
30代で転職する場合、未経験領域へのチャレンジも選択肢の一つです。未経験領域への転職は、これまでの経験やスキルがそのまま活かせるとは限りません。こうした課題を補うには、アピール方法や業界・職種選びが特に重要になります。 この記事では、30代で未経験領域に転職するためのポイントや注目の業界・職種、転職活動の注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
30代の未経験転職のリアルな実情
30代で未経験領域への転職を希望している人の中には、「20代ならともかく、30代になっても異業種・異職種へのチャレンジは可能なのだろうか」と不安を抱えている人も多いことと思います。実際のところ、30代の未経験転職事情はどのようになっているのか、解説します。
30代で実際に未経験転職を実現した人は4~5割いる
リクルートエージェントの2022年度の転職決定者の業種・職種の異同パターン分析によると、30~34歳で「異業種×異職種」に転職した人は35.7%、35~39歳では31.4%となっています。「同業種×異職種」も加えると、30代前半では46.9%、後半では43.2%に上っており、30代の半数近くが異職種への未経験転職を実現していることが分かります。

30代での未経験転職は難しくない?
上記データの通り、30代で未経験転職を実現した人は一定数いるため、一概に難しいとは言えません。
「35歳の壁」などと言われたように、一昔前までは30代後半になると転職自体難しくなるとのイメージがありました。
ただ、生産年齢人口の減少による深刻な人手不足により、優秀な人材は取り合いとなっており、「年齢を選考基準のひとつとしていては人材獲得競争に負けてしまい、合理的ではない」との考えが広がっているようです。現在では応募者の年齢よりも、経験やスキル、実績、人物タイプなどで総合的に判断する傾向が強まりつつあります。
一方で、経験・スキルに関する企業のチェックは依然として存在し、求める経験・スキルなどに合致しない場合は、年齢関係なく転職は簡単とは言えません。未経験分野でも活かせる経験・スキルがあることを、応募書類や面接で最大限伝えることが重要です。
未経験でも転職しやすいと思われる職種とは?
未経験でも転職を実現できる可能性がある職種の一例をご紹介します。
経営企画・事務職・マーケティング職の割合が高い結果に
リクルートエージェントの2022年度の転職決定者データのうち、職種別に「異業種×異職種」の状況を見ると、上位から「経営企画・事業企画・業務企画」(60.5%)、「オフィスワーク事務職」(52.6%)、「マーケティング」(49.4%)、「インターネット専門職(Webエンジニア含む)」(44.4%)となっています。

企画系職種の経験者はほかの職種に比べて多いとは言えず、採用難易度が高い傾向にあるようです。したがって、採用ニーズがある企業が未経験者にも門戸を広げ、関連する経験・スキルを持つ異業種・異職種の人材を採用しているケースが多いと考えられます。
また、コンサルティングファーム出身の「ポストコンサル」が、これまでの経験を活かして事業会社の企画職に転身するケースも一定数あるようです。
SE・機械エンジニア・電気エンジニアの未経験転職は相対的に難しい
一方で「SE」「機械エンジニア」「電気エンジニア」といった技術系職種は、比較的「同業種×同職種」の割合が高く、それぞれ30%前後が経験をフルに活かせる「同業種×同職種」の転職となっています。
いずれも高い専門性や理系の知識や素養などを求められるため、未経験者にはややハードルが高いと考えられます。ただ、それでも3割前後が異業種×異職種であり、未経験からでも転職を実現できる可能性はあると言えるでしょう。
未経験者も募集している求人の探し方
未経験領域への転職を目指す場合、まずは未経験であっても門戸を開いている求人を探すことが大切です。
まずは、求人サイトや求人検索エンジンなどで、求人タイトルや本文内に「未経験可」「未経験者歓迎」などの文言がある求人に着目する方法があります。「ポテンシャル採用」「学歴不問」などのキーワードも、広く門戸を開いている姿勢を示しており、未経験者の応募も受け付けている可能性があるため、注目してみると良いでしょう。
また、転職フェアなどのイベントには、採用意欲が高い企業が出展しているケースが多い上、面談などを通して選考前に直接企業にアピールできることから、未経験者にはチャンスが多いと言えるでしょう。
このほか、友人・知人の紹介で転職する「リファラル採用」は、年齢や経験・スキル以外に人物タイプなども含めて評価されやすい傾向があります。
転職支援のプロである転職エージェントを活用するのも一つの方法です。
担当のキャリアアドバイザーが、自身の経験・スキルに合わせて未経験でも応募可能な求人を紹介してくれる可能性があります。未経験領域へのアピールにつながる書類作成や面接のサポートを受けられる転職エージェントもあるので、相談してみると良いでしょう。
なお、最新の未経験でも転職可能な求人情報は下記リンクからご覧ください。
(※)リクルートエージェント「未経験でも可の転職者向け転職・求人情報」
30代が未経験転職を実現するためのポイント
30代で未経験業種・職種に応募する場合、同じ求人に経験者も応募していると、職務経歴を比較されて「スキル不足」と判断されてしまう可能性もあるでしょう。そのため、応募職種でも活かせるスキルをアピールしたり、応募する求人の幅を広げたりすると良いでしょう。
