
書類選考通過率を高めたくて転職エージェントを活用しているのに、なかなか書類選考が通らない…というケースがあるようです。この記事では、転職エージェント経由なのに書類選考が通らない理由や、通過率を上げるポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェント経由の書類選考が通らない原因12
転職エージェント経由の書類選考がなかなか通らないのは、次のようなことが原因である可能性があります。当てはまるものがあるかどうか、確認してみましょう。
企業の求めるスキル・経験が不足している
多くの企業が書類選考で最も重視するのは、自社が求める経験・スキルを応募者が満たしているかどうかです。例えば「○○業界の経験○年以上」「○○職の経験○年以上」「○○の操作スキル」「○名規模のマネジメント経験」といったものです。これらを満たしていないことが原因である可能性があります。
希望するポジションや給与がミスマッチである
企業が提示している求人のポジションや、給与額に対して、応募者が希望するポジションや給与が見合っておらず、ミスマッチと判断されて見送られているケースがあります。
企業の求める人物像と合致しない
同じ業種・職種の経験があっても、企業によって仕事の進め方や関係者とのコミュニケーションの取り方などは異なるものです。例えば「個人の裁量で判断して動く」企業もあれば、「協調性・チームワークを大切にする」企業もあります。応募者が得意とする働き方が、自社の特性や文化にマッチしていないと判断されている可能性があります。
志望動機に具体性がない
志望動機が曖昧で、どの企業にも通用するような内容である場合、「志望度が低いのではないか」「当社でなくても良いのでは?」「企業理解ができていない」などと思われてしまい、書類選考で落ちてしまう可能性があります。
業務内容や成果が曖昧で企業が判断できない
応募書類で業務内容や成果を伝えるのは良いのですが、表現が曖昧でつかみどころがないというケースがあります。自社の求める人材像に合っているかどうか判断できないため、書類の段階で落ちてしまっているかもしれません。
書類の誤字・脱字が多い
応募書類はビジネス文書でもあります。誤字・脱字が多い場合、「仕事も雑なのではないか」とマイナス印象を持たれてしまう可能性があるでしょう。
長期の空白期間があり不明なままにしてある
職歴にブランク期間がある場合、大半の企業は「この期間は何をしていたのだろう」と不安を覚えるでしょう。特に記載されていない場合は「隠したいことがあるのではないか」「読み手が疑問を抱くと気づけないのだろうか」などと懸念する企業もあると考えられます。
転職エージェントへ適切に自分を伝えきれていない
転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが応募者の経験やスキル、強みや持ち味を企業に伝えています。自身のアピールポイントをうまくキャリアアドバイザーに伝えきれていないために、応募企業とうまくマッチングが図れず、書類選考どまりになっているのかもしれません。
転職エージェント経由で応募する前にその企業の選考を受けていた
企業によっては、一度採用を見送った人の再応募は不可と規定しているところがあります。「前回の応募から〇カ月以上経過していること」など、期間を指定しているケースもあります。転職エージェント経由で応募する前に、その企業にすでに応募した経験がある場合は、企業の規定に抵触している可能性があります。
残りの採用枠が少ないタイミングで応募している
特に人気企業の場合、応募が早い人から順にどんどん選考を進め、内定を出していくケースがあります。このような場合、残りの採用枠が少なくなるにつれ、企業側の「応募者に求める水準」が高くなる傾向があるようです。条件に合致しているにもかかわらず書類選考に通過しなかったという場合は、応募すべきかどうか迷っているうちに採用枠が減ってしまい、企業の見る目が厳しくなってしまった可能性が考えられます。
書類を提出している間に採用枠が埋まってしまった
上記と同様に、応募するかどうか迷っているうちに、企業の選考が進んでしまい、応募書類を出した段階では採用枠が埋まってしまった…というケースも少なくないようです。気になる求人があったら、まずは応募してみたほうがチャンスを逃さないでしょう。
応募が集中するタイミングに応募し、競争率が高まってしまった
ボーナス支給直後は、転職市場に求職者が増える傾向にあります。また、4月や10月など、年度替わりや上期・下期が切り替わるタイミングでキリよく転職したいと考える人もいるでしょう。求職者が増えるタイミングで転職活動をすると、人気企業に応募が集中し、どうしても競争率は高まる可能性があります。そのため、書類選考の競争倍率が高くなっている可能性があります。
転職エージェントの書類選考が通らない「3つの本質的課題」と「対処法」
前述の「書類が通らない12の原因」は、3つの本質的課題によるものと考えられます。それぞれの課題への対処法を解説します。
転職エージェントとの認識のズレを正す
「○○という強みがあるのに、それを転職エージェントが応募企業に全然伝えてくれない」と不満を抱く人がいるようですが、そもそもその強みを正しく伝えきれていない可能性があります。
自己理解・自己分析が十分ではなく、自分の強みを言語化できていない求職者は、実は少なくありません。改めて自己分析を行い、それをキャリアアドバイザーと十分にすり合わせて、認識のズレをなくしておきましょう。転職エージェントによっては、自己分析をサポートしてくれるところもあるので、お願いしてみるのも一つの方法です。
応募書類を応募企業に合った内容にブラッシュアップする
応募書類の内容が、応募企業にマッチしていないために、書類選考で落ちているケースは多いと考えられます。応募企業の情報収集を行い、募集内容に合った自己PRや志望動機などを考え、まとめると良いでしょう。
転職エージェントは、応募企業の情報や、求める人材像を詳しく把握していることもあります。応募前に細かく確認したり、アドバイスをもらったりして、応募書類をブラッシュアップすると通過率が上がる可能性があります。
