転職する際、「資格を持っている方が採用に結びつきやすいのでは?」と考える方も多いかもしれません。しかし、保有する資格のすべてが採用に有利に働くとは言い難いのが実情です。では、どんな職種でどのような資格を持っていると有利になるのでしょうか?職種と資格の関係についてご紹介します。
必須以外では、資格で転職が有利になるケースは限られている
応募条件に必須の資格が記載されているなど、特定の資格を持っていなければ応募自体を断念せざるをえない場合があります。他方で、必須の資格以外では、資格を保有していることで転職が有利になるケースは限られていると考えるのが無難です。たとえば、デジタル広告業界にキャリアシフトしたい場合にウェブ解析士の資格を保有しているなど、業種や職種、業務内容に関連した資格であれば有利に働くでしょう。しかし、経理職に応募する上で、インテリアコーディネーターや色彩検定の資格を持っていても、プラスになるとは考えにくいからです。
資格を保有していると転職で有利になるケース
即戦力であることが期待できる、実務経験を伴う資格
採用する企業にとっては、募集している職種の実務内容に即した経験やスキルを持つ人が魅力的に映る場合があります。そのため、そのような実務経験に伴う資格を保有していれば、即戦力の人材として期待される可能性があります。たとえば、人事関連職経験を積んだ中で取得したキャリアカウンセラー、経理・財務業務を担当する中でより広い活躍を求めて取得した公認会計士などがあげられます。
実務未経験の職種に転職する場合
キャリアチェンジのため未経験の職種に応募する場合、その職種に適応できるだけの能力があることの証明材料となる資格であれば、有利になると考えられます。たとえば、販売職から一般事務職として転職したい場合、日商簿記資格などを取得すれば実務経験がなくても、早期に業務キャッチアップできる人材として評価される可能性が高まります。
職種別/転職に必須、もしくは有利になることが多い資格
営業
営業職は、法人営業、不動産営業、金融営業、IT営業など業務内容は様々。扱う商材やサービス、BtoBなのかBtoCなのかなどによって、必要な知識やスキルが異なります。
■ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)
フィナンシャル・プランナーは、顧客の収支・支出や負債、資産、家族構成などに基づき、資産計画や運用のアドバイスを行なう「お金の専門家」です。銀行、証券、保険など金融系や不動産系営業職の業務で活用できる資格です。
■中小企業診断士
中小企業支援法に基づく国家資格で、中小企業の経営課題に対し、解決のためのアドバイスを行ないます。企業の人・モノ・金・情報に関する知識を有し、社会状況を俯瞰的かつ論理的に捉え、提言を行なう能力を有する証明になるため、経営コンサルタント系営業職はもちろん、人材系や金融系営業職で活用できるでしょう。
■宅地建物取引士
不動産の売買、賃貸契約で重要事項の説明を行なうことができる国家資格です。通称「宅建」と呼ばれています。不動産業を営む企業では、事業所ごと従業員5名に対し1名の有資格者が必要となっており、不動産売買・賃貸営業をはじめ、ハウスメーカーやディベロッパー、建設会社など、不動産関連の営業職への転職に有効でしょう。
■ウェブ解析士
ウェブマーケティングにおいて、成果につながるウェブ解析ができる人材を育成するための認定資格です。大手広告代理店をはじめ、ウェブマーケティングを活用する多くの企業でウェブ解析士検定試験の研修講座が開かれ、企業によっては、ウェブ解析士の資格取得が昇進条件になっていることもあります。成果報酬型のインターネット広告(アフェリエイト広告)営業をはじめ、広告代理店やウェブ制作会社の営業職、経営コンサル業務などでの活躍を目指す上で、有利に働く資格です。
■TOEIC
今や多くの企業で必要とされる語学力。実践的な英語力を評価する指標として、外資系企業をはじめ、海外事業を展開する企業などで活用されています。採用時に評価される基準は600点~800点以上が一般的です。
【参考記事】 TOEICや英検はどのレベルなら履歴書に書いていい?