ここでは、未経験での転職を実現するための5つのポイントをご紹介します。
ポータブルスキルをアピールする
業種や職種が変わっても持ち運びができるスキルをポータブルスキルと呼びます。例えば「課題解決力」「論理的思考力」「マネジメント力」などが挙げられますが、これらのポータブルスキルは業務遂行を通じて磨かれるため、30代ならではのアピールポイントとなり得ます。未経験業種・職種に応募する場合は、応募する仕事で発揮できるポータブルスキルを選び、アピールすると良いでしょう。
求人を絞り過ぎない
希望条件がいくつもあると、応募できる求人が限られる可能性もあります。中途採用の場合は、即戦力となる経験者が評価される可能性が高いため、選択肢を増やしておくことが重要です。
未経験業種・職種の場合は、面接で話を聞いて初めてキャリアの将来性や仕事のやりがいなどの魅力を知ることも多いものです。どうしても譲れない条件を中心に求人をピックアップし、面接の場で企業から具体的な話を聞くようにすると良いでしょう。
在職中の場合は現職で高く評価された経験をアピールする
30代で未経験業界・職種へ転職するには、現職で実績に裏付けされた「語れる経験」を積むことが大切です。例えば、社内のプロジェクトに主体的に取り組み、創意工夫して成功させて評価された、などといった経験です。さらに、その経験をほかの取り組みにも応用したという「再現例」があれば、自社でも経験を活かして活躍してくれそうだという印象につながり、プラスの評価になる可能性があるでしょう。
もし、転職活動中に自分の経験不足を感じた場合は、現職で経験を積んだ上で転職活動を再開するのも一つの方法です。例えば、新人や後輩の育成担当を買って出る、新たなプロジェクトを提案してリーダーを引き受けるなど、どの領域でも活かすことができる経験を積むことによって、自分の価値を高められる可能性があるでしょう。
説得力のある「キャリアの軸」を持つ
なぜ転職したいのか、なぜ未経験分野なのか、改めて自分と向き合い、理由を明確にしましょう。企業は自社で活躍してくれる人材を採用したいと考えています。「心機一転出直したいから」「今の仕事が嫌だから」という理由では、評価には結びつきにくいでしょう。
未経験業種・職種に転職する場合は、これまでの経験と応募する仕事との共通点をリストアップして、「新たな職場で経験や知識をどのように活かして活躍したいか」という視点を持つことが大事です。
転職市場の相場感を把握する
転職にあたっては、自分の経験年数に対して転職市場が求めるレベルを理解しておくことが大切と言えます。興味を抱いている業界・職種に関する情報収集や、必要な知識の学習を始めるのはもちろん、自分の市場価値を客観視して、どのような企業に応募すればより転職実現に近づけるかを考えてみると良いでしょう。
なお、一人で転職活動を進めていると、転職市場の相場観がつかみにくいこともあります。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談し、転職市場での経験・スキルの評価や転職の選択肢についてアドバイスを受けるのも良いでしょう。実際に求人に応募しながら相場感を探り、キャリアアドバイザーと二人三脚で企業研究を深めていく方法もあるでしょう。
30代が未経験転職をする際に心得ておきたい注意点
30代で未経験業界・職種への転職を検討している場合に、気をつけておきたいことを解説します。
給与・待遇は中長期で考える
未経験分野に転職する場合、「キャリアの再出発」となるため、前職より給与水準の高い業界へ移る場合を除いて、収入減になる可能性もあると考えておいたほうが良いでしょう。自分にとって優先順位の高い希望条件以外はこだわり過ぎず、妥協点を見いだすことが大切です。
成長性がある業界や企業を選択したり、入社した企業で成果を出したりすることで、中長期的に見ると待遇アップの可能性もあります。現状の条件面だけではなく、その他のメリットも含めて総合的に考えるようにしましょう。
転職活動の長期化も想定する
未経験者歓迎の求人であっても、ほかの応募者に経験者が含まれていた場合、選考で経験を比較され見送られてしまう可能性があるでしょう。そのため、可能な限り応募数を増やして選考に残る機会を作るようにすると良いでしょう。そして、もし不採用になっても落ち込まず、前向きにチャレンジする気持ちが大切です。転職活動が長期化する可能性を念頭に、在職中の場合は先に仕事を辞めてしまわず現職で成果を上げながら、じっくり取り組んでいくことが大切です。
家族・パートナーに相談しておく
転職は、育児と仕事の両立や、パートナーの仕事にも影響を与えることがあります。そのため、家族やパートナーがいる場合は、事前に相談しておくと良いでしょう。
特に、未経験分野にチャレンジする場合は、年収が下がる、各種手当が減るなど、経済面での見通しが変わることも考えられます。事前に相談せずに転職先を決めてしまい、思わぬ反対にあったというケースもあるようです。家族やパートナーとの信頼関係維持のためにも、事前に相談しておくことを検討しましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2024年12月04日
記事更新日:2025年07月31日
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