
「仕事のモチベーションが下がっている」「やる気が急になくなった…」と感じたとき、どのように対処すればいいのかわからず、悩んでしまう人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、仕事のやる気が出ない要因やモチベーションを上げる方法、パターン別の対処法などを解説します。
目次
モチベーションとは?
「モチベーション」とは、一般的に、個人が行動を起こす原動力(動機)や意欲のことを指します。また、仕事におけるモチベーションについては、以下のように、大きく2つのパターンに分けることもできます。
内発的なモチベーション
自分の心の内側にあるやりがい、充実感、達成感、成長実感などをモチベーションの源泉とするパターンがあります。「行動すること」そのものに自分の目的を持っているため、継続的にモチベーションを保ちやすいと言えるでしょう。ただし、一方で、自身の行動に起因するため、「仕事そのものにやりがいを感じない」「上司・同僚と仕事の進め方が合わない」など、心理的にマイナス要素があるとモチベーションも一緒に下がってしまう可能性があります。
外発的なモチベーション
外部からもたらされる報酬や評価、昇進、社会的認知などをモチベーションの源泉とするパターンもあります。「行動によってもたらされる成果」を目的とするため、達成までの期間はモチベーションを高めやすいと言えるでしょう。しかし、一つの目的達成をした後には、モチベーションを維持しにくくなる場合もあります。
仕事にモチベーションは必要?それとも不要?
仕事に対する価値観や考え方はさまざまであり、「働き続けていくためにはモチベーションが必要」と考える人もいれば、「仕事にモチベーションはいらない」と考える人や、「仕事においてはモチベーションに左右されてはいけない」と考える人もいるでしょう。
株式会社リクルート(現・株式会社インディードリクルートパートナーズ)が2013年から2023年まで毎年実施してきた調査によれば、2017年を除いて、毎年80%以上の人が「働く喜びが必要」と回答しています。働く喜びを感じることは、仕事へのモチベーションにつながると言えるでしょう。
しかし、調査によれば、実際に働く喜びを感じている人は約40%に限られ、おおよそ半数の人が求めているにもかかわらず感じられていないという現状があるようです。
(※)出典:「「働く喜び調査 2013―2023 年の変化」レポートを公開」(株式会社リクルート(現・株式会社インディードリクルートパートナーズ))
20代・30代・40代でモチベーションの源泉は変化する【年代別に解説】
20代、30代、40代とキャリアを積み重ね、ライフステージも変化していく中では、仕事におけるモチベーションの源泉も同様に変化していくことが考えられます。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2023年に一般社員に向けて行った調査(※)では、全年代においてモチベーションの源泉として「安定(安心できる職場/落ち着いた環境)」と「金銭(経済的な豊かさ/高い報酬)」を重視する人が多いことがわかりました。
以降は、調査をもとに、20代、30代、40代の年代別にモチベーションの源泉としていることを解説します。
(※)「「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」の結果第1弾を発表」(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)
20代のモチベーションの源泉トップ5
20代のモチベーションの源泉のトップは「安定(安心できる職場/落ち着いた環境)」(51.0%)となっており、続いて「注目(賞賛を浴びる/目立つ仕事)」(36.7%)を挙げる割合が高いことがわかりました。
以降は、「金銭(経済的な豊かさ/高い報酬)」(35.8%)、「統率(人を動かす/権限・裁量)」(34.4%)、「親和(気持ちのつながり/良好な人間関係)」(30.9%)となっています。
30代のモチベーションの源泉トップ5
30代のモチベーションの源泉のトップ2は「安定(安心できる職場/落ち着いた環境)」(53.4%)、「金銭(経済的な豊かさ/高い報酬)」(43.5%)という結果になりました。
以降は「注目(賞賛を浴びる/目立つ仕事)」(34.3%)、「統率(人を動かす/権限・裁量)」(33.4%)、「専門性(道を究める/スペシャリスト)」(29.2%)が続いています。
40代のモチベーションの源泉トップ5
40代のモチベーションの源泉のトップ2は、「安定(安心できる職場/落ち着いた環境)」(54.6%)、「金銭(経済的な豊かさ/高い報酬)」(43.1%)で、30代と同様の結果になりました。
以降は「注目(賞賛を浴びる/目立つ仕事)」(34.2%)、「専門性(道を究める/スペシャリスト)」(32.9%)、「統率(人を動かす/権限・裁量)」(31.6%)が続き、いずれも3割台の選択率に。
