
10月は多くの企業で下半期がスタートするタイミングです。組織再編や人事異動も行われることから、中途入社する人にとっては職場に入っていきやすい時期であるといえるでしょう。10月入社を目指す場合、いつから転職活動を始め、どのようなスケジュールで進めていけばよいか、10月入社にはどのようなメリットがあるのか、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
10月入社をするには、いつから転職活動すればいい?
転職活動にかかる期間は、人によって異なりますが、現職を続けながら転職活動をする場合、「3カ月程度」が一般的な目安となります。
現職に退職意思を伝え、業務の引き継ぎを経て退職するまでには、1カ月~1カ月半ほど要するのが一般的です。逆算すると、応募先企業から8月半ば~8月中に内定通知を受ける必要があります。
面接期間が約1カ月程度、夏休みをはさむことで長引く可能性を想定すると、6月下旬~7月初旬には応募を開始する必要があるでしょう。それまでにキャリアの棚卸し、応募書類作成、求人情報を探すとなると、6月初旬~中旬から転職活動をスタートすることが望ましいと考えられます。
10月入社するまでの転職活動スケジュール
10月入社を目指す場合の転職活動の流れと、スケジュールの一例をご紹介します。以下に挙げるのはあくまで目安ですので、自身の状況に応じて調整してください。
キャリアの棚卸し、応募書類などの事前準備:6月~7月
これまで経験してきた仕事を振り返り、身に付けた知識やスキル、強み・弱みなどを整理するため「キャリアの棚卸し」を行います。キャリアの棚卸しをしておくと、これから目指す方向性が明確になるため、応募企業を選択する際、自身の希望条件やキャリアプランにマッチするかどうかを判断しやすくなると考えられます。
キャリアの棚卸しに要する時間は人それぞれですが、6月からとりかかれば十分に時間をかけられるでしょう。
棚卸ししたキャリアをもとに、「履歴書」「職務経歴書」の作成も進めます。クリエイティブ系職種の方は、「ポートフォリオ」(作品集)も準備しておくといいでしょう。
応募企業探し・応募:6月~7月
転職サイトで求人を探す、もしくは転職エージェントに登録して求人の紹介を受け、興味を持った求人に応募します。選択肢が多いと迷ってしまうため、希望条件に優先順位を付けておくといいでしょう。
なお、「1社に応募し、不採用になったら次の1社に応募する」という進め方では、転職活動が長引いて、10月入社に間に合わないかもしれません。複数企業に応募し、並行して選考を受けるほうが、効率的に活動できる可能性があります。最終的に選ぶのは1社でも、複数の候補企業の比較検討を経ることで、納得感が高まりやすいともいえます。
書類・面接などの選考:7月~8月
書類選考を通過したら、面接へ進みます。中途採用の面接回数は、企業によって異なりますが、1~3回実施されるのが一般的です。選考期間も企業によってまちまちです。大量採用で選考人数が多い場合などは1カ月以上かかることもある一方、面接時間・場所の融通がきくオンライン面接を活用してスピーディに面接設定を行い、2~3週間程度で結論が出ることもあります。
10月入社を目指す場合、選考期間中に夏休みをはさむと、想定よりも選考期間が長引く可能性があります。そのため、なるべくなら7月中に面接を受けられるように活動し、8月初旬には内定を得ておくと安心です。
8月後半に面接が組まれる場合は、夏休み期間を活用して面接対策を行いましょう。自己アピールを整理するほか、「転職理由」「志望動機」「仕事への価値観」「今後のキャリアプラン」など、面接で聞かれることが多い質問への回答を準備しておきます。
内定・条件交渉・内定承諾:8月
選考を通過すると、「内定通知」のほか「労働条件通知書」が届きます。条件を確認し、入社を承諾するかどうかを決断し、返答します。場合によっては「オファー面談」が設けられ、雇用条件についてすり合わせをすることもあります。
在籍企業の退職手続き、業務の引き継ぎを経て10月に入社するためには、遅くとも8月中に入社の意思決定をしましょう。
現職の退職手続き・引き継ぎなど:8~9月
退職を申し出る時期は、就業規則で定められていることもあります。例えば「退職する場合は1カ月前までに通知すること」などとされており、企業によっては2カ月以上前などに設定されているケースもあります。転職活動をスタートする段階で確認しておきましょう。民法では退職の2週間前までに文章や口頭で申し出れば解約(退職)ができると定められています。
