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転職市場の展望【2019年版】

転職市場の展望イメージ(空と都心のビル群)

2019年に見込まれる主要業界の求⼈・求職者の動きを、リクルートのHR統括編集長である藤井と、それぞれの業界に精通したコンサルタントがレポートします。
「2019年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。

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リクナビNEXT編集⻑ 藤井薫

リクナビNEXT編集⻑ 藤井薫

1988年リクルート⼊社。TECHB-ing編集⻑、Tech総研編集⻑、アントレ編集⻑を歴任。2008年からリクルート経営コンピタンス研究所、14年からリクルートワークス研究所兼務。変わる労働市場、変わる個⼈と企業の関係、変わる個⼈のキャリアについて、多様なテーマ(AI全盛時代の採⽤戦略、多中⼼時代のHRM、アントレプレナー・パラレルキャリアの⽣き⽅など)をメディアで発信中。近著『働く喜び未来のかたち』(⾔視舎)。

2019年の転職市場はどうなる?

デジタル・トランスフォーメーションの加速で、異業種間人材争奪戦が本格化
異能タレント人材の争奪戦のための採用進化が、企業の生死を分ける年に

2019年も、事業変革を推進し企業の競争優位を生み出す人材の “異業種間・異規模間獲得競争”が加熱してゆく様相だ。次世代モビリティ事業MaaS(MobilityasaService)への転換を加速している自動車業界を筆頭に、全産業がICTをテコに、XaaS(XasaService)、つまり、サービス化する時代。自社にない人材を異業種から争奪しあう“異業種間人材争奪戦”は、全業界で本格化する。
今年も人材争奪戦の主戦場となるのは、下記のような職種だ。

  • 産業のデジタライゼーション(※)を加速するエンジニア系職種
    (IT・WEB、コンサル、組み込み制御ソフトウェア、半導体、化学、建設)
  • 新規事業事を加速するビジネス系職種
    (事業企画、マーケティング、コーポレートスタッフ)

近年、働く個人も、「業界や規模や地域を超えてでも成長したい」と、“越境転職”を志向する層が増えている。企業はこうした越境するタレント人材を惹きつけるため、これまでにはない「採用進化」の動きがますます加速する様相だ。具体的には、下記のような動きが挙げられる。

  • 採用ターゲットの拡大
    (ミドル、シニア、出産・育児でブランクのある女性、学生時代の専攻知識を持つ第二新卒者など)
  • 大胆なポジション付与・任用
    (年齢や在籍期間にとらわれない裁量権付与)
  • 働き方改革の推進
    (リモートワーク、在宅勤務、地域限定社員など)

こうした「採用進化」に向け、経営と現場リーダーが積極的に参加し、経営と人事と現場が三位一体で、優秀な人材の採用・活躍を実現している企業がある。今後、全産業で採用進化競争が本格化する。2019年は、異業種採用戦略の拙攻が、その後の企業のビジネス変革の明暗も分ける年になるだろう。

(※)デジタライゼーション:商品・サービスについて、研究・企画・開発・製造工程・販売・流通・マーケティングといった生産~流通過程のすべてをデジタルでつなぐこと。

2019年度の中途採用計画
異業種転職の推移

IT通信業界の動向

 

【Point】事業拡大に伴い、Webエンジニアの募集が増加

 

SIer、ITベンダー、金融、小売、物流、製造業等の情報システム部門を中心に、2019年もSEの求人は高止まりの状況が続くだろう。“働き方改革”をキーワードに、クラウドやセキュリティ環境の構築、インフラ整備といった需要が社内外で増加。加えて、基幹系システムのグローバル対応等に追われ、エンジニア不足の状況が続いている。

RPA(※)の導入等、自動化による生産性向上の取り組みも進められているが、求人ニーズに合致する人材は多くない。経験豊富な40代以上のミドル・シニアや、出産・育児等でブランクのある女性エンジニア等、求める要件と合致する人材は積極採用する動きが出てきている。こうした動きは2019年以降、さらに加速するだろう。

基幹系や情報系システムの求人だけでなくフロントエンドの改善に向けた人材募集も新たに出始めており、ネット企業からシステム関連企業への転職事例も一部みられるようになってきた。「ToC向けのサービス改善」は今後も需要が増えることが見込まれるため、SIerやITベンダーにおけるWebエンジニアの募集は2019年以降も加速すると思われる。

