人材採用市場が多様化する中で、「採用マーケティング」を取り入れる企業が増えています。そこで今回は、採用マーケティングの基本を解説しながら、ターゲットとなる求職者へどうアプローチするか、どう自社の魅力を伝えるか、具体的な手法をご紹介します。マーケティングの概念も交えながら採用活動に取り入れるためのヒントもお届けします。

Webマーケティングとは

Webマーケティングとは、「インターネットを活用したマーケティング」のことを指します。

今回のテーマである「採用」においては、自社サイトに求人や採用情報を掲載したうえで、検索エンジンやソーシャルメディアなどを活用し、求職者にアプローチしていく手法を指します。

※Webマーケティングに関しては、以下の記事をご参照ください

中途採用にWebマーケティングを活用・実施する方法を詳しく解説

採用にWebマーケティングが必要な理由

なぜ採用にWebマーケティングを活用する必要性が生じたのでしょうか。

その背景のひとつとして、近年ITが急激に進化したことがあげられるでしょう。スマートフォンの急激な普及にともなうWeb検索機能の向上は、検索エンジン型の求人サービスを発展させる一因となりました。

若年層を中心とした世代では、求人情報を探す際にスマートフォンを活用するのがもはや当たり前になっています。

こうした状況下では、旧来の「求人媒体への広告掲載」のみによる採用活動には限界があるといえます。求職者は、採用情報に辿り着くためにさまざまな手段を講じますので、企業もその多様化に対応する必要があります。

インターネットに対応した求人広告は、こうした必要性から生まれたと考えられます。

※求人広告に関しては、以下の記事をご参照ください

求人広告の費用は?新卒・中途・アルバイト媒体の費用一覧まとめ

採用に使えWebマーケティングとは

では、どのようなWebマーケティングが採用活動に活用できるでしょうか。

以下にいくつかご紹介します。

自社サイトを制作する

自社サイトやブログなどのことを「オウンドメディア」といいます。

近年では、企業の事業内容を掲載するだけでなく、採用ページを別途開設してリクルーティングするケースが増えてきています。自社の求人情報を広く認知してもらうには、この採用サイトの充実が不可欠だといえるでしょう。

Web/SNS広告を活用する

リスティング広告

リスティング広告とは、検索エンジンで検索したキーワードに関連した広告をクリックされやすいページに露出させる広告のことです。検索連動型広告とも呼ばれます。

リスティング広告はクリックされると費用が発生する従量課金制のものが多く、予算に合わせて単価の調整も可能です。

表示される順位は、事前に設定された「上限クリック単価」に比例します。

高い露出度は大切ですが、同時に「広告品質」も重要です。ランディングページの品質や広告のクリック数を表示回数で割った値であるクリック率、キーワードと広告の関連性などで、広告が訴求対象に到達した割合であるリーチ率が大きく変わります。

したがって、キーワードの選定や除外ワードの設定などについてかなり練りこまなければ、成果が上がりにくいといえるでしょう。いかに上手に運用できるかがカギとなります。

ディスプレイ広告

ディスプレイ広告とは、自社で作成した画像や動画、テキストなどをWebサイトやアプリの広告枠に配信する広告です。「バナー広告」ともいわれます。

ディスプレイ広告の主な目的はいわゆる「ブランド認知」です。潜在的なニーズのある幅広いユーザーに対して、いかに企業を知ってもらうかを目的として配信する広告です。

配信するディスプレイ広告には、内容の秀逸さが求められます。魅力のある広告を作成できるかによってクリック率や、Webサイトを訪れたユーザーのうちそのWebが狙う成果に至った割合であるコンバージョン率も変わってきます。複数のパターンを用意して運用することで、どのパターンがより効果的かを測定する企業も多いようです。

リターゲティング広告

リターゲティング広告とは、あるWebサイトで配信された広告を、別のWebサイトでも配信する広告のことです。

採用に置き換えて考えてみると、一度興味関心を持って採用サイトに訪れたものの、なんらかの事情で応募に至らなかったというケースは存在するのではないでしょうか。応募に至らなかったユーザーに再度アプローチすることにより、新たなニーズが生まれるかもしれません。リターゲティング広告は、いわゆる「フォローアップ」型の広告といってよいでしょう。

