
「転職してまだ半年しか経っていないけれど、もう辞めたいと考えている。短期間で辞めて、次に受け入れてくれる企業はあるのだろうか」――そのような不安を抱いている方もいるようです。転職半年で再転職に踏み切るかどうかを判断するポイント、転職半年で再転職するメリット・デメリット、次の転職を実現させるための行動について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職して半年以内でも再転職は可能
転職先の企業を短期間で辞めて、次の転職を実現しているケースは一定数見られます。
厚生労働省による「令和2年転職者実態調査」では、転職した人の直前の勤務先の通算勤務期間を公表しています。最多は「2年以上5年未満」(26.9%)ですが、「6カ月未満」の転職者も7.8%いることがわかります。

「表12 性・年齢階級・事業所規模・直前の勤め先の就業形態、直前の勤め先の通算勤務期間階級別転職者割合」を加工して作成
この調査結果から、入社後半年以内で辞めても、再転職できる可能性はあると考えられます。ただし、短期で離職して再び転職する理由や目的を明確に伝えられなければ、選考を通過することは難しいかもしれません。再転職に踏み切るかどうかは慎重に判断しましょう。
転職半年で再転職するメリット
転職後、半年で再転職するメリットは人によって異なりますが、一例として以下が挙げられます。
労働環境をリセットできる
「長時間労働」「休日出勤」「パワハラ」「セクハラ」など、入社後に労働環境の実態がわかることもあります。強い不満やストレスを感じており、この先も改善できる見込みがない場合、早期に退職することで労働環境をリセットできます。
我慢して働き続ければ心身の不調を招くこともありますが、退職によって心身の健康を守れるでしょう。
目指したいキャリアに近づける
実際に仕事を始めてみると、入社前にイメージしていた仕事内容と異なることもあるものです。中長期で描いているキャリアプランと照らし合わせ、必要な経験やスキルを得られないと判断した場合、再度転職することによって軌道修正でき、目指したいキャリアに近づけるでしょう。
転職半年で再度転職するデメリット
転職後、半年で再度転職することでデメリットが生じるケースもあります。デメリットを理解した上で判断しましょう。
「すぐに辞める人」と思われるリスクがある
企業に応募した場合、現職の在籍期間が半年程度であると、採用担当者から「不満があるとすぐに辞める人なのだろうか」「当社に入社しても、またすぐに辞めてしまうかもしれない」といった懸念を抱かれる可能性があります。
応募企業で活躍できるスキルを持っていたとしても、採用担当者が納得する転職理由を語れなければ、選考のハードルが高くなるかもしれません。
有給休暇や賞与・退職金の給付がない企業もある
労働基準法では、年次有給休暇が付与されている要件として、「1.入社から6カ月が経過していること」「2.その期間の全労働日の8割以上出勤していること」と定めています。つまり、半年未満で退職した場合、有給休暇を取得できません。
また、多くの企業では、賞与・退職金の支給対象者について、一定の「在籍期間」を定めています。在籍期間が半年程度である場合、支給対象外となる可能性が高いでしょう。
転職半年でも離職を検討するよくあるるケース
転職半年での再転職は、上記のようなデメリットをもたらす可能性もありますが、それでもあえて転職するケースもあります。該当する状況の一例を挙げてみましょう。
入社前に提示された条件と異なる
配属部署・仕事内容・労働条件・待遇など、入社前に提示された条件と異なっているケースがあります。それにより、転職した目的が達成できない場合、本来の転職目的を叶えられる企業への再転職を検討してみても良いでしょう。
市場価値の高い人材を目指す
もうしばらく会社にとどまる決断をしたとしても、転職活動を進めていくにしても、今の会社にいる間に少しでも「市場価値を高める」ことを意識して行動しましょう。転職活動でアピールできる材料は、多ければ多いほど有利になります。
- 上司・先輩からスキルやノウハウを学ぶ
- 指示された仕事以外の業務も積極的にこなす
- 新しいやり方を導入して効率化を図る
- 資格試験の勉強に取り組む
何らかの不満を抱えたまま同じ会社で働き続けるのは、大変かもしれません。しかしあと半年頑張って1年間続けたなら、何らかの成果や実績が残せる可能性があります。それを次の転職活動でアピール材料として活用すれば、プラス評価につながるかもしれません。
職場環境や待遇が悪い
入社後に働く環境や待遇が悪いことがわかり、改善の見込みがなければ、再転職を検討してみても良いでしょう。例えば以下のようなケースです。
- 過度な残業や休日出勤が常態化している
- パワハラ、セクハラが横行している
- 経営状態が悪化し、給与遅配や減給が生じている
