事双方で認識合わせをしている。同じ企業内でも、部門ごとに協力体制ができている部門とそうでない部門で採用充足に差が出ている。

求職者側の動き

自動車業界の機械エンジニアが異業界へ転職していく流れが出てきた。「CASE」の動きからソフトウェア領域の投資は伸びたものの、機械エンジニア領域への投資が減ってきていることが背景にありそうである。経験を活かし製造コンサルや事業会社の企画職や業務改善の経験を活かしBPR系のポジションへ転職していく例もある。開発エンジニアは、設計者として得た知識を素材メーカーで活かせる場合があり、化学業界へ転職をしていく例もある。

自動車業界への転職者は、事業会社の企画職やコンサルタント等が、事業企画や新規事業関連のポジションへ決定している。R&Dなどの先進領域には異業界の知見が求められるが、どの業界も欲している人材をターゲットとなっているため、熾烈な人材争奪戦が起きている。

自動車業界 転職決定者数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

所 寿紀

所 寿紀

技術専門領域のキャリアアドバイザー、関西大手メーカーの営業を経て、東海圏のエンジニア担当サーチコンサルタントを担当。
その後、自動車業界専任のシニアコンサルタントを経て、現在、自動車業界を中心とした先進技術領域を担当するグループマネジャーとして、企業の新組織立ち上げ支援に従事。

総合電機・半導体・電子部品業界の動向

【Point】高スキル人材ニーズの高まり、教育前提の第2新卒採用のスタートなどの動き。

業界・企業側の動き

2019年は、業界全体の採用が活発だったが、2020年は採用が進む分野と採用が落ち着く分野が二極化するだろう。半導体分野は5Gの本格的な導入により再度需要が高まる可能性がある。一部の企業では、CTOクラスの高度な技術と経験をもつ人材の採用や、フロントエンドエンジニア、サービス企画などピンポイントなポジションの採用が続く見通し。2019年に引き続き、デジタル化に伴いIoT・AI分野の事業を加速させるためデータサイエンティストやAI関連のエンジニア、SaaS事業のエンジニア経験者はニーズが高い。

また、一部の企業では、定年退職者の数が新卒採用者の数を上回ったことを背景に第2新卒採用がスタートしている。2020年もこの動きは当面継続しそうである。このような動きも相まって、企業全体で採用プロセスを最適化するために今まで事業所単位で採用していた各社が本社でまとめて採用活動をしていく動きがある。採用難易度の高いポジションには現場社員の力も借りながら採用を進める企業が増えてきている。

求職者側の動き

各社が事業変革を進める中で、自分自身の将来にわたるキャリアアップのために、培ってきた経験を他業界で活かしたいと考える30代後半~40代前半の転職相談が増加傾向だ。半導体エンジニアは比較的売り手市場であり、異業界への転職例も多い。業界の垣根も低くなってきており、化学業界やIT業界への転職事例も出ている。また、ミドル層の動きとして、大手企業からベンチャーへ、今までの経験を活かしてさらに成長すべく転職していく例も生まれている。変化の予想される業界だからこそ、定期的なキャリアの棚卸しをしていくことが重要だ。

総合電機・半導体・電子部品 転職マーケット割合

総合電機・半導体・電子部品業界 転職決定数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

井上 和真

井上 和真

繊維商社を経て、人材業界では約10年以上一貫して製造業における採用支援に関わっている現在は主にミドル~管理職領域を担当 半導体・自動車業界 H/W,S/W領域が強み。

大橋 裕介

大橋裕介

東海エリアにて自動車業界を担当後、現在は首都圏の大手製造業を担当。自動運転、スマートファクトリーなどAI、IoTに関わる採用支援経験が強み。

三宅 英之

三宅英之

入社以降、一貫して製造業、特にエレクトロニクス・半導体業界の企業のリクルーティングアドバイザーに従事。100名単位の大規模採用支援を主としている。

素材・エネルギー業界の動向

【Point】ESG関連の人材を求める動きは継続。5G向け素材開発人材のニーズも増加。

業界・企業側の動き

2019年はESGが企業価値を図る指標として注目を浴び、ESG関連の求人は伸びた。各社がESG推進の部署を立ち上げたことで今までに無かった化学物質管理関連の求人も登場し始めている。このポジションでは品質管理経験者の女性の採用も複数みられた。2020年もこの傾向は続きそうである。また、新たにカーボンリサイクル関連の求人も出てくるだろう。

