
履歴書の写真は、応募書類の中でも目につきやすく、書類選考時の印象を左右する可能性があります。履歴書の写真で採用担当者が着目するポイント、履歴書写真の基本ルール、髪型・服装・表情・姿勢のポイント、撮影時の注意点、印象アップのコツについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
企業が履歴書の写真で見ているポイント
履歴書の写真に対し、採用担当者が着目するポイントとして、以下が挙げられます。
表情・身だしなみ
採用担当者は、履歴書の写真の表情から、「人柄」を想像する可能性があります。身だしなみは、社会人としてのマナーが身についているかどうかに加え、選考に臨む姿勢や意欲などの印象も左右する可能性があります。
基礎的なビジネスマナー
履歴書の写真の撮り方や貼付方法に際しては、さまざまなルールや注意点があります。履歴書も「ビジネス文書」の一つになるため、ルールを守れていることは、基礎的なビジネスマナーをわきまえているかどうかを判断する材料の一つとなり得るでしょう。
履歴書の写真の基本ルール
履歴書に貼付する写真の基本ルールをご紹介します。特に、過去に撮った証明写真を流用する場合は、撮影時期やサイズに注意が必要です。
3カ月以内に撮影した写真
写真撮影から長期間が経過していると、現在の印象と異なっていることもあり、「本人かどうかを確認できない」とみなされる可能性があります。そのため、履歴書に使用する写真は「3カ月以内」に撮影したものを使うことが基本とされています。
ただし、3カ月以内に撮影した写真でも、髪型などの外見が大きく変わっているような場合は、新たに撮り直しても良いでしょう。
サイズ:タテ4cm×ヨコ3cm
履歴書に貼付する写真のサイズは「タテ4cm×ヨコ3cm」が一般的です。履歴書用紙の多くは、、このサイズの枠が印字されています。
なお、撮影スタジオや証明写真機などを利用する場合は、「履歴書用写真」を選択することで適切なサイズに印刷されるでしょう。
背景は白・ブルー・グレーなど無背景
履歴書写真の背景は無地が基本。背景色は、白・グレー・ブルーなどとするのが一般的です。スナップ写真など、背景に景色が写っているものは避けましょう。
胸から上で正面向き
胸から上を、正面から撮影します。SNS・ホームページ・書籍などのプロフィール写真は、斜めに身体を傾けているものもよく見られますが、履歴書用写真としてはふさわしくありません。個性を自由に表現するものではないため、ピースサインやガッツポーズといったポージングは控えましょう。

写真の裏に記名をしておく
写真は履歴書用紙に糊付けしますが、万が一剥がれてしまった場合に備え、写真の裏に氏名を記入しておきます。履歴書は何度も出し入れをしたり、スキャナで保存したりすることもあるため、何かの拍子に写真が剥がれてしまう可能性もゼロではありません。細めの油性ペンを使い、フルネームを記入しましょう。
髪型・服装・表情・姿勢のポイント
履歴書用の写真撮影にあたり、髪型・服装・表情・姿勢で意識したいポイントをお伝えします。採用担当者によって感じ方は異なりますが、好ましい例と避けた方が良い例をご紹介します。
髪型
髪型は、清潔感があること、表情がわかりやすいことが大切です。髪の色やヘアスタイルについては、業界や企業特性によって捉え方が異なります。企業の採用ページや求人などに従業員が掲載されていることもあるため、参考にしながら社風に合わせると良いでしょう。
メイクについても、色が濃すぎて派手な印象を与えるアイメイク・チーク・口紅は避け、ナチュラルメイクを心がけましょう。
【OK例】
- 寝ぐせなどがついておらず、整っている
- 表情がわかりやすい

