退職してから転職活動する？退職しないで転職活動する？メリット・デメリットを解説

転職を決意したものの、退職してから転職活動をするか、現職を続けながら転職活動をするか、迷う方もいるようです。それぞれの転職活動のスタイルのメリット・デメリット、退職してからの活動方法などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。退職してから転職活動をして後悔した事例、希望を実現できた事例も参考にしてください。

転職活動のスタイルとメリット・デメリット

退職してから転職活動をするスタイルと、現職を続けながら転職活動をするスタイル、それぞれにメリット・デメリットがあります。理解した上で、自分の状況に合うスタイルを選びましょう。

退職してから転職活動をするメリット

退職しているため、「転職活動に集中できる」ことが大きなメリットといえます。時間的にも体力的にも余裕を持って転職活動に取り組めるでしょう。

また、「面接日程の設定がしやすい」というメリットもあります。応募企業と面接日程を調整する際、平日の昼間の時間帯を指定されたとしても応じやすいでしょう。採用枠が埋まらないうちに、早い段階で面接を受けることで、チャンスをつかみやすくなるかもしれません。

企業から内定を得た後、現職企業に退職日の交渉をする必要もなく、応募企業が指定するタイミングでの入社も可能でしょう。何かしらの事情で採用を急いでいる企業では、入社希望日が合わない応募者は採用を見送ることもあります。企業からの入社日の指定に応じやすいのは、大きなメリットといえるでしょう。

退職してから転職活動をするデメリット

退職して安定収入がなくなった場合、不安になり、早く転職先を決めようと焦ってしまうかもしれません。じっくり検討せずに決めた結果、入社後にミスマッチに気付いて後悔するケースも見られます。

また、納得のいく企業からの内定を得られないまま、転職活動が長引き、ブランクができてしまう可能性もあります。ブランクが長くなると、企業からは「ビジネスの感覚が失われていないか」「スキルが鈍っていないか」といった懸念を抱かれることもあるでしょう。

退職しないで転職活動をするメリット

現職を続けながら転職活動をするメリットは「収入への不安が軽減される」という点です。給与という安定収入があれば、納得のいく企業が見つかるまで、じっくりと転職活動を続けられるでしょう。焦りからミスマッチな転職先を選んでしまう可能性も低いといえます。

また、先に述べたように、ブランクが長くなると採用担当者から懸念を抱かれることがありますが、在職中であればそうした心配はありません。

なお、転職活動を通じてさまざまな企業を見てみると、自社の良さを再発見することもあります。その場合、「転職せず、現職にとどまる」という選択も可能です。

退職しないで転職活動をするデメリット

仕事と転職活動を同時に進めるとなると、転職活動に使える時間が限られます。企業研究や面接対策の時間を十分に取れないかもしれません。面接日程の調整においても、企業側の都合と自分の都合が合わずに先送りとなり、選考がスムーズに進まないこともあります。

また、内定を獲得した後、退職時期と入社時期の調整が難航するケースも見られます。

退職してから転職活動をする方法

退職してから転職活動をする方法をご紹介します。以下の方法は現職を続けながら転職活動する場合にも当てはまりますが、退職して時間に余裕があれば、複数の方法を併用できるので利用しやすくなるでしょう。

企業サイトや転職サイトの求人情報を探す

興味がある企業の採用サイトを見て、応募したい求人があれば、応募フォームあるいは応募受付用のメールアドレスに直接応募します。

あるいは、転職サイトで求人情報を閲覧し、興味がある求人が見つかれば、そのサイトに登録することで応募が可能になります。

スカウトサービスを利用する

スカウトサービスに職歴・希望条件を登録しておくと、企業の採用担当者や転職エージェントからスカウトを受けられる可能性があります。自身が想定しなかった業界・企業からアプローチがあり、新たなキャリアの可能性に気付けるかもしれません。

スカウト内容によってはオンラインなどで「カジュアル面談」を行い、企業を理解した上で応募するかどうかを決められるケースもあります。

ハローワークを活用する

ハローワークは、厚生労働省が運営する「公共職業安定所」です。自宅の近くのハローワークで求職申し込みの手続きを行い、端末で求人を検索します。興味のある企業があればハローワークの窓口で求人に応募し、書類選考を通過したら面接に進みます。インターネットでの求人検索も可能であり、全国の求人情報を入手できます。

