日々の仕事を通じて、自然に人が育って行く文化を大切にしたい。

近畿圏で長く信頼とブランドを築いてきた阪急阪神不動産は、首都圏でも住宅事業の拡大を進めています。分譲マンションを軸に、宅地戸建事業、収益用不動産の開発、更には再開発・建替え事業へと取り組みを広げる同社は、この市場でどのようなポジションを目指すのか。住宅事業本部の小林朋巳氏に、これまでの歩みと、今後の事業・組織について聞きました。

阪急阪神不動産株式会社/常務執行役員 住宅事業本部 副本部長(首都圏担当)

小林 朋巳

近畿圏で築いた信頼を、首都圏へ

── まず、小林様の現在の役割と、首都圏で住宅事業を拡大してきた経緯を教えてください。

小林:

住宅事業本部の副本部長として、首都圏の住宅事業を担当しています。本部では分譲マンション、戸建て、収益用不動産などを手がけていますが、私自身が長く携わってきたのは分譲マンション事業です。当社が首都圏で住宅事業を始めたのは、2000年代の初めでした。近畿圏には安定した事業基盤がありますが、更なる事業規模拡大のため、首都圏への進出を決断しました。そこで最初に注力したのが、ストック型事業と比べ、投資の回収期間が比較的短い、フロー型の住宅事業でした。人員を本格的に拡充したのは、リーマン・ショック後の2009年頃です。私が入社したのもその頃で、以来17年にわたり携わってきました。

── 首都圏では、どのような会社になることを目指しているのでしょうか。

近畿圏で評価いただいている当社への信頼を、首都圏でも守り抜き、同じようにご評価いただきたいと思っています。近畿圏では、住宅を購入されるお客様にも、土地を所有する権利者の皆様、一緒に事業を進める外部パートナーの企業様にも、「阪急阪神なら、必ず期待に応えてくれる」という、長い歴史によって培われた揺るぎない信頼があります。一方、首都圏には阪急や阪神の電車は走っていませんし、大阪梅田のように、グループが長く街づくりに携わってきた場所もありません。それでも、近畿圏で出来ていることが首都圏でできないはずはないと決意しています。目の前のお客様や事業パートナーに誠実に向き合い、「首都圏でも阪急阪神は変わりませんね」と言っていただける仕事を一つずつ積み重ねて行く。近畿圏の阪急阪神と同じ信頼を培うのに近道は無いと思っています。

── 分譲マンション事業では、どのような目標を置いていますか。

首都圏では、年間600戸の安定的供給を2030年度までの目標にしています。首都圏全体のマンション供給は、現在は約20000戸程度です。その中で600戸を超えると、供給戸数で上位10社以内に入ります。現在の当社は年間300〜400戸ほどですから、倍増させる計画です。

もちろん、供給戸数が多いというだけで信頼とブランドが確立されるわけではありません。しかし、お客様に会社を知っていただくにも、事業用地の情報を持つ業者様や事業パートナー様と円滑に協業して行くためにも、一定以上の安定した事業規模は必要です。いくら品質の良い住宅を供給していても、実際の物件をあまり見かけない会社では、知名度を上げることは出来ません。近畿圏では、品質に対する目の優れたお客様と長く向き合い、その期待に応える品格の高い住宅を作ってきました。その商品づくりを継承し、600戸まで供給を増やしていくことは簡単な舵取りではありませんが、挑みがいのある目標だと考えています。

長い時間軸でも、事業に取り組む姿勢

── 具体的にはどのような手法で、首都圏マンション事業を広げていますか。

力を入れている手法の一つが、再開発事業と既存マンションの建替え事業です。一般的な分譲マンション事業では、いつ、どこで、どれくらいの量の事業用地が売りに出るか分からない不透明さがあります。再開発・建替え事業をポートフォリオに加えることでこれを補完することができます。商業施設開発を伴う再開発事業では、当社の街づくりのノウハウを生かした強みの発揮も可能です。

建替えは短くても5~6年以上、再開発事業だと10年以上の時間を要することもあります。時間をかけた分だけ、当社の信頼とブランドを浸透させる街づくりに寄与することができます。

── マンションの建替えは、どのように進めるのでしょうか。

老朽化の進んだ建物に、一番良い対策を検討するところから事業は始まります。建替えはその選択肢の中の一つです。

建替えは、建物の権利者の皆様に計画を説明し、ご賛同していただくことに力を注ぎます。一人ひとり、年齢も家族構成も、資金面のご事情も違います。法律に基づいて踏むべき手続きも多く、計画が思ったように前に進まない可能性もあり、高い専門性が求められる事業です。

これまで、千代田区一番町や港区白金台で、建替えによるマンションを竣工させました。また近年では、老朽化した分譲マンションを一棟一括で当社に売却していただく「マンション敷地売却制度」を利用した建替え事業にも取り組んでいます。渋谷区の幡ヶ谷や神宮前で事業が進捗中です。老朽化したマンションの建替えは、将来必ず社会課題としてクローズアップされます。建替え事業は専門的なノウハウを要し、参入障壁の高い事業だからこそ、当社は早くから力を入れて取り組んでいます。

── 時間のかかる案件に取り組む姿勢は、どこから生まれているのでしょうか。

当社グループは、沿線に暮らす方々から、さまざまなご相談を受け、その期待に応えて参りました。鉄道は、一度つくれば終わりではありません。お客様の生活に寄り添い、10年後、20年後にもその街を選んでいただけるように、住環境や生活利便性などの街の魅力を高め続けていく必要があります。その感性が不動産事業にも息づいているのだと思います。

