「仕事をしていてミスをすることが多い」「最近、仕事でのミスが続いている」。そんな悩みを抱えている方に、ミスの防止法や気持ちの切り替え方をお伝えします。ミスが多い原因から対処法、予防策まで、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏に解説いただきました。
仕事でミスが多くなってしまう原因とは?
仕事でミスを多発してしまう原因には「個人」によるものと「組織」によるものがあります。まずは個人的要因として考えられるものを挙げてみましょう。
まだその仕事に慣れていない
「部署異動」「担当業務の変更」「昇進(リーダーやマネジャーになった、など)」、あるいは「転職」をしたばかりの状態である場合、当然ながらその仕事に慣れていないため、想定外のミスをしがちです。
仕事に集中できていない
睡眠や休息が不足している、体調が優れないなど、仕事に意識を集中できていないのかもしれません。また、作業環境が集中力の低下につながっていることもあります。
例えば、「PCデスクトップ画面が未整理のフォルダやファイルでごちゃごちゃしている」「デスク回りに資料が散乱し、整理整頓ができていない」「仕事に無関係のものが視界に入ってくる」などが挙げられます。
担当業務を遂行するスキルやキャパが不足している
担当している業務に対し、スキルが足りていない可能性もあります。また、「多くの仕事を引き受けてしまう」「複数の仕事を同時に進めて混乱を招いてしまう」など、自身のキャパシティを超えていることも考えられます。
「頼まれると断れない」「周囲にサポートを依頼できない」といったタイプの方は、こうした状況に陥りがちです。
仕事の優先順位付け、スケジュールの管理ができていない
自分にとってやりやすい仕事や興味がある仕事を優先し、急ぎの仕事や重要な仕事を後回しにした結果、時間がなくなって焦って対応することになり、ミスが発生することもあります。仕事の優先順位付けや、時間配分が適切に行われていないのです。
わからないことを確認せずに進めている
仕事をしていて迷うことがあったとき、上司や先輩に相談せず、自己判断や思い込みで仕事を進めてしまった結果、誤った方向へ進んでしまうケースもあります。
成果物に対する責任感が欠けている
業務を一通り終えた後、最終チェックをしない、また周囲にチェックを依頼しないために、ミスに気付けないケースです。成果物に対して責任感が欠けているともいえるでしょう。
上記は個人に起因するミスですが、組織側に問題があるケースもあります。ミスにつながる組織の要因としては、次のようなものが挙げられます。
上司が適切な仕事をアサインできていない
そもそも上司が部下の経験・スキル・適性を把握して、その人に適した仕事をアサインできていない可能性があります。
人員不足で1人への負荷が重い
業務量に対して人員が足りていない状況では、1人が担う業務負担が大きくなります。そのため、目の前の業務をこなすことで精いっぱいになり、計画的に業務を進めたり入念にチェックしたりすることができなくなるでしょう。
仕事環境が整備されていない
例えば、社内システムが古いなど、障害が頻繁に起きると仕事が停滞し、焦りからミスを招くこともあります。また、デジタル化が進んでおらずアナログなやり方を続けている職場では、「手入力」「コピー」などの作業でヒューマンエラーが起きやすくなってしまいます。
チーム内のコミュニケーションが不十分である
上司から部下に対し、仕事内容について十分な説明がなされていない、あるいはチームメンバー同士でノウハウや注意事項などの共有がされていないなど、コミュニケーション不足もミスにつながります。
教育研修体制が未整備
業務を正確に遂行するための知識・スキルを備えるための研修・教育が、会社側から十分に提供されていないケースもあります。
仕事でミスをしたときの対処法
仕事でミスをした場合はどのように対処すればいいか、踏むべきステップをご紹介します。
ミスの内容について正確かつ早く報告する
ミスをしたとき、隠そうとしてはいけません。いずれ発覚するものですし、最初に隠したことで深刻な事態に発展することもあります。なるべく早い段階で上司に報告しましょう。このとき、言い訳をしたくなることもありますが、主観ではなく客観的に、事実を正確に伝えることが大切です。
上司からミス対応の指示を受ける
自己判断で解決しようとすると、ミスを重ねたり事態を悪化させたりする可能性もあるため、上司などから指示を受けて対応しましょう。
