
職場の人間関係にストレスを感じ、悩んでいる人は少なくないようです。職場の人間関係にストレスを感じた場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか。そこで、職場の人間関係にストレスを感じた場合の、ストレスのチェック方法や悩みの解消方法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
職場の人間関係がストレスになっている人は多い
職場の人間関係にストレスを感じている人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省の調査結果から解説します。
仕事にストレスを感じる人は8割以上
厚生労働省が令和5年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスを感じるビジネスパーソンは82.7%という結果になっています(正社員は86.1%)。さらに、ストレスの内容が対人関係と答えた人の割合は29.6%。約3割の人が、対人関係で何らかのストレスを抱えながら働いていることがわかっています。
(※)出典:「労働安全衛生調査(実態調査)個人調査」(厚生労働省)
ストレスを相談した相手は家族・友人が一番多い
仕事や職場でのストレスを相談できる人がいるかどうか聞いたところ、94.9%が「いる」と回答しています。内訳が「家族・友人」が最も多く71.7%、次いで「同僚」の64.9%、「上司」61.3%となりました。実際に相談した相手を聞いてみたところ、「家族・友人」が最も多く65.7%、次いで「同僚」の60.0%、「上司」54.3%となっています。
職場の人間関係でストレスを感じる原因
職場の人間関係でストレスを感じる原因はどのようなものなのでしょうか。代表的なケースをご紹介します。
相性の合わない上司・同僚がいる
人によってコミュニケーションスタイルや仕事の価値観、仕事の進め方は異なります。上司や同僚と仕事の価値観や進め方が合わないと、些細なやり取りでもストレスを感じることになるかもしれません。ミスコミュニケーションによって誤解や摩擦が生まれ、仕事そのものに悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
職場環境が自分の好みと合わない
企業によって職場環境や社風は異なります。静かな環境で集中したい人にとって、活気のある賑やかなオフィスはストレスの元になりかねません。逆に、チームでのコミュニケーションを重視する人が、個々人の多様なワークスタイルを重んじる風土の職場にいると、居心地の悪さを感じるでしょう。職場環境や社風が自分の好みと合わないと、職場での時間がストレスになってしまうかもしれません。
自分の意見を言えない
職場で自由に自分の意見を言えないと、不満やフラストレーションが溜まりやすくなります。また、発言を否定されることを恐れたり、周囲にどう思われるかを気にして黙ってしまったりするケースもあるでしょう。自分のアイディアや改善策が実行されないと、仕事のやりがいを感じにくくなるというケースも考えられます。
労働環境が悪くギスギスしている
日常的にゆとりのないスケジュール設定で、業務過多になっている職場環境は、組織全体に緊張感や疲弊感を生み出します。焦りや疲労が蓄積すると、多くのメンバーは気持ちにゆとりがなくなり、職場の雰囲気がギスギスするようになるでしょう。
職場でハラスメントを受けている
職場のハラスメントがストレスの原因になることもあります。厚生労働省が発表している「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間のハラスメント相談件数で最も多かったのはパワーハラスメント(パワハラ)の64.2%、次いでセクシャルハラスメント(セクハラ)の39.5%でした。
(※)出典:「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(厚生労働省)P32
職場の人間関係のストレスによる影響
職場の人間関係が悪化すると、どのような影響があるのでしょうか。組織に与える影響をご紹介します。
仕事へのモチベーションが下がる
職場の人との関わりによって、仕事のモチベーションは変化します。周囲から感謝や賞賛の声があればモチベーションは高まりますが、人間関係が悪化してコミュニケーション不全になるとやる気を失ったり、前向きに取り組めなくなったりすることもあるでしょう。
生産性が低下する
仕事でやり取りする相手との関係性が悪化した場合、円滑なコミュニケーションが図れないため、確認などに時間がかかり業務効率が下がる可能性が高くなります。また、お互いの声がけがないためミスや行き違いが発生することも、生産性が低下する要因のひとつになるでしょう。
チームワークが悪くなる
