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中小企業に転職するメリット・デメリットとは?後悔しない選択をするために確認したいポイント

中小企業 転職

大手企業から中小企業へ転職しようと考えるときに、「リスクが大きいのではないか」「後悔しないか」といった不安や迷いを抱く人もいるのではないでしょうか。中小企業に転職するメリット・デメリット、自分に合う企業を見極めるポイント、中小企業への転職事例について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

中小企業とは

そもそも「中小企業」とはどのような企業を指すのでしょうか。中小企業基本法では、中小企業者の定義 を以下のように定めています。

  • 中小企業者の定義
業種分類 中小事業者の定義
(下記のいずれかを満たすこと)
小規模事業者の定義
資本金の総額又は
出資の総額
常時使用する
従業員の数
常時使用する
従業員の数
製造業その他 3億円以下 300人以下 20人以下
卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
小売業 5000万円以下  50人以下 5人以下
サービス業 5000万円以下 100 人以下 5人以下

(※)出典:「中小企業・小規模事業者の定義」(中小企業庁)

中小企業にも、さまざまな経営方針を持つ企業があります。「拡大しない」という方針で何十年も体制を維持している中小企業もあれば、「大企業」になる目標を掲げて拡大中の中小企業もあります。前者の場合、中途採用は「欠員補充」であるケースが多く、後者は「増員」であるケースが多い傾向があります。

中小企業に転職することのメリット

中小企業への転職には、どのようなメリットがあるのでしょうか。中小企業を選んで転職した人たちの事例からご紹介します。

裁量権が大きく、責任のある仕事が経験できる

従業員数が少ない中小企業の場合、大手企業ほど組織や業務が細分化されていないことが多く、一人が複数の役割を担うこともあります。また、一人に与えられる裁量権が大きく、自身の判断で進められる場面も多いため、幅広い経験を積みたい人に合った環境だといえるでしょう。

また、早いタイミングで責任あるポジションを任され、リーダーやマネジャーの経験を積める可能性もあります。特に、拡大を目指すベンチャー企業などは、組織の新設や増員に伴って新たなポストが生まれてくることもあるため、大手企業と比較すると早期昇進のチャンスが多い傾向があるようです。

経営に近い場所で自分の貢献を実感できる

組織が小規模であるだけに、社長をはじめ経営幹部との距離が近く、コミュニケーションをとる機会も多いことがあります。経営者の視点や考え方を間近で見て学ぶ機会もあり、経営感覚やノウハウを身につけやすい環境であると考えられるため、将来、独立起業を考えている方にも参考となる経験を得られる可能性があるでしょう。

さらに、一人ひとりが裁量権を持って働くことが多いため、大手企業に比べて自分の働きが業績に影響を及ぼしやすく、「会社への貢献を実感しやすい」という声も聞かれます。

連携がしやすく、スピーディに物事が進められる

組織が複雑ではないため、部門間や従業員同士の連携やコミュニケーションがスムーズで、一体感を持って働けるケースが多いようです。経営者や上司の考え方にもよりますが、「風通しが良く、情報交換がしやすい」「自分の意見を発信しやすい」という声が多く聞かれます。

また、大手企業では、物事を決める際に何重もの稟議を重ねたり、事前に関係者への根回しが必要であったりすることが多い一方、中小企業は経営層にスムーズに稟議が回ることも多く、スピーディに進めやすい傾向が見られます。

大手企業よりも転勤の可能性が低い

拠点数が少なく、今後も多拠点展開を進める計画がない企業であれば、遠方への転勤を命じられる可能性は低いといえます。勤務地が長く同じであれば、居住地を決めて住宅購入などに踏み切りやすいといえるでしょう。

中小企業に転職することのデメリット

ケースバイケースですが、中小企業への転職にはデメリットもあるため、それらも理解した上で検討しましょう。なお、人によっては同じ要素もデメリットとは捉えず、表裏一体となっているメリットの方に魅力を感じるケースもあるようです。

一人当たりの業務量や負担が大きいことがある

大手企業なら他の人がサポートしてくれるような業務も、中小企業では自分でやらなければならない場面があるかもしれません。その場合、自身の専門領域の業務のみに集中したいタイプの人は、ストレスを感じる可能性があります。

例えば、「システム」「法務」「教育・研修」といった分野は、大手企業であれば社内に専門部署が設けられており、相談すればサポートを受けられる可能性があります。しかし、中小企業では社内に専門家がいないケースもあり、自身で調べたり学んだりして対応しなければならないこともあるようです。

異動や出向などの選択肢が少ない傾向がある

小規模な組織では、人間関係の悪化などの理由で職場の居心地が悪くなったとしても、部門異動によって解決することが難しいケースがあります。

働く環境や制度が十分に整っていない場合もある

中小企業には研修体制が十分に整っていないことも多く、最新の知識やスキルをキャッチアップするためには、自力で学ばなければならないこともあります。さらに、大手企業に比べると資金が潤沢でないことも多いため、新たなアイデアを実行に移したくても予算を確保できず、取り組みが制限されてしまうケースも見られます。