自動車関連の求人は2020年も引き続き継続することが予想され、電池開発、エンジニアリングプラスチックなど先端素材開発のエンジニアの募集はさらに過熱することが見込まれる。5G向け素材開発のニーズも出てきている。エネルギー関連の求人は伸びている。再生可能エネルギーへの転換が図られている中、経験者のピンポイント採用は勿論、異業界からの人材も求められている。ヘルスケアやバイオ医薬の求人も堅調で、これまで新卒至上主義であった化学メーカーも、新卒採用以上に中途採用を強化するなど、採用変革を進めている。

企業側の変化として、今までは人事中心で採用活動をしていた企業が、それだけでは採用が困難になってきたことで、現場社員まで巻き込んで採用要件定義などを始めた。市況感に合わせた採用活動ができるかどうかが、採用成功への重要な要素となるだろう。

※ESG…環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもの。

求職者側の動き

元来人材流動性が低い業界だったが、ここ数年で、大手日系企業の求人が増加したことから転職に踏み切る事例が増えてきている。やむを得ず、というよりは新たなチャレンジや成長を描く方が多い。

化学業界 転職マーケット割合

化学業界 転職決定数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

羽田野 直美

羽田野 直美

製造業のエンジニアを中心としたキャリアアドバイザーを経験後、2010年からは「素材・エネルギー・電機業界」を中心に、リーダーかからディレクタークラス、また高度専門職のキャリアコンサルティングに従事。

医療・医薬・バイオ業界の動向

【Point】CRO/CSOの求人は継続。企業の事業戦略に差が出始める。

※CRO…Contract Research Organization:医薬品開発受託機関
※CSO…Contract Sales Organization:医薬品販売業務受託機関

業界・企業側の動き

製薬業界では、規模拡大よりも将来性のある新薬候補を拡充する動きが目立つ。その手段として、基礎研究の段階から競合他社と組んで開発を進めたり、開発力確保のため有力なベンチャーや他社の事業を買収する動きがある。創薬のプラットフォーム化を狙う戦略で成長している企業もある。そのため異業界出身者でプラットフォーム戦略が立案できる人材や、新規サービスの立ち上げができる人材が求められ始めている

医療機器分野ではデジタルトランスフォーメーションや5Gを見越したサービス展開も見られ始めている。データサイエンティストなど他業界でも人気の職種も募集しているが、採用充足は難しく各社人材のニーズは依然高い状況は続くだろう。また治験の規制緩和によりアジアでの治験が可能になったことから、アジアに近い福岡での求人が増加し、海外マーケットを狙う動きも見える。

求職者側の動き

2019年までに事業統合や吸収合併の動きがあり、業界不安を覚えた求職者が業界外へ転職していくケースが増えている。品質観点での親和性から食品業界への転職や、社会貢献性の高い分野への転職ニーズが多く、異業界転職の支援数も増加傾向にある。

医療・医薬・バイオ業界 転職マーケット割合

医療・医薬・バイオ業界経験者 転職数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

増間 大樹

増間大樹

製薬業界を中心とした営業職・専門職、双方のサーチ部門を経験後、ライフサイエンス・ヘルスケア領域のアドバイザー部門のマネジャーを務める。

建設・不動産業界の動向

【Point】「遊休不動産の利活用」「不動産Tech」に関連する求人が増加傾向。働き方改革の進む企業、人材ターゲットが柔軟な企業ほど採用成功の傾向。

業界・企業側の動き

国際的なイベントを控え首都圏の再開発を中心に建設業は需要が高く、2020年以降、近畿圏でも再開発が見込まれ、繰越工事も残るため当分は人材の需要は高いままであることが予想される。ただ一部ポジションではPMP®資格が求められるなどしており、企業側の目線に変化は注視したい。

※PMP…Project Management Professional:プロジェクトマネジメントの国際資格

2019年に引き続き国、行政、企業が保有する遊休不動産・非効率な不動産利用の見直しなどといった「PRE/CRE戦略」に関する求人、PFIやコンセッションに関連する非建設業以外の求人は増加傾向。ベンチャーへの投資も見られ、アライアンス関連の求人も出てくる可能性もある。また海外進出・投資の動きも見られるため海外経験のある人材も需要がありそうだ。

また、不動産領域では、取引の効率化・透明化を進める「不動産Tech」も広がってきており、ITエンジニアの募集熱も高い。

※ PRE/CRE…Public Real Estate:公的不動産/Corporate Real Estate :企業不動産
※PFI…Private Finance Initiative:公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うこと

求職者側の動き

働き方改革が進んでいる企業でも、業務量が減らず時間だけ制限されている場合、サービス残業の増加や仕事のクオリティが担保できないまま帰らなくてはいけない不満などから、転職を考える人が増えている。IoT導入やRPA導入が思うように進んでいないことが背景にある。逆に、働き方改革がしっかりと推進されている企業には求職者人気が集まり応募が集まるため、今後もいかに求職者のニーズに合わせて制度や組織を変えていけるかがカギとなりそうだ。