引き継ぎや有休消化などを考慮すると、遅くとも退職希望日の1カ月前までには退職を申し出ることが望ましいでしょう。直属の上司に退職意思を伝え、退職日や業務の引き継ぎについて話し合います。
場合によっては、強い引き留めにあったり、後任者の決定が遅れたりと、退職するまでに想定以上の時間を要することもあります。また、引き継ぎ期間にあたる9月には「シルバーウィーク(休日が多い期間)」があるため、引き継ぎが思うように進まないことも考えられます。転職活動を行いながら、引き継ぎ資料の整理なども進めておくといいでしょう。
入社:10月
内定企業からの指示に従って入社手続きを行い、入社します。提出が必要な書類を9月中に準備しておきましょう。
10月に転職するのがよいと言われる理由
年間を通じて求人が多いのは、1月~3月頃です。ただし、4月入社を目指すと、年末年始~年度末近くの慌ただしい時期に転職活動をする必要があったり、新卒採用や新卒入社者のフォローが優先されがちであったりと、デメリットを感じる人もいるようです。
その点、「10月入社」は、下半期の体制整備に向けた求人が出ること、「4月入社」と比較すると新卒の受け入れ・異動・配属といった人事イベントが少なく、中途入社者を落ち着いて受け入れられる可能性があることから、転職には適した時期と言われています。
10月入社で転職するメリット
10月入社に向けて転職活動を行うメリット、実際に10月に入社するメリットとはどのようなものでしょうか。もちろん人によって捉え方が異なりますが、一般的な例として挙げられるメリットをご紹介します。
幅広い求人が出ている時期である
企業は、下半期の事業戦略を踏まえた組織体制の見直し・整備を行うため、「10月1日入社」を想定した求人を出す傾向が見られます。さらには、夏季ボーナスの支給後に退職する人がいるため、6~7月には欠員補充の求人も出てきます。
こうした背景から、10月入社に向けて転職活動を行う時期は、1年の中でも求人のバリエーションが多い時期といえるでしょう。
現職のボーナスをもらってから転職できる
10月入社の場合、8月には現職に退職を申し出ることになります。その時点で夏季ボーナスをすでに受給していることもあるため、経済面で余裕を感じられるかもしれません。
加えて、転職先企業でのボーナス受給においてもメリットが期待できます。夏季ボーナスの支給については、査定対象期間を「10月から3月」に設定している企業が多く見られます。つまり、10月入社であれば、査定対象期間をフルに満たすことになり、入社直後からの働きが翌年の夏季ボーナスに反映される可能性があるでしょう。
仕事の区切りがつくタイミングで転職できる
現職においても、上半期が終わるタイミングでプロジェクトの区切りがつく、あるいは下半期に向けて組織再編を行うなど、自身の仕事に区切りをつけやすい可能性があります。「自分が辞めると同僚に迷惑がかかるのでは」と考えて転職を躊躇している人にとって、行動を起こしやすいタイミングといえるかもしれません。
企業側の受け入れ体制ができていることもある
下半期がスタートする10月は、組織再編に伴う人事異動や中途採用者の入社が、4月入社の次に比較的多いため、職場での受け入れる体制が整っている可能性があります。「新しく入ってきた人が早くなじめるようにサポートする」という意識が高まっていれば、わからないことを質問しやすい空気を感じられ、安心感を持てることが期待できます。
また、すでに人間関係が築かれている組織に自分1人が新たに入っていくよりも、職場や業務になじみやすいとも考えられます。
転職エージェントを活用して10月入社を目指そう
転職エージェントで情報収集を行うことで、「下半期に立ち上がる新規プロジェクトのため」「下半期からの組織刷新のため」など、公募情報には記載されていない採用背景や求める人材像がわかることもあります。
複数企業に応募し、10月入社に向けて内定時期を揃えられるように、応募のタイミングやスケジュール調整をキャリアアドバイザーにサポートしてもらうことも可能です。 10月入社を実現させるために、転職エージェントのサービスも活用してはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。