【NG例】
- ボサボサな印象を与える
- 染めている部分と伸びた地毛の部分の色の違いが目立つ
- 前髪が目にかかっている
- サイドの髪で顔周りが隠れている

服装
服装においても「清潔感」が大切です。また、髪色・ヘアスタイルと同様に、業界や企業によって許容される範囲が異なります。スーツ・ジャケットや襟があるシャツを選ぶのが望ましいでしょう。
【OK例】
- スーツ・ジャケットを着用(スーツであればネクタイも着用)
- シャツ・インナーは白や薄い色
- 第一ボタンを留める
- サイズが合っている

【NG例】
- ネクタイや襟がゆがんでいる
- 首元が開きすぎている/よれている
- カジュアルすぎる印象の服
- 派手な色・柄の服
- 透ける生地やレース・フリルを多用した服

表情
証明写真の撮影では、緊張して表情が硬くなりがちです。意識的に明るい表情を作るように心がけると良いでしょう。撮影直前に大きく笑顔を作るなどして表情筋をほぐしておくと、自然な表情を作りやすくなります。メガネをかけている場合は、ズレないように調整し、レンズを拭いておきましょう。
【OK例】
- 口を閉じ、口角が自然に上がっている
- あごをやや引いている

【NG例】
- 歯が見えるほどの笑顔
- あごが上がっていて、上から見下ろす印象になっている
- あごを引きすぎて、上目遣いになっている

姿勢
撮影する際は、首が前に突き出ないように意識し、耳と肩の位置を揃えるイメージで自然に背筋を伸ばします。顔は正面に向け、カメラをまっすぐ見つめましょう。両肩を大きく持ち上げてからストンと下ろし、左右の高さを整えると良いでしょう。
【OK例】
- 背筋が伸びている
- 正面を向いている