(※)RPA:Robotics Process Automation:ロボットによる業務自動化

安来裕爾

安来裕爾

IT領域のキャリアアドバイザー、再就職支援業務を経て、11年より、IT領域のコンサルタントとして大手・ベンチャーの情報システムを中心に約300社を担当。
約1000名様の転職支援を実現。

コンサルティング業界の動向

 

【Point】デジタル化の波を受けコンサルニーズは加速、PM経験者を積極採用

 

2019年も、大手から独立系のコンサルまで、コンサルタント、ITエンジニアを中心に求人需要は留まる気配はない。背景には、企業によるデジタライゼーションへの投資意欲の高まりと、それによるコンサルニーズがあげられる。自動車、金融、商社、通信メディア等、伝統的産業ほどニーズが高く、デジタルトランスフォーメーションの波はさらに加速することが予想される。

これまでは、AIやクラウド活用を試験的に一部の業務で行っていた企業が多かったが、基幹業務をデジタル化する動きが出てきている。プロジェクトの進め方についても、「ウォーターフォール型」から「アジャイル型」に変化しており、求人募集としては、技術スキルだけでなく、プロジェクトの全体設計やマネジメント経験を有する人材が求められている。そうした状況から、PM(プロジェクトマネージャー)や新規事業の開発経験のある人材ニーズは高い。コンサル未経験であっても経験豊富な40歳以上の決定事例がでている。

人材獲得競争をリードするためにも、リモートワーク、在宅勤務の導入等の働く環境整備や、コンサル未経験者を受け入れる研修制度も充実させており、かつてのような「Up or Out」の環境からは様変わりしている。人手不足の環境下において「人が資本」のコンサル業界各社は、多様な人材の受け入れと活躍推進を加速させるだろう。

横山賢太郎

横山賢太郎

法人顧客担当として金融、IT、スタートアップ、コンサルティングを担当。日本を代表する企業の採用戦略の企画/実行、入社後の戦力化などHR課題の支援など実績多数。17年よりハイキャリア転職支援に従事しコンサルティング業界を担当。

インターネット業界の動向

 

【Point】Webエンジニアの獲得競争は過熱、外国人採用や新たなポジションの募集も始まる

 

ネット企業の人材募集は、2019年も引き続き高い採用意欲のもと継続されるだろう。特にWebエンジニアには、ネット企業以外からの引き合いも強く、人材獲得競争の様相が強まるだろう。リモートワーク等、多様な働き方を支援する動きに加え、エンジニア手当の支給や給与改定等を推進する動きも見られ、働く環境整備による企業ブランディングを各社強化している。外国人採用を始めている企業も一部みられ、2019年はそうした動きも増えていくだろう。

新たな動きとしては、業務の細分化によって今までなかった新しいポジションでの募集が増えそうだ。一例だが、社内のWebエンジニアをサポートする役割として、ヒューマン・マネジメントを担うポジションや、エンジニア採用のための企業ブランディングを行うポジションなどがあげられる。これらは、新たなキャリアパスの一つとして数えられる。

ネット企業の事務系職種の募集としては、知財、金融、法律といった専門領域のスキルをもった人材が求められるだろう。ビジネス開発のスピードやテクノロジー活用による新規事業への参入も加速していることから、異業種から積極採用を行っている。この傾向は2019年以降も続いていくだろう。

長尾悠

長尾悠

10年超に渡ってスタートアップから大手まで約930名の採用支援を行うインターネット業界専任のHRソリューションプランナー。


内堀由美子

内堀由美子

一貫してインターネット領域における転職支援および企業の採用支援に従事。現在は、企画・デジタルマーケティング等のインターネット専門職専任コンサルタントを担当。

茨木涼子

茨木涼子

通信キャリア、SIer、インターネット企業向けの営業、人材支援を経験した後、リクルート(旧:リクルートキャリア)入社。以降一貫して、IT・デジタル領域のコンサルタントを担当。

Column:IT系エンジニアの採用競争激化

13年以降、IT系エンジニアに対する採用競争は激化。IT業界に加えて、製造業、コンサル業、技術者派遣業での採用が本格化し、四つ巴の戦いとなっている。研究所等の子会社に組織を切り分けることで、高待遇を用意する企業も散見されており「転職時に明確に賃金が増加する転職者割合」は上昇基調。競争緩和の兆候はなく、2019年もこの傾向は続くだろう。