常にニーズの変化をとらえ、選択肢を備える

── 住宅価格が上がる中、今後はどのような展開を考えていますか。

当社の首都圏住宅事業は現在、東京都内の城南・城西方面、横浜市、川崎市などを重点エリアにしています。人気が高く、住んでみたいと思う方の多い場所で、立地にも商品にも価値を感じていただける品と質を兼ね備えた住宅を提供する。それが、近畿圏で培ってきた当社の強みを発揮するのに最もふさわしいと考えています。

一方で、価格面においては昨今、土地代と建築費が高くなり、どこで住宅を作っても高価になります。そこで所有権の物件だけでなく力を入れ始めたのが、定期借地権の分譲マンションです。土地を所有者から一定期間借用して物件化するため、所有権の物件より販売価格を抑えることが可能になります。たとえば板橋区の大山では、お茶の水女子大学の敷地を借地してマンションを供給しました。国立市では、一橋大学の敷地内に約200戸を供給する事業者に選定されています。定期借地権方式を取ることで、事業エリアの維持拡大も可能になっています。

── 今後、顧客層の変化なども起きていくでしょうか。

高齢化と単身化が今後ますます進むことは明らかです。そんな中、首都圏には今後も仕事を求めて人が集まります。海外からのインバウンド人口も増加するでしょう。いま当社が供給している住宅はファミリー向け分譲マンションが中心ですが、10年後も同じマーケット構成であるとは限りません。若い単身者なら、購入よりも賃貸を選ぶ人が多くなるかもしれません。高齢者に必要な設備やサービスにも対応が必要となります。将来多様化するニーズに応えるために首都圏では、老人ホーム、防音賃貸マンション、留学生ターゲットの学生マンション等の事業化を始めています。

── 新しい商品や事業は、社内でどのように検討しているのでしょうか。

毎年、多くのテーマでプロジェクトチームをつくり、事業化の可能性を検証しています。担当者が市場を調べ、事業性を確認し、当社が取り組む価値があるかを検討しています。事業化へ進むテーマもあれば、検討を止めるものもあります。社会ニーズの変化に常に敏感にアンテナを立てている必要があります。当社には、先読みを進め、アグレッシブなトライアルを推進する良い文化があると思います。

自ら深く考え、判断し、自らの意志で前へ進む

── 首都圏の事業を広げるうえで、どのような人材を求めていますか。

現在、首都圏の住宅事業には約160名が在籍しています。2030年度には約200名になる見込みです。

会社の課題を『自分事』として捉え、責任感を持って挑んでいく人を求めています。

また、当社の事業は、一人では完結しません。たとえば用地仕入れの担当者は、社内の各部門に加え、仲介不動産会社、建設会社など、多くの方々と協力して事業を進めます。ですから主体性や責任感と同じくらい、コミュニケーション能力が要求されます。キャリア採用の場合、基本的には実務経験のある即戦力を期待していますが、それだけを重視しているわけではありません。いずれ首都圏の事業を率いるような主体性ある姿がイメージでき、我々のチームの一員となれるコミュニケーション力を持つ人間性豊かな方との出会いをお待ちしています。

── 阪急阪神不動産には、どのように人を育てる風土・文化がありますか。

上司や先輩が教え込むというより、日々の仕事を通じて自然に人が育つ文化を大切にしたいと思っています。私はこれまでたいへん多くのメンバーと仕事をしてきたと思いますが、育成のために手取り足取り教えるようなことをしたことはありません。自分で考え、判断し、実行しようという思いに寄り添い、時には強くサポートし、時にはぶつかり合って、本人に答えを出してもらうよう心掛けてきました。

人は、失敗からも学びますが、成功した時の方が何倍も大きな自信を得ます。ですから、常に自ら考えを尽くし、その判断を信じて挑み、成功して欲しい。若い社員から問題発生の報告が終わると、私は「それで?」と聞き返します。私の言った通りやって成功しても、本人の成長度合いは限定的です。自ら決断し成功した若者が、自然にどんどん育って行く文化は企業の財産だと思うのです。

── 社員から、直接相談を受けることも多いのでしょうか。

新入社員でもベテラン社員でも、私と普通に同じように会話してくれていると思います。私がデスクで昼食の最中に、「ちょっといいですか」と声をかけられることもあります。早く判断したい時には相手の状況なんか考えずに平気でやって来る若者が好きです(笑)。たった一本の電話やメールを明日に延ばしてしまったことで、他社に遅れを取り、負けてしまうこともある競争の世界です。話したい時に、役職や年次を気にして立ち止まっている組織で勝ち抜けるとは思っていません。

── 阪急阪神不動産への転職を考える方に、伝えたいことはありますか。

近畿圏で安定した事業基盤を持つ会社が、首都圏で事業を成長拡大させている途上にあります。首都圏という大きなマーケットで、信頼とブランドを確立するのは容易ではありませんが、当社のような企業の事業拡大の最前線に立てるのは、ビジネスパーソンとしては大変やりがいのある貴重な経験だと思います。入社する方には、やるからにはとことんやって欲しいと思っています。仕事人間になれ、という意味ではありません。人間は仕事でも遊びでも、自分が選んだものにのめり込み、真剣になっている姿が一番美しいと思います。かけがえのない時間の中で、自分の力でやり尽くし、成長して行って欲しい。面接でも、自分は何のために転職するのか。なぜ阪急阪神不動産なのか。自分の言葉でありのままに話していただけたらと思っています。

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