企業にとって、人材の確保は重要課題の一つであるといわれています。よい人材を確保するため採用活動をおこないますが、いざ求人広告を掲載するにあたり、求人サイトやサービスの種類が多く選択に苦労したり、費用感が今一つわかりにくかったりすることがあります。今回は、求人広告媒体のメリット・デメリットや掲載料金、利用に際しての注意点、求職者への効果的な広告の打ち出し方などについて解説します。

求人広告とは

求人広告とは、当該企業の人材募集や採用をするための手段として、求職者に対して企業概要や求人内容を掲載するための媒体のことです。
媒体には、新聞などの折り込みチラシやフリーペーパーといった紙媒体もありますが、近年ではWEBサイト上の媒体も多く使われているようです。

求人広告を掲載するメリット・デメリット

求人広告を掲載することで考えられるメリット・デメリットの例を説明します。

求人広告を掲載するメリット

求人広告を掲載するメリットの例として、次の3つが挙げられます。

  • 広告を掲載することにより、数多くの求職者に求人情報を訴求することができる
  • 1回の求人広告掲載で複数名の採用が実現すれば、1名あたりの採用コストが抑えられる
  • 求人広告の内容をブラッシュアップすることにより、社内にナレッジが蓄積され、次回以降の運用がしやすくなる

デメリット

一方、求人広告を掲載するデメリットの例としては、次の3つが挙げられます。

  • 採用に至らなかったとしても、求人広告費用を負担しなければならない
  • 採用の可能性を高めるためにオプション機能などを付加した場合、広告費用が高騰する可能性がある
  • 広告掲載時期の選定や広告原稿作成などに手間がかかる

求人広告媒体の種類

求人広告を掲載する媒体にはさまざまな種類がありますが、ここではWEB媒体と紙媒体の2つに分けて説明します。

WEB媒体

WEB媒体は、求人媒体など、インターネット上に求人情報を掲載し、求職者からの応募を集める手段です。
2000年代以降インターネットが情報源として定着し、たとえば新入社員の就職活動では「インターネットの就職関連サイト」が主な情報源の一つとなっています。

インターネット環境さえあれば誰でも簡単に情報収集をすることができるので、幅広い人材からの応募が期待できるのがポイントです。
また最近では、テキストや画像だけでなく動画まで掲載できるサービスもあり、自社の魅力をより可視化し求職者に訴求しやすいのも特長といえるでしょう。

紙媒体

紙媒体は、フリーペーパーや新聞折り込みチラシといった紙面や冊子に自社の求人情報を掲載することにより、求職者に訴求し応募者を収集する手段です。

紙媒体の魅力の一つは、特定の地域や業界、読者層などに集中的に訴求できる点です。
フリーペーパーは現在もスーパーやコンビニ、駅構内などに設置されていて、気軽に手に取って情報収集できます。積極的に求職活動をしていない層にもアプローチできるのは、紙媒体ならではの特長ともいえるでしょう。

※求人媒体に関しては、以下の記事をご参照ください

求人媒体とは?求人媒体ごとの特長・違い・選び方をわかりやすく解説

求人広告の費用

求人広告の費用形態も多岐にわたります。以下、4つのパターン別に紹介します。

1.完全無料型

登録から掲載、採用に至るまで、料金が一切かからない形態です。
無料で掲載できる理由は、多くの媒体が、求人広告ではなく一般の広告を出稿する企業から費用を得て運用しているためです。

「求人広告に極力費用をかけたくない」という企業には、この完全無料型はよい手段といえるでしょう。反面、無料ということもあり、自社の求人情報が埋もれがちな面もあります。

2.一部無料型

完全無料ではなく、一部で費用が発生するという形態です。
具体的な形態はさまざまです。たとえば、求人掲載は無料だが実際に採用が決定した段階で費用が発生する形態、広告を上位表示するといったSEO的な仕掛けをする場合に費用が発生する形態、人数制限を設けて「〇名までなら無料」という形態などがあります。