また、人事評価制度があまり整備されていない場合、経営者や上司の主観で評価がなされるケースもあり、評価を受ける側が納得感を持てないこともあるようです。

大手企業とは条件面に差があることがある

売上規模が大きくブランド力もある大手企業と比較し、「給与水準が低い」「各種手当がない」「福利厚生が充実していない」といった点に不満を抱くこともあります。特に大手企業から中小企業に転職した場合、そのギャップが気になってしまう可能性があるでしょう。

中小企業への転職を判断する前に確認したいポイント

「中小企業への転職をするか」について迷っている場合の判断軸をお伝えします。大手企業へ転職する場合でも基本は同様ですが、中小企業を視野に入れた場合もしっかり確認するといいでしょう。

現職で不満を解消するために行動してきたか

転職を考えるきっかけが会社や仕事への不満である場合、その解消を主な目的として転職すると、次の職場でも同様の不満が発生した場合に、転職を繰り返してしまう可能性があります。まずは現職で不満解消に取り組んだ上で、どうしても解決が難しい場合に転職を考えることをお勧めします。

特に、現在大手企業に在籍しているのなら、部署異動や転勤で環境を変えたり、キャリアパスを再検討したりするなど、大きな組織ならではの選択肢を活かす方法もあります。すぐに転職を決心せず、社内で希望を叶えるために行動できることがないかを確認してみましょう。

条件面や待遇を最優先にしてはいないか

転職先に求める条件として、給与などの待遇面を重視する場合、中小企業への転職は簡単ではないかもしれません。一般的に、中小企業の給与水準などは大手企業と比較して低めであるため、転職するためには条件面で妥協する必要があることも多いと考えられるからです。

転職する際は条件面だけでなく、仕事のやりがいや、自身のキャリアプランを実現できる環境かなどを考慮して、総合的に判断することをお勧めします。その際は裁量権の大きさや意思決定の速さ、経営陣との距離感など、中小企業ならではのメリットをどのぐらい活かせるかもポイントになるでしょう。

働き方や環境の変化を受け入れられるか

大手企業から中小企業へ転職すると、処遇や労働環境、組織風土などに対してギャップを感じることは少なくありません。年収や福利厚生の違いだけでなく、オフィス環境でもデジタル化があまり進んでいなかったり、フレックスタイム・リモートワークの実施状況なども、「制度」として整備がなされていなかったりすることがあります。半面、「ルールに縛られる大手企業よりも、中小企業の方が融通が利きやすく、より柔軟な働き方ができる」という声も聞かれます。

こうした転職に伴う変化について理解し、納得して適応していくことは、転職先でパフォーマンスを発揮していくためにも大切なことでしょう。

自分にマッチした中小企業を見極めるポイント

中小企業を視野に入れて自分に合った転職先を選ぶためには、次の4つの観点に注目することをお勧めします。

経営陣や会社のビジョンに共感できるか

経営陣と考え方や価値観が合うかどうか、会社の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」に共感できるかどうかは、入社後の働きやすさやパフォーマンスの発揮に影響します。企業のホームページなどの発信で確認するといいでしょう。

組織文化や社風が合うか

中小企業は規模が小さいため、転職後に「カルチャーがフィットしない」ということになっても、異動して環境を変えることが難しいケースが少なくありません。応募先候補の採用ホームページの情報などから組織文化や社風を読み取り、「自分に合う・合わない」をしっかりと見極めましょう。

経営状況や業績はどうか

一定期間働いて経験を積んでいく上では、企業の安定性や将来性を把握することも重要です。売上や利益、業界内でのシェア、主要取引先などを押さえておくとよいでしょう。自力で調べて分からなければ、転職エージェントのキャリアアドバイザーに確認することもお勧めです。

納得できる処遇や働き方が実現できるか

経営陣の考えや価値観に共感していたとしても、年収が大幅にダウンしたり、残業が大きく増えたりすると、転職後に後悔したり、生活に支障が出てしまう可能性もあります。望む働き方ができるかどうかについても、開示されている情報をもとに判断していきましょう。

中小企業を視野に入れた転職活動のポイント

中小企業を視野に入れた転職活動のポイントをお伝えします。大手企業へ転職する場合も基本は同じですが、より納得のいく転職をするためにも、以下を押さえておくことをお勧めします。

幅広い手段で情報収集を行う

情報を探す際は、求人メディアや求人票などだけでなく、企業サイト、企業サイト内の採用ページ、メディアに掲載された記事、ブログ、SNSなど、多方面から企業について調べてみましょう。

中には経営者個人の考えや価値観が強く反映される企業もあるため、「この企業の理念は何か」に注目し、自身が共感できるかを考えてみることをお勧めします。「財務諸表」や「資金調達の状況」も確認すると、今後の成長可能性もつかめるでしょう。

中小企業に強い転職エージェントを利用する

転職活動では業界情報や企業情報を幅広く収集するために、転職エージェントを活用するのもひとつの方法です。知名度が低くても、特定の領域で独自の技術力やビジネスモデルを確立している、魅力のある企業に出会えるかもしれません。

