採用を考えている企業と求職者の間をつなぎ、企業向けには求人募集をはじめ採用活動の支援をし、求職者には転職活動を支援するサービスが「人材紹介」です。転職エージェントとも呼ばれており、転職サイトと並ぶ代表的な採用手法として、多くの企業に活用されています。一般的に初期費用がかからないことが多く、採用業務をサポートしてくれるため人事側の業務の削減にもなります。どう利用すれば、より効果的な手法となるのか、ご紹介します。

人材紹介・転職エージェントとは

人材紹介・転職エージェントとは、厚生労働大臣の認可を受けた民間の職業紹介事業者が、採用を考えている企業より依頼を受け、条件に合致する候補者を紹介する採用支援サービスです。企業と求職者の間にエージェントとして入り、両者のマッチングを行う役割です。人材紹介には、大きく分けて3つの形態があります。いちばん一般的なのは、求職者のデータベースを保有し、企業から求人を受注した際、データベースの中から最適な人材を企業に推薦する方法です。データベース以外にも独自のネットワークで企業が求める人材を探してくる方法は、ヘッドハンティング、スカウトとも呼ばれ、経営幹部などエグゼクティブ層の採用に活用されます。また、事業縮小や人員整理時に活用されるケースも人材紹介の一つです。

人材紹介・転職エージェントを活用するメリット

活用するメリットについて、詳しくお伝えします。

料金・費用の仕組み

求人媒体と違い、採用が決定した場合に「紹介手数料」が発生する成功報酬型の料金体系をとっている会社がほとんどです。その場合、初期費用は0円、候補者を何人紹介してもらっても料金は発生しません。
紹介手数料は決定者の理論年収の35%が一般的です。理論年収の算出式は一般に、「月額給与(基本給+所定手当+平均法定手当)×12カ月+賞与(基本給×賞与支給月数)」となります。例えば、理論年収が500万円の場合、紹介手数料は175万円(税別)となります。
「サーチ型」は、成功報酬に加え、初期費用としての着手金が発生する料金形態の人材紹介会社が多くなっています。

人材紹介会社ごとに母集団が違う

人材紹介会社は、それぞれ独自の求職者のデータベースを保有しており、企業から求人が発生した際に、このデータベースからニーズにマッチした人材を推薦します。幅広い業界・職種に対応できる「総合型」と、メディカルやIT、クリエーターなど特定の業界や、第二新卒、グローバル人材の採用など特定の領域に特化している「専門型」があります。それぞれの会社の強みを把握して、依頼することが大切です。

採用担当者の工数を削減できる

人材紹介会社は自社に代わって、求人情報の作成、人材要件にマッチした候補者の選定、面接日程の調整、面接前後のフォロー、合否連絡、労働条件の交渉などの業務をサポートしてくれます。その分、採用担当者の業務を減らすことができ、効率良く採用を進めることが可能です。

自社の魅力を代わりに伝えてくれる

人材紹介会社の担当者は、転職市場の相場、職種に精通しているので、企業が求める人材に対して、自社の魅力のどのポイントを伝えれば応募意欲が高まるかなどを戦略的に考え、伝えてくれます。また自社が直接伝えるのではなく、第三者という客観的な視点が入ることで、求職者の納得度が高まります。

スピーディに採用できる

人材紹介会社との契約が終わったら、企業担当者が今回募集する人材要件をヒアリングし、求人情報を作成。その条件に基づいてデータベースより候補者を推薦し、面接が設定されます。早ければ数日のうちに面接を設定することも可能です。一方、例えば、求人媒体を使った場合、まず求人広告を作成し、掲載。応募者を選考して面接日程を調整と多くの工数がかかります。

人材紹介・転職エージェントを活用するデメリット

メリットの多い人材紹介ですが、ではデメリットは何でしょうか。

採用単価が他の手法に比べて高い傾向にある

初期費用はかかりませんが、成功報酬型で、紹介手数料は決定者の理論年収の35%が一般的です。採用する人材の理論年収によっては、高額になる可能性があります。

自社に採用ノウハウが蓄積しづらい

求人情報の作成や候補者の推薦、候補者への動機づけや面接前後のサポート、入社までのフォローと、人材紹介会社がサポートしてくれることで採用工数の削減になる反面、採用成功した、あるいは不成功だった原因をしっかり分析し、改善の手段を考えていかないと自社にノウハウが蓄積できないということになってしまいます。