イニシャルコストを抑えつつ、求職者に対して自社の求人情報を訴求しやすくなるため、有効な手段の一つといえるでしょう。

3.先行投資型

事前に媒体に対して一定の費用を支払った上で、求人情報を掲載する形態です。

掲載条件によって費用形態は異なります。たとえば、掲載できる情報量、写真や動画の有無、検索結果での上位表示の有無、スカウト機能の使用の有無といった条件が挙げられるでしょう。
求人情報誌やフリーペーパーといった紙媒体はこの先行投資型といえます。求人の掲載箇所や掲載サイズによって料金が変動します。

求人広告を多くの求職者の目に留まらせるためには、上記のようにある程度の費用をかける必要があります。反面、一度の掲載で複数名採用することができれば、1名あたりの採用単価を低く抑えることも不可能ではありません。

4.成果報酬型

求人掲載の際は費用がかからず、採用が確定したタイミングで費用が発生する形態です。

具体的には広告掲載時は費用が発生せず、採用が決定した段階で費用が発生する仕組みです。

前述の通り、WEB媒体や紙媒体では広告掲載しても採用がまったくできないリスクもありますが、成果報酬型では採用決定後に費用を支払うことが一般的であるため、費用面ではローリスクで採用が可能です。
ただし、採用決定の際は比較的高い費用を支払う必要があるため、採用目標人数が複数名にわたる場合には、費用負担が増大するのも特徴です。

※人材紹介に関しては、以下の記事をご参照ください
中途採用における人材紹介・転職エージェントサービスの特徴とメリットを解説

求人広告の費用一覧

実際の費用は媒体によってさまざまですが、求人情報のスペースや情報量などに応じて費用が段階的に変わる場合が多いようです。また有料オプションを使うことで、よりカスタマイズした内容の広告が掲載できたり、関連機能が使えたりする仕様になっているのも特徴です。

WEB媒体の場合、求人広告の費用は基本的に「基本料金」+「有料オプション」という構成になっていることが多いようです。
ここでは採用形態別に、WEB媒体の費用の例を紹介します(なお、下記情報は2022年8月29日現在のものです)。

新卒採用

新卒採用の求人サイト「リクナビ」の場合、基本掲載料は最大13カ月の掲載で10万円~となっています(諸条件あり)。その他オプションとして、自社の発見性を高めたり、学生の応募喚起を促したりするような機能が用意されています。
参考:株式会社リクルート「リクナビのご案内」

企業の従業員規模を問わず、当該世代の新卒採用を計画しており、広く学生からの応募を受け付けたい企業に向いています。新卒採用ではある程度のスペースを使って会社の魅力をふんだんに盛り込むことが求められるので、自社に合った商品を組み合わせることによって、より効果的な採用を期待することができます。

中途採用

中途採用の求人サイト「リクナビNEXT」の場合、掲載できる原稿情報量の多寡により料金が異なります。具体的には、求職者が求人を検索した際に表示される「一覧画面」への原稿掲載と、より詳細な情報が表示される「求人画面」への原稿掲載に分けられ、掲載スペースが大きくなるごとに金額も高くなります。基本料金は18万円~です。

オプションとして「アプローチ機能」などを付加することもできます。具体的には、会社が設定した採用条件に合う求職者に対してメッセージを送信できる機能です。直接的なコミュニケーションを取ることにより、採用精度が高まることが期待できます。
参考:株式会社リクルート「リクナビNEXTのご案内」

アルバイト・パート採用

アルバイト情報誌「タウンワーク」の場合、WEBとフリーペーパーの両方で構成された媒体となっており、料金体系もWEBとフリーペーパーとで異なります。

WEB媒体とフリーペーパーの双方を活用する「タウンワーク」では、WEB媒体1週間とフリーペーパー1週間の掲載で、料金は1万9,000円~。WEB媒体中心の「タウンワークネット」では、WEB媒体2週間とフリーペーパー1週間の掲載で、料金は5万2,000円~です。

