
企業に応募する際、職務経歴書の提出が求められるケースが一般的です。このとき「職務経歴書に書くことがない」と悩む方も少なくありません。書くことがないと感じてしまう理由、ケース別・職務経歴書の書き方、書くことがないときの対処法について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
職務経歴書に書くことがないと感じる主な理由
「職務経歴書に書くことがない」と感じる理由は人によって様々ですが、主には以下が挙げられます。
- 職歴が少ない。
- アピールできる実績がない。
- 活かせるスキルがない。
理由1:職歴が少ない
社会人経験が短い第二新卒(※)の方や、アルバイトが中心だった方などは、職歴や責任ある仕事を担った経験が少ないことから、「書くことがない」と悩むことがあるようです。
また、転職回数が多く、経験業種・職種が多岐にわたる場合や、それぞれの会社での在籍期間が短かい場合、「これといった得意領域がない」「責任あるポジションに就くまでに至っていない」という考えから、何を書けばいいかわからなくなることがあるようです。
(※)学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内の者(学校卒業後すぐに就職する新卒者は除く。また、職務経験の有無は問わない)。
理由2:アピールできる実績がない
これまでの職歴の中で特筆できるような実績を残せていなかったり、明確な成果がなかったりする場合も「職務経歴書に書くことがない」と感じる理由の1つだと考えられます。
実際には実績や成果を挙げていても、「具体的な数字を記録していない」「思い出せない」などの理由から、「アピールできることがない」と感じてしまうケースもあります。
理由3:理由3:活かせるスキルがない
求人情報の応募要件や仕事内容を見る中で、「活かせるスキルがない」と感じるパターンもあるでしょう。例えば、直近で長い離職期間があり「知識をアップデートできていない」と感じるケース、また、担当職務が何年も同じだった場合など、「アピールできるスキルがない」と思っているケースなどです。
採用担当者が職務経歴書で見ているポイント
採用担当者は職務経歴書を見るとき、どのようなポイントに注目しているのでしょうか。
もちろん、採用担当者によって視点や重視する項目は異なりますが、多くの場合共通しているのは以下のポイントです。
- 今回の採用ポジションに必要な経験・スキルを保有しているか。
- 特に強みとしているのは何か。
- これまで実績・成果を挙げてきた手法やノウハウを、自社でも活用できそうか。
- 仕事に取り組むスタンスやマインドが、自社が求めるものと一致しているか。
これらの観点から、総合的に「自社に入社して活躍できるか」を見極めようとしていると考えられます。
職務経歴書に書くことがないと感じるケース別の書き方
職務経歴書に書くことがないと感じる6つのパターン別に、職務経歴書の書き方例を紹介します。
- 転職回数が多く各社の在籍期間が短い。
- 第二新卒で社会人経験が短い。
- 直近で長い離職期間がある。
- アルバイト経験のみである。
- 社会人経験は長いが職務内容に変化がない場合。
- アピールできる実績がない。
ケース1:転職回数が多く各社の在籍期間が短い
まずは、これまで勤務してきた企業での経験や身につけたスキルを細かく洗い出しましょう。その中から応募企業のニーズに合うものを選び、職務経歴書ではその部分をアピールします。「自社が求める能力を持っていれば、転職回数は気にならない」という企業もあります。
また、複数の企業を経験してきたからこそ、得られた知見やスキルもあるでしょう。同じ業種・職種でも、企業によって進め方や手法が異なります。多様なノウハウを取り入れ、状況に応じて使い分けられることなどを、「自己PR」欄を設けてアピールしましょう。
職歴が一見バラバラであっても、こだわってきた軸があれば、それを「自己PR」欄に記載するという方法もあります。大切にしている仕事への価値観が応募企業と一致していれば、歓迎される可能性があるでしょう。
ケース2:第二新卒で社会人経験が短い
社会人経験が短く職務経歴書に書ける成果や実績がない場合は、「日々どのようなことを心がけていたか」「どのような創意工夫をしたか」などを記載しましょう。得られた成果、顧客などから感謝されたことなどをアピールしても良いでしょう。
また、企業は第二新卒の選考において、経験やスキルよりも「成長意欲」を重視する傾向が見られます。「志望動機」欄などで、今後の目標やキャリアビジョンとともに、応募企業で成長して貢献したい意欲などを伝える方法もあります。
ケース3:直近で長い離職期間がある
離職期間以前の経験・スキルを細かく整理し、応募企業で活かせるものを重点的にアピールしましょう。
「自己PR」欄を活用し、離職期間がある理由を簡潔に述べるとともに、「今後どのようにキャリアを再構築していきたいか」など、前向きな意欲を伝えても良いでしょう。
ケース4:アルバイト経験のみである
アルバイトとして経験した業務内容・身につけたスキルを記載するほか、「自己PR」欄で、「日々の業務で心がけていたこと」「自分なりに創意工夫したこと」「努力・注力したこと」「成果を挙げたこと」などを記載しましょう。具体的な体験エピソードも盛り込むと、採用担当者は働く姿がイメージできるため、自社で活躍する姿も描ける可能性があります。
ケース5:社会人経験は長いが職務内容に変化がない場合