- 成果を挙げても昇給・昇格の見込みがない
- フレックスタイム制など、働き方の制度が形式だけで運用されていない
職場環境や待遇に不満を抱いていると、仕事へのモチベーションが下がり、成長も停滞してしまうかもしれません。意欲を持って働ける環境に身を置くことも大切です。
目指すキャリアを実現できない
「やりたいこと」「目指すキャリア」を明確に持っていて、入社後に与えられた職務が目標への道筋から外れるものであった場合、あるいは意に沿わない職務転換を強いられた場合などは、早々に軌道修正を図ったほうが良いともいえるでしょう。
会社の意向に従いながら日々を過ごしていると、目指すキャリアの実現につながる経験・スキルを得るチャンスを逃してしまうかもしれません。
次の転職を実現させるための考え方とポイント
再度の転職を決断した場合、次は後悔しない転職を実現するために、次のポイントを意識してみましょう。
これまでの転職活動プロセスを分析する
これまでの転職活動を振り返り、現在の会社を選択した理由を整理してみましょう。実は当初の目的とは異なる条件を優先していた、ということがあるかもしれません。例えば、「仕事のやりがいを求めていたはずなのに、給与額に惹かれて入社を決めてしまった」や「年収・役職にこだわって企業選びをしたが、入社後、自分が大切にしたいのは社風だったと気付いた」などといったケースです。次の転職で優先したい条件は何なのか、整理して優先順位を付けてみましょう。
優先順位を考える際の項目一例
- 企業理念
- ビジョン
- 事業戦略
- 事業・商品の特徴
- 仕事内容
- 社風
- 経営者
- 社員
- 評価・教育制度
- 給与
- 設備
- 勤務場所
上記はあくまで一部であり、人によって重視する項目は異なります。自身の「譲れないポイント」を洗い出してみましょう。
市場価値の高い人材を目指す
もうしばらく現職にとどまる決断をしたとしても、転職活動を進めるにしても、「市場価値を高める」ことを意識して行動すると良いでしょう。転職活動でアピールできる材料を増やしておけば、次の転職活動がよりスムーズに運ぶ可能性があります。
- 上司・先輩からスキルやノウハウを学ぶ
- 指示されたこと以外の業務にも積極的に取り組む
- 新しいやり方を導入し、課題解決や効率化を図る
- 資格試験やスキルの勉強に取り組む
不満やストレスを抱きながらも、市場価値を意識することで何かしらの成果や実績を挙げられる可能性があります。それを次の転職活動でアピール材料として活用すると、プラス評価につながるかもしれません。
「退職理由」の伝え方を工夫する
現職を半年程度で退職しようとしている応募者に対して、入社後にまた短期間で辞めてしまわないように、企業によっては「退職理由を確認したい」と考えます。退職理由を聞かれたとき、現職への批判や不満ばかりを感情的に語ることは得策とはいえません。採用担当者に良い印象を与える可能性が高くないことに加え、場合によっては、「実は応募者にも原因があるのではないか」「現職が悪いのが事実だとしても、入社前に見抜けなかったのはなぜなのか」と思われるかもしれません。
そこで、退職理由では客観的に「事実」を伝えると同時に、「自分の情報収集が足りていなかった」「十分に確認せずに入社を決めてしまったが、慎重に判断すべきだった」など、自身の反省点を伝えるようにしましょう。その上で、これから目指すキャリアについて、ポジティブな姿勢や意欲を語りましょう。
在職中に転職活動をする
会社を辞めてから転職活動に臨むと、精神的にも金銭的にも余裕がなくなる可能性があります。「早く次の仕事に就かなければならない」という焦りから、志望度が低いにもかかわらず内定が出た企業に入社を決めてしまうと、入社後に後悔するかもしれません。
不本意な転職を繰り返してしまわないように、現職で働きながら転職活動に取り組むことをおすすめします。
転職活動で悩んだらエージェントに相談しよう
転職するべきか現職にとどまるべきか、自分1人だけで考えていると迷路に迷い込むこともあるでしょう。そのようなときは転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談することで、考えを整理できるかもしれません。
また、企業に直接応募して半年で辞めるに至った経緯を伝えた場合、客観的な事実を説明しているつもりでも、異なる受け止め方をされる可能性もあります。転職エージェントを活用することで、客観的な事実を説明しているかなどのアドバイスをもらい、自身の考えを整理できるかもしれません。 転職エージェントに登録し、キャリアアドバイザーに率直な気持ちを相談してみましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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