なお上記の金額はいずれも首都圏エリアに掲載する場合です。掲載エリア、原稿掲載量などにより費用は異なります。

参考:株式会社リクルート「タウンワークの求人広告・掲載のご相談」

求人広告を掲載するまでの手順

求人広告を掲載するには、どのような手順でおこなえばよいのでしょうか。媒体によって手順は異なりますが、基本的な流れの例を4つのステップで説明します。

求人媒体会社に申し込み

求人媒体を取り扱う会社へ、掲載の申し込みをします。
WEB内の問い合わせフォームなどに必要事項を記載し送付するケースや、電話で担当者に説明するケースなどがあるようです。

打ち合わせ・ヒアリング

求人媒体会社の担当者と打ち合わせをします。担当者からは、サービスの内容、作業工程、掲載料金、原稿作成に必要な情報や納期などの説明があります。

掲載が正式に決定すると、媒体会社の制作担当者と自社の採用者とですり合わせを実施します。具体的には、制作担当者が仕事内容や勤務条件、待遇、仕事の魅力といった出稿に必要な情報を収集するために、詳細なヒアリングを実施することが多いようです。
原稿の作成にあたり必要な資料や素材(画像・映像など)がある場合、媒体会社に共有します。

原稿作成・校正作業

上記をもとにして、掲載原稿を作成します。
原稿案が仮納品されたら、必要に応じて内容を校正し、適宜修正を依頼します。

校正後、掲載

校正作業が終了すると掲載となります。
WEB広告であれば、掲載後の修正や情報追加などが可能な場合もあるようですが、紙媒体の場合は性質上掲載後の変更等はできないため、注意が必要です。

求人広告を掲載するときのポイント

求人広告を掲載する際には、どのようなことに留意すればよいのでしょうか。掲載にあたってのポイントを5つ取り上げて紹介します。

1.タイミングを重視した求人広告を心がける

闇雲に求人広告を掲載するよりも、タイミングを見計らって広告掲載をすることが重要でしょう。たとえば「来年は〇億円増収の見込みだからそれに向けて1年前から〇名採用しよう」「秋に新店を立ち上げるので、オープニングメンバーとして半年前から募集しよう」という具合です。人材が流動化する年度末に向けて広告掲載をする、というのも一案です。
そのためには、行き当たりばったりではなく、計画的に採用活動をすることが望まれます。自社の事業計画に基づいて採用計画を立てるとよいでしょう。

2.求人情報を詳しく記載する

求職者は、よりよい企業に就職できるよう、細かい部分まで情報収集する傾向があります。そのため、求人情報はより詳しく掲載する必要があります。
情報量が少ないと求職者が不安になり、応募に至らない可能性もあります。

3.条件などで誤解を生まないよう留意する

無事に採用に至っても、求人情報と実際の勤務内容が食い違うと、早期退職といった事態を招きかねません。

たとえば、求人情報には「交通費支給」と記載があるのに実際は金額制限が設けられているなど、求人情報と実際の勤務内容のミスマッチはトラブルの元にもなりかねません。また企業の評判も落としかねません。
このような問題を避けるためには、企業側が真摯に情報提供をすることが求められます。

4.単発ではなく継続的に広告掲載する

一度の採用活動で最大の効果が得られるのが理想ですが、なかなか難しいこともあるでしょう。求人広告の掲載が過度に長期間になると求職者に「離職率が高いのではないか」と不安を与えるリスクもありますが、ある程度は継続的に広告掲載することにより、求職者の目に留まりやすくなり、ひいては採用に結び付く可能性が高まります。

5.可能ならば複数の求人媒体を活用し、効果測定をする

たとえばWEB媒体と紙媒体を併用して募集することによって、自社の条件にはどの媒体が向いているのか、より戦略的な採用活動が見込めるかもしれません。

応募が集まる求人広告の書き方

自社が求人広告を掲載するにあたり、どのような原稿を書けば応募者が集まる可能性が高まるのか、以下に一例として6つのポイントをまとめました。

1.「求める人材イメージ」を明確にする

求める人材に巡り合う確率を高めるには、求職者に「この会社が求めている人材は自分に近い」と思ってもらえるかどうかがカギになります。
自社が求める人材イメージがより詳細であれば、求職者の目に留まり、応募意欲を高める可能性が広がるかもしれません。