仕事にやる気が出ない要因と、モチベーション低下が及ぼす影響を解説
ここでは、仕事にやる気が出ない要因として考えられる一例や、モチベーション低下がどのような影響を及ぼすのかを解説していきます。
仕事に対するやる気が出ない7つの要因
仕事のモチベーションが下がるときに考えられる要因としては、以下のような一例が挙げられます。まずは自分に当てはまるものがあるかを考え、「なぜやる気が出ないのか」を明らかにしてみましょう。
- 忙しすぎて心身が疲れている
- 仕事にやりがいを感じていない
- 企業・事業戦略に共感できない
- 職場の人間関係が良くない
- 給与や待遇が希望に見合っていない
- 労働環境が合わない
- 将来のキャリア形成が考えられない
価値観やライフステージの変化が影響するケースも
キャリアを積み重ねていく中で、自分自身の価値観が変化し、実現したいライフスタイルや目指す将来の姿が変化することもあるものです。それにより、「今の仕事に対して、急にやる気がなくなった」というケースも見られます。
また、結婚・出産・育児・介護などでライフステージが変化したことによって、報酬や働き方に対する考えが変化するケースもあります。
モチベーション低下が及ぼす影響
仕事に対するモチベーションが下がった場合、以下のようなことにつながる可能性があります。
- 仕事に対する責任感が薄れ、成果を挙げられなくなる。
- 仕事に対して主体的・能動的な行動をしなくなる。
- 仕事を通じて成長する意欲が低下する。
仕事に対するモチベーションの高さが、成果に影響するケースは少なくはないものです。また、モチベーションを維持できなくなることで、本来持っていたはずの能力も発揮できずに、自己肯定感が下がったり、無気力になってしまったりすることもあるかもしれません。
今の仕事に対するモチベーションがない場合の対処法
先に紹介した「やる気の出ない7つの要因」に当てはまっている場合でも、社内異動などで 今の仕事のまま自分の希望を実現できる可能性があるかもしれません。また、転職を検討する場合でも、今の仕事で経験・スキルを身に付けたり、成果を挙げて実績をつくったりしたほうが、自分の希望をかなえる転職を実現しやすくなる可能性も考えられます。
「モチベーションが下がったことで仕事を続けるのが辛い」「今のままではやる気が出ない。辞めたほうがいいのだろうか」などと考えている場合でも、辞めるべきかどうかをきちんと検討することが大事でしょう。まずは以降で紹介するモチベーションを高める方法や、パターン別の対処法に取り組んでみることがおすすめです。
仕事のモチベーションを上げる11の方法
現在の仕事のままでモチベーションを上げるために役立つ方法を紹介します。
「今日の目標」を設定する
仕事における目標を達成していくことで、そこに達成感が生じ、モチベーションが高まるケースもあります。「もう仕事なんてしたくない」と思っている場合でも、自ら目標を設定して「今日はこの目標を達成すればいい」と考えれば、仕事にも集中しやすくなるでしょう。
小さなことでも構わないので、自分なりに達成感を積み重ねていくことがポイントです。また、「達成したら自分に何らかのご褒美を与える」などの仕組みをつくれば、よりモチベーションを高めやすくなるかもしれません。
友人や知人と会って話をする
心を許せる友人に会うことでリフレッシュする方法もあります。自分の悩みを打ち明ければ、考えを整理しやすくなる可能性もあるでしょう。また、仕事を頑張っている友人や知人などに会ってみることで、新しい刺激を受けたり、仕事に対するモヤモヤを解消するヒントをもらえたりするかもしれません。
自分のロールモデルとなる人物を見つける
職場の上司や先輩などから尊敬できる人物を見つけ、自分のロールモデルとすれば、モチベーションを高められるかもしれません。周囲にいない場合は、著名人や歴史上の偉人、物語の主人公などをロールモデルにする方法もあります。
異動やプロジェクト参加などの可能性を探る
やりたい仕事・目指すキャリアを実現できる部署に異動できる可能性や、プロジェクトに参加できる方法を探し、それを目標とすることでモチベーションを高める方法もあります。
また、社内のキャリアパスや、自ら手を挙げてプロジェクトに参加できる制度などを調べることでも、将来のキャリア形成や今後の仕事の可能性に対する期待値を高めることができるかもしれません。
モチベーションが上がらない理由を紙に書き出して整理する
仕事に対して「やる気が出ない」「モチベーションが上がらない」という漠然とした悩みを持ち続けている場合は、その理由を紙に書き出して整理してみることもおすすめです。言語化することで原因が明確になり、「どうすれば解消できるのか」「そのために何をすればいいのか」など、解決への道筋が見えやすくなるでしょう。
運動してリフレッシュする
