
在職中に転職活動を行う際、履歴書の職歴欄や本人希望記入欄の書き方に悩む方もいるでしょう。本記事では、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏と社会保険労務士の岡佳伸氏 が、在職中ならではの履歴書作成のポイントについて解説します。職歴欄や本人希望記入欄の記載方法に加え、退職予定日が決まっていない場合の書き方や、 表現についても詳しく紹介します。
在職中の場合は履歴書にどう書けば良い?
在職中の転職活動において履歴書を書くときの書き方を説明します。
在職中の場合は「職歴欄」に「現在に至る」と記載し、行の右寄せで「以上」と記す

在職中の場合、職歴欄の最終行には「現在に至る」や「現在に至る(20XX年○月末退職予定)」「現在に至る(20XX年○月末契約期間満了見込み)」などと記載するのが一般的です。
「現在に至る」と「以上」の違い
「現在に至る」は「現在もその職場に在籍している」ことを意味しており、「在職中」であることを示しています。一方、「以上」は、「この先の記載はありません」という意味であり、ビジネス文書の文末であることを示します。在職中、離職後のいずれの場合でも、職歴の最後には、次の行に右寄せで「以上」と記載しましょう。
退職予定日が決まっている場合は予定日を書く
退職予定日が決まっている場合は、職歴欄の「現在に至る」に続けて記載します。詳しくは次章で説明します。
【ケース別】在職中の履歴書の書き方
在職中の場合の履歴書の書き方を、ケース別に解説します。
ケース1.退職予定日が決まっている場合
退職予定日がすでに決まっている場合は、職歴欄に退職予定日を明記しておくのがおすすめです。採用担当者が「いつから就業可能か」を把握しやすくなり、採用スケジュールを立てやすくなるためです。企業の採用計画に合わせて入社できることが明確であれば、選考において有利に働く可能性もあるかもしれません。
退職予定日は、職歴欄の最終行に「現在に至る(20XX年△月末退職予定)」のように記載するのが一般的です。
年 | 月 | 学歴・職歴 |
20XX | X | 株式会社⚪︎⚪︎入社 在職中 |
開発事業部に配属。主に金融系のシステム開発に従事 | ||
現在に至る(20XX年△月末退職予定) | ||
以上 |
また、入社可能日や入社希望日が明らかな場合は、 退職予定日に続けて「(20XX年△月X日より就業可能/入社希望)」と書くと良いでしょう。
年 | 月 | 学歴・職歴 |
20XX | X | 株式会社⚪︎⚪︎入社 在職中 |
開発事業部に配属。主に金融系のシステム開発に従事 | ||
現在に至る(20XX年△月 退職予定、20XX年△月X 日より就業可能) | ||
以上 |
なお、職歴欄に書くことが多くて退職予定日や入社可能日を記入できるスペースに余裕がない場合は、「本人希望記入欄」に書いても良いでしょう。
ケース2.退職予定日が決まっていない場合
在職中でかつ退職予定日が未定の場合は、「在職中の場合は履歴書にどう書けば良い?」の記載例に沿って記載すると良いでしょう。
なお、履歴書に退職予定日を明記するのが難しい場合でも、面接時に入社日の調整について相談することは可能です。履歴書にはあくまでも「現時点で確定している期日」を記載しましょう。
ケース3. 契約社員・派遣社員・アルバイト・パートなど正社員以外の形態で在職中の場合
年 | 月 | 学歴・職歴 |
20XX | X | 株式会社○○入社(アルバイト) |
現在に至る | ||
以上 |
現在、アルバイトやパートの立場で在職中の場合は、「入社(アルバイト)」「入社(パート)」と記載し、すぐ下の行に「現在に至る」、さらにもう一行下に「以上」と記入すると良いでしょう。
また、複数のアルバイトを掛け持ちしていた場合は、時系列に沿って「入社」時期を記載する書き方もあります。その場合、退職済みの勤務先については「退職」日順に記入しましょう。職歴の最後に「現在に至る」と明記し、すぐ下の行に、右寄せで「以上」と書きます。
ケース4. 副業をしている場合
副業をしている場合、社会保険(健康保険、厚生年金)への加入義務が発生している副業であれば、職歴欄に書く必要があります。入社後に、応募先(転職先)企業が社会保険関係の手続きを適切に対応しなければならないためです。