IT系エンジニアにおける「前職と比べ賃金が明確に(1割以上)増加した転職決定者」の割合

高田悠矢

経営統括室 高田悠矢

1985年生まれ。2010年日本銀行入行。景気動向や金融システムの分析業務に従事したほか、資金循環統計やGDP統計(内閣府出向時)の推計手法設計に携わる。2015年株式会社リクルート(旧:リクルートキャリア)入社。
景気・労働市場動向の分析、中期計画策定等を担当。経営統括室における主務の傍ら「転職時の賃金変動状況」の企画立案や、人事課題に対する機会学習的ソリューションの検討等、内外両方の労働市場において、データ起点の新たな取組みに挑戦している。

自動車業界の動向

 

【Point】「CASE」推進に向けて、引き続き異業種から積極募集

 

2019年も引き続き「CASE(Connected,Autonomous,Shared,Electric)」と呼ばれる新技術を推進するために、ソフトウェアやパワーエレクトロニクス、クラウドといった領域において、異業種からの人材募集が積極的に行われるだろう。

産業の変革期を迎え、自動車メーカー各社は新卒文化から中途採用への強化に舵を切っており、国内だけでなく、海外の人材もターゲットに、優秀な人材の獲得に取り組んでいる。
新規事業の推進にあたっては、年齢や在籍期間問わず、優秀な人材に裁量を任せる企業も出てきており、今後、管理職採用のニーズも出てくることが予想される。

所寿紀

所寿紀技術専門領域のキャリアアドバイザー、関西大手メーカーの営業を経て、東海圏のエンジニア担当サーチコンサルタントを担当。
その後、自動車業界専任のシニアコンサルタントを経て、現在、自動車業界を中心とした先進技術領域を担当するグループマネジャーとして、企業の新組織立ち上げ支援に従事。

ロボット業界の動向

 

【Point】製造、流通業の自動化が進展、ソフト・ハードともにエンジニア募集が継続

 

労働力不足などを背景とした自動化ニーズの影響を受け、産業用ロボットメーカーは生産を拡大している。自動車関連企業を中心とした製造業、流通等でファクトリー・オートメーション化が進んでおり、国内だけでなく、中国を中心としたニーズも強い。

そうした中、各社人材募集を積極的に行っており、ソフトウェアやネットワーク、AI領域に詳しいエンジニアや、メカトロ、ロボットの駆動部分の機械設計、アッセンブリー・組立工程を行うエンジニアが求められている。自動車業界が採用競合に当たる場合もあり、各社はCTO級の人材がマーケットの将来性やプロジェクトのスケール感、ビジョン等を求職者に訴求し、人材獲得に努めている。

産業用ロボットだけでなく、警備用ロボットも東京五輪に向けて開発・生産拡大が見込まれ、2019年も旺盛な人材募集が継続するだろう。

宇宙関連産業の動向

 

【Point】 宇宙産業の拡大と、期待される異業種からの人材流動

 

世界的に宇宙ビジネスの市場規模は拡大しており、日本でも民間企業が相次いて参入している。ベンチャー企業も複数誕生しており、宇宙産業の伸びが期待されている。2019年以降、「開発フェーズ」から、いよいよ「商品化に向けたフェーズ」に入りつつあり、開発者だけでなく、品質管理を行うクオリティ・エンジニアやインフラを構築するSEの求人も出始めている。

大手メーカー、ベンチャー企業ともに、2019年も求人ニーズは高まることが想定されるが、これまでの業界内の人材移動だけでなく、異業界からも宇宙産業への転職が徐々に増えていくことが考えられる。

新堂尊康

新堂尊康

東海3県における製造業専任コンサルタントとして従事し、大手から中小企業まで幅広く担当。2013年より、東海エリアの責任者として事業を推進。2016年より、「宇宙・ロボティクス・AI/IoT」をはじめとしたニュービジネス領域のシニアコンサルタントとして従事。

総合電機・半導体・電子部品業界の動向

 

【Point】 車載関連事業の急進と、求められるIT・ソフトウェアエンジニア

 

100年に1度ともいわれる自動車産業の転換期に、日本のものづくりメーカーが存在感を強めている。商機は、スマートフォンから車載向けの需要にシフトしており、車の「自動運転化」におけるセンサーや半導体、また、「電動化(EV化)」におけるモーターや電池、ディスプレイやコンデンサー等の製品需要が伸びており、各社増産・拡販体制に入っている。