2.自社の強みを整理し、訴求する

自社の事業内容や経営理念に対し、すべての求職者に興味を持ってもらうことは、現実的ではないといえるでしょう。そこで、自社の強みは何なのかを整理してみることが大切です。自社の強みを把握して訴求することにより、それに共感する求職者が集まる可能性が高まり、ミスマッチも起きにくくなるでしょう。

その際、自社都合ではなくあくまで「求職者の目線」でイメージすることが重要であると思われます。
自社事業やサービスの強みについては、従業員にインタビューすることで抽出することも一案でしょう。従業員にとっても、インタビューを受けることで自社の魅力や強みを振り返るきっかけにもなりますし、自身の仕事への活力へとつながるというメリットもあります。

3.職場の雰囲気の「見える化」を意識する

「実際にこの会社に入ったらどのような人がいるのか」「人間関係が築けるか」といった求職者の心配事を、少しでも解消することも有効な手段といえます。
スタッフの声や集合写真等を広告に盛り込むことにより、職場の雰囲気を求職者に知ってもらいやすくなるでしょう。

4.求職者がイメージできるよう「仕事内容」を明確にする

たとえば事務スタッフを募集しようとした場合、募集職種として(1)の記載と(2)の記載があったとします。

(1)一般事務員

(2)電話応対、小口現金の管理、伝票集計、簡単な資料作成

上記(1)と(2)を比較すると、仕事のイメージがつかみやすいのは(2)ではないでしょうか。
仕事内容をより詳細に記載することにより、どのような仕事なのかを求職者に具体的にイメージさせることができ、応募に結び付きやすくなると考えられます。

5.トラブルの元凶となりかねない「労働条件の不明確さ」をなくす

前述のように、入職後によくあるトラブルの一つに「労働条件が聞いていた内容と違うこと」があります。労働条件を不明確にしてしまうのは後々トラブルの原因になりかねないため、詳細に記載することも必要でしょう。

最低限明示しなければならない労働条件については、以下を参考にしてください。
参考:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」

6.募集形態ごとに分けて広告掲載をする

具体的には「新卒採用」「中途採用」「パート・アルバイト採用」などに分けることです。

予算の都合を考慮するとどうしても一括掲載してしまいたくなりますが、複数の募集を一つにまとめてしまうと、情報が錯綜して求職者に訴求しにくくなる可能性もあります。
採用したい相手に伝えたい情報を適切に届けるには、募集形態ごとに分けて掲載することは有効な手段といえるでしょう。

※求人広告の書き方に関しては、以下の記事をご参照ください

求人票の書き方と効果が出る求人広告の文言やコツをわかりやすく解説

求人広告以外の求人方法

人材採用にあたっては、求人広告によらない手段もいくつかあります。以下に2つの例を説明します。

1.オウンドメディアを活用した広告

オウンドメディアの例として、自社ホームページ(採用サイト)や公式SNSサイト、ブログなどが知られています。

オウンドメディアを効果的に活用すれば、広告料金がかからないので、有効な手段の一つと言えるかもしれません。

※採用サイトに関しては、以下の記事をご参照ください

応募が増える採用サイト・ホームページとは?魅力的なサイトの特徴を紹介

2.リファラル採用

リファラル採用とは、従業員の知人などを社内に紹介し、採用につなげる方法です。一般公募に比べ、信頼ができる人物である可能性が高まるため、ミスマッチが起きにくいのがメリットです。
社内紹介制度を設け、紹介した人が採用となった場合に紹介者に報奨金を支給するような取り組みをする企業もあります。

※リファラル採用に関しては、以下の記事をご参照ください

【人事必見!】リファラル採用とは?メリットや定着・促進させる方法を解説

以上、求人広告の概要や仕組み、料金体系や掲載にあたっての注意点などを解説いたしました。
採用ご担当者様にとって参考になれば幸いです。

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