建設・不動産 転職マーケット割合

建設・不動産業界 転職決定数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

平野 竜太郎

平野竜太郎

建設不動産領域専任シニアコンサルタント。ゼネコン・サブコン・組織設計事務所の建設技術者から、不動産ディベロッパー・AM・PMなどの不動産専門職・不動産金融領域のハイキャリア層を中心に幅広い支援実績を持つキャリアアドバイザー。

箕輪 真人

箕輪真人

建設・不動産領域においてサーチコンサルタント及びキャリアアドバイザーとして豊富な知識と実績を持つ。近年は建設業における女性活躍推進にも取組み、労働環境改善を目的とする転職サポートに強みを持つ。

銀行・証券業界の動向

【Point】銀行はエンジニアの採用意欲が引き続き高い。RM求人も出てきており提案力がカギに。証券は新しいサービス展開に伴い、Webエンジニアやコンプラ関連など専門職採用へ。

【銀行】業界・企業側の動き

サービスの変革期である中で、営業職では資産運用の提案・事業提携、事業承継の案件が取れる人材を欲している。また、RM求人も出てきており、ニーズをくみ取った上で提案する力を持った人材が求められる。

2019年に引き続き、ITエンジニアの採用意欲も高い。銀行本社でも服装規定を改定した例もあり、エンジニアへの働きやすさを訴求する施策も一定進んでいるようだ。2020年もエンジニア確保に向けて、同業界に限らず様々な採用競合と争奪戦が起こるであろう。

※RM:リレーションシップ・マネジメント(マネージャー)。クライアントとの関係(Relationship)をマネジメント(Management)する業務またはその担当者。 金融業界では主に大口顧客を担当する営業のことを指し、ホールセールと呼ばれることもある。

【銀行】求職者側の動き

銀行出身者は、総合コンサルへの転職をするケースが少なくない。数字に強く、構造俯瞰ができ、緻密なプロセス設計ができる能力に親和性があるためだ。一方、エンジニアから見ると、銀行に集まる膨大なデータは魅力的であり、社風や制度への懸念が払しょくされれば、入社に至るケースも出ている。

【証券】企業側・求職者の動き

各社構造改革が進んでおり、ビジネスモデルも変革期にある。新たな領域への参入という背景から、Webエンジニアやコンプラ系の専門職求人ニーズがある。求職者側は、ビジネスモデルの変革が進んでいる背景から、今までの経験を活かして将来に渡り同業界でキャリアアップできるのか危機感を持ち、異業界へ転職するケースが出てきている。証券業界出身者は、営業力、マーケット指標を観る目、法人や企業オーナーへの対応力が評価されるケースもある。

金融業界 転職マーケット割合
注:こちらの図は、銀行・証券業界だけでなく、生保・損保業界なども含む金融業界全体のグラフとなっています。
銀行・証券業界出身者 転職決定数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

水谷 努

水谷努

金融領域出身。リクルート(旧:リクルートキャリア)においては金融領域専門のアドバイザーとして多数のメガバンク・メガ証券・大手生損保出身者、リースや運用会社出身者まで幅広い転職支援実績を誇る。

生保・損保業界の動向

【Point】生保では、リテール営業は継続募集、監査・コンプラ関連求人や運用求人がトレンド。DXに強いエンジニア・企画関連求人は、転職回数よりスキルセット重視の傾向に。

【生保】業界・企業側の動き

人生100年時代に個人の寿命が延び多様な生き方が想定されることで、保険商品のバリエーションが増えた。個人に合わせた質の高い提案が求められ、リテール営業にも提案力が求められるようになってきている。専門職種では、監査・コンプラ関連求人など、金融庁の動きや社会観点を取り入れた対応ができる人材や、マイナス金利の影響から高度な運用が求められるため運用関連求人も増加している。また、2019年に引き続き、生保各社が注力している保険代理店マーケット関連の採用も増加傾向にある。

DXのトレンドは2019年で落ち着きを見せたものの、各社DX推進ができる人材の確保には焦りを見せる。UIUXやデータ関連の人材は特に、在籍企業や転職回数などではなく、スキルセットが重視されるようになってきた。専門性が高い業界だからこそ、デジタル化には異業界の知見を入れたい考えだ。社内SEの採用ニーズはシステム更改や内製化の流れから、引き続き意欲は高く、募集は2020年も積極的に行われるだろう。