それに伴い、2019年も電気エンジニアや組込・制御ソフトウェアエンジニアの人材ニーズは旺盛に続くだろう。各社採用に苦戦していることから、入社後の教育体制を充実させる等、第2新卒者や未経験者であっても、学生時代の専攻などを考慮に入れるなどして採用を強化している。車載は機能安全・品質担保の観点で高い水準を求められることから、業界に精通した自動車メーカーや自動車関連企業からの転職者も積極的に受け入れ始めている。

加えて、デジタル化に向けた取り組みを各社加速させており、ITエンジニアやデータサイエンティストも積極募集している。この流れは、2019年もさらに加速するだろう。

大橋裕介

大橋裕介

東海エリアにて自動車業界を担当後、現在は首都圏の大手製造業を担当。自動運転、スマートファクトリーなどAI、IoTに関わる採用支援経験が強み。

中村圭吾

中村圭吾

10年以上にわたり一貫して製造業界を担当。法人営業、ハイキャリア領域のスカウトコンサルタントを経て、現在は大手専任の法人営業に従事。複数の大規模プロジェクトを担う。

三宅英之

三宅英之

入社以降、一貫して製造業、特にエレクトロニクス・半導体業界の企業のリクルーティングアドバイザーに従事。100名単位の大規模採用支援を主としている。

化学業界の動向

 

【Point】ESG関連の人材募集が顕在化し始める

 

ESG(※)が企業価値を図る指標として注目を浴びる中、化学や素材メーカーが喫緊に向かうべき課題は多く、社会との対話も求められている。今後、事業活動を継続してくためにも、持続可能な社会の実現に向けた取り組みや事業活動を通じた環境・社会貢献についての説明が必要になってくる。そうした背景から、ESGに関連する人材募集が徐々にではあるが顕在化し始めた。化学物質の管理経験者やESG分野への外部評価に対する戦略立案や推進、外部機関対応などの人材が求められている。

自動車関連の求人は2019年も引き続き継続することが予想され、EV時代の到来に向け、電池開発、炭素繊維をはじめとした先端素材開発のエンジニアの募集はさらに過熱することが見込まれる。

ヘルスケアやバイオ医療の求人も堅調で、これまで新卒純血主義の化学メーカーも、新卒採用以上に中途採用を強化するなど、採用変革を進めている。

(※)ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもの。

羽田野直美

羽田野直美

製造業のエンジニアを中心としたキャリアアドバイザーを経験後、2010年からは「素材・エネルギー・電機業界」を中心に、リーダーかからディレクタークラス、また高度専門職のキャリアコンサルティングに従事。

医療・医薬・バイオ業界の動向

 

【Point】CRO/CSOの求人は継続、新人教育を任せられる経験豊富な人材が求められる

 

生活習慣病薬を中心に、売上規模の大きいブロックバスターの特許切れが続き、新薬開発のトレンドは、「プライマリー領域」から、癌などのオンコロジーや認知症等の「スペシャリティ領域」に移りつつある。それを受け、MRの求人はより専門性が高く、ピンポイントでの採用が主流になっている。

一方、CRO/CSO(※)に関しては、2019年も求人ニーズが継続されることが予想される。CRO/CSOの社会的な認知度が徐々に高くなってきたこともあり、新卒採用が増加。それによってメンター・教育担当の素養がある、経験豊富な人材が求められている。

医療機器については、高齢化による影響や新興国による高い需要を受け、市場が拡大傾向にある。2019年は外資ベンチャー企業の日本法人設立も増えることが予想され、求人ニーズは高まることが考えられる。総合電機メーカー等も医療機器への投資を進めており、医療に携わった経験のある人材が求められるだろう。
医薬・医療機器共に、バイオのニーズは高い。事業を軌道に乗せるために細胞培養経験者を複数求めていることもあり、アカデミアでバイオの高度な研究を行ってきた方へのニーズは一般企業でも今後高まることが予想される。

(※)CRO:Contract Research Organization:医薬品開発受託機関
(※)CSO:Contract Sales Organization:医薬品販売業務受託機関