システムエンジニア・プログラマー
エンジニアになる上で、専門的な資格は必要ありません。一方で、有資格者であることで客観的な能力を示すことが可能です。また、資格取得を通してスキルアップを目指して努力する姿勢への評価にもつながるでしょう。
■基本情報処理技術者
ITに関する基本的な知識や技術、実践的な活用能力を問う国家資格です。IT業界で実務を行なう上での基礎知識を習得できるため、ソフトウェア開発企業やコンピュータメーカー、Web系情報処理企業などでのシステム設計・開発・運用の他、プログラマやシステムエンジニアなど技術関連業務に従事する社員に受験させる企業もあります。
■応用情報技術者
情報処理に関する国家資格です。上記の基本情報処理技術者の上級資格の位置づけとなっています。ソフトウェア開発者として、技術から管理、経営まで、応用的知識や技能を持ち、システム開発やIT基盤構築などで高いパフォーマンスを発揮できる高度IT人材であるという証明になるといわれています。
■シスコ技術者認定資格/CCNA・CCNP
シスコ技術者認定資格保有者は、ネットワーク分野における優れた技術力を有することの証明としてグローバルに認められているベンダー資格です。シスコ製品を扱うスキルと知識があることが、ネットワークエンジニアの条件とも言われています。資格はエントリー、アソシエイト、プロフェッショナル、エキスパート、アーキテクトの5レベルに分かれ、取得者の多い初級レベルの認定資格CCNAをはじめ、大規模ネットワークの導入・運用・保守などを行なう中級レベルの技術を保有するプロフェッショナルレベルのCCNPなどが知られています。
■SAP認定コンサルタント
ERPにおける世界的で圧倒的なシェアを誇る大手ソフトメーカーSAP社による認定制度です。SAPシステムに関する専門知識を有し、システム導入に際し、必要な知識とノウハウを有していることの証明となります。
■Linuxプロフェッショナル認定資格
LPIC(Linux Professional Institute Certification)とも呼ばれ、オープンソースであるLinuxにおける正確な知識とスキルを有する技術者であることの認定資格として、国内はもちろん海外でも広く認知されています。
■XMLマスター
XML技術者育成推進委員会によるXML技術およびXML技術関連技術についての技術力を図る認定制度です。XMLはあらゆるシステムに使用される技術なので、活用できるケースが多いと考えられます。
■MCP(マイクロソフト認定プロフェッショナル)
MCPは、マイクロソフト製品およびテクノロジー、ソリューションまでを扱う3つの資格試験の総称です。ITプロフェッショナルおよび開発者としての専門知識とスキルを有することを証明する世界基準の資格といえます。
■プロジェクトマネージャー試験
国家資格であり、情報処理技術者試験のなかで最高難度の資格です。システム開発プロジェクトの責任者として、計画の立案から人員、資材の確保、予算、納期、品質の管理業務全般を担う専門知識と能力を有することの証明となります。
事務・管理系職種
■日商簿記
ビジネスの基本知識と言われるほど認知度の高い資格試験です。簿記3級は、基本的な経理の知識を有し、商店や小規模企業の経理の理解があること、簿記2級は高度な商業簿記と工業簿記のスキルを持ち、中小企業~大企業の財務・経営状態を把握できる能力を持つことの証明として評価する企業もあります。
■MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
Word、Excel、PowerPointなどのスキルを証明する資格です。一般事務をはじめ、様々な業務において基本的なPCスキルの保有者であるという評価を得られます。
■秘書技能検定
一般に秘書検定と言われ、文部科学省認定のもと財団法人実務技能検定協会が実施している民間資格です。秘書業務はもちろん、ビジネスで必要な知識やスキル、接遇やマナーを取得していることの証明となります。事務職や営業職などで有効な資格だと言えるでしょう。
■PMP
プロジェクトマネジメントに関する知識と実務経験を保有していることを認定する国際資格。アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が認定を行なうもので、IT業界をはじめ、建設、製造など幅広い業界の様々な職種で有効です。
