
転職活動の手段の一つに「転職エージェント」を利用することがあります。活用すると、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。大きく5つのメリットと、転職エージェントの利用が向いている人、活用する方法について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
【メリット1】転職市場動向や自分の市場価値など、客観的な情報を得られる
転職活動の方向性を決めるためには、自身の経験・スキルが転職市場でどのように評価されるか、つまり「市場価値」を知ることが大切と考えられるでしょう。
転職エージェントの視点で「市場価値」を聞ける
転職市場は、企業の採用ニーズと求職者との「需給バランス」で成り立っています。採用ニーズが高く求職者が少ない職種は選考条件が緩和される傾向がある一方、企業の採用ニーズが低く求職者が多い職種は選考の目が厳しくなりがちです。こうした転職市場の動向や自身の市場価値を、独自で調べて判断するのは難しいでしょう。
転職市場に精通した転職エージェントに相談すると、今のあなたが転職市場でどのような評価を得られるか、客観的な視点でアドバイスを受けられることもあります。
強み・適性・可能性を客観的に把握できる
転職エージェントの面談では、これまでの経験やスキルを確認します。キャリアアドバイザーとの対話を通じ、これまで意識していなかった自身の強み、仕事やキャリアに対する価値観に気付き、適性を活かしたり伸ばしたりできる可能性のある転職先の選択肢を広げることもできるでしょう。
業界・職種ごとの転職市場の動きもわかる
業界・職種ごとに、転職市場がどのように動いているか、情報を得られることもあります。「○○業界には、△△業界の人も多く転職している事例が多い」「○○職の経験を△△職として活かしている転職者が多い」など、未経験分野でも活躍できる可能性を知れることもあるでしょう。
【メリット2】転職活動に必要な求人・企業の情報がわかる
転職エージェントは多くの求人や企業情報を取り扱っていることもあるため、必要な情報を入手しやすいでしょう。
転職サイトにない非公開求人を紹介してもらえることがある
転職エージェントによっては、転職サイトや企業ホームページでは公募されていない「非公開求人」を数多く取り扱っています。非公開求人には、公募すると応募が多く集まりすぎる希少・人気ポジションや、新規事業など経営戦略に関わる重要ポジションなどの求人も含まれています。転職エージェントを利用しなければ見つからない、魅力的な求人に出合える可能性があります。
職場の雰囲気や働き方など、企業情報が豊富
転職エージェントでは過去の転職支援実績から、職場の雰囲気や働き方を把握していることがあります。求人情報を見るだけではわからない、企業選びの判断材料となる情報を得られるかもしれません。
入社後のミスマッチ・後悔を防げる
上記のとおり、企業ホームページや求人情報だけではわからない情報を聞けることもあるため、入社後、「イメージと違っていた」「こんなはずじゃなかった」といったミスマッチを予防しやすくなるでしょう。
転職エージェントを通じて入社した実績がある企業であれば、その転職者から入社後の状況を聞いていたり、「どのような人が採用・活躍に至っているか」という情報を得ていたりする可能性もあるため、その情報を聞いて自分にマッチするかどうかを判断できることもあるでしょう。
【メリット3】書類選考・面接の通過率を上げるサポートをしてもらえる
企業への応募を決意した場合、応募書類の作成や面接対策のサポートも受けられることもあるでしょう。
履歴書・職務経歴書の添削で魅力が伝わる
履歴書・職務経歴書など、自身で作成した応募書類を添削してもらえることもあります。「この経験を強調して伝えたほうがよい」「このスキルはもっと詳細に書いたほうがよい」など、採用担当者に魅力が伝わるような書類に仕上げられるよう、サポートを得られるでしょう。
面接対策のサポートが受けられる
質疑応答でどのような内容を語るか、自身の強みをどのように伝えるかなど、面接対策もサポートしてもらえることがあります。
転職エージェントは、応募企業について「採用背景」や「選考で重視しているポイント」などを把握していることがあります。それをもとに面接でアピールするとよいことなどのアドバイスを受ければ、選考通過率が高まる可能性があります。