増間大樹

増間大樹

製薬業界を中心とした営業職・専門職、双方のサーチ部門を経験後、ライフサイエンス・ヘルスケア領域のアドバイザー部門のマネジャーを務める。

髙橋学

髙橋学

医薬品、医療機器、CSO、CRO等、ライフサイエンス・ヘルスケア領域の営業を担当。現在営業マネジャーを務める。


建設・不動産業界の動向

 

【Point】「遊休不動産の利活用」「オフィス改革」に関連する求人が増加傾向

 

国際的なイベントを控え都心部の再開発やインフラの再整備、インバウンド向けのホテル開発やビルやマンションなどの改修・修繕・設備更新といったニーズもこれまで以上に旺盛であり、施工管理のエンジニア不足は慢性的に続いている。人材不足の影響から、働き方改革の推進に着手できない企業も多く、労働環境改善の文脈で2019年以降も建設エンジニアの旺盛な求人意欲は続くだろう。

国、行政、企業が保有する遊休不動産・非効率な不動産利用の見直しなどといった「PRE/CRE戦略(※)」に関する求人、PFI(※)やコンセッションに関連する非建設業以外の求人が増加している。「古い建物のリノベーション」「雑居ビルからインバウンド向けのホテルへの用途変更」等、不動産の利活用は注目を集めゼネコン、不動産といった業界内だけでなく、金融関連業界のプレーヤーも参入し、市場がボーダーレス化している。そうした背景から、建築知識に加えて、企画立案推進、ステークホルダーとの折衝等、複合的にプロジェクトをマネジメントできる人材が求められており、2019年以降もこうした求人が増えることが考えられる。

また働き方改革の一環で、「スマートオフィス」「サテライトオフィス」といった企業のオフィス改革意向を受け、ファシリティーマネージャーの求人が出始めている。女性エンジニア採用のために、入社時から「時短勤務」を認める企業が出てきたことも業界進歩の動きだ。

(※)PRE/CRE:Public Real Estate:公的不動産/Corporate Real Estate :企業不動産
(※)PFI:Private Finance Initiative:公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うこと

平野竜太郎

平野竜太郎

建設不動産領域専任シニアコンサルタント。ゼネコン・サブコン・組織設計事務所の建設技術者から、不動産ディベロッパー・AM・PMなどの不動産専門職・不動産金融領域のハイキャリア層を中心に幅広い支援実績を持つキャリアアドバイザー。

箕輪真人

箕輪真人

建設・不動産領域においてサーチコンサルタント及びキャリアアドバイザーとして豊富な知識と実績を持つ。近年は建設業における女性活躍推進にも取組み、労働環境改善を目的とする転職サポートに強みを持つ。

銀行の動向

【Point】新たな金融サービス推進のために、IT・ネット人材の採用と活躍支援を推進

業界のサービス変革期に加える銀行の中途採用は、「リテール営業」から「フィンテック/デジタライゼーション」に関連する募集に変わりつつあり、この傾向は2019年も加速することが予想される。新たな金融サービスを立ち上げるために、新卒中心の採用から、NETやIT関連企業からの異業種転職も増えており、行内にいない人材採用を強化している。
採用環境が激化する中、働く環境についても、リモートワークの導入やエンジニアにおける私服勤務等の働く環境整備を進める企業も出てきており、これまでの体質や形式からの脱却を図る動きがみられる。

地銀については、生き残り戦略として、人が介在することによるサービスの付加価値を高める動きに舵を切っており、地域企業のパートナーとしてコンサルティングができる人材を募集している。事業再生や事業承継支援等、地域課題の解決に向けた人材採用を2019年も継続すると思われる。

生保・損保業界の動向

【Point】リテール営業職は継続募集、ビッグデータ活用に向け、ITエンジニア採用を強化(生保)

(生保)「人生100年時代」というキーワードのもと、低金利、年金不安等の機運も相まって、資産運用ニーズが高まっている。それに伴い、顧客と対面で向き合い、将来リスクや商品説明を丁寧に行う、個人向け営業職の採用ニーズは今後も継続が見込まれる。
また、1社専任の個人向け営業からではなく、保険代理店で個人のお客様が保険に加入される機会も増えており、保険代理店マーケット関連の採用も増加傾向にある。
インシュテック、フィンテック等、企業が持つ大量のビッグデータを活用した新しいビジネスの創造が求められているが、各社まずは、足元のシステム改修、UIUXの改善を急いでいる。社内SEを中心とした人材募集は、2019年も積極的に行われるだろう。

