
転職エージェントとは、転職を検討している方と採用を考えている企業の間に立って、転職と採用の実現をサポートするサービス、あるいは人を指します。転職エージェントの基本的な使い方、上手に使うポイント、自分に合う転職エージェントの選び方・活用法について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェントの基本的な使い方
まずは転職エージェントの基本的な使い方を理解しておきましょう。一般的には、次のような流れで進みます。

Step1. 利用登録をする
転職エージェントの公式サイトから利用登録をします。申し込みフォームにアクセスし、転職希望時期・希望勤務地・職種・年収などの必要事項を入力します。
また、複数のサービスに登録することをおすすめします。転職エージェントによって、得意とする領域や取り扱う求人案件が異なるからです。転職エージェントには、業種・業界や登録者・利用企業の属性を限定しない「総合型」と、特定のエリアや年代、職種・業界などに特化している「専門型」の大きく2つの種類があります。総合型と専門型それぞれから自分に合いそうなサービスを複数選んで登録してみると良いでしょう。
Step2. 面談・相談をする
サービス利用登録後、転職エージェントによっても異なりますが、担当のキャリアアドバイザーから初回面談の日程調整に関する連絡があります。面談を希望する場合は初回面談の希望日程を提示しましょう。オンラインや電話で面談できるケースもあります。
初回面談では、一般的に転職エージェントのサービス概要の説明を受けるほか、転職目的や転職先の企業に求める条件の確認、キャリアの棚卸しなどを行います。
可能であれば、面談前に以下の準備もしておくと、面談がよりスムーズに進みます。
- 履歴書・職務経歴書を送付しておく
- 転職の目的・転職先への希望条件を伝えておく
- 転職活動の状況、転職エージェントに期待することを整理しておく
- 質問したいことをメモしておく
- オンライン・電話面談の場合は、通信環境を確認・整備しておく
Step3. 求人を紹介してもらう
面談後は、経験・スキル、希望条件にマッチする求人の紹介を受けます。より自分に合う求人を紹介してもらうためには、希望条件を明確に伝えることが大切です。ただし、条件が多すぎると、該当する求人が限られ、選択肢が狭まってしまう可能性があります。「譲れない必須条件」「あれば尚可・柔軟に検討する条件」を整理し、伝えておくと良いでしょう。
紹介された求人に応募意欲が湧かない場合は、ただ断るだけでなく、興味を持てない理由や引っかかるポイントを伝えておきましょう。判断基準をキャリアアドバイザーが理解すれば、次に紹介される求人は、希望へのマッチ度が高まると期待できます。
なお、キャリアアドバイザーから求人紹介を受けるほか、転職エージェントの求人データベースで自ら検索し、応募する方法もあります。
Step4. 応募書類作成・面接対策サポートを活用する
応募企業に提出する履歴書・職務経歴書の作成にあたり、キャリアアドバイザーに添削してもらえることもあります。採用担当者から見て、経験・保有スキルが分かりやすいか、強みや意欲が伝わるかなど、プロの目でチェックしてもらい、アドバイスを受けましょう。
面接でどのようなポイントをアピールすれば良いか、どのように話を組み立てれば良いかといったアドバイスも活用しましょう。
転職エージェントでは、「企業が求める人物像」を深く理解していることもあります。その場合、企業が求めている人物像や選考で重視しているポイントなどの情報を得られることがあります。
なお、面接の設定にあたっては、転職エージェントが企業との面接日程の調整サポートを行います。面接終了後には、転職エージェントから企業の採用担当者にヒアリングを行い、応募者へその内容をフィードバックしてもらえることもあります。次の面接や他の企業を受ける際に役立てられるでしょう。
Step5. 内定後のサポートを活用する
応募企業から内定を得た後も、入社するかどうかを決断するにあたって不安なことがあれば、キャリアアドバイザーに相談しましょう。キャリアアドバイザーから企業に確認してもらい、不安を解消できる可能性があります。
年収・条件交渉、入社日調整、退職交渉などについてのアドバイスも受けられます。内定を辞退する場合は、転職エージェントを介して企業に伝えてもらいます。
転職エージェントを上手に使うポイント
転職エージェントを上手に使うポイントをお伝えします。
転職エージェントを上手に使えるかどうかの違いは?