不採用理由のフィードバックが改善に活きる
自主応募して不採用になった場合、不採用の理由を企業から聞けることは少ないでしょう。一方、転職エージェントでは、面接後、キャリアアドバイザーが企業の採用担当者から受けたフィードバックの内容を共有してもらえることもあります。
採用を見送られた場合は、その理由を聞き、次の応募先企業選びや面接対策に役立てられるでしょう。また、選考を通過した場合も、評価されたポイントや懸念を抱かれているポイントなどを聞けることがあります。それを受け、次の面接までに対策を行えるでしょう。
【メリット4】年収や労働条件に関してサポートを得られる
希望する年収や労働条件での転職を叶えるために、転職支援のプロのサポートを受けられます。
自分の希望年収が妥当かどうかがわかる
転職エージェントは、各業界・職種・ポジションの「年収相場」を把握していることもあります。転職にあたり「年収○○万円くらいほしい」と希望を伝えたとき、転職市場の相場と照らし合わせ、その金額が妥当かどうか、叶う可能性があるかどうかを判断してもらえるでしょう。
また、希望年収額を得るために、どのような業界や企業を選べば実現の可能性があるか、アドバイスをもらえる可能性があります。
条件交渉のアドバイスが受けられる
年収や待遇、労働条件面で応募企業と交渉したい場合、どのような切り口で交渉すれば円滑に進められるか、受け入れられる可能性があるか、アドバイスしてもらえるでしょう。
【メリット5】無料で転職サポートが受けられる
転職エージェントのサービスは無料で利用することができます。その理由をお伝えします。
求職者は完全無料
求職者は、転職エージェントを完全無料で利用できます。職業安定法第32条の3第2項により、人材紹介事業者が求職者から手数料を徴収することは原則禁止されているためです。
転職エージェントの多くは「成功報酬型」のビジネスモデルです。転職エージェントを介して応募した求職者が入社に至った場合、企業側からその入社者の年収の何割かを「紹介手数料」として受け取っています。
まだ転職を決めていない人でも相談できる
転職するかどうか、意思が固まっていない状態であっても、転職エージェントに相談することは可能です。実際に相談した結果、転職エージェントから「今は現職にとどまって、もう少し経験を積んだほうがいい」というアドバイスを受けるケースもあります。
自分一人で動くより転職を実現できる可能性が高まる
企業に応募する際に、担当のキャリアアドバイザーが推薦してくれるケースもあります。例えば「この方は、御社の課題を解決できる経験・スキルがあります」「カルチャーフィットが期待できる人柄です」など。履歴書・職務経歴書だけでは伝えにくい強みや人柄の魅力を補完してくれるほか、ネガティブに捉えられる可能性がある要素について、フォローのコメントを出してくれることもあります。
企業との面接や面談日時などの調整についても、間に入ってサポートしてくれます。具体的な給与・待遇や条件など、自分からは直接質問しにくいことを代わりに確認してもらえる場合もあります。
このようなサポートを受けることで、個人で応募するよりもスムーズに選考を進められ、転職実現に至る可能性があります。
スムーズに退職するためのアドバイスをもらえる
応募企業への入社を決めた場合、現職を円満に退職するためのアドバイスをもらえることもあります。
また、退職に際し、次のようなフォローをしてくれる場合もあります。
- 退職の手順を確認してくれる
- 現職に退職希望を伝えるタイミングを教えてもらえる
- 会社が引き留めにくい転職理由の伝え方を教えてもらえる
転職エージェントの利用が向いている人 5つの特徴
転職エージェントの利用が向いている人は、次の5つのいずれかの特徴に該当すると考えられます。
- 転職が初めての人
- まだ転職するか迷っている人
- 仕事を続けながら転職活動する人
- キャリアチェンジを検討している人
- 選考の通過率を上げたい人
特徴1:転職が初めての人
初めての転職活動では、「何から始めたらいいのか?」「求人が多すぎてどうやって選べばいいのかわからない」など、迷いながら手探りで進めるケースが多くなる傾向があります。効率的に転職活動を進められなかったり、必要な情報を収集できなかったりすることもあるかもしれません。
