平均残業時間

更新日:2024年5月14日

自分の労働時間は世間一般的に多いのか、少ないのか。気になる人も多いのではないでしょうか。ここでは、20代から50代の正社員で働くビジネスパーソン18,022人に聞いた残業時間を、業界別や職種別、性年代別、職位別にまとめてみました。 

※平均残業時間については、インターネット調査の事前調査部分の回答者の結果を活用しています。そのため、一般的な公的統計と比較した場合、業界や職種の分布にばらつきがあり、あくまで参考値としてお取り扱いください。 

サマリ

1カ月あたりの平均残業時間が多い業界は、1位「運輸業界」(19.2時間)、2位「コンサルティング業界」(18.3時間)、3位「エンタメ業界」(17.4時間)、平均残業時間の少ない業界1位は「アパレル・ファッション販売業界」(7.5時間)、2位「信金・組合業界」(8.5時間)、3位「医療・福祉業界」(8.6時間)という結果となりました。 

1カ月あたりの平均残業時間が多い職種は1位「ビジネス系コンサルタント」(21.2時間)、2位「ドライバー」(21.0時間)、3位「「組込み・制御エンジニア」(20.2時間)、「施工管理・設備・環境保全」(20.2時間)でした。また、平均残業時間の少ない職種1位は「化粧品販売・美容部員」(5.4時間)、2位「保健師・介護士」(7.5時間)、3位「受付」(7.7時間)という結果となりました。

なお、年代別・性別の平均残業時間は、男性は1位「40代」(16.4時間)、2位「30代」(16.2時間)、3位「20代」(14.4時間)、女性は1位「20代」(9.8時間)、2位「30代」「40代」(8.7時間)、次いで「50代」(8.4時間)となりました。男性は30代と40代の平均残業時間が長く、女性は年代が上がるほど残業時間が短くなるという傾向が見られました。 

職位別の平均残業時間は、1位「管理職(主任・係長・課長・部長など)」(16.8時間)、2位「経営層(会長・社長)」(16.1時間)、3位「経営層(会長・社長)」(12.4時間)、4位「経営層(取締役・執行役員など)」(11.7時間)、5位「一般職」(11.5時間)。「管理職(主任・係長・課長・部長など)」と「経営層(会長・社長)」が多いという傾向が見られました。 

1. 業界別 平均残業ランキング

平均残業時間が多い業界から順にランキングを見ていきましょう。

残業時間が多い業界ランキング

1位は「運輸業界」で、平均残業時間は19.2時間となりました。2019年の労働基準法の改正で労働時間の上限規制が設けられましたが、人手不足等により5年間の猶予期間が設けられていました。しかし、2024年4月1日から残業時間年間960時間が上限となるため、さらなる対策が求められている状況です。 

2位は「コンサルティング業界」が平均残業時間18.3時間でした。顧客の課題抽出やプロジェクトの情報収集やデータ分析などのインプット業務や顧客との会議やチームミーティングなどで残業時間が増えてしまうことも多いようです。ただ近年は労働改善すべく、働き方改革を導入して残業時間削減を図る企業が増えています。 

3位は「エンタメ業界」が平均残業時間17.4時間で、ランキング入りしました。芸能事務所であれば、担当芸能人のスケジュールによって労働時間が多くなることもあるでしょう。また、夕方や夜、休日のイベントが多く、裁量労働制を採用している事務所あることなども要因となっているようです。 

4位は「広告業界」の平均残業時間16.4時間です。こちらの業界も顧客の都合に合わせて広告の打ち合わせや現場対応する必要があることが残業の多い理由となっています。 

5位の「人材業界」の平均残業時間15.5時間も同様に顧客に合わせた業務対応などから、残業時間も多くなっていると考えられます。 

6位は「自動車業界」平均残業時間15.4時間。近年の自動車業界は残業削減の取り組みを行う企業が多いものの、繁忙期やトラブル対応、新プロダクト企画の状況などによって残業が発生することもあるようです。同じく6位の「物流・倉庫業界」平均残業時間15.4時間では、商品やサービスをインターネット上で売買するEC市場拡大に伴い、物流・倉庫が増加しているものの人材不足で残業が発生することが増えているようです。 

8位は「飲食業界」平均残業時間15.1時間。飲食業界も勤務時間のシフト制など、残業対策が進んでいますが、やはり繁忙期や店舗規模によっては人手不足などの事情から残業せざるを得ない状況もあるようです。 