適切なタイミングを計る
企業が求める人材像と合致していたとしても、タイミングがズレただけでうまくマッチングしない可能性はあります。
書類選考の通過率は、「企業」と「自分」、そして「他の応募者」の三者の関係によって大きく変わります。企業の募集人数が減ったり、他の応募者が多かったりすると、需給バランスが崩れ書類の段階でつまずいてしまう可能性があります。前述のように、応募者数は季節要因もあるため、自身にとって応募のタイミングが適切かどうか判断すると良いでしょう。
企業によっては、タイミングによって選考の難易度が変化するケースもあります。例えば、採用活動の終盤など、採用予定人数がある程度充足したタイミングでは、求める人物像の水準が上がり、書類選考通過の難易度が上がることもあります。したがって、応募したい求人が見つかったら、まずは応募することも検討しましょう。
転職エージェント経由での書類選考の通過率を上げる方法
転職エージェント経由で応募する場合の書類選考通過率を上げるにはどのようにすると良いのか、具体的な方法を解説します。
経験・スキル・希望条件を詳細に伝え、マッチング精度を高める
選考に通らない要因の一つとして挙げたとおり、そもそも自身の経験・スキルとマッチしていない企業に応募している可能性があります。
自己分析でキャリアの棚卸しを行い、より詳細な経験・スキルや希望条件を転職エージェントに伝えることで、紹介される企業のマッチ度が高まり、書類選考を通過しやすくなる可能性があります。
「強み」を明確にし、職務経歴書の自己PR欄で伝える
これまでの経験を振り返り、成果を挙げたこと、得意としていること、周囲から評価されたことなどを洗い出してみましょう。そして言語化された自身の「強み」や「持ち味」を、職務経歴書の「自己PR」欄に記載しましょう。
自分で自分の強みを認識するのは難しいという人もいるかもしれませんが、転職エージェントによっては一緒に自己分析を行ってくれるところもあります。転職市場に精通したキャリアアドバイザーに、客観的な視点でアドバイスをもらうことで、思いもよらない自分の強みに気付けるケースもあります。
「企業のニーズ」を意識して記載する
応募書類を作成する際には、「企業側のニーズ」を意識することが大切です。求人情報をはじめ、メディアの記事やSNSでの発信などを読み、どのような人材を求めているかをつかみましょう。
その上で、企業が求めている要素と自身の強みや志向性がマッチする部分を抽出し、自己PR欄や志望動機欄に記載します。
転職エージェントによっては、キャリアアドバイザーから企業の事業課題や採用背景、求める人材像、選考で注目しているポイントなどを聞ける可能性もあるので、情報収集に活用すると良いでしょう。
書類の体裁を読みやすく整える
「読みにくい」という理由で、採用担当者に志望意欲が伝わらず、採用を見送られてしまうケースもあるようです。見やすく分かりやすいレイアウトを心がけ、ブラッシュアップを図りましょう。
例えば、項目に応じてカッコでくくる、冒頭に●をつける、下線を引くなど、情報を読みやすく整理することを意識してみてください。一目で分かりやすい応募書類は、応募者の印象が良くなり、強みも伝わりやすくなるでしょう。
転職エージェントによっては、職種ごとの記載見本フォーマットを提供していることもあるで、活用するのも良いでしょう。
そもそも転職エージェントのほうが書類選考の通過率は上がる?
「転職エージェント経由で応募すると、自分で応募するより書類選考を通過しやすいのではないか」と考える人もいるようです。実際のところはどうなのか、詳しく解説します。
転職エージェント経由で通過率を高めることは可能
転職エージェントによっては、求人の背景や、どういった人材を求めているのかなど、精緻な情報をつかんでいるケースがあります。それに合わせた応募書類のカスタマイズやブラッシュアップのアドバイスをもらえることもあるので、自身の魅力がより伝わりやすいでしょう。結果的に、通過率を高めることにつながる可能性があります。
また、転職エージェント経由で応募すると、求職者に代わって経験やスキル、強み、人物像などをアピールしてもらえることもあります。応募書類だけでは伝わらない情報を補足してもらえるというメリットもあります。
書類選考の通過率を上げる取り組みの具体例
ここまでに、転職エージェントを活用することで得られるサポートについて解説してきましたが、サポート例を以下に整理します。
- 経験・スキルと求人の適切なマッチング
転職エージェントは多くの求人情報の中から、応募者の経験・スキル・志向性と企業が求める要素がマッチした求人を抽出して紹介します。一人ひとりに合った求人を選定することで、書類選考の通過率アップにつながりやすくなるでしょう。
- 応募書類作成へのアドバイス
履歴書・職務経歴書などの書き方についてサポートを受けられる転職エージェントもあります。企業が選考でチェックするポイントを踏まえ、どの経験・スキルを強調して記載するとアピール効果が高いかなどのアドバイスを得られるでしょう。
- 応募者の強み・魅力のアピール
企業に応募する際、転職エージェントは、書類上では伝わりにくい応募者の強みや魅力をプッシュしたり、企業が応募者に対して不安を抱く可能性がある部分をフォローしたりと、プラスアルファの情報を企業に直接伝えることもあります。
なお、これらのサポート以外にも、転職エージェントを経由して応募した書類が通らなかった場合、転職エージェントの担当者を通じて、企業が見送った理由のフィードバックを受けられるケースがあります。フィードバック内容を、今後の求人選びや応募書類のブラッシュアップに活かせば、その後の書類選考通過率を高められるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年09月03日
記事更新日:2025年06月05日 リクルートエージェント編集部
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