その点、転職エージェントを利用すると、応募企業選びや書類作成、面接対策など、さまざまなアドバイスを提供してくれたり、次に取り組むことを示してくれたりします。困ったときに相談できる相手がいるのは非常に心強いでしょう。
特徴2:まだ転職するか迷っている人
まだ転職するかどうか迷っている人も、転職エージェントのキャリアアドバイザーと対話することで、
キャリアへの考え方が整理でき、今後の方向性が明確になる場合もあります。新しい選択肢が生まれることもあるでしょう。
特徴3:仕事を続けながら転職活動する人
仕事を続けながら転職活動を進めるのは、時間的にも精神的にも負担が大きいものです。その点、転職エージェントでは、求人の選定や企業との面接日程調整など、手間がかかる作業をサポートしてくれます。また、現在の会社を円満退職するためのアドバイスを受けられる場合もあるでしょう。
特徴4:キャリアチェンジを検討している人
転職エージェントでは異業界・異職種への転職支援の過去の実績から、これまでの経験・スキルを活かして、どのようなキャリアチェンジの選択肢があるかを提案してくれるでしょう。
また、未経験業界・職種への転職を希望する場合でも、やみくもに「未経験可」の求人を勧めるのではなく、「経験者が有利な職種のため、応募社数を増やしたほうがいい」「○○職種を経験して段階的にキャリアアップする方法もある」など、転職市場の相場観に基づいた的確なアドバイスを受けられることが期待できます。
特徴5:選考の通過率を上げたい人
転職エージェントからは、選考を通過できる可能性がある求人の紹介をはじめ、応募書類の添削、面接対策のアドバイスを受けられることもあります。応募時には推薦状を書いてくれることもあります。こうしたサポートにより、選考通過率を上げられる可能性があるでしょう。
転職エージェントのデメリットを解消してメリットを最大化する方法
転職エージェントを利用する中では、ときにはデメリットや不満を抱くこともあるでしょう。そうしたデメリットを解消し、利用メリットを最大化する方法をお伝えします。
「転職を急かされる」と感じるときは、希望ペースを伝える
転職エージェント側は、求人紹介や企業の選考など、良かれと思って前へ進めていても、求職者側は「急かされている」と感じることもあるようです。
その場合は、「自分はこれくらいのペースで進めていきたい」「転職時期は○○頃を考えているので、急いでいない」など、希望を伝えましょう。
活動ペースに限らず、自身がどのようなサポートを求めているかを明確に伝えることで、認識のギャップがなくなり、満足のいくサポートを得られるようになる可能性があります。
「希望とズレた求人ばかり紹介される」と感じるときは、条件を整理して伝える
転職エージェントから紹介される求人が希望とズレていると感じる場合、希望条件を「必ず叶えたい条件」と「妥協できる条件」に分けて整理し、伝えてみましょう。例えば「年収○○万円以上は譲れないが、勤務地は妥協できる」「リモートワークができることは絶対条件だが、企業規模は問わない」などです。
また、紹介されて「違う」と感じた求人について、「どの部分が違うのか」をフィードバックするといいでしょう。
このように、「大切にしたいこと」「こだわり」を明確に伝えれば、マッチングの精度が上がり、希望に合う求人を効率よく紹介してもらえる可能性が高まるでしょう。
「担当者が合わない」ときは、変更依頼・複数社の利用を検討する
転職エージェントのキャリアアドバイザーも「人」であるため、自身と相性が合わないと感じると、コミュニケーションをうまく取れないことがあるでしょう。その場合は、担当キャリアアドバイザーの変更を申し出るか、別の転職エージェントを利用してみることも検討しましょう。
転職エージェントは、複数に登録しても問題ありません。さまざまなキャリアアドバイザーと話してみて、信頼できると感じたアドバイザーに出会えれば、ストレス少なく転職活動を進められるでしょう。
ただし、利用する転職エージェントが多すぎると、やりとりや応募の調整が煩雑になるため、2~3社程度にとどめるといいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年04月13日
記事更新日:2024年01月09日
記事更新日:2024年12月02日
記事更新日:2025年06月19日 リクルートエージェント編集部
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