【生保】求職者側の動き

金融関連の知識が身につき、自身の生活にも活かせることから、異業界からの転職が増えている。代理店向けの営業ポジションでは、販売戦略を財務と紐づけて提案するスキルが身につくため経営視点を養いたい求職者がマッチしている。ITエンジニアは、比較的ワークライフバランスが整う業界であり、技術も重宝されるので、最新技術を求めるというよりも腰を据えて働きたい方が転職してきている。

【損保】業界・企業側の動き

ネット・ダイレクト損保系の求人が伸びており、損保がダイレクト市場に受け入れられている兆しがある。市場の更なる拡大のため、Webマーケティング職種のニーズが増加している。一方で、昨今の自然災害の影響を受け、そちらの対応を優先している状況でもある。保険金の支払いも増加傾向にあり、支払いのための職種募集は積極的だ。

DXのトレンドはUIUX関連職種はもちろんだが、海外ベンチャーや大学との連携により、最先端テクノロジーを取り入れて、新商品・新サービスの企画を推進できる人材は引き続き各社が積極的に募集していくだろう。

金融業界 転職マーケット割合
注:こちらの図は、生保・損保業界だけでなく、銀行・証券業界なども含む金融業界全体のグラフとなっています。
生保・損保業界 転職決定者数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

佐川 啓子

佐川啓子

中途入社以来、金融業界にて生命保険会社や信託銀行を中心にリクルーティングアドバイザーとして採用支援に従事。

消費財・総合商社の動向

【Point】既存事業とデジタル領域との融合を進める動き。

【消費財】業界・企業側の動き

2019年に引き続きデジタル化の流れを受け、IT人材の採用は強化しているが、苦戦している企業が多い。新卒でIT技術者枠を設けるなど、理系採用強化の動きがある。

高度なスキルを持つITエンジニアや、新規事業系の職種など、本当に事業上必要な人材の確保が難航している傾向にある。新卒文化が色濃く残っている企業が多く、提示給与をマーケットに合わせて変えることができないことも影響している。

【総合商社】業界・企業側の動き

元々新卒採用文化が強く、優秀な人材を新卒で採用し育成していく人事制度であったが、近年新卒入社の若手が成長機会やポストを求め転職する事例が出てきたことで、年功序列の制度を変えていく動きがある。また、業界全体の動きとして、デジタル化の流れから現在のビジネスモデルから変容していくために異業界からの採用を進めている。特に、コンサルティング業界からの入社が多く、業界のスペシャリストの場合はマーケティングや企画などの職種で専門部門へニーズがある。

人材・教育業界の動向

【Point】教育系のベンチャーの人気が高まる。2020年の一連の教育改革に向けて変化の年に。

【教育】業界・企業側の動き

少子化の影響もあり、市場全体の伸びは横ばいだと思われるが、個別指導塾・集合塾ともに需要は変わらず高い。また、最近は受講者のモチベーション維持向上を付加価値にした教育サービスも出現している。ED-Tech(教育のIT化)も進み、テクノロジーを絡めたサービスも増加。ITエンジニア需要は引き続き高いだろう。今後の市場開拓のために商品開発にも力を入れる企業が多く、リカレント教育・プログラミング教育などの分野が注目されている

【人材】業界・企業側の動き

2019年は人手不足の景況感を受け、人材紹介や人材派遣企業の正社員募集が増えたが、2020年には落ち着く見通しだ。各社、採用した人材をどう定着させるか、オンボーディングの施策に取り組み始めている。

人材・教育行騎亜 転職マーケット割合
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

外食・店舗型サービス業界の動向

【Point】教育や業務効率化への投資が進む。採用に繋がる人事戦略策定、働く環境改善が急務。

店長候補の求人募集は落ち着き、店舗スタッフの採用が広がり、採用充足のため外国籍採用比率が増えている傾向にある。外国籍スタッフの受け入れに伴い、今まで店長任せにしていた教育を本部が一括して行う動きが出てきている。教育センターを開設し接客やマナーを教える体制を整えている。

店舗が飽和し、現在は現状の店舗内の業務改革に取り組む動きが出てきている。無人化や店舗内導線の最適化等、店舗運営を効率化し限られた人数でも店舗運営ができる仕組みを作りたい狙いだ。このように、現場のデジタル化を推進していきたい一方で、IT人材の採用は難航している。土日休みではなかったり、本社でもスーツ規定があったり、エンジニア職でも入社後一定期間店舗勤務必須といった業界慣習が一因となっている。また、小売・流通業界はIT導入が遅れており、先進技術を持っているエンジニアに選ばれにくい現状だ。市況感を理解した上で、求職者のニーズに合わせ環境や処遇面も改善するなど、人事戦略全体と採用戦略を欲しい人材に合わせられるかが重要だ。