9位は「IT業界」平均残業時間14.7時間です。顧客の課題ヒアリング・要件定義から開発・実装、運用・管理、トラブル対応など、自社管理だけで対応できないことが残業の要因となっていましたが、近年はオンラインなどでの対応やプロジェクト管理などの業務改善が進んでいます。 

10位の「通信業界」「住宅・インテリア業界」平均残業時間14.6時間も、やはり顧客対応から残業が発生していると言えるでしょう。 

順位 業界 月間
残業時間
1 運輸業界19.2時間
2 コンサルティング業界18.3時間
3 エンタメ業界17.4時間
4 広告業界16.4時間
5 人材業界15.5時間
6 自動車業界15.4時間
6 物流・倉庫15.4時間
8 飲食業界15.1時間
9 IT業界14.7時間
10 通信業界14.6時間
10 住宅・インテリア業界14.6時間
12 電気業界14.5時間
12 インフラ業界14.5時間
14 冠婚葬祭業界14.4時間
15 クレジット・信販・リース14.2時間
16 マスコミ業界14.0時間
17 化学・素材業界13.8時間
17 銀行・証券業界13.8時間
19 食品業界13.5時間
20 機械業界13.4時間
20 出版業界13.4時間

残業時間が少ない業界ランキング

一方、平均残業時間が少ない業界としては、「アパレル・ファッション販売業界」平均残業時間7.5時間が1位、2位は「信金・組合業界」平均残業時間8.5時間、3位は「医療・福祉業界」平均残業時間8.6時間、4位「官公庁」「農林水産業」平均残業時間8.6時間がランクイン。生活を支えるインフラ関連の業界が、平均残業時間が少ない業界として上位を占める結果となりました。 

以降、7位は「卸売業界」の平均残業時間9.8時間、8位が「アミューズメント・レジャー業界」の平均残業時間10.3時間、9位が「小売業界」の平均残業時間10.7時間、10位が「スポーツ業界」の平均残業時間11.1時間が続きます。 

以上の結果から、業界によって平均残業時間には大きな違いがあることが確認できました。今後も各業界において、業務内容や業務量、従業員の人数やスキルなどを考慮し、従業員の働きやすい環境作りに取り組むことが求められるでしょう。 

順位 業界 月間
残業時間
1 アパレル・服飾業界7.5時間
2 信金・組合業界8.5時間
3 医療・福祉業界8.6時間
4 官公庁9.3時間
4 農林水産業界9.3時間
6 化粧品業界9.4時間
7 卸売業界9.8時間
8 アミューズメント・レジャー業界10.3時間
9 小売業界10.7時間
10 スポーツ業界11.1時間
11 保険・損保業界11.2時間
12 総合商社11.6時間
13 不動産業界11.7時間
14 Web・インターネット業界11.8時間
14 旅行業界11.8時間
16 建設業界11.9時間
17 専門商社12.6時間
17 日用品業界12.6時間
19 教育業界13.1時間
20 機械業界13.4時間
20 出版業界13.4時間

2. 職種別 平均残業ランキング

続いては、平均残業時間が多い職種についても、ランキングをご紹介します。

残業時間が多い職種ランキング

最も多かった職種1位は、「ビジネス系コンサルタント」平均残業時間21.2時間でした。高いビジネス系専門知識を持つ人材が少ないことから、一人当たりの業務量が多く、迅速な顧客対応や社内会議なども多いことから残業時間も増えてしまうようです。

2位は、残業が多い業界でトップとなった「運輸業界」で働く「ドライバー」平均残業時間21.0時間となり、残業時間も高い数値となりました。人手不足の要因もありますが、顧客に合わせた遠方への配送や配送時間など、多くの課題を解決するのは難易度が高そうです。

3位には「組込み・制御エンジニア」平均残業時間20.2時間が入りました。製品やサービスのものづくりの仕事は課題整理から設計、開発・実装業務と業務時間がどうしても多くなってしまいます。同じく3位の「施工管理・設備・環境保全」平均残業時間20.2時間も顧客に合わせた対応業務のため、残業せざるケースも少なくないのでしょう。

4位「編集・ライター・制作管理」平均残業時間20.2時間以降、6位「ITアーキテクト」平均残業時間19.7時間、7位「機械エンジニア」平均残業時間19.4時間、8位「商品企画・営業企画」平均残業時間18.3時間、9位「電気エンジニア」平均残業時間18.2時間、10位「化学エンジニア」平均残業時間17.9時間と、開発・クリエイティブ系職種が続きます。

