未経験転職を目指す場合、「志望動機はどのように書けばいいのか」「未経験でもアピールできる志望動機の書き方が知りたい」と考えている人もいるでしょう。
未経験の業界や職種を目指す場合の志望動機の書き方や意識したいポイントなどを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。営業職や事務職などの志望動機の例文も紹介するので、参考にしてみましょう。
目次
志望動機の書き方
まずは、志望動機の書き方や、応募企業との接点の見つけ方について解説していきます。
志望動機の構成と具体的に伝える内容
志望動機の構成は以下を参考にしましょう。
2：この会社を選んだことの根拠となるエピソードを伝える。
3：入社後の活躍可能性を伝える。
冒頭では、「貴社を志望したのは、◯◯と考えたためです」など、簡潔に一文で伝えることがポイントです。根拠となるエピソードでは、応募企業や入社後の仕事内容と接点があるような過去の経験・スキルを具体的に伝え、説得力を高めていきましょう。さらに、入社後に活躍・貢献したいことや達成したい目標などを伝えることで、活躍可能性をイメージしてもらいやすくなります。
応募企業との接点の見つけ方
これまでの仕事で経験してきたことを「5W1H（※）」で整理した上で、応募企業の仕事内容との共通点を見つけ、自分の経験を活かせる部分を探しましょう。
・Who（＝仕事で関わる相手）
・When（＝一つの仕事に関わる期間）
・What（＝扱う商材）
・Why（＝仕事のミッション）
・Where（＝働く場所が自社か顧客先か、グローバルかなど）
・How（＝どのような方法で課題解決するか）
未経験の業界・職種に応募するときの志望動機で意識したい3つのポイント
未経験の業界・職種に挑戦する場合に、志望動機で意識したいポイントについて解説します。
【入社意欲】会社の理念や戦略、方針に共感していることを伝える
採用担当者は志望動機を通じて「なぜ他の企業ではなく自社を志望しているのか」を確認しています。自社のビジョンや企業理念、事業内容、商品・サービス、社風など、応募企業が持つさまざまな要素に対して、どこに魅力を感じているのかを知りたいと考えているでしょう。
企業のビジョンや理念に共感し、事業内容や商品・サービスに強い関心がある応募者であれば、高いモチベーションを持って活躍してくれることが期待できます。また、応募企業への理解度を探ることで、企業研究をしているかどうかも判断しているでしょう。
【入社後の活躍】今までの経験・スキルが活かせると具体的にアピールする
採用担当者は、応募者の経験・スキルや仕事に対するこだわり・価値観が募集している仕事にマッチするかどうかも確認していると考えられます。
未経験業界・職種への転職を目指す場合でも、全く共通点がないままの志望動機では、採用担当者は入社後に成果を出せる人材なのかを判断しにくいと言えます。
また、応募する仕事へのイメージができていないと捉えられる可能性もあります。未経験業界・職種への転職でも、これまでの経験・スキルを洗い出して、応募する仕事との接点を探すことが大事です。
【定着性】この会社ならば、転職理由が実現できると伝える
応募者が入社後に何を実現したいのか、自社で実現できるのかどうかを志望動機で確認していると考えられます。例えば「入社後はグローバルに活躍したい」という志望動機に対して、応募するポジションが国内のみだった場合、応募者が実現したいことと入社後の仕事内容がマッチしていないと判断できます。こうした場合は、「入社後にすぐ辞めてしまうのではないか」「企業研究不足ではないか」と懸念される可能性があります。
事前に企業研究を行い、実現できる内容を意識しましょう。また、志望動機で回答する内容に重なるものとして「転職理由」があります。そのため、志望動機は、転職理由との一貫性を意識して伝えることも大切です。
未経験の業界・職種に応募するときの志望動機の書き方【パターン別解説あり】
「未経験転職」のパターンは業界・職種の経験別に、以下の3つにわけることができます。
・経験業界×未経験職種
・未経験業界×未経験職種
いずれにしても、転職したい業界・企業・仕事についてきちんと調べ、これまでに身につけた経験・スキルと志望動機を紐づけることが大切です。また「未経験でも自ら積極的に取り組んでいく」という仕事に対する意欲やスタンスを伝えることも必要です。
以降は、3つのパターン別に志望動機でアピールするポイントを解説します。
未経験業界×経験職種の場合