転職エージェントは使い方によって、得られる効果に差が表れます。上手く使いこなせるかどうかの大きなポイントは「受け身」か「主体的」かにあると言えるでしょう。転職エージェントからの連絡や提案を待つだけでなく、主体的に働きかけることで情報を得られたり、充実したサポートを受けられたりします。
「気になることがあれば質問する」「状況や気持ちが変わったときは報告する」「レスポンスはまめに・早めにする」といった意識で行動すると、転職エージェントをより有効に活用できるでしょう。
転職エージェントに任せきりにしない
受け身の姿勢で転職エージェントからの連絡を待ち続けるだけでは、「サポートしてもらえていない」と不満や不安を抱くこともあります。転職エージェント側も複数の求職者を担当し、多くの企業とやりとりをしています。自らコンタクトを取り、状況を確認する、質問・相談する、希望を伝えるなどのアクションを起こすことで、次の展開へ進みやすくなるでしょう。
複数エージェント併用時の注意点とマナー
複数の転職エージェントを併用している場合、担当キャリアアドバイザーにその旨を正直に伝えましょう。転職エージェントの複数併用は一般的であり、キャリアアドバイザーも理解しているため、「マイナスの印象を持たれるのではないか」と心配する必要はありません。
他の転職エージェントでの応募状況、選考の進捗などを伝えておくと、その転職エージェントを通じて応募する企業の選考日程や内定時期の調整に配慮してもらえる可能性があるでしょう。
なお、複数併用していると、同じ求人に応募してしまったり、進捗管理が煩雑になったりすることもあるため、注意が必要です。
担当者との相性が合わないときの対処法
担当者との相性が合わないと感じる場合、コミュニケーションエラーが起きている可能性があります。自身がどのようなコミュニケーションスタイルやサポートを求めているのか、希望を伝えてみましょう。例えば「率直に指摘してほしい」「メンタル面をサポートしてほしい」など。自分が何を求めているかをキャリアアドバイザーが理解すれば、対応が変わり、満足度が上がるかもしれません。
それでも「合わない」と感じたら、担当者を変更してもらうことも可能です。担当変更の希望を上手く伝えるための例文は、以下を参考にしてください。
<伝え方一例>
現在、○○様にご担当いただいております。
これまでさまざまな角度からアドバイスやサポートをしていただいたと思っております。
しかし、○○様が考えていらっしゃる転職のプランと、私が目指しているキャリアとの間にズレがあるように感じております。
もし可能であれば、担当者様の変更を検討していただければ、と考えております。
転職エージェントを使う各ステップでの“賢い活用方法”実践編
転職エージェントの活用度を高めるために実践したいポイントをお伝えします。
面談で希望を正しく伝えるためにできること
転職先を選ぶにあたっては、次の観点で希望を書き出してみてください。
- 経験・スキルをどのように活かしたいか
- これからどのような経験・スキルを得たいか
- 企業風土・カルチャー
- 希望する働き方ができるか(働き方の柔軟性など)
- 評価制度・報酬体系
- 事業理念・経営方針
- 扱う商品・サービスの特徴や優位性
- 福利厚生・待遇や働き方の多様性
- 事業内容と企業の経営方針
- 業界における優位性
希望条件を整理して伝える方法
上記で洗い出した希望条件とともに、その優先順位も伝えましょう。優先順位を明確に伝えておくことで、より希望にマッチした求人を紹介してもらえるでしょう。
また、転職活動を進めるうちに考えが変わり、優先順位が入れ替わることもあるものです。その際にはすぐ転職エージェントに伝え、求人選定の基準を修正してもらいましょう。
書類添削・フィードバックを最大限活かすには
転職エージェントと「キャリアの棚卸し」を行う過程では、いくつかの「強み」を整理できるでしょう。それをそのまま面接で伝えるだけでなく、「応募企業のニーズに合う強みを選んで伝える」「応募企業でどのように活かせるかを伝える」ことにより、選考通過率を高められる可能性があります。
先にも触れたとおり、転職エージェントは採用背景や企業が求める人物像をつかんでいることもありますので、その情報を得た上で面接対策を行うと良いでしょう。
【タイプ別】自分に合った転職エージェントの選び方・使い方
転職の目的や状況のタイプ別に、自分に合う転職エージェントをどのように選択、活用すれば良いかをお伝えします。まずは複数の転職エージェントに相談してみて、自分に合う転職エージェントに利用を絞り込んでいくのも一つの方法です。
初めての転職で不安な人
転職活動の進め方や応募書類作成・面接対策の基本知識を丁寧に教えてくれる転職エージェントを選ぶと安心です。キャリアの棚卸しや、自身の価値観や志向を整理・言語化することに慣れていない人は、その旨を正直に伝え、サポートしてもらいましょう。
キャリアアップを狙いたい人
これまでの経験・スキルを活かしてキャリアアップを目指す人であれば、業界や職種、あるいは「外資系」「スタートアップ」などの領域に特化した「専門型」に相談すると良いでしょう。その分野の転職市場についてより詳細な情報を得られたり、キャリアプランのアドバイスを受けられたりする可能性があります。
ただし、自身の経験・スキルが想定外の業界や企業で高く評価される可能性もありますので、幅広い求人を扱う「総合型」も併用することで可能性を広げられるかもしれません。
在職中で時間が限られている人
在職中で、転職活動に費やす時間が限られている人は、オンラインや電話で相談ができる転職エージェントが便利でしょう。利用してみて、質問や相談へのレスポンスが早い転職エージェントを選ぶ方法もあります。
また、自身のスケジュールを伝えておくと、タイムリーに連絡してもらえて、効率的に転職活動を進められる可能性があります。
転職すべきか迷っている人
転職エージェントは、相談だけでも利用できます。経験・スキル、今後のキャリアプランなどをヒアリングした結果、「現職にとどまる」という選択肢をすすめるケースもあります。
客観的視点を持つ転職支援のプロと対話してみるだけでも、新たな視点を得られる可能性がありますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年05月24日
記事更新日:2023年12月11日
記事更新日:2025年01月31日
記事更新日:2025年09月18日 リクルートエージェント編集部
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。