宇宙の今を知る、SSAシステム運用担当編|JAXA(宇宙航空研究開発機構)

スペースデブリの接近や衝突のリスクなど、人工衛星や宇宙ステーションが無事に軌道へ乗った後も、宇宙空間には目に見えない危険が常に待ち受けています。こうした危険から人工衛星を守り、無事ミッションを続けられるよう見守っているのが、JAXAでSSAシステム運用を担当する渡邊さんです。今回は渡邊さんに、お仕事の内容や中途採用でJAXAに応募した経緯、一緒に働きたいと思う人物像などについてお聞きしました。
JAXA(宇宙航空研究開発機構 )追跡ネットワーク技術センター SSAシステム運用管理
渡邊優人 (わたなべ まさと)
・2020年 中途採用
・2020年 追跡ネットワーク技術センター配属
宇宙状況把握(SSA)システムで人工衛星を守る仕事
―渡邊さんのお仕事内容について教えてください。
渡邊:私は、JAXAの追跡ネットワーク技術センターというところで、SSA(SSA: Space Situational Awareness)システムの運用管理を担当しています。SSAシステムは、スペースデブリを観測するレーダーや光学望遠鏡、およびそれらの観測データを分析して軌道計算や各種解析を行う解析システムから構成される、宇宙状況把握のためのシステムです。私たちは、SSAシステムを使い、宇宙を飛んでいる他の人工衛星やスペースデブリ(宇宙ゴミ)を監視します。そして、JAXAの人工衛星に何かぶつかりそうなものがないかを調べたり、またもしぶつかるような危険性があればそれを回避したりするお手伝いをしています。
―JAXAの追跡ネットワーク技術センターは、どのようなことをする施設なのでしょうか。
渡邊:ロケットなどで打ち上げた人工衛星は、そのままでは使えません。地上と繋ぐためには、とてつもなく大きなアンテナが必要なんです。
日本中・世界中にあるそれらのアンテナを繋いだネットワークや、アンテナそのものの維持管理をするのが、私が所属している追跡ネットワーク技術センターというところのお仕事になります。

―後ろに見えているものは何ですか?
渡邊:これは、衛星レーザー測距装置(SLR)というものです。人工衛星のなかには、反射器、ようは鏡がついているものがあるのですが、その鏡に向かってあそこの開口部からレーザー(光)を射つことで、すごく精密に衛星までの距離を測ることができるんです。
なぜそんなことが必要かというと、地球を観測する目的の衛星の場合、自分の位置をきちんと正確に知る必要があるからですね。このレーザーを使うと、それが可能になる。ここは、そのための施設になります。
管制室では多くのJAXAスタッフが地上から宇宙を見守り、支えています。渡邊さんもまさにそうした「地上のプロフェッショナル」のお一人です。
レーダーの研究開発を経て、JAXAへ
―宇宙を目指してJAXAに転職されたのでしょうか?
渡邊:全然そういうわけではなかったんです。
前職では、「航空機を監視するレーダー」に関する研究開発などをしていました。実はその職場の近くにJAXAがあったので、仕事に行くときにいつも視界に入っていたんですよね。「どんな仕事をしているのかな」と気になっていました。
そういったこともあり、仕事探しの途中でたまたまJAXAのサイトを見に行ったら、JAXAが今度は人工衛星を監視したりスペースデブリを監視したりするレーダーを開発しているということで。それに伴い、ちょうどレーダーシステムの運用や研究開発に関する募集が出ていたんですね。「あ、中途採用でもこういう仕事を募集しているんだ」と知り、「そこでなら自分の専門性が生かせるかな」と思い、JAXAに来ました。
―レーダーの研究をはじめたきっかけについて教えてください。
渡邊:父親がすごく飛行機や無線が好きだったので、小さい頃からそういったものに親しみを持っていました。
それで大学の研究室を選ぶときに、「どうせだったら電波をやろうかな」と思ってレーダーを選んだら、いつの間にかのめり込んでしまって(笑)。大学4年から今日までずっと、レーダーに関わる研究や仕事をしています。
電波とか機械を扱うのはやっぱり楽しいんですよね。大学時代は自分で実験装置を作って実験をしたり、前職でもフィールドテストといって空港のなかに実験サイトを置かせていただいたりして実験をしていました。今は仕事として、実験だけではなく運用も一緒にやるようになりました。