(損保)団塊世代の退職に加え、新卒採用の未充足等の状況を背景に、第2新卒者を積極採用する動きがみられる。また、各社は海外展開をここ数年で進めており、それに伴うデータ量の増大、システム運用の効率化を目指す動きから、ITシステム基盤の整備が課題となっており、ITエンジニアの採用を強化。特に外部
からのサイバー攻撃を防ぐために、セキュリティ人材の採用が急務となっている。
また、昨今の自然災害の影響を受け、損害サービス担当、アジャスター人材が足りず損保専門職の採用についても急務となっている。

佐川啓子

佐川啓子

中途入社以来、金融業界にて生命保険会社や信託銀行を中心にリクルーティングアドバイザーとして採用支援に従事。

消費財・総合商社の動向

【Point】海外での販売を強化、知財人材の募集が増加傾向(食品)

(食品)少子高齢化・人口減少の影響を受け、「日本人の胃袋縮小」に直面している食品産業は、数年前から以前より海外販売を強化しているが、昨今の新しい動きとして、食品特許を活用した新しいビジネスの開発を狙う企業が出てきている。海外で製品を製造・販売する動きがでてきており、「守りの知財から攻めの知財」へと役割が変化をしている。それに伴い、特許マネジメントや知財戦略を企画立案できる知財人材の募集が増えている。

(消費財)生活用、消費財についても海外比率を伸ばしている。各国の文化や商流の違いなどから、苦戦を強いられる地域も出ているが、その国の出身者を国内で採用。その後、研修をして海外に配属するという動きが出ている。
デジタル化の流れを受け、IT人材の採用は強化しているが、苦戦している企業がほとんどだ。
新卒文化が色濃く残っている企業が多く、提示給与をマーケットに合わせて変えることができないことも影響している。採用がうまくいっている一部の企業は、Meetupイベントの開催による魅力訴求や、BtoCビジネスにおける、IT活用の社会的なインパクトや目指したい世界観を、求職者に伝えている。

人材・教育業界の動向

【Point】IT活用によるコンテンツ開発が過熱、Webエンジニアのニーズが高まる(教育)

(教育)これまでは個別指導塾の教室長や運営スタッフが採用のメインであったが、「ED-Tech」と呼ばれる教育のIT化が進んでおり、WebエンジニアやUIUXデザイナー、コンテンツ開発のPM等、IT人材の採用が増えてきている。「高大接続・大学入試改革」の流れを受け、学習塾の内容も変化しており、映像やITを活用した新しい教育コンテンツの開発は加速。19年もIT人材の採用ニーズは高まるだろう。
IT人材の獲得競争は過熱していることから、既存の組織とは別の専門組織やポジションを作り、給与体系を上げる取り組みも一部企業で出てきている。

(人材)人手不足の景況感を受け、人材紹介や人材派遣企業の正社員募集が増えている。この流れは19年も続くと思われ、勤務地や勤務時間の融通等、柔軟な働き方の提示、業界未経験者の積極募集等、求職者の状況に寄り添いながら採用を強化していくだろう。

外食・店舗型サービス業界の動向

【Point】店長候補の募集は継続、求められる働く環境改善への取り組み

店長候補の求人募集を中心に、19年も継続して採用が行われるだろう。採用環境は厳しいため、これまでの未経験・若手採用だけでなく、40歳以上の店舗マネジメント経験者にも対象を広げて採用に取り組んでいる。若手・ミドルともに、休日休暇や労働時間といった働く環境がネックになる場合が多い。採用が成功している企業は、店舗当たりの正社員比率を増やす等の環境改善を進めることで、求職者に訴求している。こうした取り組みは、人材の定着にもつながるため、取り組んでいる企業とそうでない企業との間で差が出てきている。

井出友理子

新卒入社以来、IT、コンシューマー、不動産、医療、製造業など多くの業界の採用支援に営業やマネジャーとして携わる。新サービス立ち上げ等、企画も経験。

石田尚人

石田尚人

コンシューマー領域の大手企業を担当する営業組織のマネジャー。
現在は小売流通、食品消費財、アパレル、広告代理店等を担当。

澤木英吾

澤木英吾

コンシューマー領域で人材、教育、広告業界担当のリクルーティングアドバイザーを経て、2013年より、企画担当。2018年から再びコンシューマー領域を担当。

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