株式会社岩手銀行地域の未来を、デジタルでつなぐ。デジタル推進部が描く、地域金融の新しい挑戦

地域金融機関に求められる役割は、預金や融資にとどまりません。人口減少や人手不足、企業のDX投資拡大が進む中、岩手銀行は第22次中期経営計画で「地域共創」と「企業成長」の両立を掲げています。デジタル推進部は、アプリ、データ利活用、AI活用などを通じて、お客さまとの接点と地域への価値提供を進化させる部署です。今回お話を伺ったのは、高橋さん、伊藤さん、内藤さん。地域に根ざす銀行が、なぜいまDXに挑むのか。働く人の視点から、その最前線を伺いました。

株式会社岩手銀行/デジタル推進部 部長

高橋 暢氏

岩手銀行におけるDX推進を牽引。個人向けアプリ、ホームページ、法人向けサイトなどのお客さま接点のデジタル化に加え、データ利活用やAI活用を含むデジタル戦略を統括。銀行業務に精通した行員と異業界出身の専門人材をつなぎながら、地域共創と企業成長の両立に向けた取り組みを推進している。

株式会社岩手銀行/デジタル推進部 オフィサー

伊藤 幸太氏

システムエンジニア出身。データ利活用基盤の企画メンバーとして、機械学習やAI活用による営業支援などに携わる。デジタル技術を活用し、お客さまに最適なサービスを届ける仕組みづくりを担っている。

株式会社岩手銀行/デジタル推進部

内藤 遥氏

制作会社出身。現在はホームページの運用やリニューアルプロジェクトなどを担当。前職で培ったWeb・制作領域の知見を活かしながら、非対面チャネルを通じたお客さま接点の強化に取り組んでいる。

地域の縮退リスクを見据え、銀行の役割をデジタルで広げる

── 地方銀行を取り巻く変化の中で、岩手銀行がDXに注力する理由を教えてください。

高橋:岩手は人口減少が全国に先行して進んでいる地域です。何もしなければ、地域が少しずつ衰退していく足音を感じる場面もあります。だからこそ当行は、地域のリーディングバンクとして、地域経済の発展と活性化に向けた中核的な役割を果たしていかなければなりません。第22次中期経営計画では「地域共創」と「企業成長」の両立を掲げていますが、その実現においてデジタル活用やITの専門性は欠かせません。

もう一つ大きいのが、金融業界そのものの変化です。オープンバンキングが進み、さまざまな企業が金融サービスに参入する時代になりました。お客さまとの接点を失えば、銀行は金融機能の裏方になってしまうかもしれません。AIの進化も同じです。どう使うかではなく、どう価値につなげるかが競争力に直結する。地域に根差した関係性を守りながら、新しい価値提供へ変えていくことが、私たちのDXの出発点です。

私たちが目指しているのは、従来の銀行業務を便利にするだけではありません。企業の生産性向上、個人のお客さまの利便性向上、地域の課題解決を、金融サービスと非金融の機能を組み合わせながら支えていくこと。お客さまから最初に相談される存在であり続けるためにも、デジタルを使って銀行の役割を広げていく必要があります。

アプリ、データ、AIをつなぎ、お客さま接点を進化させる

── デジタル推進部は、どのような役割を担っているのでしょうか。

高橋:デジタル推進部の出発点は、お客さま向けの営業サービスをデジタルでどう進化させるかにありました。個人向けアプリ、ホームページ、法人向けサイトなど、非対面のチャネルをより使いやすく整えることから始まり、現在はお客さまからお預かりしている情報やデータを理解・分析し、最適なサービスを届けることに力を入れています。今年度からはAI活用も含め、担当領域をさらに広げました。

部署には約25人が在籍し、3分の1は異業界から加わったメンバーです。エンジニア、マーケティング、データエンジニア、システムエンジニアなど、これまで当行に少なかった専門性が入ることで、議論の幅が広がっています。銀行業務を理解している人材と、外部で経験を積んだ人材が同じチームで考えること。それぞれの知見を持ち寄り、行内の業務改革とお客さまへの価値提供を一体で進められる点が、デジタル推進部の強みです。

若い行員のデジタルネイティブな感性も大切にしており、まずはやってみて、PDCAを回しながら良いものにしていく進め方を意識しています。従来の銀行は、対面の強さを大切にしてきました。これからはそこにデジタルの仕組みを重ね、お客さまが必要とする場面で自然に接点を持てる状態をつくることが重要です。