―たまたま求人で見かけて応募されたとおっしゃっていましたが、選考はどのように進まれたのでしょうか?
渡邊:非常に私の専門分野にマッチした公募だったので、書類を出して以降は「ぜひ」ということで面接なども順調に進み、そのままめでたく採用ということになりました。たまたま私の専門分野にマッチするお仕事が、たまたま中途採用で出ていたということになりますね。
大学4年生から博士課程まで学んできたレーダーの知識を生かし、航空機を見守る研究開発職へ。そしてその経験をもとに、今度は宇宙を見守るJAXA職員に。「ちょっとした興味」に引っ張られるようにしてたどり着いた宇宙開発というフィールドで、渡邊さんは今日も任務を遂行しています。
苦労した初仕事から、「何でもできる先輩」へ
―これまでで一番大変だったお仕事について教えてください。
渡邊:JAXAに入って一番はじめに担当した仕事です。
先ほどお話した、鏡の付いた人工衛星にレーザー(光)を射つことで衛星までの距離を精密に測る衛星レーザー測距装置(SLR)。その安全装置に関する業務でした。SLRのレーザーを宇宙に向かって発射しているときに空を飛んでいる航空機が横切らないよう、レーダー(電波)を使って見守るための測距装置です。
JAXAに来てひと月やふた月の頃からはじめて、「この電波を発射しても問題ないか」とか、「そもそもこの装置は本当にSLRの安全装置として機能するのか」といった観点での評価をしました。これがなにぶん、国内ではじめて使う装置だったので……説明して承認を得るまで、本当に苦労しましたね。
―JAXAにその担当の方はいらっしゃらなかったのでしょうか。
渡邊:ちょうどレーダーがわかる人間が入ってきたので、「もうこれは適任だろう」といって任されました(笑)
―ここでは後輩の庵智幸(いおり ともゆき)さんにもお話を伺いたいと思います。
後輩から見て、渡邊さんはどのような方でしょうか。

庵:パッとこの質問を聞いて思いついた印象は、やっぱり「何でもできる先輩」ですね。研究開発はもちろんのことですが、資金管理だとか他部署や契約相手先との調整・コミュニケーション、プレゼンまで。「どこに行ってもどんなことでもそつなく仕事をこなす」というイメージがあります。
―ただのレーダー専門家じゃないですね。
庵:はい、その範囲を超えていると思います(笑)
―はじめての後輩とのことですが、いっしょに働かれてみていかがですか?
渡邊:庵さんもJAXAに来る前は大学で職員をされていたようで、私とキャリアが似ているんですよね。そういうこともあって、一緒に仕事をするのが本当に楽しいんです。あと、やっぱり色々な仕事を任せることができるので、自分もラクになったなと思っています。
最先端の宇宙開発に携わるということは、前例のない業務や緻密な調整が必要不可欠です。だからこそ、他業種で培ってきた様々な知識や能力が生きてくるのだといいます。
専門を究めた先にある、宇宙の仕事
―宇宙開発の仕事って、やっぱり面白いですか?
渡邊:そうですね。私は特に「宇宙に憧れがある」「宇宙が大好きだから」といって転職してきたわけではないのですが、やっぱり仕事として取り組んでいくなかで興味も愛着も湧いてくるものです。仕事を通して宇宙がより身近なものになることで、宇宙開発に携わることのやりがいも面白さも感じられるようになりました。
―どのような仲間と一緒に働きたいですか?
渡邊:今、宇宙開発という仕事の領域がかなり広がってきていると感じます。だからこそ、多彩な能力を持った人材が必要なんですよね。
私も専門分野一本でやって来たところから今の仕事をしているので、ずっと宇宙を目指して努力してきたという方だけではなく、他分野での経験がある方にこそ、「その経験をこの宇宙開発の分野に適用できないか」という風に考えてみてもらいたいと思っています。本当に、幅広い分野から新しい人材が来てくれたら大歓迎です。
―渡邊さんから見て、JAXAで活躍されている方の特徴などがあれば教えてください。
渡邊:宇宙開発は一人ではできないので、基本的にはチームで動きます。専門分野に特化した人間はその能力が生かせるように働ければいいし、コミュニケーション能力が高くて対外調整が得意な人間はそういったポジションに従事していただければいいと思っています。そんな風にパズルのようにメンバーを組み合わせていき、組織の垣根を越えて力を合わせることで、宇宙開発が進んでいくのではないでしょうか。そう考えると、当然その選択肢は多ければ多い方がいい。どんな方にも、活躍できる可能性があると考えています。
―これから宇宙業界を目指す方々にメッセージをお願いします。
渡邊:「宇宙開発の仕事」と聞くと、人工衛星を打ち上げるためのロケットの開発や、宇宙で仕事をする人工衛星の設計などを思い浮かべる人が多いかと思います。でも、宇宙開発という業界のなかには、私のように、その人工衛星が宇宙で仕事をするためのインフラを支えるという役割を担う人も多くいます。宇宙開発は、色んなスキル、色んな技能を持った人たちの力が合わさることで進んでいくものです。ぜひ幅広い分野から、宇宙開発という業界に参加していただけたら嬉しいです。

宇宙開発は、決して一人でできるものではありません。それぞれの専門性を持つ人たちが組織の垣根を越えて力を合わせること。その積み重ねが宇宙を支えています。
「自分の好きだった専門分野を極めた先に、偶然巡り合った素敵な職場。それが宇宙でした」
そんな風に語る渡邊さんのように、あなたのキャリアの先にも、宇宙の仕事が待っているかもしれません。
<関連動画>
渡邊さんの1日に密着!専門知識を活かして活躍するJAXA主任研究開発員のお仕事をご紹介します。
※JAXAのキャリア採用は公式ホームページからのみ受け付けております。