SNS広告

SNS広告は、FacebookやInstagramなどに代表されるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を駆使して広告するものです。

SNS広告の最大の魅力は「拡散力」にあると考えられます。

SNSのようなサービスは、その価値が利用するユーザーの数に大きく依存します。つまり、いかにユーザー数が確保できるか、拡散させるかで価値が決まるともいえます。またSNSは一般に匿名性が低いといわれており、採用ターゲットとなるユーザーに対してアプローチしやすい点も特徴的です。

近年ではSNS上に採用サイトを開設するケースもあり、動画などを上手に配信することでターゲットにリーチすることが可能になります。

オウンドメディアリクルーティングとは

「オウンドメディアリクルーティング」とは、自社サイトを活用してニーズにマッチした人材を獲得する手法を指します。具体的には、自社の採用サイトを作成し別の求人サイトに掲載する、SNSアカウントを作成して自社の採用情報を発信するなどの手法です。

オウンドメディアを通じて企業のさまざまな情報を求職者に発信することにより、自社の業務に対して高いスキルを持つ人材に訴求できる可能性が高まります。また、自社の価値観に共感する人材が集まる可能性も高まることから、定着率の向上も期待できます。

採用Webマーケティングの仕組み・手順

では、どのような流れで採用Webマーケティングを行うのか、その仕組みを簡単に説明しましょう。

(1)求職者層にターゲティングし、WebやSNS広告を活用してアプローチする
(2)採用サイトへ当該ターゲットを流入させる
(3)離脱者や未応募者に対して、再度広告を発信(リターゲティング広告)する
(4)ターゲットを自社サイトへ再流入させる

こうした手順を繰り返し行っていくのが、採用Webマーケティングの仕組みの基本といえるでしょう。

では、具体的な手順の一例について以下に解説します。

(1)戦略立案を行う

一般的に、Webマーケティングにおいて最初に行うのが「戦略立案」です。戦略を立てるには、自社の採用状況を把握することが重要です。自社の課題とその解決方法、採用活動を成功へ導く方法を戦略的に考えます。

まずはブレーンストーミングなどのフレームワークを活用しながらアイデアをできる限り出し、その後に絞り込んでいくのがおすすめです。このように、企業が求職者にアプローチし、コンバージョン率を高めるための戦略立案は、もはや必須といっても過言ではありません。

※採用戦略に関しては、以下の記事をご参照ください

【人事必見】採用戦略の立て方とは?具体的なステップ、コツをわかりやすく解説

(2)魅力的なコンテンツを構築し、提供する

戦略ができたら、コンテンツ構築を行います。この段階では、求職者の応募を後押しするような魅力あるコンテンツを制作することが重要です。

有効な手法としては、企業の商品やサービスに関連性の高いコンテンツを作成し、そこから自社サイトに誘導する「コンテンツマーケティング」があります。もちろんオウンドメディアを制作すること自体も重要ですが、メディアの制作後、ブログやコラムなどの更新を地道に続けることで、ユーザーへ企業認知をしてもらいやすくなります。

(3)データを分析し、PDCAを回す

自社に興味・関心を持ってもらうための努力は惜しまず行いましょう。自社サービスへの登録など、アクションのあった求職者に直接アプローチする「スカウティング」を行うなど、直接コミュニケーションをとって応募につなげる施策も有効だといえます(これらの施策は登録時にその後のアプローチに関する可否を、登録者自身が選択することが一般的です)。


またアクセス解析やデータ分析などによって、打ち出した施策の効果測定も行いましょう。自社の課題や問題点を見つけ、改善することで、効率的にコンバージョン率を上げることが期待できます。目標に向けて戦略の改善・見直しをするという「PDCAサイクル」を常に回し続けることが重要です。

採用Webマーケティングのメリット・デメリット

それでは、採用活動にWebマーケティングを取り入れるメリットとデメリットについて以下に解説します。

採用Webマーケティングのメリット

メリット1.採用したい人材を細かくターゲティングできる

採用Webマーケティングは、自社が採用したい人材に対して柔軟に訴求しやすいツールといわれています。Web広告は詳細な属性に対してターゲティングができるという点が魅力的です。