転職エージェントに登録する場合は、幅広い業界や職種を網羅し、保有求人数が多い「総合型エージェント」とともに、中小企業や地元企業に強みを持つ「特化型エージェント」を併用するのも一案です。中小企業やスタートアップ・ベンチャー企業とパイプを持つエージェントを利用することで、より選択肢を広げられる可能性があるでしょう。

口コミサイトなどで評判を知る

転職先候補の中小企業について、転職サイトの口コミなどを見て、社員の定着率などを調べておくこともひとつの方法です。実際に在籍していた人のリアルな意見を見ることで、入社後のイメージがしやすくなるでしょう。

ただし、口コミサイトは退職者が書き込むこともあり、客観性に欠けていたり、情報が古かったりすることもあります。実態が正しく記載されているとは限らないため、参考程度にとどめ、気になる点は面接で確認するといいでしょう。

一緒に働く人と話す機会を作る

企業研究をして魅力に感じた点や、社内の活気などについて知るためには「実際はどうなのか」を見極めることが大切です。企業によっては、事前にカジュアル面談や、面接時に現場の人と話す機会を設けてもらえる場合もあるので、打診してみましょう。

大手企業に比べ、中小企業では一人を採用することの組織への影響や採用コスト面での負荷がより大きく、「入社後のミスマッチをなるべく防ぎたい」と考えるため、実施の希望を受け入れてもらえる可能性が高いでしょう。

中小企業への転職事例

ここでは、大手企業から中小企業へ転職した方の事例をご紹介します。転職の目的や決断の理由などを参考にしてみてください。

【CASE1】中小IT企業・営業企画へ転職したAさん(30代)

Webサービス会社・営業企画→中小(スタートアップ)IT企業・営業企画

現職の大手Webサービス会社は、企業・サービスのブランド力があるので自分の介在価値がないように感じていたAさん。

大手Webサービス会社の前には、大手IT企業で営業をしており、独自の営業施策を開発し全国トップクラスの業績を挙げていた経験から、強みとする独自性や主体性を発揮する場を探し、転職を決意しました。

転職した中小IT企業が売上拡大を目指しさまざまな新規施策に取り組み段階であったため、Aさんの特徴である「主体性」「独自性」と大手Webサービス会社での営業企画経験が相まって活かされ、会社全体の営業企画を経営陣と担当。将来的な幹部候補として期待されています。

【CASE2】中小IT企業・UI/UXデザイナーへ転職したBさん(30代)

大手Webサービス企業・UI/UXデザイナー→中小IT企業・UI/UXデザイナー

大手Webサービス企業でUI/UXデザイナーを務めるBさんは、ほぼ完成されたプロダクトを長く担当し、自身の価値を十分に発揮できていないと感じていました。副業を通じて多様なデザイン案件を手がける中、中小企業の方が経験・スキルを活かせる可能性に期待し、転職を決意。上場を目指す30名規模のITスタートアップに、デザイナー部門の立ち上げを担うマネジャー候補として採用されました。

経営陣とダイレクトに仕事ができるダイナミズムやスピードの速さ、自身が一からデザインを担当したプロダクトが世にリリースされていくやりがい、新たなプロダクトを経験してスキルアップが図れることなどに魅力に感じて入社を決意しました。

【CASE3】中小人事コンサルティング会社へ転職したDさん(20代)

大手人材サービス企業・営業→中小人事コンサルティング会社・コンサルタント

人材サービス業の営業職として大企業クライアントや大規模プロジェクトの担当を数多く経験し、やりがいを感じていたDさん。しかし、社内外の関係者の調整が業務の大半を占めるようになり、クライアントの潜在的・本質的な課題になかなか取り組めないことに物足りなさを感じていました。

そこで、クライアントの経営課題を人事領域から深掘りでき、自身の経験・スキルを活かせる仕事を求め、中小人事コンサルティング会社に転職。規模は小さいものの、大手のコンサルティング会社や事業会社での経験が豊富な人材が集っている点に魅力を感じての選択でした。入社後は、企画力・提案力・行動力を活かして活躍し、成長を遂げています。

企業選びに悩んだら転職エージェントに相談してみよう

中小企業に転職した場合のメリット・デメリットとなるポイントは、人によってさまざまです。例えば、急成長中の中小企業の場合、戦略や組織の変更が頻繁にあるかもしれません。「変化」を楽しめる人にとっては刺激的で面白い環境ですが、安定感を求める人にとってはつらく感じてしまうかもしれません。

自分はどのような企業にマッチするのか悩んだ場合には、転職エージェントに相談してみるのもひとつの方法です。これまでの経験や自己分析を通して、プロの視点から企業選びのアドバイスを受けることができるでしょう。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

記事作成日:2019年06月24日
記事更新日:2024年01月31日
記事更新日:2024年09月11日
記事更新日:2025年06月04日 リクルートエージェント編集部

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。