これらの職種も顧客の要望に合わせたものづくりの仕事であることから、また、より良いものを生み出すために、情報収集や学びなどにも時間をかける人も多いようです。

残業時間が少ない職種ランキング

残業時間の少ない職種は1位「化粧品販売・美容部員」平均残業時間5.4時間、2位「保健師・介護士」平均残業時間7.5時間、3位「受付」平均残業時間7.7時間、4位「営業事務・一般事務」「その他(臨床心理士・カウンセラーなど)」平均残業時間7.8時間、と、接客職・専門職・事務職が並びました。 

7位以下も「経理事務・人事事務・総務事務・法務事務・特許事務」「その他 事務・受付・秘書」平均残業時間8.6時間、「医療事務」平均残業時間8.9時間と続くことからもわかるように、これらの業務時間内に仕事を終えられることが多く、残業が少ないという特徴があると言えるでしょう。 

3. 年代別・性別 平均残業時間

年代別・性別の平均残業時間

続いては、年代・性別の平均残業時間をご紹介します。 

平均残業時間を見てみると、男性は40代の16.4時間が最も多く、次いで30代の16.2時間、50代15.1時間、20代の14.4時間という結果となりました。 

女性の平均残業時間はどの年代も10時間以下となり、最も多かったのは20代の9.8時間、次いで30代・40代の8.7時間、50代の8.4時間と続きます。

このように、年代別・性別でみる残業時間は男性の方が女性よりも長い結果となりました。

年代別・性別の残業時間 詳細

残業時間も女性は全年代で「ほぼ残業なし」27%以上となっており、残業時間も多くないという状況です。 

4. 職位別 平均残業時間

職位別の平均残業時間

経営層(会長・社長)、経営層(取締役・執行役員など)、管理職(主任・係長・課長・部長など)、一般職の職位別平均残業時間を比較してみましょう。 

平均残業時間が最も多かったのは、管理職(主任・係長・課長・部長など)16.8時間、次いで経営層(会長・社長)16.1時間と、経営層と中間管理職の負担が大きいことがうかがえます。経営層(会長・社長)16.1時間、経営層(取締役・執行役員など)11.7時間、一般職11.5時間と、一般職の一番平均残業時間が少ないのは、働き方改革などの影響から、残業時間削減の対処効果が出ていることを感じさせます。 

職位別の残業時間 詳細

各職位の残業時間別比率を見てみると、35時間以上の割合が経営層(会長・社長)25.8%、管理職(主任・係長・課長・部長など)16.2%と他職位と比べて高く、経営層(取締役・執行役員など)9.1%、一般職9.7%と低いことからも同様のことが言えるでしょう。 

5. 残業の定義とは

残業とは、企業が定めた所定労働時間を超えた労働を意味します。残業は「法定内残業」と「法定外残業(時間外労働)」の2種類に分けられており、「法定外残業(時間外労働)」には割増賃金が発生します。 

各企業が就業規定などで定めた労働時間は「所定労働時間」と呼ばれ、労働基準法の定義では、「1日8時間、週40時間まで」という労働時間の上限が定められています。所定労働時間は、「1日7時間・週35時間・10時から16時」といったように、企業によって異なります。 

勤務先の企業との労働契約が「1日7時間・週35時間」であれば、1日7.5時間の労働時間の0.5時間分は法定労働時間内となります。しかし、1日8.5時間の労働をした場合は、0.5時間分は法定外残業(時間外労働)となり、残業代が発生します。 

6. サービス残業とは

残業したのに残業代が支払われないサービス残業という言葉を耳にすることもあるのではないでしょうか。サービス残業とは「賃金不払残業」を指します。法定労働時間である1日8時間・週40時間を超える労働については割増賃金が支払われないことを「サービス残業」といいます。 

サービス残業は「労働基準法違反」に該当し、割増賃金の未払いは、労働基準法37条に違反する行為となります。雇用者が違反した場合、労働基準法第119条に基づき、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられることもあります。 

サービス残業が発生する要因としては、企業側が人件費を抑えるために、従業員に対して時間外労働を求めるケースもあります。意図的でなくても、勤怠管理が十分に行われておらず、勤務実態を把握できないためにサービス残業が発生していることも少なくありません。 

厚生労働省が公表した令和4年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数、および金額は以下となります。 

●件数:2万531 件
●調査対象労働者数:17万9643 人
●金額:121億2,316 万円
●調査期間:令和4年1月から令和4年12月まで
出典:厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34397.html