また、ディスプレイ広告においても、転職にアクティブなユーザーがよく閲覧するサイトにアプローチする、といったことができます。配信時間や曜日の設定も可能です。就労中のユーザーであれば退勤後である夕方以降に合わせて配信することで、退勤後に最新の転職情報を収集することができるでしょう。

メリット2.新たな切り口で求人募集をかけることができる

企業によっては、既存の採用手法への依存が根強い場合もあると思います。

しかし、そうした既存の手法のみによる転職潜在層発掘には限界があります。WebやSNS広告の活用には、従来の手段ではなかなか接触できなかった層からの応募が期待できます。

メリット3.採用コストを効率化できる

Webマーケティングは「クリック単価制」が基本であり、求職者が広告をクリックしなければ費用が発生しない仕組みになっています。そのため、費用面においても効率的な採用活動が可能になります。

採用Webマーケティングのデメリット

デメリット1.効果を実感できるまでに一定の時間を要する

採用Webマーケティングは、基本的に継続的な運用によって効果が発揮される手法だといわれています。たとえばリスティング広告であれば、キーワードの選定や追加、削除などを地道に行い、予算や単価の調整を繰り返すことで効果の最適化を図ります。また、ディスプレイ広告におけるバナーやランディングページ、採用サイトの仕様変更、応募フォームの最適化など、常に運用を継続しつつ改善を重ねていくことが求められます。

そのため、導入直後に圧倒的な成果がでるわけではないことを理解する必要があります。

デメリット2.専門部署(知識)がないと着手しにくい

専門部署を持たない企業では、着手したくてもなかなか手が出ず、本格的に導入している企業はまだ多くないのが実情です。採用Webマーケティングのフレームワークを構築するには一定の時間がかかります。そのため、既存の求人メディアや求人検索エンジンと比べると成功事例はそれほど多くないといえるかもしれません。

採用Webマーケティングを成功させるポイント

では、採用Webマーケティングで採用活動を成功させるには、どのような点に留意すべきなのでしょうか。ここでは気をつけたいポイントの例を解説します。

細かいターゲティングを行う

上述の通り、Webマーケティングではターゲットを細かく設定して対象者にアプローチすることが可能です。そのためターゲットの設定は非常に重要です。広告を展開するにあたり、事前に採用ターゲットを明確にしておくことが必要です。

ターゲットが明確になっていれば、それだけ確度の高い層にアプローチできます

顕在ニーズへアプローチする

企業のニーズに合う適切な人材にアプローチするのは簡単なことではありません。費用対効果を考慮するのであれば、リスティング広告の利用も検討してみましょう。潜在層を含む幅広い人材に対してアプローチすることで、自社にとって適切な人材が見つかる可能性が高まります。リスティング広告のメリットは、まさに潜在ニーズに対して広範囲にアプローチできる点です。

たとえばカフェ店のフロアスタッフを募集したい場合に、「カフェ 求人」「学生 アルバイト」などのワードで検索しているユーザーに対して、検索エンジンの上位に表示されやすくなります。

また、転職アクティブ層に効率的にアプローチするのであれば、ディスプレイ広告やSNS広告を活用しながら、リスティング広告をベースに構築するのも一案といえるでしょう。

継続的な運用と改善を行う

Webマーケティングは、一度行えばすぐに効果が出るものではありません。試行錯誤を繰り返しながら、地道に行っていくデリケートな作業です。期待する効果を上げるためには、導入後の継続的な運用と改善が不可欠といえます。

Web広告配信後、クリック率、コンバージョン率などを分析し、グループごとにキーワード、広告文、ターゲティング、バナーの内容などを抜き出して変更を加えていきましょう。

一度構築したらそれで終わりではないWebマーケティングは「生き物」だといってもよいかもしれません。

企業の採用活動における最大の目的は、「必要なときに効果的な採用ができる」ことだと考えられます。

その意味では、従来の広告掲載に加えて自社サイトを機能させることで、特定のターゲット層への効率的なアプローチが期待できるでしょう。

今回ご紹介したように、採用サイトを利用しつつ採用活動の最適化を図るためにはWebマーケティングを取り入れていくことが有効です。

オウンドメディアリクルーティングは、使い方ひとつで自社の魅力を最大限に訴求する可能性が高まります。活用を検討するとよいでしょう。

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