すでに経験のある職種で、未経験の業界にチャレンジするパターンです。その職種ならではのテクニカルスキル（その仕事で必要とされる知識・経験）として、実績や成果を伝えましょう。同じ職種で異業界に転職する場合でも、仕事の進め方や業界の慣習などが異なる可能性があるので、仕事に取り組む姿勢や具体的に創意工夫した点まで伝えることがポイントです。
業界は異なっても、顧客属性や商品・サービスの特徴などに共通点があると、採用担当者が活躍可能性をイメージしやすくなります。過去の経験と応募する仕事との共通点を探してみましょう。
また、業界や商品知識が不十分だとしても、すぐにキャッチアップして活躍できそうなポータブルスキルをアピール（※）することも有効でしょう。
（※）ポータブルスキル：仕事を通じて得られる能力のなかでも、「課題発見力」「提案力」など、異なる業界・職種でも通用する（持ち運べる）スキルを指します。
経験業界×未経験職種の場合
すでに経験のある業界で、未経験の職種にチャレンジするパターンです。業界のテクニカルスキル（その仕事で必要とされる知識・経験）として、業界特性やマーケット・事業内容への理解があることをアピールしましょう。
また、未経験職種でも発揮できるポータブルスキルを伝えることもポイントです。
志望する職種とこれまでの職種の類似した経験やミッション、問題が起こった際の対応力や顧客・上司など関係者とのコミュニケーションの取り方などをあらためて見直し、整理するといいでしょう。
未経験業界×未経験職種の場合
未経験の業界・職種にチャレンジするパターンです。この場合は業界知識や業務経験を活かすことができないため、アピールに工夫が必要です。例えば、パソコンなどの基本的なビジネススキルが身についていることを伝えると同時に、ポータブルスキルにおいて、類似した経験があることを伝えたり、コミュニケーションを取る上での心がけなどを伝えたりすることが大切です。
業界・職種が異なっていても「イベントを手伝った経験が、応募企業の顧客セミナーで活かせそう」「使用ツールは異なるが分析するプロセスは共通」など、過去の経験と応募する仕事の共通点を伝えます。求人や企業の採用ページなどを読み込んで、過去の経験との接点を探しましょう。
未経験者の志望動機の例文【職種別】
営業職・事務職への転職を目指す未経験者の志望動機の例文と解説を紹介します。自分の志望動機を書く際の参考にしてみましょう。
営業職の志望動機例文【食品メーカー/営業→IT業界/営業】
SaaSビジネスで自分の力を試したいと考え、市場のなかで高いシェアを誇る貴社にて、「小売・飲食分野の非効率を解決する」というミッションに共に向かいたいと考え、志望いたしました。前職では、食品メーカーの法人営業として、月平均約XX社の部長職以上の方へ商品提案をして参りました。SFA（セールスフォースオートメーション）ツールを活用し、新規開拓顧客の約5割を獲得した経験から、顧客に有効な情報を効率よく提供するSaaSビジネスに興味を持ちました。未経験の業界ではありますが、食品メーカーでの知識・経験を最大限に活かせると考えております。
既存顧客に対しては、カスタマーサクセスを心掛けたフォローで契約継続率を高め、アップセル、クロスセルを通して顧客単価を上げてきたので、新規開拓、既存顧客の満足度向上の両面で貴社の事業に貢献したいと考えております。
【解説】同じ職種でも業界が異なると、ターゲット、取引先、期間、商品・サービスの種類、仕事の目的、方法が変わってきます。共通点が多ければ、「未経験業界でも活躍できそうだ」という判断につながりやすいでしょう。また、実績を出すためにどのような工夫をしてきたかについても具体的にし、仕事への取り組み方が見えるようにしましょう。
営業職の志望動機例文【飲食業界/店長→IT業界/営業】
「ユーザー目線」を大切にした飲食店向けのITツールを提供している貴社に魅力を感じて志望いたしました。飲食店の店長として5年間の経験を積むなか、20代から50代まで幅広いお客様の満足度向上に努めました。評価事例を共有する仕組みを作ってナレッジ化し、店舗全体の接客スキル向上を目指した結果、全国XX店舗のなかで顧客満足度上位10％を常に維持する店舗に成長。IT業界を志望したのは、飲食店向けのツールやアプリの進化に強い興味を抱いたためです。お客様目線を大切にしてきたので、「ユーザー目線」をミッションに掲げる貴社に強く共感しております。特に、貴社のお客様向けアプリ「○○」のUIは類似アプリのなかでも圧倒的に優れていると感じます。
