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「転勤したくない」転勤拒否できるケースや、退職・転職する場合の懸念点、ポイントまで解説

転勤 退職

転勤の辞令を受け、「転勤したくないから退職すべきか」「転勤を拒否することはできないのか」「転勤を断れたとしても、今後のキャリアに影響するのではないか」などと悩む人もいるでしょう。そもそも転勤拒否は可能なのか、転勤を理由に退職した場合にどのようなことが懸念されるのか、また、転勤したくないために転職活動を始める場合に気をつけたいポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説し、社会保険労務士の岡佳伸氏が監修します。

転勤を断ることはできる?転勤拒否できるケースを解説

まずは、転勤を断ることは可能なのかを解説していきます。

原則として転勤を断ることはできない

就業規則に「業務の都合により、配置変換や転勤を命じる場合がある」などの記載があれば、原則として転勤を断ることはできません。社員は「正当な理由がなく」会社の転勤命令を断ることはできず、それでも拒否し続けた場合は、降格や懲戒処分の対象になる可能性があります。

ただし、2024年4月に労働条件明示のルールが改正され、企業が労働者と新たな雇用契約を締結もしくは更新する場合は、就業場所や従事する業務内容について「変更の範囲」の明示が求められることとなりました。これまでも雇入直後の就業場所と従事する業務内容についての明示を求められてきましたが、改正後は、これに加えて、将来的に変更の可能性がある範囲まで明示することが必要となります。

これまで企業は、労働者を転勤・配転・出向させる際に本人から同意を取る必要はなく、人事権の行使によって辞令を出すことが可能でした。しかし、改正後は、将来的な変更の範囲が労働条件通知書や労働契約書に記載されていない場合や、変更の範囲を超えた就業場所への配属、配転をさせる場合、労働契約法上では、「個別に同意を取ること」が求められることになります。

つまり、労働契約書に記載されている就業場所や業務内容の範囲外のことについては、「その都度、個別に労働者の同意を取ることが必要である」と解釈できるため、採用時に交わした雇用契約書に記載のない内容について同意しない=拒否することも可能とは言えるでしょう。

ただし、労働者が転勤・配転・出向などを拒否することによって、企業は人事権の行使が制限されることになるため、今後のキャリアに影響することも考えられます。こうした点も踏まえると、今回の労働条件明示のルール改正に基づいて転勤拒否を検討する場合は、慎重に判断することが重要と言えるでしょう。

(※)出典:「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」(厚生労働省)

転勤を拒否できるかもしれない3つのケース

転勤を拒否できる「正当な理由」については次の3つがあります。ただし(1)はレアケースであり、(2)(3)についても会社が正当な理由と認めてくれるかどうかはケースバイケースです。現実的にはハードルが高いかもしれません。

(1):入社時の雇用契約に反するケース

就業規則に転勤の条文があっても、雇用契約書などで勤務地が限定されている場合は、契約外の勤務地を求める転勤命令は「契約違反」となるため、断ることができます。また、まれに就業規則や雇用契約書に、転勤に関する記述がない場合もあるので、まずはそれらの文書を確認してみましょう。

(2):やむをえない事情があるケース

例えば「親の介護をする人が本人しかいない」「家族が病気で転院ができない」など、社員にとっての不利益が著しい場合は、転勤を拒否できる可能性があります。なお、育児介護休業法において、事業主は、労働者を転勤させようとする場合には、その育児、または介護の状況に配慮しなければならないと定められています。ただし、会社が不利益の度合いをどのように判断し、配慮するかはケースバイケースと言えるでしょう。

(3):不当な理由の転勤であるケース

気に入らない社員を閑職に就かせたり、わざと遠方に赴任させたりするなど「嫌がらせのための人事」であると認められた場合は、転勤を拒否できる可能性があります。ただし、不当な理由であることを立証するには困難が伴うでしょう。

会社が転勤を命じる理由とは?転勤を拒否した場合の可能性と懸念点も解説

会社が転勤を命じる理由として、考えられる一例を紹介します。また、転勤拒否した場合に、どのようなことが起きる可能性があり、どういったことが懸念されるのかも解説します。

会社が社員に転勤を命じる理由・目的

転勤とは、社内の適材適所に人員を配置するために行う「人事異動」のひとつです。人事異動には、部署異動、グループ会社への出向、転籍などがあり、昇進や昇格も含まれます。そうした中で、一般的に「転居を伴う勤務地の変更」を転勤と呼んでいます。

企業が転勤を命じる理由・目的として、考えられる一例を以下に紹介します。

  • 経営、事業戦略の実行……新規事業の立ち上げに伴う増員や、退職や休職に伴う欠員の穴埋めなど、事業戦略の実行や組織編成を目的とするもの。
  • 人材育成……適材適所に人材を配置し、能力を十分に発揮できることによるモチベーションアップや、新たな部署で多様な経験を積むことによるスキルアップなど、社員の成長を目的とするもの。
  • 組織の成長や活性化……異動する社員のノウハウを新たな部署に伝達することにより、組織の活性化を目的とするもの。
  • 不正の防止……しがらみのない人材を配置することにより、取引先との癒着や不正行為の継続など、不正の防止を目的とするもの。

正当な理由なく転勤拒否した場合の可能性と懸念点

転勤を断るのが原則的には難しいとはいえ、昨今は、会社都合の人事のあり方が見直される風潮も出てきている上、労働条件明示のルールの改正も行われています。
に結びつき、後々のキャリアに影響することも考えられます。今の会社に長く勤めたい意思があるのなら、譲歩できる部分も示しながら話し合いをすることをおすすめします。

転勤を退職理由とした場合の懸念点は?