副業の内容が、応募先企業へのアピールになる場合も、書いた方が良いでしょう。例えば、応募職種に活かせる経験や、経験やスキルの高さや幅広さをアピールにつながる場合は、記載することをおすすめします。書く必要がない副業、アピールにつながらないと判断した副業については、記載する義務も必要性もないと考えられます。
なお、リクルートエージェントでは、「副業」が雇用契約の場合は就業経験社数として職歴に記載、それ以外(委任契約、請負契約)の場合は、「職歴備考」に記入するようお伝えしています。
副業アルバイトしている場合の記載例(パートは「アルバイト」を「パート」に書き換える)
年 | 月 | 学歴・職歴 |
20XX | X | 株式会社○○入社(アルバイト) |
20XX | XX | 株式会社△△入社(アルバイト) |
20XX | XX | 株式会社○○退職 |
現在に至る | ||
以上 |
★業務委託の副業をしている場合の記載例
年 | 月 | 学歴・職歴 |
20XX | X | 株式会社〇〇 入社 |
20XX | XX | 開発事業部に配属。主に金融系のシステム開発に従事 |
20XX | XX | 個人事業としての副業を開始(業務委託) |
〇〇業務を、延べX社から受託(主に〇〇業界、□□業界がクライアント。主な取引企業は(株)△△、××株式会社、等) | ||
現在に至る |
||
以上 |
在職中の場合、「本人希望記入欄」には何を書く?
在職中の場合、履歴書の「本人希望記入欄」に書くと良いことを解説します。
連絡方法や面接調整が可能な時間などを伝えたい場合は活用することも一案
本人希望記入欄(特に給料・職種・勤務時間・勤務地その他についての希望などがあれば記入) |
在職中のため、9時~18時は電話に出られない可能性がございます。 |
恐れ入りますが、留守番電話かメールでご連絡いただけますと幸いです。 |
なるべく早いタイミングで折り返しご連絡いたします。 |
[ポイント]
- 業務時間内は連絡が取りにくいことを伝える
- 連絡が取りやすい手段や連絡先、連絡が取れる時間帯を記す
- 折り返しの連絡についても記載する
在職中に転職活動を行う場合、現職の業務と並行しているため、勤務時間中は連絡が取りづらいことが予想されます。連絡がつかない状態が続くと、他の候補者を優先して選考が進む可能性もあるため注意が必要です。転職活動を円滑に進めるためにも、本人希望記入欄には、連絡が取りやすい方法や連絡先、連絡可能な時間帯などを記載しておくと安心でしょう。
特に希望がなければ「貴社規定に従います」と書く
特に記載事項がない場合でも、空欄のままにするのはなるべく避けましょう。希望が特にない場合は、「勤務条件は貴社規定に従います」などと記載しておくのが一般的です。
在職中の履歴書でよく見られるNG例
在職中の転職活動で履歴書を書く際、よく見られるものの、なるべく避けたい記述例を紹介します。
「現在退職準備中」など曖昧な表現
「現在退職準備中」のように曖昧な表現だと、「単に転職活動を開始したことを言いたいのか?」「退職時期が決まっているのか?」「現在、退職交渉を進めているのか?」「いつから新しい職場で働けるのだろうか?」など、応募者が現在どのような状況なのかが分からず、採用担当者を困惑させる結果につながりかねません。状況が確定していないのであれば、書かない方が良いでしょう。採用担当者によっては「読み手に伝わりづらいことを書く人のようだ。コミュニケーション力に懸念がある人かもしれない」などと、ややネガティブな印象を持たれる可能性もあります。
退職予定日が確定していないのに記載してしまう
退職日を自分で想定していても、実際には引き止めや業務引継ぎに時間を要することがあります。その結果、想定していた時期には退職できず、内定を得た際に入社日を調整する必要が生じる可能性が考えられます。場合によっては、内定を辞退せざるを得ない状況に至ることもあり得るため、退職予定日が明確に定まっていない限り、退職予定日を記載することは避けた方が良いでしょう。
採用担当者は「在職中」をどう受け取る?