■MBA
世界各国のビジネススクールに通い、取得した経営学修士の学位です。特に外資系企業への転職でプラスになりますが、その際、どこの大学で取得したかが重視される可能性もあります。
■社会保険労務士
人事・労務・社会保険に関する専門知識とノウハウを有し、就業規則の作成や労務管理などを行なうことができます。そのため、業種を問わず、企業で評価される国家資格の1つといえるでしょう。
■公認会計士
公認会計士のみ携わることができる財務素票監査をはじめ、監査、税務、経理、財務、経営戦略立案におけるコンサルティング業務などを行なうことが可能です。医師、弁護士と並び、国内における最難関国家資格であり、企業の評価も高いことが多いです。
■米国公認会計士(USCPA)
アメリカの各州が認定する、グローバルスタンダードな公認会計士資格です。外資系企業をはじめ、海外事業を展開する企業で需要が高まっています。
医療・福祉系職種
■社会福祉士
社会福祉専門職の国家資格です。福祉的な課題の多様化が進む現在、老人ホームや障がい者施設、児童相談所など社会福祉施設関連業務で有資格者の需要が高まっています。
■薬剤師
医師の処方箋に基づき調剤を行なうことができる国家資格です。有資格者は、病院、薬局、ドラッグストアや製薬メーカーから、行政機関、教育機関などで幅広く活躍できるでしょう。
■介護福祉士
介護資格系のなかで唯一の国家資格です。職員に有資格者が多数いと、その企業(施設)は加算の対象になるため介護福祉施設などで需要が高いといわれています。
■理学療法士
リハビリの専門職と認定される国家資格です。病院や介護施設をはじめ、フィットネス施設や医療機器・福祉用具メーカーなど、有資格者の活躍の場は年々広がり、需要も増しています。
■臨床検査技師
有資格者は、病気の診断や治療の方針、病後の経過などを知る上で不可欠な臨床検査を行なうことができます。病院や保健所、企業の健康保険組合、検査センター、製薬メーカーや化学薬品メーカーなどで活躍の場があります。
■ケアマネージャー(介護支援専門職)
各都道府県が認定する資格です。介護サービスを必要とする人とサービスを提供する事業所とのつなぎ役として、介護施設や居宅介護施設、地域包括支援センターなどで需要があります。
■介護職員初任者研修
厚生労働省認定の公的資格で、介護従事者に必要な基礎知識を有することの証明になります。そのため、介護スタッフやヘルパー職などで有利に働くといえるでしょう。
■保育士
有資格者は、保育所をはじめ児童福祉施設や民間の保育施設などでの勤務が可能になります。
■診療情報管理士
医療に関する安全管理や病院経営管理に寄与する専門性とスキルを有する民間資格です。各医療機関が診療報酬点数対象になるには、有資格者を1名配置することが定められています。
■医療事務
様々な団体による認定資格があります。公的認可資格は、日本医療保険事務協会認定の診療報酬請求事務能力認定試験になります。医療事務は、受付や医師の庶務を担当するため、患者と接することが多く、医療機関における需要も高いといえるでしょう。
建築・住宅系職種
■1級建築士・2級建築士
いずれも国家資格で、1級建築士はすべての施設の設計・工事管理を行なうことができ、2級建築士は、制限付きで施設の設計および工事管理を行なうことができます。住宅メーカーをはじめ、設計事務所、施工業者など、建築に関する幅広い業界での活躍が可能です。
■施工管理技士
国土交通省が定める施工管理技士国家資格には、工事の種類によってそれぞれの有資格者が必要になります。建築施工管理技士は、建築士が設計した設計図を実現するにあたり、建築工事の施工管理を、電気工事施工管理技士は、電気工事の施工における工事計画や施工図の作成などを行ないます。土木施工管理技士は、施工現場に必要な主任技術者や監理技術者になる上で必須の資格であり、管工事施工管理技士は、配管工事の施工計画の作成や工程・完全・品質などを管理します。
■電気主任技術者
電気設備の保安監督を行なうことができる法人認定資格です。発電所や変電所、工場、ビルなどの受電設備や配線に不可欠な存在です。
■電気通信主任技術者
