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「半導体関連エンジニア」求人、10 年で 12.8 倍に増加

半導体エンジニア 求人動向

株式会社リクルートは、「半導体関連エンジニア」に関する求人と転職の動向についてまとめました。

「半導体関連エンジニア」の求人が増加~過去 10 年の変遷~

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『リクルートエージェント』における「半導体関連エンジニア」求人の推移を見ると、2013 年 1-6 月期を 1 として、2023 年 1-6 月期は 12.8 倍と大きく伸長しています。2013 年から 2015 年にかけて求人はほぼ横ばいで推移していましたが、2016 年以降、各産業で IoT 化が本格的に進み、求人の増加ペースが加速しました。その後、2018年の米中貿易摩擦や 2020 年 1-6 月期の新型コロナウイルス感染症流行により一時的に求人は停滞しましたが、2020 年 7-12 月期以降、求人が大幅に増加しています。

2020 年以降は新型コロナウイルス感染症流行の影響で全世界的に在宅勤務へのシフトが進んだことで、PC、スマートフォン、サーバーなどの通信・ネットワーク機器の需要が急増しました。また、地政学リスクへの関心が高まり、半導体関連工場の国内回帰が進んだことも求人需要の押し上げ要因となっています。これらに加えて、2021 年から現在にかけては、EV(電気自動車)化、カーボンニュートラル化への移行が本格的に進み、「半導体関連エンジニア」人材のニーズはさらに高まっています。特に「北海道・東北」「九州・沖縄」地域の伸びは大きくそれぞれ 2017 年度比較 5.36 倍、5.21 倍となっています。

この影響はデバイスメーカーだけでなく、製造装置・部品メーカーや材料メーカーなどサプライチェーン全体に広がっており、業界全体の求人増加につながっています。一方、個人側の動きも活発になっており、異業界から半導体業界への流入も進んでいます。業界職種ともに未経験であっても、“学生時代に半導体の研究”に従事していた経験を持つ方が、「半導体関連エンジニア」として転職するケースなども増えています。企業は改めて人材要件を見直し、どういった方に活躍の可能性があるのかを再考するなど、従来の採用戦略を見直すことが求められるのではないでしょうか。

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「半導体関連エンジニア」の領域別求人動向

「半導体関連エンジニア」求人を「デバイス開発」「製造装置・部品開発」「材料開発」「品質管理・品質保証」の 4 つの領域別に見ると、「材料開発」「品質管理・品質保証」「製造装置・部品開発」が 2017 年度に比べ、いずれも 3 倍以上に増加しています。特に「品質管理・品質保証」は 2021 年度から 2022 年度にかけて急激な伸びを見せており、ニーズが高まっている様子がうかがえます。

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足元 2022 年度の領域別の求人割合を見ると、「製造装置・部品開発」のシェアが 45.3%と最も高く、次いで「材料開発」「品質管理・品質保証」「デバイス開発」の順となっています。

半導体 エンジニア 求人 4領域別の求人増加要因

次に、領域別の求人増加要因について見ていきます。それぞれ以下のような背景から求人のニーズが高まっていると考えられます。

「デバイス開発」

  • リモートワーク普及により、通信・ネットワーク機器の需要が増加したこと
  • 地政学リスクへの関心が高まり、半導体関連工場の国内回帰が進み、国内での生産体制強化ニーズが高まったこと

「製造装置・部品開発」

  • デバイスメーカーの増産に伴い、製造装置・部品ニーズが伸長したこと
  • 最先端プロセス向けの製造装置開発ニーズが高まっていること
  • 省エネや環境保全への対応ニーズが高まり、これまでとは違った製造装置開発ニーズが高まっていること

「材料開発」

  • 最先端プロセスに使用される材料の開発ニーズが高まっていること
  • 次世代パワー半導体として期待されるSiCなどの化合物半導体のニーズが高まっていること

「品質管理・品質保証」

  • グローバルで標準化が進んでいることや、顧客の要求レベルが高まってきていること
  • 製品の信頼性評価の重要性が増していること

主にデバイスメーカーが製造を担う半導体デバイスの需給変化は、全てのサプライチェーンに影響を与える重要な要素です。また、製造装置や部品メーカーは日本企業のシェアが高く、世界的に半導体需要が高まると、その変化に比例するように関連求人も増加しやすい構造にあります。

本格的なEV量産を見据え、パワー半導体関連求人が増加

続いて、「半導体関連エンジニア」職種における新しいトレンドをご紹介します。半導体業界で注目を集めているのが「パワー半導体」です。カーボンニュートラルに向けた取り組みが全世界的に進む中で、省エネ化・省電力化の重要性が高まっており、パワー半導体需要が拡大しています。

以下のグラフは、「半導体関連エンジニア」職種の求人データをさらに詳細に分析して、「パワー半導体関連エンジニア」に関する求人を抽出したものです。求人は順調に推移しており、2017 年度に比べて 3.69 倍と伸長しています。