職務内容に変化がなくても、「日々心がけていたこと」「工夫したこと」などを記載しましょう。特に、「課題を発見して解決した経験」「業務改善・効率化・品質向上などに主体的に取り組んだ経験」などはアピール材料になります。それらの経験を思い出し、プロセスを記載しましょう。
ケース6:アピールできる実績がない
会社の業績不振により成果が挙げにくかった場合は、「個人として努力・工夫したこと」「組織の中で自分が果たした役割」「状況を打開しようとした取り組み」などを記載しましょう。
数字で示せる実績がなくても、「顧客のために行動し、喜ばれたこと」「組織やチーム内で自身が果たした役割によってプラスの影響がもたらされたこと」などを洗い出してみましょう。「自己PR」欄などで伝えることで、「自社にもプラスの影響を与えてくれる」と感じてもらえるかもしれません。
職務経歴書に書くことがないときの対処法
職務経歴書に書くことがないと悩んだときは、次の方法を試してみてください。
- キャリアの棚卸しを行う。
- 応募先企業との接点を見つける。
- 自己PRで強みをアピールする。
- 希望職種の職務経歴書サンプルを参考にする。
キャリアの棚卸しを行う
まずは、これまでのキャリアを棚卸ししてみましょう。その際、1つの経験を深く掘り下げることがポイントです。紙などに書き出して可視化・言語化することで、忘れていた経験や実績を思い出したり、自分の強みや志向が整理できたりします。
応募先企業との接点を見つける
キャリアの棚卸しによって明確化した自分の強みと、応募企業が求めている人材像を照らし合わせ、接点や共通点を探してみるのも良いかもしれません。職務経歴書でアピールするポイントが明確になるでしょう。
どのような職歴も、採用担当者が「自社のニーズとマッチしない」と判断すれば、採用には至らない可能性があります。応募企業のニーズにマッチした経験・スキルを強調して伝えましょう。
自己PRで強みをアピールする
ここで取り上げる「強み」とは、主に仕事で成果を挙げるために役立つ能力やスキルを指します。例えば「コミュニケーション力」「課題発見力」「調整力」「緻密さ」「粘り強さ」といったものです。これは、「ポータブルスキル(業種・職種問わず持ち運べるスキル)」とも呼ばれます。
これまでの経験を振り返って、自身の強みを分析し、具体的なエピソードを添えて「自己PR」欄に記載すると良いでしょう。以下の例文を参考にしてください。
<例文-1>
<例文-2>
希望職種の職務経歴書サンプルを参考にする
希望職種の職務経歴書サンプルを参考にするのも1つの方法です。転職サイトや転職エージェントの公式サイトには、職務経歴書のサンプルが公開されていることがあります。
特に職種ごとの職務経歴書サンプルは、職種ごとにアピールしたいポイントを押さえた内容になっていることもあるため、職務経歴書を書く際のヒントを得られることもあるでしょう。
以下はリクルートエージェントで公開されている職務経歴書のサンプルです。職務経歴書に書くことがないと悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてみてください。
※参考資料:【リクルートエージェント】職務経歴書のサンプル
職務経歴書に書くことがないときに避けたいこと
職務経歴書に書くことがないときの注意点をご紹介します。
事実でないことを盛り込む・内容を誇張する
職務経歴書に事実でないことを盛り込んだり、記載内容を誇張したりするのは避けましょう。虚偽の情報を記載した場合は、経歴詐称を疑われる場合もあります。事実に沿った内容を正直に記載しましょう。
一部の職歴を省略する
職務経歴書を作成する際は、一部の職歴を省略して書くこともやめましょう。転職回数が多い場合や在籍期間が短い職歴がある場合、職歴を省略したくなるかもしれませんが、職歴を省略すると詐称とみなされる可能性があります。
記載を控えたい職歴や応募職種との関連性が低い職歴に関しては、簡略化するなど記載方法を工夫してみましょう。アピールしたい職歴や経験職種について詳しく記載することで、メリハリのある職務経歴書に仕上がります。
文章量が著しく少ない状態で職務経歴書を提出する
職務経歴書に書ける経験やスキルがないからといって、文章量が著しく少ない状態で提出してしまうと、応募先企業の採用担当者に「入社意欲が低い」「熱意がない」と捉えられてしまう可能性があります。
文章量が少なくなってしまう人は、長所や強みをアピールする欄を設けるなど、意欲や熱意をアピールできるよう工夫してみましょう。
職務経歴書に書くことがないと感じたら、転職エージェントに相談しよう
職務経歴書に書くことがないと感じ、書き方や内容に悩んだときは、転職エージェントに相談してみるのも一案です。転職エージェントでは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーから、職務経歴書の書き方に関するアドバイスや記載内容の添削などのサポートを受けられます。また、面談を通じて、キャリアの棚卸しや経験やスキルのアドバイスも受けられるため、職務経歴書に書けるアピールポイントが見つかることもあるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2025年07月02日 リクルートエージェント編集部
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。