人材紹介・転職エージェントを選ぶポイント

人材紹介は会社によってさまざまな特徴がありますので、自社にマッチするサービスを選ぶことが重要です。

総合型か専門型

幅広い業界・職種に対応できる「総合型」と、メディカルやITなど特定の業界や、第二新卒、グローバル人材の採用など、ある特定の領域に特化している「専門型」があります。企業が求める人材にマッチするデータベースを持っている人材紹介会社を選んで依頼することが大切です。またサービスの運用方法は、分業型(企業側の担当・リクルーティングアドバイザーと求職者側の担当・キャリアアドバイザーに分業)と、一気通貫型(企業側と求職者側を一人で担当するスタイル)があります。

登録者数と実績

「どんなデータベースを持っているか」と「決定力」は、人材紹介会社を選ぶ時に特に重要です。各社のホームページやパンフレットなどには、取引社数、登録者数、転職決定者数などのデータ、特徴などが記載されています。
例えば、リクルートエージェントでは、以下が記載されています。

  • 取引社数 :約2万8000社 
  • 登録者数 :約125万2000名 
  • 転職決定者数 :約5万2000名
    すべて2019年度実績

登録者のデータも年齢、経験職種、年収など詳細なデータがありますので、登録者数は累計なのか、実数なのかも、あわせて検討してみましょう。また年間で何名のマッチングを実現したのかを表す「転職決定者数」も、人材紹介会社の実力を知る上で重要な指標です。

採用支援を兼ねているか

人材紹介会社によっては、面接から入社までをサポートするサービスを提供している会社もあります。採用だけでなく教育、研修などさまざまな業務を担当している人事は、採用業務に関する多くの部分を依頼することで、その他の業務に注力することが可能です。

紹介予定派遣のサービスがあるか

紹介予定派遣とは、雇用を前提として社員を派遣する派遣形態です。企業が求める経験・スキルを持った人材を派遣し、派遣終了後に、企業と本人の合意の上で社員として雇用するサービスです。派遣中に業務への適性や、企業文化に馴染める人材かどうかを判断できるので、定着率が良い傾向にあります。派遣社員を派遣している間は一般労働者派遣事業、両者の合意の上で派遣先企業の社員として雇用される際には、有料職業紹介事業となり、人材紹介業と人材派遣業の両方を行っている会社であれば、サービスを提供できます。

人材紹介・転職エージェントを効果的に利用する方法

自社の代理となる人材紹介会社とは、良いパートナーシップを築くことが大切です。より効果的に利用するための方法をご紹介します。

人材紹介会社と密なコミュニケーションを図る

人材紹介会社の担当者は、求人情報の内容や今回の採用の目的を理解し候補者を紹介していきます。選考の合否について、なぜその候補者は合格なのか、または不合格なのか、理由を具体的に伝えることで、より企業側の求める人材のイメージが伝わり、候補者選定の精度が高まっていきます。また、自社の最新情報や、今回募集する部署の動向などを常に共有し、密なコミュニケーションを図ることで信頼関係が構築されます。

自社の魅力を磨きこむ

自社で魅力的だと思っている部分でも、候補者にとっては、それほど魅力に映らない場合もありますし、逆に自社では普通のことだと思っていても、候補者にとっては新鮮な内容になる場合もあります。人材紹介会社の担当者は、転職市場や業界・職種に精通していますので、客観的な立場でアドバイスしてくれます。積極的にアドバイスをもらい、自社の魅力をブラッシュアップしていきましょう。

人材紹介・転職エージェントを利用する際の注意点

「人材紹介会社に依頼したけれど、思ったような人材がこない」、「なかなか採用まで至らない」ということにならないようにするために、どんな点に注意すべきなのでしょうか。

人材紹介会社は採用チームの一員

人が介在するサービスですので、担当者と価値観があっているかも重要です。募集職種に対する知識が豊富で転職市場に精通していることはもちろん、自社の理念やビジョンに共感し、「何のための採用なのか」目的をしっかり把握し、採用チームの一員として取り組んでくれる人材紹介会社を選んでください。

受け身ではなく、能動的に働きかける

人材紹介会社に要望し、ただ推薦を待つだけでなく、自社で解決できる採用課題には積極的に取り組んでいきましょう。転職市場の相場を把握し自社の待遇を見直したり、選考のスピードアップを図るため社内にさらなる協力を働きかけたり、自社で行えることは、いくらでもあります。人材紹介会社に要望すること、自社で常に改善していくこと。この両輪で進めていくことが採用成功につながります。

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