総務省管轄の国家資格で、電気通信ネットワークの工事、維持、運用における監督責任者の役割を担うことができます。電気通信事業企業、電話会社、無線会社をはじめ警備会社や家電メーカー、コンピューターメーカーなどで活躍の場があります。
■消防設備士
建物に設置されている消防設備の点検・整備・工事を担うことができる国家資格です。
■不動産鑑定士
地域環境や条件を鑑み、不動産の有効利用の判定および適正な地価を判断する不動産についての専門家です。国家資格であり、公共団体から民間企業まで、幅広いニーズがあります。
■マンション管理士
管理組合の運営、建物構造上の技術的問題などマンションの管理に関する助言や指導を行なうことができる国家資格です。築30年を超え大規模修繕などの保全が必要なマンションが多数を占める現在は、多くの管理組合から有資格者が求められています。
■インテリアコーディネーター
インテリア産業業界による民間資格です。インテリアに関する幅広い商品知識を活かし、インテリアの選択に際しアドバイスを行ないます。インテリア関連のメーカーやショールーム、販売店、住宅メーカー、設計事務所、内装施工会社などで有効な資格だと言えるでしょう。
食に関する職種
■管理栄養士・栄養士
管理栄養士は国家資格であり、病気を患っている人や高齢者を含め、すべての人を対象に、それぞれに合わせた栄養指導や給食管理、栄養管理を行なうことができます。栄養士は、都道府県知事の認定資格で、栄養指導や給食の運営に携わることが可能です。管理栄養士・栄養士とも、医療施設や老人福祉施設、児童福祉施設、小・中学校や企業など、幅広い分野で求められる人材といえるでしょう。
■調理師免許
国家試験で調理師の資格を取得して初めて、調理師と名乗ることが可能になります。飲食店の他、学校・福祉施設・病院などの給食施設などでのニーズがあります。また、飲食事業の海外展開を行なう企業では、就労ビザの取得に有利であることから有資格者を評価する傾向があると言われています。
■食品衛生責任者
飲食店の営業において、1名以上の食品衛生責任者が必要とされています。なお、栄養士、調理師、製菓衛生師資格保有者は、申請するだけで食品衛生責任者資格を取得することが可能です。
その他専門職
■弁理士
国家資格であり、知的財産に関するスペシャリストです。法律や専門知識を活かし、特許出願のサポートなどを行なうため、企業、大学、研究機関など広く産業・教育研究機関で必要とされています。
■通関士
国家資格であり、有資格者は、物品の輸出入に際する申請や通関手続きの代理代行業務を行なうことができます。商社をはじめ、輸出入事業を展開する企業から評価される資格だといえるでしょう。
■運行管理者
トラックやバス、タクシーなど営業用自動車の運行安全を管理することができる国家資格です。営業所は車両数に応じた運行管理者を配置することが法律で義務付けされているため、自動車運送事業を営む企業で評価されやすい資格です。
■危険物取扱者
火災の危険性の高いなど危険物の取り扱いに際して必要な国家資格です。ガソリンスタンドやタンクローリーの運転をはじめ、消防士や化学メーカー、食品工場、研究所、倉庫会社など、需要が広いのが特徴です。
■キャリアコンサルタント・CDA・GCDF・キャリアコンサルティング技能士
国家資格のキャリアコンサルタント、民間資格のCDAやGCDF、国家検定資格のキャリアコンサルティング技能士は、キャリアに関する課題や問題を相談者が自主的に解決できるように、カウンセリングを中心とした専門知識とスキルによる支援を行なう専門資格です。企業をはじめ、大学や高校などの教育機関などでの活躍が見込めます。
■ITパスポート
Tに関する正しい知識の習得を目的とした国家試験です。情報処理技術者試験の最もやさしい入門レベルの資格試験なので、ITエンジニアにとっては知っていることがほとんどですが、事務系職種への転職では、PCスキルの証明になるため、メリットがあるといわれています。
■色彩検定
文部科学省後援の公的資格です。色の基礎知識をはじめ、配色技法(色の組み合わせ方)や専門分野における利用についてなど、理論的・体系的に色彩知識を身に付けている証明になります。クリエイター職やファッション、インテリア関連職をはじめ、プレゼン資料の作成などで活かせるでしょう。