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退職日が1日違うだけで社会保険料の負担額が変わる?退職日と社会保険料の関係

社会保険 退職日

転職先が決まり、退職相談をする際には、退職日を決めることになります。業務の引継ぎを考慮して決めることが多いと思いますが、「退職日」によって社会保険料の負担額が変わることにも注意しておきましょう。今回は、退職日と社会保険料の関係についてご紹介します。

退職日の違いで社会保険料は異なり、受け取れる給与額が変化する

例えば、転職先の入社日が7月1日で決まり、現職の引継ぎもスムーズに進みそうなので、「退職日は6月15日にしよう」、という人がいるかもしれません。このように月の途中で退職する場合、それまで自動で給与から天引きされていた税金や社会保険料が、当月(6月分)からは天引きされなくなります。

一見、給与からの天引きがなくなるので、給与が増えるように思えます。ですが、実際は、自分で全額社会保険料を支払うか、配偶者、親、家族などの被扶養者になる(扶養者の会社に手続き依頼)必要があるというだけで、負担が無くなる訳ではありません。

会社で働いている場合、社会保険料は会社と社員で折半して払っています。会社は、毎月支払うべき社会保険料の半額を負担してくれており、残りの半額が社員の給与から天引きされています。(図1左)


図1

税金や社会保険料は退職日を基準にそれぞれの締め日が決定します。退職するということは、社会保険の被保険者の資格を喪失することになります。

社会保険被保険者の資格喪失の場合、次の内容が適用されます。
1.退職日の翌日が「資格喪失日」となる。
2.「資格喪失日」を含む月は、それまで払っていた保険料は不要。
「資格喪失日」以降、国民年金・国民健康保険等に加入し保険料を払うか、配偶者、親、家族などの被扶養者となる。
(図1右)

例えば、6月15日が退職日、7月1日入社の場合、資格喪失日が6月16日となるため、6月分の社会保険は、加入保険の変更手続き(居住地の自治体で手続き)を取り、保険料を支払うか、配偶者、親、家族などの被扶養者になる(扶養者の会社に手続き依頼)ことで対応します。

同じ入社日で、6月30日を退職日にすれば、資格喪失日は7月1日なので、6月分の社会保険料は、半額会社が負担してくれ、半額は給与から天引きされます。7月以降の社会保険料は、転職先の会社が手続きをし、今までと同様に、半額を転職先の会社負担、半額を給与天引きで払うことになります。


図2

社会保険は日割り計算ではないため、「資格喪失日」が入っている月に、それまでの被保険者資格がなくなります。

このように、退職日が数日違うだけで、保険者資格の種類を変更する手続きをして、自分で社会保険料を全額支払ったり、配偶者、親、家族などの被扶養者になる手続きが発生したりするため、退職日の設定には注意が必要です。

社会保険と呼ばれるものと仕組み

「社会保険」制度は、失業、病気・けが、高齢・障害など、生きていく上での様々なリスクへの備えとして大切なものです。広くは「労働保険」(労災保険・雇用保険)、「医療保険」、「年金保険」、「介護保険」がありますが、このうち、従業員が原則加入しなければならないのは、次のものです。

1.健康保険
業務とは関係のない病気や怪我をしたときに、必要な給付を行う。
2.厚生年金保険
高齢のため働けなくなったとき、体に障害を負ったとき、死亡したときなどに、労働者本人又は遺族に対して必要な給付を行う。
3.労災保険 ( 労働者災害補償保険 )
仕事中や通勤途中で発生した災害によって怪我をしたり病気にかかったりした労働者に対して、必要な給付を行う。
4.雇用保険
失業や出産・育児等のために一時期会社を離れた労働者に対して、再び職場復帰することができるよう、必要な給付を行う。

特に1健康保険と2厚生年金保険について、「狭義の社会保険」と呼ばれています。

健康保険の仕組み

健康保険は、会社が加入することを義務付けられており、保険料は、会社と社員で折半して払います(給与からの天引き)。社員やその家族が業務とは関係のない病気や怪我で医療機関にかかった際など、医療費の7割を健康保険が負担してくれます。

退職した場合、会社が資格喪失の事務手続きを行いますが、退職する社員は、次の3つのいずれかの方法で、資格喪失日以降、医療保険に入る必要があります。

1.任意継続被保険者になる
(直近2ヶ月以上被保険者であり、期限内に手続き必要。加入期間は最長2年、保険料は全額自己負担)

2.家族の被扶養者になる
(年収制限あり・期限内に手続き必要・保険料の負担なし)

3.国民健康保険の被保険者になる
(1.2.に該当しない場合)

