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キャリア形成とは?重要視される背景とキャリア形成の進め方を解説

キャリア形成

個人が望ましいキャリアを自律的に形成することが、本人の市場価値や勤務先の企業価値を高めることから、「キャリア形成」が注目されています。では、キャリア形成はどのように進めれば良いのでしょうか。

そこで今回は、キャリア形成という言葉の意味やその重要性、キャリア形成を通じた自分の市場価値を高める考え方について、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

キャリア形成とは?キャリアに関する用語解説

「キャリア形成」とは、主に仕事に関して個人が主体的に「将来ありたい姿」をイメージし、必要な職務経験を蓄積し、職業能力を身につけて向上することで、自己実現を追求していくプロセスや行動を指します。

具体的に例えると、「大手企業を担当しグローバルに活躍する営業になりたい」という将来像がある場合に、必要な職務経験を「法人営業経験」「外資系または海外での勤務経験」、職業能力を「語学力」「提案力」などと設定して、法人営業の経験を身につけながら語学力を磨き、海外拠点への異動や外資系企業への転職などを経て、憧れの姿に近づけるという行動がキャリア形成と言えるでしょう。

キャリア形成以外にも、キャリアに関する用語は複数あります。
キャリア関連用語を解説します。

【キャリアデザイン】

キャリアデザインとは、「職業人生設計」を指します。自身が思い描くキャリアや「ありたい姿」を実現するために、どのような働き方や働く環境が良いかを、ライフプランを含めて計画を設計することです。キャリア形成のための設計図を書くようなイメージです。

【キャリアプラン】

キャリアデザインが、ライフプランも含めて設計するのに対して、キャリアプランは主に仕事に対して「ありたい姿」を実現するために、必要な働き方や働く環境、身につけたい経験・スキルなどを具体的に計画することを指します。

【キャリアパス】

キャリアパスとは、企業側の観点では社員に示すキャリアの道筋を指します。社員が希望するポストや職務に就くために、どのような経験・スキルを身につければ良いのかを明らかにし、目標設定がしやすくなるという効果が期待できます。一方、個人の観点では、「ありたい姿」を実現するためのキャリアの道筋を指します。

キャリア形成はなぜ重要?

なぜキャリア形成が注目されているのでしょうか。キャリア形成の重要性が高まっている背景や理由について解説します。

満足度の高い仕事につながる傾向がある

個人が自らのキャリアを主体的に形成することは、仕事に対する満足感を向上させるという調査結果があります。

Indeed Japan株式会社の調査では、2023年と10年前のいずれの時点においても、「主体的にキャリアを考え、将来設計をしてきた/している」と回答した人は、「仕事や働き方に対する満足度」を点数化したときの高スコア(10点満点中8~10点)の人の割合が31.4%と、将来設計をしてこなかった人の回答割合(9.1%)の3.4倍になっています。

(※)出典:「キャリア形成や将来設計に関する意識調査」(Indeed Japan株式会社)

継続して主体的にキャリアを考えることや将来設計に取り組むことが、満足度の高い仕事につながる傾向を示していると言えるでしょう。

キャリアの方向性が明確になる

「ありたい姿」を実現するためには、必要となる経験・スキルを明らかにしなくてはなりません。その結果、どのような順序や方法で経験・スキルを身につけるのかというプロセスも明確になるでしょう。さらに、所属企業で経験を積むことでキャリア形成が可能なのか、それとも転職しないと実現できないのか、どのくらいの期間かかるのかなど、キャリアの方向性が具体化するでしょう。

自律的なキャリア形成が求められている

従来の日本はジョブローテーションを行いながら人材を育成する「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。しかし現在では、雇用制度の変化や働き方の多様化などを背景として、必要な職務に適した経験・スキルを持つ人材を採用する「ジョブ型雇用」が増加しています。

内閣官房が発表した「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版」の「Ⅲ.三位一体の労働市場改革の早期実行」の項でも、「個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入」に言及しており、「『キャリアは会社から与えられるもの』から『一人ひとりが自らのキャリアを選択する』」と自律的なキャリア形成を推進しようとしています。

(※)出典:「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版」(内閣官房)P10

こうした社会環境の変化から、自律的なキャリア形成を図ることは、自身の職業人生にも有効に働くでしょう。

政府が進めているキャリア形成支援

前述の通り、政府は個人の自律的なキャリア形成を推進しており、具体的な支援制度も設けられています。厚生労働省が提供しているキャリア形成のための制度について解説します。

キャリアコンサルティング

厚生労働省が発表した「令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-」の第Ⅱ部の資料には、個人のキャリア形成においてキャリアコンサルティングが有効であることが述べられています。

(※)出典:「第Ⅱ部 労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題」(厚生労働省)

キャリアコンサルティングとは、専門のキャリアコンサルタントが面談し、キャリアに関する様々な悩みや課題に対してアドバイスを行うことを指します。厚生労働省が実施している「キャリア形成・リスキリング推進事業」では、個人は無料でキャリアコンサルティングを受けることができます。キャリア形成に興味をお持ちの方は、申し込んでみるのも良いでしょう。

