
「現在の仕事にやりがいを感じない」「熱中できる仕事に就きたい」など、仕事のやりがいを求めて転職を検討している場合、面接ではどのように伝えたらいいのでしょうか。転職理由の考え方や伝え方のポイントについて採用コンサルタントの粟野友樹さんにお伺いしました。
転職理由を考える際のポイント
転職理由は、志望動機や自己PR同様に、面接では必ずと言っていいほど聞かれる質問です。採用担当者が転職理由を聞く背景や、やりがいを伝える際のポイントについて解説します。
退職理由2割、転職理由8割で考える
転職理由について、前職(現職)を辞めた理由だと考えている方も多いようですが、転職理由とは転職のきっかけ(退職理由)と、転職で実現したいこと(転職理由)で構成します。前職(現職)を辞めた理由だけを伝えた場合、採用担当者は退職理由が自社で再現するかどうかを確認できるので、「定着性」を判断することはできます。ただし、退職した理由が分かっても、入社後に何をしたいのかが分からないので、「入社後の活躍可能性」を判断することができません。転職によって実現したいことを明らかにすることによって、採用担当者は募集している仕事にマッチし、長く活躍してもらえるかどうかを判断することができるのです。
なお、退職理由は転職のきっかけに過ぎないため、面接では退職理由2割、転職理由8割を目安に伝えるといいでしょう。
「やりがい」とは?
やりがいとは、仕事に対して手ごたえや達成感、充実感を得られることを指します。仕事にやりがいを感じることができると、モチベーション高く取り組むことができるため、さらなる成長が期待できます。仕事には必ずやりがいを持たなければいけないわけではありませんが、やりがいが持てるとよりイキイキと働くことができるでしょう。
なお、何にやりがいを感じるかは人それぞれです。仕事の内容よりも高い報酬にやりがいを感じる人もいれば、社会や企業、人に対して貢献することでやりがいを感じる人もいます。もしやりがいを求めて転職する場合は、仕事の何にやりがいを求めているのかを明らかにしてから、転職理由を考えるようにしましょう。
やりがいを感じるポイントの例
やりがいを感じるポイントの一例をご紹介します。
・評価・報酬…納得できる給与や待遇、評価制度など
・達成感…目標や課題がクリアになる、問題が解決するなど
・自己成長…新しい知識・経験・スキルを得ることができる、優秀な人と働くなど
・組織成長…部下やチームが成長する、事業を大きくするなど
・貢献度…自身が社会・企業・人の役に立っていると感じる、チームワークが高まるなど
やりがいが転職理由の場合の例文
やりがいを求めて転職する場合の、職種別の例文をご紹介します。
自己成長をやりがいと考える場合の営業職の例文
前職では機械部品の営業をしていましたが、基本的に既存顧客が対象だったためほぼルート営業のような状態でした。新規営業も検討しましたが、対象となる顧客が限定的で、会社からも「既存顧客のフォローを中心に行うこと」と言われていました。もちろん既存顧客のフォローも重要ですが、新規顧客の開拓や新しい切り口で提案をするなど、営業としての経験の幅を広げてスキルアップしたいと考え、転職を決意しました。
御社のサービスは、あらゆる業界の○○部門が営業の対象となります。年々導入企業を拡大されておりますが、私も御社のサービスを世に浸透させるために、営業として貢献したいと考えております。前職での知識・経験を活かすため、メーカーへの新規営業を担当させていただけると、より成果を出せるのではないかと自負しております。
組織成長をやりがいと考える場合の経理の例文
イベント・制作会社で経理をしております。現場から提出された請求書の処理や入金消込、イレギュラー対応などを担当していますが、基本的にルーティンワークのため、どうしても評価が「ミスをしない」になってしまいます。ミスを減らすためにチェックの回数ばかりが増えていくので、自分の仕事が会社や事業の成長にどのように寄与しているのか分かりづらく、仕事にやりがいを感じることができませんでした。
御社はバックオフィス向けのIT支援サービスを展開しているため、カスタマーサクセスとしてこれまでの知識・経験を活かしながら、積極的に事業拡大にも貢献できると感じました。現職では経理業務の傍ら、人事や総務のサポートも行っています。バックオフィスの気持ちが分かるので、お客様の視点に立ってご提案やフォローができると自負しております。
貢献度をやりがいと考える場合の広報の例文
不動産会社の広報・総務を担当しています。保守的な企業なので、最低限のニュースリリースとホームページの更新、業界紙に取り上げられた時の社内共有などが主な業務でした。ただ、世の中には攻めの姿勢で広報・PRを行っている企業もあり、「認知度を高めるための広報戦略も必要」と社内に訴えたのですが、なかなか聞いてもらえませんでした。
御社は積極的に広報・PRを行っており、SNSや動画などもいち早く取り入れているという印象があります。これまでの経験を活かしながら、やりがいを持って戦略的に広報活動を行っていきたいと考えています。特に動画マーケティングは自分でも研究し、アイデアがたくさんあります。ぜひ、御社の広報活動に貢献できればと思っています。
やりがいを転職理由にする場合の注意点
やりがいを転職理由にする場合の注意点はあるのでしょうか。注意しておきたいことを3つご紹介します。
「憧れ」だけだと捉えられないよう、根拠も伝える
転職理由が漠然としていると、伝え方によっては「憧れだけで転職を考えているのでは…」と判断される可能性があります。特に、異業界・異職種にチャレンジしている場合は、「未経験なのになぜやりがいを感じられると判断したのだろうか」と不安を抱かれるかもしれません。求人や採用ページなどを読み込み、なぜ応募している仕事にやりがいを感じることができると考えたのか、その根拠までしっかりと伝えられるようにしましょう。
どのように貢献できるのかを明確にする
面接では、自身がどのような価値を発揮できるのかを採用担当者にアピールする必要があります。「仕事にやりがいを感じたい」というのは本人の希望でしかないので、転職理由を伝える場合は、入社後にどのように貢献できるのかもあわせて伝えましょう。未経験の求人に応募している場合は、活かせる経験・スキルが少ないケースもあるため、「やりがいを求めて転職することにしたが、まずは即戦力となるためにできるだけ早く知識を習得したい」など、前向きな姿勢を補足しておくことも有効です。
やりがいを強調しすぎない
「やりがいを持てる仕事に就きたい」「やりがいを持って働きたい」と、やりがいばかりを何度も伝えすぎてしまうと、採用担当者から「やりがいが少しでも感じられなかったり、意に沿わないことがあったりするとまた転職してしまうのでは」と懸念される可能性があります。やりがいばかりを強調せず、入社後にどのようなことを実現したいのかを具体的に伝えるようにしましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。