データを駆使し、地域に届くサービスへ磨き込む

── 具体的なIT・DX施策と、その先にある価値について教えてください。

高橋:個人向けアプリでは、アクティブユーザー20万人という目標を1年前倒しで達成し、現在は23万〜24万人のお客さまにご利用いただいています。今後はAIを活用したコンタクトセンターも立ち上げ、対面では伝えづらいことや、もう一歩踏み込んだ相談を受け止める窓口へ進化させていく予定です。

伊藤:私が企画メンバーとして関わったのが、データ利活用基盤の構築です。以前の銀行は、ベンダーに委ねる領域が多くありました。ただ、これからは自分たちでデータを取得し、加工し、活用できる環境が必要だと考え、3〜4年かけて導入を進めました。現在は機械学習を使い、カードローンを必要としている可能性が高いお客さまに絞ってご案内するなど、具体的な活用も始まっています。

大切なのは、データを使うこと自体を目的にしないことです。誰の、どの課題を解くのか。その目的があって初めて、データ利活用は意味を持ちます。一方で、金融機関である以上、セキュリティや正確性への配慮は欠かせません。新しい技術を早く入れるだけではなく、安心して使える状態に整え、現場に浸透させることも私たちの役割です。行内で生まれた仕組みを、お客さまにとって使いやすいサービスへ磨き込む。その積み重ねが、岩手銀行のDXを支えています。

堅実さと挑戦心が共存する場所で、上流から実装まで関われる

── デジタル推進部で働く面白さと、組織風土を教えてください。

伊藤:前職ではシステムエンジニアとして働いていましたが、役割が細かく分かれている環境でした。いまの部署では企画から導入、活用まで幅広く関われるため、自分の考えを形にしていく手応えがあります。金融業なのでセキュリティには高い水準が求められ、一般企業より時間がかかる場面もあります。それでも、やりたいという熱意があれば応援してくれる環境です。

内藤:私は制作会社から転職し、現在はホームページの運用やリニューアルプロジェクトを担当しています。前職はスピード重視でしたが、当行は失敗をしないように丁寧に進め、チームで多角的に確認する文化があります。穏やかで堅実な雰囲気がありながら、新しい取り組みにも挑戦できる。制作会社ではクライアントとの関わりが断片的になることもありましたが、ここではデータ活用のチームが隣にいるからこそ、お客さまの反応まで見ながら改善できます。

高橋:若手の意見や異業界出身者の視点は、部署に新しい問いを生みます。銀行のやり方を尊重しながらも、外から見た違和感を持ち込んでもらえることに価値がある。安定した基盤の上で、地域の未来に関わる実装まで担える点は、当行ならではの魅力だと思います。

異業界の経験を、岩手の未来につなげる仲間を求めて

── 異業界人材やUIターン希望者に期待することを教えてください。

高橋:この2年で5〜6人の中途採用者が加わりました。プロパーか中途かで分けるのではなく、銀行員は銀行員としての経験を生かし、異業界から来た方はそこで培ったキャリアを持ち寄る。その掛け合わせが大切です。金融未経験の方も、ベンダーや周囲のメンバーと協力しながら、伴走する形で成長を支えています。

求めているのは、地元や地域のために、自分が考えたことを実現したいという思いを持つ方です。実際に、5年、10年と首都圏などで経験を積み、家族ができたタイミングで岩手に戻って仲間になる方もいます。一方で、岩手出身に限定しているわけではありません。熱量があり、地域の課題解決に自分の専門性を活かしたい方であれば歓迎します。

伊藤:システムのスペシャリストとして、企画や新しい技術の導入にも挑戦していきたい方は特に歓迎しています。生成AIなどを活用し、お客さまだけでなく従業員の業務も楽にできる余地はまだあります。IT、データ、マーケティング、Web、企画の経験は、地域金融の未来をつくる力になるはずです。

内藤:Webや紙など手段はさまざまですが、最終的にはお客さまに「この地域で金融サービスを利用するなら、将来の希望や家族、未来まで預けたい」と思っていただける接点をつくることが大切です。地域に根ざしているからこそ、短期的な制作物では終わらず、運用しながら関係性を深めていける。異業界で培った経験を、岩手の暮らしや企業の未来につなげたい方にとって、挑戦しがいのある環境です。

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