(※)参考:キャリア形成・リスキリング推進事業(厚生労働省)

人材開発支援助成金

企業が従業員の人材育成やスキルアップを図るために、政府は様々な助成金を出しています。例えば「人への投資促進コース」では、「労働者の自発的な能力開発の促進」として、働きながらスキルアップするための長期休暇や短時間勤務などの制度を導入する企業に助成を行っています。また、従業員が自発的に受講した研修費用も助成しています。

勤務している企業でも、助成を受けて人材開発の制度を設けているかもしれません。自社にキャリア形成を支援する制度がないか、上司や人事などに確認してみましょう。

教育訓練給付制度

一定の要件を満たした雇用保険の加入者が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、修了した場合に、かかった費用の一部が支給される制度です。対象となる教育訓練は、レベルなどに応じて3種類あり、それぞれ給付率が異なります。オンラインで受講できる講座や、夜間・土日に受講できる講座もあり、働きながら受講することができます。対象講座は約17,000講座あるので、受講してみたい講座があるか調べてみましょう。

(※)参考:教育訓練給付金のご案内(厚生労働省)

キャリア形成の5つのステップ

自分の理想の将来像を実現するキャリア形成は、どのように進めると良いのでしょうか。キャリア形成を進めるための5つのステップをご紹介します。

ステップ1:Will(これから取り組みたい仕事、ありたい姿)を明らかにする

まず、数年先の将来を想定して、自身の市場価値を高めるために取り組みたい仕事や、その時点でどのような存在でありたいかを思い描いてみましょう。

例えば「○○事業の立ち上げに関わりたい」「部下○名のマネジメントに携わりたい」など、具体的に設定するほかに、「○○さんのようなビジネスパーソンになりたい」のように、ロールモデルを設定するのも一案です。

ステップ2:Can(今できること)と、大切にしてきた価値観を整理する

これまでの職務経験の棚卸しを行い、自分ができることや大切にしてきた価値観を整理します。棚卸しは次のような観点から行うと良いでしょう。

  • これまでどのような職務経験をしてきたか
  • どのような人脈を得てきたか
  • どのようなときにやりがいを感じてきたか
  • 自分が得意としていることは何か

ステップ3:Must(やるべきこと)を整理する

ステップ1で明らかにしたWillに向かうために、ステップ2で整理したCanに加えて、これから身につけなければならない経験・スキルを整理します。

例えば、営業経験者が「営業マネジャー」を目指すのであれば、「チームリーダーを務め、自分自身も営業実績で上位にランクインする」ことをMustに設定するといった方法です。Mustを設定することで、やらなければならないキャリア形成の道筋が明確になるでしょう。

ステップ4:Action(行動・実践)を起こす

ステップ3までで明らかになったキャリア形成の道筋を実践します。セミナーや研修の受講といった自己研鑽、異動希望の提出や社内公募への応募など、現職でできることを実行に移しましょう。現職では実現できないことがあれば、転職活動を視野に入れることも検討しましょう。

ステップ5:Check(評価)を通じて形成したキャリアを検証する

これまで自分が形成してきたキャリアを振り返り、その後の方向性を検討したり、目標や計画を見直したりしましょう。キャリア形成に不十分な点や修正が必要な点があれば、その反省や気づきを活かして今後の目標や計画を立てると良いでしょう。

なお、キャリアは必ずしも自分が思い描いた目標や計画どおりに形成されるとは限りません。想定外の出来事や出会いが新たな展開を招き、思いがけないキャリアを形成していく可能性もあります。

そのため、当初の目標や計画にこだわりすぎずに、1~5のステップを定期的に繰り返し、当初の目標や計画とは異なる目標・計画への見直しも視野に入れ、柔軟にキャリア形成を図りましょう。

キャリア形成に悩みがある場合の対処法

キャリア形成に悩んだら、第三者の手を借りることで突破口が開けるかもしれません。キャリア形成のアドバイスが受けられる2つの方法をご紹介します。

キャリア形成・リスキリング相談コーナーに相談する

前述の通り、厚生労働省は「キャリア形成・リスキリング推進事業」を通じてキャリアコンサルティングの申し込みを受け付けています。また、無料のセミナーも開催しているので、申し込みや相談をしてみるのも方法のひとつです。

(※)参考:キャリア形成・リスキリング推進事業(厚生労働省)

転職エージェントに相談する

キャリア形成を考える際は、転職市場の動向を把握して転職支援実績が豊富な転職エージェントに相談してみるのも一案です。具体的なキャリアのモデルや中長期的なキャリアプラン例を示してもらえる可能性があり、新たな選択肢や目標達成のための道筋が見つかることも期待できるでしょう。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

記事作成日:2024年12月13日 記事更新日:2025年7月14日

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。