運動することはリフレッシュにつながることもあるため、「やる気が出ない」「モチベーションが上がらない」というモヤモヤ感を払拭できる可能性があります。日頃から運動習慣がない場合は、あまりハードルを上げすぎず、自宅でできる筋トレや近所をウォーキングするなど、簡単なものから始めてみることがおすすめです。
やる気が出る名言集やサクセスストーリーなどに触れる
尊敬できる人物の名言集や自己啓発に役立つビジネス書を読んだり、サクセスストーリーの映画や小説、漫画などに触れたりすることで、モチベーションを高める方法もあります。「仕事が辛い」と感じている場合でも、状況を打破するためのヒントや自分にとってやる気の出る言葉が見つかることで、意欲を取り戻せるかもしれません。
新しいことにチャレンジしてみる
行ったことのない場所に出かけたり、これまで経験していないことにチャレンジしたりすれば、新しい刺激を受けることができるでしょう。それにより、リフレッシュできたり、モチベーションを上げるヒントが見つかったりする可能性もあります。
通勤時間にやる気の出る音楽を聴く
仕事に行く前に「モチベーションが上がらない」と感じてしまう場合は、やる気の出る音楽を聴いてモチベーションを高める方法もあります。出社前や通勤時間などに聴くことで、これから仕事に向き合うテンションも高められるかもしれません。
上司に評価のポイントを確認してみる
仕事の評価に不満を感じている場合は、上司に評価のポイントを確認してみることもおすすめです。自分自身の考えと、上司や組織における評価軸がズレている可能性もあるため、取り組み方を変えることで評価につなげられる可能性もあります。
今後のキャリアプランを立てる
今後のキャリアプランを立てることで、前向きに仕事に取り組めるかもしれません。これまでのキャリアを見つめ直し、3年後、5年後、10年後などの将来に、どのような姿を目指したいのかを考えてみましょう。その上で、実現のために必要な経験・スキル・実績について考え、これからどのようなステップを踏んでいけばいいのか計画を立てることがポイントです。キャリアの目標に向かって計画的に行動していくことで、モチベーションを高めやすくなるでしょう。
【パターン別】仕事に対するモチベーションがなくなったときの対処法
仕事に対するモチベーションがなくなったときのパターン別に、対処法を紹介していきます。自分に当てはまるものを探し、対処法に取り組んでみましょう。
急にやる気がなくなった場合
責任感が強い人の場合は、仕事を頑張りすぎてしまったことで、燃え尽きて急にやる気がなくなってしまうケースも考えられます。こうした場合は、しっかりと休息を取り、リフレッシュすることもひとつの方法です。日頃から無理をしすぎない意識を持ち、頑張りすぎる手前で休憩を取って気分転換したり、有給休暇などを取得して休息したりするように心がけることも必要だと考えましょう。
仕事に行き詰まりを感じている場合
仕事内容や今後のキャリアに行き詰まりを感じている場合は、転職するかどうかを最初から決めずに転職活動を始めてみる方法もあります。転職市場の状況や自分の市場価値を知ることで、どのような可能性や選択肢があるのか理解しやすくなるでしょう。その結果、新たにチャレンジしたい仕事や目指したいキャリアなどが見つかるかもしれません。
周囲との温度差が辛い場合
仕事に対する意欲が高い職場の同僚や友人・知人などと自分を比較し、「仕事に対するモチベーションに温度差がある」「意欲を持てない自分に問題があるのではないか」などと感じて、辛いと思ってしまうケースもあるようです。こうした場合は、「仕事のモチベーションの源泉は何か」「どのような目標やりがいを持って仕事に向き合っているのか」「モチベーションを高め、維持するために工夫していることは何か」などを率直に聞いてみてもよいかもしれません。
仕事へのモチベーションが高い人の価値観や考え方、意識していることなどを知れば、自分自身の仕事に対する取り組み方もプラスの方向に変化させることができるかもしれません。
モチベーションを高められる仕事に転職するという選択肢もある
「今の仕事ではモチベーションを感じることができない」「社内にモチベーションを高められるようなキャリアの道筋がない」という場合は、転職を検討してみるのも一つの方法です。
転職エージェントでは、自分の希望や経験・スキルにマッチする求人を紹介するため、やりたい仕事や活躍できる仕事など、モチベーションを高められる転職先が見つかるかもしれません。また、無料でキャリア相談ができる転職エージェントもあり、今後のキャリアの可能性を広げるために役立てることもできます。転職エージェントに相談をしたからといって転職しなければならないわけではないので、まずは活用を検討してみるのもおすすめです。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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