【NG例】
- 猫背になっている
- 肩が上がっている
- 横や斜めを向いている

履歴書の写真の撮影方法
履歴書用の写真を撮影する方法は、大きく次の3つのパターンがあります。
撮影スタジオ
撮影スタジオ(写真スタジオ・写真館)では、専用のスタジオでプロに撮影してもらえるため、クオリティが高い写真に仕上がることが期待できます。履歴書の写真に適した姿勢・表情のアドバイスを得られる可能性もあります。ただし、足を運ぶ時間・費用がかかります。
証明写真機
商業施設内などにある証明写真機(証明写真ボックス・スピード写真機)では、セルフで撮影ができます。24時間利用でき、10分程度で撮影完了する手軽さがメリットであり、800円~1600円程度と比較的利用しやすい価格です。1回の撮影で6~8枚の写真が印刷されるのが一般的で、機種によっては肌色補正・背景色の変更といった機能も活用できます。
証明写真機で撮影する場合、白いハンカチや紙をひざの上に置いておくとレフ板の代わりになり、顔を下から照らすため、明るめに仕上がりやすくなります。
自撮り
スマートフォンやデジタルカメラで自撮りした写真でも、ルールに従って撮影していれば、履歴書に使っても問題はないでしょう。自宅のプリンターや専門店・コンビニエンスストアなどの複合機を利用して印刷し、規定のサイズに切り取って使用します。
ただし、「スナップ写真」にならないよう注意が必要です。次のポイントを押さえて撮影しましょう。
- 背景が無地になる場所で撮影する
- 顔に影のできない場所で撮影する
- ブレないようにカメラを固定して撮影する
撮影に適した場所がない場合は、壁などに光沢のない模造紙を貼り、その前で撮影しても良いでしょう。
また、自分で撮る時、カメラを手に持ち撮影すると、姿勢が崩れてしまいます。手持ち撮影は避け、スタンドや三脚などにカメラを固定し、セルフタイマー機能を使って撮影しましょう。家族や友人に依頼し、撮影に協力してもらう方法もあります。
自撮りの場合、画像アプリの機能を使った「加工」については注意が必要です。写真と本人に違いがあり、違和感を抱かせるような写真は「証明写真」とは言えないため、加工は控えましょう。
印象アップのコツ
履歴書写真の印象を上げるために、自分でできる工夫をご紹介します。もし証明写真機や自撮りで好印象を与えられる写真に仕上がるかどうか不安があれば、撮影スタジオの活用をおすすめします。
自宅の場合は照明を意識する
自宅で撮影する場合、昼間であれば、曇りの日が撮影に適しています。晴れている場合は、直射日光が顔にあたらないよう、レースカーテンを引くなどして光の加減を調整します。夜に撮影する場合は、ウォーム系の電球色は避け、昼光色や昼白色などクリアな色合いの照明下で撮影しましょう。顔全体に均等に光があたるようにすると、影が出にくく、明るい印象になります。
自宅の室内照明では、顔に強い影やテカリが出ることがあるため、自然光の方が印象の良い仕上がりになる可能性が高いでしょう。なお、スマートフォンの機種によっては、フラッシュ機能が内蔵されているものもあるため、そうした機能を活用する方法もあります。
事前にテスト撮影し髪型やメイクの確認を
写真は、鏡で見るのとは異なる見え方になることもあります。テスト撮影を行い、髪のハネや寝ぐせ、ネクタイ・襟のゆがみ、メイクの色味などを確認しましょう。
目や口元の表情、あごの角度なども複数パターン撮影してみて、印象が良い写り方を選ぶと良いでしょう。
口角を少し上げ柔らかい表情を作る
履歴書の写真は口を閉じて撮影しますが、無表情では暗い印象、堅い印象になることもあります。口角を少し上げて軽く微笑むと、柔らかな表情になります。
口角を自然に上げるには、まず深呼吸してリラックスし、口を閉じたまま声を出さずに「イーッ」と言ってみましょう。片側だけ上がらないよう、両方をバランスよく上げるよう意識してください。また、目元も少し微笑むようにすると、柔らかい印象になるでしょう。
履歴書の写真に関するよくある質問
履歴書の写真に関して、疑問を抱かれやすいことにお答えします。
Web履歴書の場合はどうすれば良い?
Webの履歴書の場合は写真データのアップロードが必要になるため、写真スタジオで撮影する場合は、データをもらえるプランを選びましょう。証明写真機で撮影する場合は、写真データを転送できる機種もしくは二次元バーコードなどからデータを取得できる機種で撮影すると良いでしょう。
データをアップロードする際は、ファイル形式・サイズ・写真の向きに注意しましょう。ファイル形式・サイズが適さない場合、アップロードされないこともあります。また写真の向きを調整しないと、逆さま・横向きになったままアップロードされることもあります。
せっかく良い仕上がりの写真を用意できたとしても、アップロードでミスをしてしまうのはもったいないことです。最後まで丁寧な作業を心がけましょう。
生成AIツールで、カジュアルな写真をビジネス風に加工して使ってもOK?
顔部分の画像があれば、生成AIツールを使って「履歴書用」「ビジネス風」などへの加工が可能です。しかし、履歴書に使用するのは避けた方が良いでしょう。
履歴書の写真は、本人確認のため、そして第一印象などを把握するためのものです。「応募者本人の本来の姿かどうかわからない」「どれくらい加工・補正しているかわからない」状態では、履歴書の証明写真としての目的を果たせません。
また、生成AIで補正していると捉えられたり、面接で対面した際に受ける印象が写真と違いすぎたりすると、マイナスの印象を抱かれる可能性もあるでしょう。
スーツ以外で写真を撮っても良い?
身だしなみは、基本的にはスーツです。スーツ以外の服装は、「ビジネスシーンにそぐわない」とみなされる可能性もあるでしょう。応募する業界・企業の社風も考慮して、適切な服装を意識しましょう。
写真で選考に落とされることはある?
企業は、自社が求める経験・スキルを有しているかを重視するため、履歴書の写真だけで採否が判定されるようなことはまずないと言えるでしょう。しかし、社会人としてのマナーや常識が不足しているとみなされる写真の場合は、選考に影響を与える可能性もあるでしょう。
【参考記事】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年11月29日
記事更新日:2025年10月23日
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。