目次
採用基準とは
採用基準とは、企業が望む人材を採用する際に、面接する担当者によって差が出ないようにするための採用の指標をいいます。
どのような指標にするかは経営者の考え方によって異なりますが、採用基準を決める際に、求める人物像を明確にすることが重要といえるため、後述で解説します。
目的
採用基準を決める上では、「何のために、どのような人材を採用するのか」といった採用の目的を明確にすることがスタートとなります。
たとえば、中途採用の目的を「即戦力獲得のために、スキルや実務経験が豊富な人材を採用する」と明確化した場合、次のような採用基準が必要になるとわかるでしょう。
- ○○業界で○○経験3年以上
- ○○の有資格者
など
重要性
今の労働市場には多くの人材(求職者)が流動しています。
たとえば、
- 今よりも好条件の企業を探している人
- スキルアップを求めて企業を探している人
- 早期退職優遇制度に応募した人
など、こうした人材の中には、即戦力としての活躍が期待できる人材も存在するでしょう。この現状から、中途採用で即戦力を獲得しようとする企業が増えてきていると考えられます。
人材確保のためにも、適した採用基準を設定することで自社に必要な人材かどうかを素早く見極めて決断できるでしょう。
採用基準が適切でないと起こる問題
採用基準が適切でないと、人材確保の質などに大きな違いとなって現れ、今後の企業の成長に影響を与えることになるでしょう。
たとえば、新しい専門の部署を作るために責任者を採用したものの、採用基準が適切でなかったためスキルや専門領域が期待を満たさず、部署のマネジメントが機能しないなど、採用後のミスマッチに繋がってしまうこともあります。
採用基準を見直したほうが良いとき
以下の内容に当該しているようでしたら見直しが必要でしょう。
- 応募者数を増やしたい場合
- 選考通過者が募集人数に対して少ない場合
- 採用後の離職率が高い場合
- 禁止事項に該当している場合
- 配慮すべき事項に該当している場合
禁止事項や配慮すべき事項が含まれている場合はもちろんのこと、募集と採用の状況を照らし合わせながら、見直しを検討することもおすすめです。
禁止事項は、男女別の人数を設定して募集・採用するなどの性別による制限や、年齢による制限などがあります。なお配慮すべき事項には以下のような項目があります。
- 本人に責任がない事項
- 出生地や家族に関すること
- 生活環境や家庭環境に関することなど
- 本来自由であるべき事項
- 人生観や思想に関すること
- 労働組合の加入状況や活動歴に関する情報など
適切な採用基準を設定するメリット
企業が望む人材を採用するためには、企業の目的に適した採用基準を設定すると良いでしょう。
適切な採用基準を設定することで次のようにさまざまなメリットがあります。
- 早期離職の防止
- 人材選考のミスマッチを防止
- 自社の特長を明確にできる
- 採用計画が立てやすい
以上のメリットから見ても、採用基準の設定がよりよい採用活動に繋がるといえます。
採用基準を設定する際に重要なポイント
企業が募集や採用をする際には、さまざまな法令などの規制を受けます。それらを事前に把握しておかないと思わぬトラブルに発展することがあります。
後になってから「知らなかった」といっても、その行為自体が許されるわけではありませんので、採用担当者は正しい知識をもち、入念な準備をして募集や採用に臨むことが大切です。
新卒採用と中途採用の採用基準
採用基準を設定するときは、企業の目的にあわせるだけではなく、求める人材にあわせて設定することも必要です。
新卒採用と中途採用を例に解説します。
新卒採用の採用基準
新卒採用の基準を設定し、採用活動がより良い方向に進むと、将来の幹部候補として採用できたり社内の活性化に繋がったりすると考えられます。
新卒採用では主に、人柄や考え方を重視するポテンシャル採用となります。次のようなポイントを考慮すると良いでしょう。
- 仕事への熱意が感じられるか
- コミュニケーション能力は高いか
- 主体性や協調性があるか
- 誠実さや信頼性はあるか
中途採用の採用基準
採用基準の設定を的確に行い、中途採用に成功すれば、企業は最低限の教育訓練でその人材を戦力化することができるといえます。
中途採用の多くはスキル採用を取り入れています。採用基準は次のようなポイントも考慮すると良いでしょう。
- ある業界に精通している人材
- どのような専門能力をもっているのか
- 前職場ではどの程度貢献していたのか
- どのような業種のどのような職種で何年働いていたか
ターゲットを明確にした採用戦略が可能であることから、企業が求める能力と求職者が有する能力のミスマッチが生じる可能性は低くなります。
※中途採用の選考に関しては、以下の記事をご参照ください
中途採用で即戦力人材を見抜く方法や選考ポイントをわかりやすく解説
採用基準を設定する手順
採用基準を設定する手順は以下のとおりです。
1.採用目的を明確にする
自社に合う人材を採用するためにも目的を明確化しておきましょう。
- 業容を拡大するため専門知識をもつ人材の獲得
- 実務経験豊富な管理職の獲得など
2.現場からの情報を把握する
どの部門でどのような人材を求めているのか、現場からの情報を把握することが重要になると考えられます。
社内で求める人物像や、スキルなど具体的なところまでヒアリングを行いましょう。
3.コンピテンシーを明確化する
コンピテンシーとは、高い成果を出している社員が共通して持っている行動特性のことです。
明確化することによって活躍できる人材の採用につながると考えられます。
※コンピテンシーに関しては、以下の記事をご参照ください。
【人事必見!】コンピテンシーとは?意味やスキルとの違い、導入方法を解説
4.基準項目を設定する
1~3で挙げられた項目をすべて洗い出して、その内容をもとに採用基準の項目を設定しましょう。
5.優先順位や選考段階ごとの基準を設定する
全体的な採用基準の設定ができたら、さらにその中から細分化して次のような項目を設定しましょう。
- 必須となる条件や、十分条件などの分類
- 優先順位
- 選考段階ごとの基準
- ターゲット別(新卒・中途など)の基準 など
採用基準を設定するときの注意点
採用基準を設定するときは次の点に注意して行いましょう。
- 自社だけではなく競合の情報も調査して設定する
- 現場からもヒアリングを行う
- 採用計画を策定する
注意しながら採用基準を設定することで、採用後のミスマッチによる早期離職の可能性が低くなるといえます。
採用基準をもとに人材を見極める方法
採用時の次のような場面で、採用基準が活用できます。
- 書類選考
- 適性検査
- 面接
それぞれの場面で設定するとよい項目などを解説します。
書類選考
履歴書は、応募者の学歴や属性(中途採用の場合は職務経歴)を知るための重要な書類です。
履歴書の書き方に応募者の几帳面さや誠実さも表れるため、次の項目などを採用基準に設定することができます。
- 基本的な文章作成能力や経験の有無
- ビジネスマナー
- 職歴や資格が採用基準と合致しているかなど
適性検査
採用活動の一環としてSPIなどの適性検査を行います。
適性検査では、次の項目などを採用基準に設定することができます。
- 自社が重視する項目にマッチしているのか
- 配属予定の仕事に対する適性を把握など
面接
面接では、書類上では判断できないことを、直接の会話の中で判断することができます。
次の項目などを採用基準に設定することができます。また、回答の内容を点数化することもひとつの方法になります。
- 人柄
- 面接の受け答えの仕方や姿勢
- 質問に対する回答内容など
採用活動は企業にとって最も重要な経営資源のひとつである「人」を強化していくことです。そのため、事前の採用基準の設定が大切になり、企業の成長に大きな影響を与えることでしょう。
採用活動の際は、周到な準備を進めることがポイントとなりますので手順や注意点などを参考にしてみてください。