転勤の内示や辞令に納得できなかったことを退職理由とした場合、どのようなことが懸念されるのでしょうか。以降で、考えられる一例として3つの懸念点を紹介していきます。

懸念点1:突然の転職活動に苦戦する可能性がある

転勤の内示や辞令を受けたことが理由で、意図していなかった退職・転職を決意した場合は、急遽、転職活動をスタートすることになります。そのため、転職活動に必要な情報収集、書類作成、キャリアの棚卸し、家族や周囲への説明など、準備段階のプロセスが計画的に進められない可能性があります。

また、転職準備にしっかりと時間を取れなかったために、転職活動に苦戦し、期間が長引くケースも見られます。さらに、転職先がなかなか決まらない焦りから、キャリアや労働条件についてじっくり検討・選択せず、希望に合わない転職をしてしまうことも考えられます。

懸念点2:退職金や、雇用保険の給付に影響が出る可能性がある

「会社都合退職」とは、経営不振やリストラ、倒産などを理由に会社側が労働契約を解除し、退職を余儀なくさせることを指し、「自己都合退職」とは、自分の意志や都合で退職を申し出ることを指します。

就業規則などに転勤の規定がありながら、転勤を理由として退職した場合は、基本的に自己都合退職の扱いになり、退職金の支給額が減額される場合があります。また、自己都合退職では、雇用保険の基本手当(失業給付)がもらえるまでに最短で1カ月かかり、受給期間も会社都合に比べて短くなります。(ただし、転勤先への通勤に関して往復4時間以上かかる場合は、正当なる理由のある自己都合退職者(特定理由離職者)として給付制限期間が無く直ぐ基本手当(失業給付)の受給ができる場合があります)

転職活動を順調に進められなかった場合は、より経済的な不安が生じやすいかもしれません。

懸念点3:転勤先で退職した場合、引越し費用が支払われない可能性も

転勤の配転命令に従ったものの、転勤先で考えが変わり、「やはり退職したい」と決意するケースもあるでしょう。しかし、転勤先で退職した場合、引越し費用が支払われない可能性があります。

雇用者による帰郷旅費の支払いは、原則、18歳未満の労働者が「解雇」を退職事由とする場合に限られ、18歳以上の者については、解雇や自己都合退職や期間満了に伴う労働契約の終了などの理由によらず適用されません。

また、労働条件の明示のルールにおいては、採用時に明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。その際、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合は、雇用者は必要な旅費などの帰郷旅費を負担しなければならないと定められています。
なお、採用時の労働契約締結の時点で全国転勤の可能性を明示されていた場合はこれに当てはまらないため、雇用者には帰郷旅費を支払う義務はありません。企業によっては、就業規則などで帰郷旅費の支払いについて記載しているケースもあるので、確認してみましょう。

転勤が理由で退職を決断する前にやっておきたいこと

望まない転勤の内示や辞令を受けたとき、「転勤するくらいなら退職したい」と焦って退職を決断する人もいれば、「できれば今の会社で働き続けたいが、交渉しても無理だろう」という諦めから退職を選ぶ人もいるでしょう。いずれにしても、退職を決断する前に今の会社でできることに取り組んでおけば、より納得のいく選択に近づけるでしょう。

交渉の余地はあるのか上司に相談する

上司から転勤の打診があったときなどに、「○○という理由で転勤したくない」という意志を伝えること自体に問題はないでしょう。転勤そのものが免除される可能性は低いかもしれませんが、自分の状況を伝えることで、転勤時期や期間、勤務地などには交渉の余地が生まれる可能性があります。

例えば「少し時期を遅らせて欲しい」「戻れる時期を提示して欲しい」と交渉することで、転勤の時期を配慮してもらえたり、「○年後には転勤先からこちらに帰れる」など、今後のキャリアの見通しについて約束を取り付けたりすることができるかもしれません。また、「転勤は受け入れるが勤務地を変更したい」と交渉した結果、同時期に転勤する別の社員と勤務地をトレードしてもらえたというケースもあります。転勤を望まない事情を正直に話し、譲歩する意思や条件を示したうえで、状況が少しでも良くなる代替案を検討してもらえるよう交渉してみましょう。