誠意をもって謝罪し、対応策を伝える
自身のミスによって迷惑をかけた人がいれば、自身の非を認め、誠意をもって謝罪します。謝罪だけで終わらせず、今回のミスをどのようにカバーするか、対応策を伝えます。
原因を振り返って今後の対応策を考え、実行する
ミスを起こすまでの経緯を振り返って分析し、同じミスを繰り返さないためにはどうすればよいかを考えましょう。上司にも相談し、対応策を決めて実行します。
関係者に対応策を報告する
対応策が固まったら、改めて関係者に謝罪と報告を行います。
仕事でミスをしないための対策
ミスを発生させないための対策は業務内容によって異なりますが、以下のポイントを意識することで予防できる確率が高まるでしょう。
個人だけではできないこともありますので、チームや上司に対して提案をしてみてはいかがでしょうか。
わからないことを残したまま進めない
わからないことがあるとき、それをそのままにして進めるのではなく、その場その場で確認・質問しましょう。
ダブルチェック体制を作る
同僚や上司に協力してもらい、仕事の途中段階や成果物に対してチェックをしてもらう仕組みを作っておくと安心です。
チーム内のコミュニケーションを活性化する
チーム内のコミュニケーションを増やし、わからないことを気軽に質問したり、迷ったときに相談できたりするようなチームの風土を築いていくのが望ましいといえます。積極的に質問をしたり、他のメンバーに情報を提供したりするなど、自ら働きかけていくことでチームのコミュニケーションの活性化を図りましょう。
作業を適切に分担する
自身が担当する業務への習熟度を見極めたり、都度優先順位を付けたりするよう習慣付けましょう。
「業務量が多すぎる」「複数プロジェクトを同時に進めている」「経験がなく、わからないことがある」といった場合には、自分に負荷がかかりすぎている部分を他のメンバーに分担してもらったり、サポートしてもらったりするようにしてください。
個人で抱え込むとミスを招いてパフォーマンスが落ちる可能性があることを前提に、組織としての成果や目標達成を意識することが大切です。適切な仕事をアサインしてもらうように上司とも相談しましょう。人員が足りていない場合は、他部署からの異動による補充や新規採用を提言してみてはいかがでしょうか。
デジタルツールの活用を検討する
入力ミス・転記ミス・計算ミスなどアナログな単純作業でヒューマンエラーが発生している場合、デジタル導入による自動化で解決できる可能性があります。さまざまなツールがありますので、自社業務に合うものを探して提案してみてもいいでしょう。
仕事に集中しやすい環境をつくる
PCのデスクトップ画面上にあるデータやデスクに積まれている資料など、煩雑になっているものを整理し、集中しやすい環境を整えましょう。
最近増えているフリーアドレスのオフィスなどであれば、仕事の内容に応じて働く環境を変えるなどの工夫をしてみるのもいいでしょう。定期的に休憩をとるなど、集中力を維持するための体調管理も重要です。
研修などに参加し、スキルアップを図る
業務スキルを高めることで防げるミスもあります。研修に参加したり、ベテラン社員を講師に招いて勉強会を開いてもらったりと、スキルアップの機会をつくるようにするといいでしょう。
仕事のミスで落ち込んだときの気持ちの立て直し方
仕事でミスをして落ち込んだときは、次のような方法で気持ちを立て直しましょう。
ミスを認め、反省して完結させる
仕事をしていれば、どんな人でも大なり小なりミスはするものです。背景や事情はそれぞれですが、ミスをした事実は変わりませんので、事実には真摯に向き合いましょう。
ただし、ミスを悔やんでいつまでも引きずっていると、他の仕事のパフォーマンスまで落ちてしまいます。反省すべき部分を反省し対策を講じたら、そのミスは一区切りをつけましょう。
気分転換をする
気持ちを切り替えるためには、リフレッシュの時間をとることも大切です。しっかり休む、趣味を楽しむ、プライベートの友人に会うなどして気分転換を図ってください。
信頼できる人に相談する
気持ちを切り替えようとしても、モヤモヤが続くこともあるでしょう。そういったときは、社内でも社外でもよいので信頼できる人と話してみてもいいでしょう。今の気持ちを聞いてもらうだけでもスッキリするものです。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。