チームの人間関係が悪化すると、チームワークにも影響を及ぼす可能性があります。チームワークを活かして個人の強みを伸ばし、弱みを補うことで成果を出す職場も多いでしょう。人間関係が悪化した職場では、個人がバラバラに行動し協力体制が構築できないため、成果が思うように出なかったり、ミスやトラブルなどが発生したりする恐れがあります。
心身に影響が表れる
ストレスを溜めていると、自律神経の乱れや疲労・頭痛など身体面への影響、不安や落ち込みといった心理面の影響、生活の乱れなど行動面への影響が表れる可能性があります。改善が見られない職場でストレスを抱えたまま働き続けると、症状はさらに悪化してしまうかもしれません。
職場の人間関係のストレスを解消する3つのステップ
人間関係のストレスを解消するための3つのステップを解説します。人間関係に悩んだら、早めに取り組みましょう。
ステップ1:自分のストレスをチェックする
自分が人間関係のストレスを抱えているかを自覚できている人ばかりではありません。本人には自覚がないまま、ストレスを溜めているケースもあります。厚生労働省が運営している働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、「5分でできる職場のストレスセルフチェック」が提供されています。職場におけるストレスレベルを測ることで、自分の状態を正しく把握できるでしょう。
(※)出典:「5分でできる職場のストレスセルフチェック」(厚生労働省)
ステップ2:自分なりのストレス解消法を持つ
ストレスを抱えていることがわかったら、自分なりのストレス解消法を持つことが大切です。ストレス解消法は人によって異なるため、次項では5種類のストレス解消法をご紹介しています。自分に合いそうな方法や、すぐに実践できそうな方法を選び、取り組んでみましょう。
ステップ3:解消しない場合は専門窓口に問い合わせる
ストレス解消法を実践しても解消しない場合は、専門窓口に問い合わせるという方法があります。所属企業に相談窓口や産業医がいる場合は、問い合わせてみましょう。厚生労働省が運営している「こころの耳」にも、電話相談やSNS・メールでの相談窓口や医療機関など、各種相談窓口の案内があるので参考にしてみましょう。
(※)出典:こころの耳(厚生労働省)
対人関係の悩みの解消方法
人間関係に悩みがある場合は、どのように解消すれば良いのでしょうか。代表的な解消方法をご紹介します。
周囲に相談する
ひとりで悩みを抱えていると、解決策が浮かばないばかりか、ストレスが蓄積され続ける可能性があります。自分が抱えているネガティブな気持ちを誰かに話すことですっきりしたり気持ちが整理されたりして安心感を得られる現象を、哲学や心理学、精神医学などの用語で「カタルシス効果」と呼びます。人に悩みを話すことは、それだけでストレス解消効果があるでしょう。悩みを話しているうちに思考が整理され、問題点や解決策が浮かぶことも考えられます。ストレスや悩みをひとりで抱え込まず、信頼できる周囲の人に聞いてもらいましょう。
リフレッシュの機会を設ける
休みを取ってリフレッシュの機会を設けるという方法もあります。特に「仕事が忙しくてゆっくり考える暇もない」という場合、心身に疲労が溜まりストレスになっている可能性があります。リフレッシュ期間を設けることで思考が整理され、ストレスが解消されるかもしれません。気持ちを切り替える機会を設けて、心機一転、仕事に取り組むことも一案です。
自分の考え方や接し方を変える
人間関係は相性も大きな影響を及ぼします。人間関係のストレスを抱えている相手を観察し、良好な関係性を築いている人が他にいないか探してみましょう。もし、良好な関係性を築いている人がいたら、どのように関わっているのかを確認し、自分の接し方を工夫することで、関係性の改善が期待できるかもしれません。相手に合わせて接し方を変えるスキルを身につけられれば、コミュニケーション力も高まるでしょう。
「仕事だから」と割り切る
「仕事だから」と割り切ることも対策のひとつです。仕事で関わる人は、時間とともに異動や転職、担当者変更などで顔ぶれが変わっていくこともあります。働いていると、どうしても相性が合わない人が出てくることもあるでしょう。相性が合わない相手に対して、割り切って対応するのもストレス回避の方法のひとつです。
異動・転職などで職場を変える
人間関係の改善が望めずストレスが解消しない場合は、異動で働く環境を変えることも検討しましょう。ただし、「業績重視で強いプレッシャーをかけるマネジメントスタイルが容認されている社風」「トップダウンで異論がある場合は周囲の協力を得られなくなる」など、社風の影響による人間関係の悩みは、異動だけでは解決できない可能性があります。自分の悩みが異動で解決できるかどうかを検討し、もし難しい場合は転職も視野に入れましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2025年07月14日 リクルートエージェント編集部
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