厚生年金保険の仕組み

日本国内に住んでいる 20 歳以上の全ての人には、国民年金に加入することが義務付けられており、公的年金制度の土台になっています。65歳以上の方が年金を受け取るのも、私たちが納める国民年金で賄われており、今後も同様の仕組みが続くとされています。
国民年金の被保険者には、第1号から第3号までの3種類があります。
・第1号被保険者(自営業者・フリーランス・大学生等)
・第2号被保険者(会社員・公務員等)
・第3号被保険者(専業主婦・主夫等)

厚生年金保険は第2号被保険者が加入している保険で、会社で働いている人が支払う保険です。厚生年金保険料の中には国民年金保険料も含まれており、保険料は会社と個人が折半して負担し、半額は毎月の給料から天引きされます。

退職した場合、健康保険と同じく、会社が資格喪失の事務手続きを行いますが、退職する社員は、資格喪失日以降、第1号被保険者か第3号被保険者となる必要があります。

ケースごとによる社会保険の違い

退職時にどの社会保険(健康保険・厚生年金保険)に入るかは、ケースによって異なります。次の通り、ケースごとにご紹介します。

転職・退職時に自分で手続きが不要なケース

退職時に特に自分で手続きが必要ない場合は次の2通りです。

転職先が法人企業で、離職期間がない

退職日の翌日が転職先(法人企業)の入社日(例:6月30日退職、7月1日入社)で、離職期間がない場合、資格喪失手続きは前職の人事担当者が対応してくれ、保険加入手続きは転職先の人事担当者が対応してくれるのが通常です。この場合は、自分のマイナンバーか基礎年金番号を転職先企業に伝えれば、それ以外の手続きをする必要がありません。

退職と同時に配偶者、親、家族などの扶養に入る

退職したあと、すぐには働かず、配偶者、親、家族などの被扶養者になる場合、扶養者の会社へ扶養申請等の書類を提出する必要はありますが、それ以外の社会保険に関わる手続きは不要です。
ただ、扶養に入る場合は、健康保険について、年収制限(130万円未満)や資格喪失の日から5日以内に扶養者の会社へ申請する必要があるので、事前に確認しておきましょう。

転職・退職時に自分で手続きが必要なケース

次に、退職時に特に自分で手続きが必要な場合を見てみましょう。

転職先が法人企業で、退職した月に転職先に入社

例えば、A社を6月10日に退社し、B社に6月20日に入社した場合。

お住いの市区町村窓口で国民健康保険・国民年金の資格取得手続きが必要です。
社会保険料は、月末に在籍している会社が支払うことになっているため、6月末はB社の・健康保険・厚生年金に加入していることとなり、原則国民健康保険・国民年金保険料を納める必要はありません。

転職先が法人企業で、月末退職し、翌月に転職(離職期間あり)

例えば、A社を6月30日に退社し、7月10日にB社に転職した場合

原則として国民健康保険・国民年金に切り替える手続きは必要です。
前述した事例と同じく、6月末はA社、7月末はB社に在籍しているため、6月、7月ともに健康保険・厚生年金に加入していることとなり、原則国民健康保険・国民年金保険料を納める必要はありません。

転職先が法人企業で、月の途中で退社し、翌月に転職先に入社(離職期間あり)

例えば、A社を6月20日に退社し、7月1日にB社に転職した場合

国民健康保険・国民年金の切り替え手続きならびに、6月分の国民健康保険・国民年金保険料を納める必要があります。

6月末時点で企業に在籍していないため健康保険・厚生年金は未加入となりますので、6月分はご自身で国民年金保険料を納める必要があります。7月末はB社に在席しており、健康保険・厚生年金に加入していることとなるため、7月分の国民健康保険・国民年金保険料は収める必要はありません。

転職先が法人企業で、退職した月の翌月以降に入社

例えば、A社を4月30日に退社し、7月1日にB社に転職したなど、1カ月以上の離職期間がある場合。

国民健康保険・国民年金の切り替え手続きならびに、5月、6月分の国民健康保険・国民年金保険料を納める必要があります。
5月、6月末時点にはどの会社にも在籍していないため、ご自身で国民健康保険・国民年金保険料を納めなければなりません。

退職し、次の転職先が決まっていない・個人事業主になる

退職して次の転職先が決まっていない場合や個人事業主になる場合。

上記同様、国民健康保険・国民年金に切り替える手続きが必要となり、月末に企業に在籍していていない月から、国民健康保険・国民年金保険料を納める必要があります。

普段触れることの少ない社会保険ですが、退職をきっかけに改めて見直してみると、病気や高齢になったときなど、将来の備えとして重要なことがわかります。将来の自分が困らないためにも、正しい手続きができるよう、準備しておきましょう。

(監修 社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸氏)

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