「応募書類で、異動歴をどう書けばいい?」「異動回数が多い場合、どう記載すればいい?」「求人企業は異動歴をどう見ている?」「異動歴はアピール材料になる?」──そんな疑問に、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
「異動」の定義を理解しておく
応募書類を作成するにあたり、まずは「異動」の定義を理解しておきましょう。「人事異動」は、同一会社内において配属部署・役職・勤務状態などが変わることを指します。
異動には主に次のような種類があります。
- 同一事業所内での部署異動
- 事業所間の異動 ※住居の異動を伴う場合は「転勤」
- 昇進/降格
- 出向
- 転籍
履歴書に異動歴は書くべき?
異動歴は、職務経歴書に記載していれば、全てを履歴書に書かなくても構いません。履歴書では最低限、「どの会社にいつからいつまで在籍していたか」が伝わればOKです。異動歴を履歴書に書く・書かないは、職務経歴の記載分量から判断しましょう。
応募書類作成において心がけるべきは「見やすさ」「わかりやすさ」です。履歴書の職歴欄がびっしりと埋まり、「転職歴」「異動歴」が混ざって読み手に伝わりにくくなることは避けたいものです。
「転職歴が多い、在籍していたそれぞれの会社で何度か異動を経験している」「1社にしか在籍していないが短期スパンで異動を繰り返した」といった人は、すべての異動歴を履歴書に記載すると、スペースが足りなくなってしまいます。
実際は1社経験でも異動歴が多い場合ですと、履歴書をぱっと見た印象で「この人はこんなに転職を繰り返しているのか」と、誤解を招く恐れもあります。1回の転職・異動について1行使い、履歴書のスペースに収まる範囲で記載することをお勧めします。
履歴書にも異動・出向は記載する
履歴書では異動歴の記載を省略しても構いませんが、「出向」「転籍」は記載しましょう。まれに「出向」「転籍」を記載しない人もいますが、いずれも必ず記載してください。
さまざまな部門・職種・エリアなどを経験してきたことは、応募企業へのアピールにもなり得ます。ただし、ボリューム過多にはならないように注意が必要です。詳細な異動歴については、職務経歴書に正確に記載しましょう。
また担当業務の内容が大きく変わったり、昇進したりした場合などは記載しますが、担当業務内容があまり変わらず、所属するグループや営業所などが変わった程度であれば、省略してもいいでしょう。
例えば、営業職としての仕事内容は同じで、「横浜支店」「千葉支店」「北関東支店」への異動・転勤を経験したとします。この場合、「○○支店に異動」という記述に1行、合計3行使うのではなく、次のようにまとめるとスッキリ読みやすくなります。
「営業として、横浜・千葉・北関東エリアを担当」
記載するか省略するかの判断基準は、「相手企業がその経験を求めているかどうか」です。
例えば、ジョブローテーションが多い企業に在籍していて、1年程度の所属だった部署でも、応募先企業で活かせそうな経験であれば省略せずに記載してください。
異動歴の基本的な書き方見本とポイント
履歴書に異動歴を記載する際の書き方の例をご紹介します。
営業部 配属
**製品の営業担当として新規顧客開拓を行う
20XX年10月 人事部に異動
新卒採用業務に従事
現在に至る
この例の場合、「営業職」→「人事職」と仕事内容が大きく変わった異動を記載しています。しかし、営業部に在籍していた期間中、「所属グループが変わった」という程度の変化であれば、記載する必要はありません。例えば、「営業第一グループ→営業第二グループに異動」などは省略してもいいでしょう。
なお、異動先の部署名に「配属」と記載する人もいますが、「配属」という言葉は入社直後の部署にのみ使用します。異動は「異動」と記載してください。
採用側が見ている異動歴のポイント
異動歴が数回であれば、異動そのものはそれほど気に留められず、「どんな経験・スキルを身に付けているか」が注目されます。しかし、異動歴が多い、しかも関連がない部署や地方営業所を転々と渡り歩いているような場合は、その理由を気にする人事担当者もいます。
一方、IT・Web業界やベンチャー企業など、事業環境が目まぐるしく変化したり、どんどん新しい商材・サービスが生み出されたりする企業に在籍していた場合、異動歴がマイナスに見られることはあまりありません。
いずれにしても、自身の異動歴が多い、あるいは一貫性がないなど、応募先企業に懸念を抱かれる恐れがあると思うなら、異動の背景を伝える工夫をするといいでしょう。
例えば、以下のように記載すると、「いい経験をしている」とプラス評価につながることもあります。
「新規事業の立ち上げ要員として△△部に異動」
「不採算店舗の立て直しに取り組むため、□□支店に異動」
異動歴をアピールするには?
昨今は、ビジネス環境の変化のスピードが速いため、「変化に柔軟に対応できる」人材が高く評価される傾向が強くなっています。異動歴が多い人は、新しい環境に飛び込み、その組織のルールになじんだり、一から人間関係を築いたりした経験が豊富であるということ。異動経験によって養われた「環境適応力」「変化に対応する柔軟性」などはアピール材料になり得ます。
また、異動先でどのような経験を積み、どのようなスキルを身につけたかを、職務経歴書の「自己PR欄」に記載してもいいでしょう。特に、異動先での経験の中で、応募先企業で活かせるものをピックアップしてアピールしてはいかがでしょうか。
【Q&A】こんなときはどう書けばいい?
Q.人事異動に伴い役職が変わった場合の書き方は?
昇進した場合は、次のように記載します。
Q.異動により、さまざまな店舗で勤務した場合の書き方は?
職種が変わらないのであれば、 「販売スタッフとして、A店、B店、C店に勤務」など、まとめて記載してもいいでしょう。昇進した場合は、次のように記載します。
20XX年4月 C店・店長に昇進
Q.書きたくない異動歴がある場合の書き方は?
不本意な異動、あるいは事業撤退・縮小による異動などは、自分にとってはマイナスの経験かもしれません。しかし履歴書の段階では、異動した「事実」だけを記載しましょう。あえて理由を記載する必要はありません。
転職エージェント活用のおすすめ
異動の経験は、自分ではマイナスだと考えていても、捉え方によってはプラスになります。新しい環境に飛び込んだからこそ、得られた経験も多いのではないでしょうか。重要なのは、異動先で何を学び、何を身につけたかです。
転職エージェントと対話し、異動の経験を深掘りすることで、自身では気付かなかった強みを発見できるかもしれません。また、転職エージェントには多様なサポート機能やサービスがありますので、ぜひご活用ください。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。