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近年、世界各国でEVの需要が高まっていることが「パワー半導体関連エンジニア」求人増加の一番の要因として挙げられます。ガソリン車に対する販売規制の指針が掲げられるなど、EVシフトの機運が高まっています。EVの製造には、高い電圧や大きな電流を扱えるパワー半導体(デバイス)が不可欠であるため、「パワー半導体関連エンジニア」の求人が急増しているのです。

また、EV向けが主力市場ですが、近年市場が拡大している再生可能エネルギー分野にもパワー半導体が使われています。今後、市場の成長に伴い、再生可能エネルギー分野でも需要の高まりが想定されます。

そうした中、材料や製造装置においても、パワー半導体向けの開発ニーズが高まっており、幅広い領域で「パワー半導体関連エンジニア」が求められています。

転職者の3人に1人以上(33.6%)が「異業種×異職種」出身

「半導体関連エンジニア」への業種×職種の異動パターンの推移を見ると、業種・職種の両方を変えた「異業種×異職種」からの転職割合は、2017年度の時点では、「同業種×同職種(33.2%)」「異業種×同職種(23.4%)」に次ぐ 21.7%でしたが、2022年度では33.6%となり、他の 3 つの転職パターンを上回っています。

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「半導体関連エンジニア」への転職において最も割合の高い「異業種×異職種」の越境転職ですが、以下のような転職事例が目立っています。

  • 学生時代に高専、大学、大学院のいずれかで半導体の研究や半導体を用いた研究をしていた方

→未経験でも、半導体に関する知見(学生時代の研究レベル)があれば半導体製造プロセスでの活躍可能性がある

  • 学生時代に高専、大学、大学院のいずれかで化学系の研究をしていた方や、化学メーカーで材料開発の実務経験がある方

→半導体製造プロセスの中にフォトレジスト塗布やエッチング、イオン注入などの化学系の工程があり、未経験でも化学系のバックグラウンドを持つ方であれば、半導体製造プロセスでの活躍可能性がある

  • 工業高校で機械、電気、電子、制御関係を学んでいた方や、異業界で製造オペレーター、設備保全の実務経験がある方

→未経験でも製造装置のメンテナンスやフィールドエンジニアとしての活躍可能性がある

ミドル・シニアの転職も活況

以上のように、未経験から「半導体関連エンジニア」への越境転職をするケースも増えていますが、経験豊富なミドル・シニア(50-64歳)の「半導体関連エンジニア」への転職も活況となっています。ミドル・シニアの転職先の2022年度の割合を見ると、「総合電機・半導体・電子部品業界」が19.97%と最も高く、年齢に関わらず経験や能力を評価し、シニア採用を進めている様子が見てとれます。

半導体関連業界で働く派遣エンジニアの「リスキリング採用」も増加

スタッフサービスで技術者・IT エンジニアの人材派遣を展開するスタッフサービス・エンジニアリング(以下、SSE)では、半導体業界の派遣求人が 2017 年度と比較して 1.68 倍、半導体業界で働く派遣エンジニアの就業者が 2017 年度と比較して 2.42 倍となりました。半導体業界の人手不足に伴い、未経験者向けの求人が増えたことが要因に挙げられます。人材派遣は相互の準備期間としても機能するので、業務未経験者と、未経験者を受け入れたい企業のマッチングにもうまく活用されています。

SSE では、半導体業界の業務経験者だけでなく未経験者でも挑戦できる学習環境を整え、派遣就業先と協力しながら未経験者の育成に力を入れています。2023 年 2 月には、半導体製造における前工程・後工程を装置や材料に実際に触れながら体験学習することができる、半導体製造プロセスの体験型研修を導入(※参考)しました。こうしたリスキリングを前提とした「リスキリング採用」が増加していることも、半導体業界で働く派遣エンジニアの就業者増加につながっています。

(※参考)https://www.staffservice.co.jp/nt-files/nr_230209.pdf

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「半導体エンジニア」の仕事検索割合の推移

リクルートのグループ会社であるIndeedの調査・研究機関「Indeed Hiring Lab」が、「半導体エンジニア」に関する仕事検索割合を算出した結果を、以下に引用します。

<Indeed Hiring Lab エコノミスト青木 雄介氏コメント>
2019 年以降、求職者における「半導体エンジニア」への関心は維持されており、直近では 2023 年 7 月以降増加傾向であることが分かりました。

2019 年 1 月〜2023 年 10 月における、Indeed上での「半導体」の検索の割合と「半導体エンジニア」の求人をクリックした割合を掛け合わせ、100 万件の検索数に占める、半導体エンジニア求人への実質的な検索数を算出しています。

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次に、上の「半導体エンジニア」の仕事検索の割合推移を都道府県別に見ました。足元では熊本県の「半導体エンジニア」求人への関心の高まりが全体的な下支えとなっていることが分かります。

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解説
株式会社リクルート HR エージェント Division ハイキャリア・グローバルコンサルティング2部 コンサルタント 杉原 伸太郎
調査概要
調査方法:『リクルートエージェント』求人データの分析
調査対象:『リクルートエージェント』求人データ
有効回答数:非公開
調査実施期間:2023年9月~2023年11月
調査機関:リクルート