7. 残業を減らすポイントとは

残業が発生する原因には、職場に「残業することが当たり前の雰囲気がある」「人手が足りない」「業務効率が悪い」「突発的業務が多い」などの状況であることが多いようです。職場全体を変えることは難易度が高くとも、個人の工夫によって減らすことは可能です。そのためのポイントをいくつか紹介します。 

1日の大まかな業務計画を立てる

まず、仕事の効率化を図るために1日の仕事始めに業務計画を立てます。大まかな業務時間と仕事内容を設定し、就業後に振り返ることで、時間内に終えられなかった業務内容の原因や対処法などを検討し、今後の業務効率改善につなげることで残業を減らしていくことができるでしょう。 

突発的な仕事は、残業の必要があるか確認する

また、残業が多くなってしまう原因の多くに、仕事内容の期日が早かったり、突発的な仕事が入ってきたりすることなども挙げられます。このような場合は、「今日中にやらなければいけない仕事でしょうか」「今日中に対応すると残業となってしまうが大丈夫でしょうか」というように、上司に確認や相談をして仕事の優先順位を決めるなどの相談・調整をしてみましょう。

業務改善やアウトソーシングを図る

業務量が多い場合、業務の一部をアウトソーシングしたり、自動化を図ったりするという対策も考えられます。専門スキルや知識を要せず、生産性の低い割には時間を取られる業務には有効な手段と言えるでしょう。アウトソーシングや自動化で空いた時間を、重要な業務に充てるようにすると、業務改善や効率化につながる期待されます。

勤怠管理の記録を取る

職場自体に残業が当たり前のように多く、勤怠管理がきちんとされていない場合は、自身で始業時間と終業時間を記録してみましょう。その記録を上司に見せて業務管理や調整などを相談してみるのも一つの手段です。

人事や経営層に相談してみる

こうした個人の取り組みによっても残業がなかなか減らせない場合は、人事部や経営層・取締役層に相談してみるという方法もあります。上司や同僚たちと話し合いながら、現場の業務改善に対応するように動いてくれることが期待されます。 

近年は「働き方改革」に取り組む企業も増えており、以前よりも残業時間は減ってきています。しかし、今回お紹介したような残業に対する対策をすることで、さらなる残業時間の減少は実現できるでしょう。自身の状況に合わせて工夫しながら、いろいろチャレンジしてみはいかがでしょう。

解説

多くの働く人にとって、残業時間というのは気になるテーマだと思います。今回は、20代から50代の正社員で働くビジネスパーソン18,022人から回答を得たアンケートデータを基に残業時間について様々な切り口から分析しています。結果を見る際には、今回はあくまで「平均」でみていることにご留意ください。実際には、同じ業界や職種、年代でも、残業が多い方と少ない方で二極化している可能性もあります。実際に転職活動で企業を比較する際には、「職場」単位でどのような労働時間管理をしているのか?など、残業の実態を把握することが、入社後のミスマッチを防ぐために重要です。企業単位では、働き方改革が進んでいたとしても、特定の職場では事情が異なるということもありえます。エージェントを通して確認する、面接の中でどういう状況か聞いてみる等、実際に配属される可能性のある「職場」について情報を集めるといいでしょう。  

また、残業が多くなる1つの理由に「業務が明確でない」というケースもあります。どのような成果が必要で、そのためにどこまでやればいいのかの役割が明確でない場合、長時間労働になってしまう可能性があります。こういった職場は、ゴールを明確にする・そのために必要な業務や役割を明確化する・適切な支援をする・振り返りをして業務の効率化をする、といったマネジメントの改善も必要かもしれません。また、業界特性や業界内でのその企業の位置付けによっても労働時間の傾向が変わる可能性があります。これは、経営としてどのようなビジネスをしていくのか、という違いに着目するとよいでしょう。このように、職場の労働環境改善には、業務改革・人事制度改革・経営改革の三位一体の改革が求められます。  

■解説者:株式会社リクルート HR統括編集長 藤井薫 
1988年
リクルートに入社。
『TECH B-ing』編集長、『Tech総研』編集長、『アントレ』編集長などを歴任。
2014年
リクルートワークス研究所Works兼務。
2016年
『リクナビNEXT』編集長就任
2019年
より現職
著書に『働く喜び 未来のかたち 転職市場の最前線から「未来のはたらく」が見えてくる』(言視舎)がある。

調査概要

【調査方法】インターネットによるアンケート調査
【調査対象】全国の20歳〜59歳の男女正社員
【調査期間】2024年1月30日〜2024年2月2日
【有効回答数】18,002名

※ランキングは、調査結果でサンプル数が一定の数を満たしている業界・職種のみ算出対象としております