外食・店舗型サービス 転職マーケット割合
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

井出 友理子

井出友理子

新卒入社以来、IT、コンシューマー、不動産、医療、製造業など多くの業界の採用支援に営業やマネジャーとして携わる。新サービス立ち上げ等、企画も経験。

石田 尚人

石田尚人

コンシューマー領域の大手企業を担当する営業組織のマネジャー。
現在は小売流通、食品消費財、アパレル、広告代理店等を担当。

ベンチャー領域 (大学発、医療、農業・環境、ロボ、宇宙)の動向

【Point】VCはネット企業だけでなくディープテック領域に投資をする流れが加速。不確実性の高い分野へも投資が進み、採用市場も拡大傾向。

大学発 ベンチャー

―サービスの社会実装に向けて、新規事業開発責任者のポジション採用へ

大学の優れた研究力を背景に、近年大学発ベンチャーで脚光を浴びる企業が増えてきている。2019年まで技術に特化したエンジニア・研究者の求人が多かったが、技術の社会実装フェーズになったことで新規事業開発のポジションが出てきている。 背景には、いわゆるAIの社会実装については、顧客の事業課題の認識と、その解決方法としてのAIというステップが重要であり、それを顧客に導入できるための能力が、事業開発者個々のコンサルティング能力に頼るところが多くなってきているからと考えられる。

トップクラスのコンサルタントが入社するケースも少なくなく、社会課題解決に向けて大きなビジョンを掲げる企業へ期待が集まる。脱IT志向のエンジニアも明確なプロダクトがあるこの分野への転職は一定人気がある。

医療

―社会貢献志向の求職者に人気。注目企業も多く、今後も大きな成長が見込まれる

ガンの自動診察やオンライン診察、難病治療、再生医療など、様々な分野で医療・バイオベンチャーの名前を目にする機会が増えている。VCだけでなく、事業会社も自社ではできない開発や新しいビジネスのチャンスとして、資金提供をする動きが強まった。医療領域も、技術をサービス化していくフェーズで新規事業開発のポジションのニーズがあり、社会貢献志向の求職者からの反応は良い。また、デジタル化の流れから、20年も引き続きITエンジニア・データサイエンティストの需要は高いままだろう。

農業・環境

―農業ではソフトウェア領域だけでなく、ハードウェア領域の需要も高まる

【農業】業界・企業側の動き

世界的な人口増加により、食糧問題は大きな課題である。AgriTech(アグリテック)と呼ばれるこの領域では、農業にIoTを取り入れ効率化し生産力を上げる。ドローンなどのハードウェアプロダクト開発にも需要があるため、今までネット系を中心としたエンジニアが、リアルなプロダクト(ハードウェア)に関わりたいという意見が多くなってきている。

【環境】業界・企業側の動き

世界的に深刻な環境問題。化学業界でも触れたが、ESGへの意識向上も相まって、大手企業も持続可能な開発や環境への配慮には敏感だ。再生可能エネルギー関連企業では大手メーカーからベンチャーへ転職する例なども出てきている。

ロボット

―労働人口の減少を自動化で解決

労働力不足を背景に、ほぼ全ての業界で自動化・ロボ導入のニーズは高い。特に製造・流通業は人手不足も深刻でニーズが高く、遠隔操作ロボや商品陳列ロボの開発などが進んでいる。この流れから、ソフト・ハード両面での人材ニーズがある。特に量産試作フェーズにおけるミドル・シニア層の採用が目立っており、大手企業で多種多様な経験を積んだエンジニアが、ベンチャーへ転職する事例も増加している。

宇宙

―急拡大市場。民間企業参入も増加

2019年は宇宙ビジネスの市場規模は急拡大。日本でも民間ロケットとしては初めて宇宙空間に到達するなど、各企業の事業が加速している。また、宇宙ステーションでの作業用ロボット(アバター)や画像認識のAI導入も進んでおり、ロボティクスやAI人材など、異業界からの人材も求められている。日系の宇宙ベンチャーは、世界でみてもユニークな事業にチャレンジしている企業が多いため、ここ数年内で事業化できるかどうか、2020年は大変重要な一年になりそうだ。

299名以下の企業への転職数推移
出所:リクルート「リクルートエージェントの転職決定者数の分析」

新堂 尊康

新堂 尊康

東海3県における製造業専任コンサルタントとして従事し、大手から中小企業まで幅広く担当。2013年より、東海エリアの責任者として事業を推進。2016年より、「宇宙・ロボティクス・AI/IoT」をはじめとしたニュービジネス領域のシニアコンサルタントとして従事。

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