履歴書から「在職中」であることが分かると、採用担当者によっては、離職せずに次のキャリアを見据えて転職活動をしていることから、「計画性がある人」という印象を受けたり、「ブランクがなく実務面でスムーズに移行できるのではないか」と期待したりする可能性が考えられます。その一方で、「勤務状況によっては面接等の調整が難航するのではないか」「転職の時期が不透明かもしれない」などと受け止める可能性もあるでしょう。
副業の「在職中」に関しては企業によって受け取り方が分かれる
応募者が副業の「在職中」である場合、応募先企業の受け取り方は、その企業の副業に対するスタンス次第で大きく異なります。そのため、履歴書に副業の記載をする際は、たとえアピールにつながる要素であっても、今後の転職活動や、転職後の業務の負担にならないことを伝えるなど配慮した書き方を心がけましょう。
(1)副業OKの企業の場合
基本的に、「主体性がある」「経験・スキルの向上に努めている」など好意的に受け止められることが期待できるでしょう。副業が根付いたカルチャーがあり、従業員の多くが複数の仕事を持っているような企業であれば、社風とのマッチ度が高いと受け止められる可能性もあります。副業に本業(応募先企業での業務)との相乗効果や、応募職種と共通する要素があると、さらなるプラス評価がなされるかもしれません。
ただし、「副業をしていることで本業に支障をきたさないか」「副業の優先度合いはどのくらいなのか、当社での業務に問題なくキャッチアップできるのか」などを懸念する採用担当者もいるかもしれません。履歴書に副業を記載する際は、前述のような書き方で問題ありませんが、その際は、「本業との両立に支障のない範囲で調整しております」「(副業には)平日の終業後及び土日に対応しております」などの文言を添えることで、採用担当者の不安を払拭することも期待できるでしょう。
(※)参考:在職中の履歴書の書き方 ケース4. 副業をしている場合
(2)副業NGの企業の場合
副業禁止の企業の場合、副業の在職中であることについては、「転職後に副業を辞められるのだろうか?」「辞めたと言っても、隠れて副業を継続するのではないか?」「隠れて副業を続けることによって、情報漏洩や自社業務の生産性低下などの悪影響・リスクが発生するのではないか?」などという懸念を抱かれる可能性があります。「管理しづらい人材」「入社後の懸念がある人材」という印象を持つ採用担当者もいるかもしれません。
そのため、副業に社会保険への加入義務があり記載しなければならないケースや、応募時のアピールにつながるケースでない限り、記載は慎重に検討しましょう。記載する必要がある場合は、「転職にあたり、本業に集中するため副業業務は取りやめる予定でおります」などと書き添えて採用担当者の懸念を取り除くことも検討するようおすすめします。
(3)副業可否が不明か、あるいは副業について特に規定を設けていない企業の場合
その企業の従業員のうち、どの程度の従業員が副業をしているか、経営陣などトップが副業についてどのようなスタンスでいるかによって、受け取り方は異なるでしょう。ただし、「副業OK」と明確に謳っていない限り、「副業NG」の場合に近い受け取り方をされることもあり得るため、社会保険の加入義務があるなど記載が必要な場合を除き、記載しない選択が無難といえるでしょう。
記載する場合も、「副業している事実を強くアピールする」というよりは、控えめに記載しておくことをおすすめします。例えば、「スキルアップのため、副業(業務委託)で〇◯業務を請け負っておりますが、週末の対応のみに限定しており、現在まで本業への影響が生じたことはございません」など、副業の目的や本業との優先順位を明確にして書き添える程度に抑えておくと良いかもしれません。
なお、前述の通り、リクルートエージェントでは、「副業」が雇用契約の場合は就業経験社数として職歴に記載、それ以外(委任契約、請負契約)の場合は、「職歴備考」に記入するようお伝えしています。
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所 岡 佳伸氏
大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2021年07月01日
記事更新日:2023年07月04日
記事更新日:2024年04月18日
記事更新日:2025年08月06日 リクルートエージェント編集部
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。