
「職務要約」は「職務概要」とも呼ばれ、職務経歴書の冒頭に記載しておくことで、採用担当者が応募者の経歴を短時間で把握しやすくなることが期待できます。そこで今回は、職務要約の基本的なルールや作成時のポイント、具体的な例文や改善例について組織人事コンサルティングSegurosの代表コンサルタント・粟野友樹氏が解説します。
目次
職務経歴書の職務要約は「短時間で経歴と強みを伝えるため」に必要
職務要約は、採用担当者に応募者の人物像や強みを端的に伝える役割を果たします。職務経歴書の冒頭に要点をまとめることで、読み手の興味を引き、書類全体をよりしっかり読んでもらえる確率も高まります。
採用担当者も、応募者の経験・スキル、強み・特徴など応募書類の内容の要点を掴み、短時間に把握するために職務要約を利用していると考えられます。裏を返せば、職務要約のわかりやすさや読みやすさが応募者の第一印象につながることも考えられるでしょう。
したがって、職務要約は限られた時間の中で印象を残すための「掴み」として、非常に重要なパートといえます。
職務要約の基本的なルール
職務要約を作成する際の、基本的なルールについて説明します。
200~300文字程度にまとめる(3~5行が目安)
職務要約は、長すぎると読み手の負担が増えるため、文字数でいうと200~300字程度、A4サイズのWordの1行40~50字の書式であれば3~5行程度にまとめるのが理想的です。
キャリアの全体像を端的に示す
自身のキャリアの棚卸しや自己分析を通じて、自身の経験やスキルのコアとなることを洗い出し、応募企業や職種との接点がある内容を中心に構成して、自身のキャリアの全体像を端的に示しましょう。そうすることで、応募企業や採用担当者に自身の経験・スキル・実績・強みなどが早期かつ的確に伝わる効果が期待できます。もちろん、キャリアの詳細を伝えることも大事ですが、はじめに全体像を伝えたほうが理解されやすいでしょう。
強みとなる業務内容を優先的に述べ、実績などを補足する
職務要約は、これまでの経歴を簡潔にまとめたダイジェスト版なので、すべての経歴を均等に書く必要はありません。特に強調したい業務内容や経験、スキルにフォーカスして優先的に述べましょう。その上で、経験やスキルを裏付ける実績などを補足することをお勧めします。
アピールにつながる職務要約にするポイント
職務要約は、以下で紹介するポイントに従って書くことで、よりアピールにつながる可能性があります。
応募職種・企業に関連する経験を強調する
職務要約では、自身のスキルや経験を、応募先の企業や職種との関連性を明確にした上で具体的に示しましょう。採用担当者が「この経歴なら活躍が期待できる」と即座に感じられる内容にすることが重要だからです。例えば、法人営業であれば顧客数や売上実績、マネジャー候補であればリーダー経験や管理していた人数など、応募先のニーズに合わせて強調する内容を工夫するとよいでしょう。
実績・成果は具体的に数値を交えて書く
職務要約では、可能な限り数字を使って実績をアピールしましょう。たとえ売上目標などがなくても、「営業○名をサポート」「工数を○時間削減」など、業務内容や工夫を数値で示すことで、採用担当者にスキルが伝わりやすくなります。職務要約は特に目に留まりやすいパートなので、表現に工夫を凝らすことが大切です。
時系列ではなく「強み・スキル」を中心に整理する
職務要約では、職務経歴を時系列に書く必要はありません。強調したいスキルや経験に絞ってメリハリをつけましょう。特に、自身の強みやスキルのうち、応募する企業や応募職種に関連する経歴を中心にまとめることをお勧めします。なお、転職経験が少ない場合は、時系列で簡潔に整理するのも伝わりやすくなるでしょう。
【ケース別】職務要約の6つの例文
職務要約の例文を、6つのケース別に紹介します。
職種別の職務要約の例文
- 事務の職務要約例文
[事務の職務要約をまとめるときのポイント]
担当業務や役職・役割、具体的な成果や成果を出すための創意工夫について、できるだけ固有名詞や数字を用いて具体的に記載しましょう。
- 営業の職務要約例文
[営業の職務要約をまとめるときのポイント]
担当業務や役職・役割、具体的な成果や成果を出すための創意工夫について、可能な限り固有名詞や数字を使って具体的に述べるとよいでしょう。特に営業の場合は、売上や達成率、順位などの実績が数値化されている傾向があるため、積極的に盛り込むと効果が期待できます。
- エンジニアの職務要約例文
[エンジニアの職務要約をまとめるときのポイント]
担当業務、役職や役割、具体的な成果と成果を出すための創意工夫について、できる限り固有名詞や数字を出して具体的に書きましょう。特にSEの場合、担当案件の内容(業界、案件内容やフェーズ、規模や期間、役割など)の具体的な記載がしやすいので、ぜひ盛り込みましょう。
経歴別の職務要約の例文
- 2社での経験がある場合の職務要約例文
[2社での経験がある場合の職務要約をまとめるときのポイント]
2社での経験の中から、応募企業・職種に合致するものを優先しましょう。
- 複数社経験がある場合の職務要約例文
[複数社経験がある場合の職務要約をまとめるときのポイント]
複数社での経験がある場合、職務要約を時系列で記載すると、内容が膨らみがちなため、業務ごと、あるいは業界別に整理する方法があります。業務ごとの場合は、「法人営業8年」「キャリアアドバイザー7年」など、経験年数・会社名・具体的な業務や成果をまとめると、強みが明確になるでしょう。業界別では、「人材業界8年」「IT業界10年」とまとめるのも一案です。社名や実績も交えて簡潔に構成しましょう。
- アルバイト経験の職務要約例文
[アルバイト経験の職務要約をまとめるときのポイント]
応募する企業や職種に活かせそうなアルバイト経験を書いたり、リーダーなど比較的責任ある役割の経験や、意欲的・主体的にアルバイトに取り組んだ姿勢を強調したりするとよいでしょう。
【採用視点】職務要約の改善事例
職務要約のまとめ方について、具体的なケースをもとに、採用担当者の視点による改善方法を説明します。
改善前の職務要約の例文
株式会社○○○において、店舗スタッフからはじまり、副店長、店長を経験。その後、SVに昇格してエリア統括も経験してまいりました。
採用担当者の視点での改善ポイント
経験した役職を羅列するだけでは、スキルや経験のレベルが伝わらないため、以下のようなポイントで改善が可能でしょう。
- 経験年数や担当した店舗数などの数字を盛り込んで説得力を増す
- 役職名だけでなく経験した業務を具体的に述べる
- 表彰経験にも触れて実績やスキルのレベルを裏付ける
改善後の職務要約の例文
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2022年10月24日
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記事更新日:2025年06月19日 リクルートエージェント編集部
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