SNSやリファラル採用を利用する

近年は、企業がSNSで採用情報を発信していることもあります。SNSのアカウントにメッセージを送り、採用担当者とコンタクトをとってみてもよいでしょう。

また、社員が友人・知人を自社に紹介する「リファラル採用」の制度を導入する企業も見られます。リファラル採用を導入している企業に勤務している友人・知人がいる場合は、声をかけてみることで、採用担当者につないでもらえるかもしれません。退職していて時間に余裕があれば、多くの友人・知人と会って話す時間もとりやすいでしょう。

転職エージェントに登録する

転職エージェントに登録すると、キャリアアドバイザーから、転職活動全般のサポートを受けられます。キャリアの棚卸しや自己分析のサポート、求人情報の紹介、職務経歴書作成・面接対策へのアドバイスなど、多様なサービスをすべて無料で利用できます。

企業の採用サイトや転職サイトなどには掲載されていない「非公開求人」の情報を入手できるのも、転職エージェントの利用メリットの一つです。

仕事の探し方がわからない方はこちらも参考にしてみましょう。

退職してから転職活動をして後悔した事例

大手企業で営業管理職を務めていたAさん（40代）。転勤や異動を頻繁に繰り返す生活から脱したいと考え、転職を決意。退職後しばらくは、旅行に出かけるなどしてゆっくりと過ごしました。

数カ月後に転職活動を開始すると、希望条件に合う求人が想像より少なく、何社か応募するものの不採用が続いてしまいます。数カ月経っても決まらないため、焦りが募り、手当たり次第に応募するように。しかし、やりたいことや目指すことが明確でないため、企業からの評価を得られません。なかなか選考を通過できず、さらに焦りが増し、自己肯定感も下がってしまいました。

転職活動を仕切り直し、退職後10カ月で転職を果たしたAさんですが、数カ月の間、非常につらい思いを味わい、家族も不安にさせたことを後悔しました。「大手企業の営業管理職として実績がある自分なら、簡単に転職できるだろうと甘く考えすぎていた」「退職前から転職市場を把握したり、情報を収集したり、準備をしておけばよかった」と反省したのでした。

退職してから転職活動をして希望を実現した事例

IT企業に勤めるBさん（30代）は「自分個人の力でどこまでできるか挑戦してみたい」と考え、退職。コンサルタントとして独立・起業し、「まず1年」という区切りを設けて活動を開始しました。複数のクライアントを獲得し、自信を得たBさんでしたが、どこか物足りなさも感じました。外部からのコンサルティングやサポートよりも、組織の中で責任を持ち、意思決定ができる立場で働く方が自分に向いていると気付いたのです。

こうして退職から1年後、転職活動を開始。「IT企業での実務経験」＋「個人事業主としてのコンサルティング経験」を掛け合わせて活かせる選択肢を探った結果、成長中のITスタートアップ企業にマネジャーとしての転職を果たしました。退職して正社員としてのブランクが生じたものの、その間の活動によって新たな経験を得たことで、市場価値がアップ。希望に合うキャリアを実現するチャンスをつかんだのです。

退職してからの転職を実現させるポイントとは？

企業はすでに退職している応募者に対し、「日々どのように過ごしているのか」という疑問を抱くことが多いようです。退職から日が浅いうちは「転職活動に集中しているのだろう」と思われても、離職期間が長引くと、「他社の選考が通過しない理由があるのかもしれない」「働く意欲が低いのではないか」などと懸念を抱かれる可能性もあるでしょう。

退職して時間ができた分、例えば「業界・企業研究をしっかりと行っている」「自己研鑽のための活動をしている」など、時間を有効活用していることを伝えられるとよいでしょう。採用担当者の懸念を払しょくし、プラス評価につながるかもしれません。

転職活動に悩んだときは転職エージェントに相談するのも一案

仕事との両立が難しいと考えて、退職してからの転職活動を検討している方もいるかもしれません。しかし、転職エージェントを活用することで、求人情報や企業情報を効率的に収集できたり、面接日程など企業とのやりとりを調整してもらえたりします。

仕事と転職活動を同時に進める負担を軽減できる可能性がありますので、転職エージェントを活用するのも一案です。