ITスキルは、ブラインドタッチ、顧客分析の簡単なExcel利用、社内会議向けのWord資料作成等が可能です。営業は未経験ではありますが、業界知識や営業スキルなどの習得に努めながら、飲食店運営の経験を活かして事業成長に貢献したいと考えております。
【解説】中途採用では即戦力を期待されることも多いため、「未経験業界×未経験職種」の転職は難易度が高いことが考えられます。経験者と比べて経験・スキルが足りないので、志望動機が「貴社のブランドが好きだから」「以前から興味のあった業界」など、曖昧な内容では説得力に欠けるでしょう。
志望動機を書く前の段階で「代表や役員などの記事を読んでおく」「競合他社も含めて商品・サービスを使ってみる」「店舗に足を運んで従業員をチェックする」など、できる限り企業研究を行いましょう。また、応募する求人や採用ページなどを読み込んで、これまでに培った経験・スキルとの接点を探して志望動機でアピールすることも大切です。
事務職の志望動機例文【人材業界/営業→人材業界/経理職】
貴社の人材業界のなかでも常に新しい分野にいち早く取り組まれている点や、業界セミナーなどで拝見した社員の皆様の誠実さ・優秀さに魅力を感じて志望いたしました。現職では、人材紹介会社の営業として累計100社ほどの企業人事に対し、主に採用領域において採用プロセス、ツール、手法の提案をして参りました。営業目標に対して行動を数値化し、分析するなど数字管理を得意としております。企業経営においては、人材と共に財務・経理も重要であるため、今後は経理として専門性を高めていきたいと考えました。現職では異動の希望が叶わなかったため、個人で日商簿記2級まで取得、現在は1級取得を目指して勉強しています。
事務職は未経験ではありますが、新しいことに挑戦できる風土や仲間と切磋琢磨できる環境のある貴社で成長を重ねながら、人材業界での経験と自己学習した簿記の知識を活かして貢献していきたいと存じます。
【解説】応募企業と同じ業界で働いた経験や知識がある場合は、異なる職種でもすぐにキャッチアップできそうだと考えがちです。しかし、業界知識や商品知識があることと、その職種の仕事への理解や適性があるかは別の問題です。未経験職種であることを補う学習意欲や姿勢などを交えて伝え、経験不足をカバーしましょう。
また、現職（前職）で職種変更が叶わなかった場合はそのことを伝え、その仕事を目指した理由や背景を明確にし、貢献できる部分を整理して志望動機を作成するといいでしょう。
転職を目指すなら転職エージェントに相談を
昨今は、少子高齢化による人口減少の影響によって、人手不足となっている傾向も見られます。厚生労働省が発表した「令和６年版 労働経済の分析 －人手不足への対応－」（※1）によれば、ハローワークにおける求人の充足率においても、フルタイム求人は、2009年をピークに、その後大きく低下しており、2023年には10％程度と、この半世紀で最低水準となっていました。
こうした背景のもと、未経験者にも門戸を広げて採用を行う企業は増加傾向にあり、『リクルートエージェント』の求人分析データ（※2）においても、未経験求人が増加していることがわかっています。
未経験から異業界・異職種へチャレンジできる機会は増加している状況があり、チャンスも広がっていると言えるでしょう。
とはいえ、応募書類や面接では、志望動機も含め、未経験であることをカバーするためにアピールを工夫することが大事です。転職エージェントは、未経験の業界・職種の転職支援実績も豊富にあるため、応募書類や面接でより効果的にアピールするためのアドバイスを受けられるでしょう。また、未経験者に門戸を広げている求人を中心に探してもらうことで、転職活動をよりスムーズに進めるために役立てることができます。
出典（※1）：「令和６年版 労働経済の分析 －人手不足への対応－（第２－（１）－17図）」（厚生労働省）
出典（※2）：未経験求人が 2018 年度比で 3.2 倍に増加。2022 年度で急増新たな業界・職種へチャレンジできる機会が増加(株式会社リクルート（現・株式会社インディードリクルートパートナーズ ）)
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日：2023年03月09日
記事更新日：2024年09月24日
記事更新日：2025年09月10日
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。