転勤をポジティブに捉えてみる

転勤には、家族や友人と離れることや、知らない土地での慣れない生活、新たな職場で人間関係を一から築くストレスなど、ネガティブな側面をイメージする人もいるでしょう。しかし、ポジティブに捉えてみれば、「社会人として経験の幅を大きく広げるチャンス」と考えることもできます。

以下に、「転勤のメリット」として考えられることを紹介するので、退職を決断する前に再度、検討してみましょう。

【転勤のメリット】

  • 新しい部門や職務に就き、多様な経験を積むことで、視野を広げやすい。
  • 経験の引き出しを増やすことで、将来のキャリアパスの選択肢が増える。
  • 社内でのネットワークが広がり、情報交換や、新たな仕事に取り組む際の力になる。
  • 物理的な環境や人間関係の変化によるリフレッシュ効果がある。心機一転、仕事に取り組める。
  • 知らない土地に住むことで発見がある。新たな趣味や楽しみを開拓できる可能性がある。

転勤を理由に退職する場合のポイント

転勤を理由に退職を決断する場合に、意識しておきたいポイントを紹介します。

焦らず「キャリアの棚卸し」から転職準備を始める

意に沿わない転勤を理由に転職活動を進めることになった場合、会社に対する不満や「とにかく早く次の仕事を決めたい」という焦りなどから、「今後のキャリアや転職先に求める条件を前向きに考えることができない」というケースも見られます。

しかし、転職活動をうまく進めるためには、キャリアの棚卸しをしっかりと行って「転職活動でアピールできる経験・スキル・強み」を洗い出し、転職先でどのようなことを実現したいか考えることが重要です。冷静になって転職準備を進め、「このような働き方がしたい」「このような経験ができる会社に行きたい」という前向きな転職理由につなげていきましょう。

退職の申し出を行う期限に注意する

現職を退職する際、就業規則に定められた期限内に退職の申し出や退職届の提出を行うことが必要となります。就業規則に定められている退職の意思表示の期限は、一般的に「退職希望日の1〜3カ月前まで」としているケースが多いでしょう。
民法上では、期間の定めのない雇用契約の場合、「退職希望日の2週間前まで」に退職届を出せば退職できると定められているが、トラブルを起こさず円満退職するためには就業規則を事前に確認し、定められている期限に従うことが大事です。なお、退職理由は、「一身上の都合」と伝えて構いません。

転勤の可能性を低くする転職先の選び方と退職理由の伝え方【例文あり】

転勤を理由に転職する場合、「次は転勤のない会社に行きたい」と考える人もいるでしょう。転勤の可能性が低い転職先を探すために、以下を参考にしてみましょう。

地方転勤の可能性が低い転職先を探す

以下のような特徴を持つ企業は、引越しを伴うような地方転勤の可能性が比較的低い傾向があります。

  • 長年地域で事業を営み、広域での事業展開予定がない。
  • オフィスが一拠点のみ。
  • テレワークが基本で、勤務地の概念がない(WebやIT系企業など)。

転勤がない職種を選ぶ

地域限定職やエリア総合職など、勤務地を限定できる職種を選ぶのも一案です。給与や昇格などの面で条件が下がる可能性はありますが、それと引き換えにます。

転職の面接で退職理由を聞かれたときの伝え方【例文あり】

面接で退職理由を聞かれた場合、「転勤を命じられたのがきっかけ」など、退職に至った理由・背景・事情なども併せて説明することで、企業の納得感を高めやすくなるでしょう。

ただし、「会社が信用できなくなった」と批判したり、不平不満を前面に出したりするのは得策ではありません。面接担当者に「人事異動が意に沿わない場合に、反発する傾向があるかもしれない」という懸念を抱かせ、選考で不利になる可能性があります。

こうした場合は会社の立場にも理解を示したうえで、ポジティブに転化させた表現で伝えるのがおすすめです。

以下の例文を参考にしてみましょう。

【退職理由の例文】

  • 「転勤のメリットも踏まえて今後について検討しましたが、やはり私の積みたいキャリアの方向性とは違うと考え、退職して転職活動をすることにしました」
  • 「家族とも話し合いましたが、子供の通学の関係上、引越しが難しく、子どもの成長期に家族が揃って暮らすことを優先しようと考え、退職を決意しました」

急な転勤命令がきっかけで転職する場合は、転職エージェントに相談を

転勤の内示や辞令がきっかけで急遽、転職を考えたときは、転職エージェントの利用も検討してはいかがでしょうか。転職エージェントでは、求職者の希望や経験・スキルにマッチした求人の紹介を行っています。キャリアの棚卸しや面接対策などの転職支援を行なっているケースもあるので、転職活動もスムーズに進めやすいでしょう。また、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーに、「転勤したくない理由」「転勤が難しい背景」なども伝えることで、ベストな選択肢についてアドバイスをもらえるかもしれません。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所代表 岡 佳伸氏

アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

記事作成日:2022年5月31日 記事更新日:2025年07月29日

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

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