転職エージェント トップ > 転職成功ガイド > 転職準備 > 転職で出戻りはあり?メリット・デメリットと出戻り転職を実現するポイント

転職で出戻りはあり?メリット・デメリットと出戻り転職を実現するポイント

転職 出戻り

転職の際、「前職の会社に出戻り転職できないか」と考える人もいるでしょう。昨今、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や、採用コストの削減、入社後の定着率向上などを理由に、退職した従業員を再度受け入れる企業もあります。人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、出戻り転職を実現する方法や出戻り転職で歓迎されやすい人の特徴、注意点などを解説します。

元いた会社への出戻り転職は「あり」

生産年齢人口の減少などを背景に企業の人材不足が深刻化する中、有効な人材獲得手法として「退職した人材」が注目されています。「カムバック制度」や「再雇用制度」、「アルムナイ(退職者)制度」などを新たに設ける企業もあり、一度辞めた会社への出戻り転職は珍しいものではなくなっています。

即戦力になり得る「退職者」が注目されている

過去に在籍していた社員の場合、自社の社風や仕事の進め方を理解しているため、企業にとって即戦力となる可能性が高いと言えます。転職市場から広く応募者を募るよりも、採用コストが抑えられるという理由から、退職者に注目するケースもあるようです。

退職理由や年齢を問わないケースもある

退職者を採用する際、自社を辞めた理由や、退職してからの期間、年齢などで制限を設ける企業も少なくありませんが、人手不足の深刻化を受け、昨今は退職理由や時期、年齢などを問わないケースもあります。「退職してから期間が空きすぎているから、もう難しいだろう」などと決めつけず、出戻り転職の条件を確認してみると良いでしょう。

出戻り転職が注目されている社会的背景

出戻り転職が注目されているのは、次のような社会的背景があると考えられます。

生産年齢人口の減少

少子高齢化に伴う生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)の減少により、多くの企業が人材採用に苦戦しています。リクルートワークス研究所が行った「中途採用実態調査(※1)」によると、2024年度下半期の中途採用において、「必要な人数を確保できなかった」と回答した企業は54.7%に上っています。
採用難が深刻化する中、企業は人材確保の手段の一つとして、退職者にも注目していると言えるでしょう。

(※1)出典:リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2024年度実績 正規社員)」(2025年6月)

キャリアに対する意識の多様化

近年は、1社で働き続けるのではなく複数の企業を経験する人が増えており、キャリア形成の手段の一つとして「転職」が当たり前となりつつあります。

総務省が発表した「労働力調査(詳細集計)の2024年平均結果(※2)」によると、2024年の転職者数は331万人と、前年に比べ3万人増加しました。転職等希望者数は1000万人と、前年比で7万人の減少となりましたが、8年ぶりの減少であり高い水準が続いています。

ビジネスパーソンにとって「転職」が身近なものとなり、実際に転職者および転職希望者数が高水準となっていることで、人材の継続確保が難しくなった企業が退職者に注目していると考えられます。

転職_出戻り

(※2)出典:総務省統計局ホームページ

出戻り転職のメリット

以前の勤務先に出戻り転職することにはどのようなメリットがあるのか、ご紹介します。

即戦力として活躍できる

まずは、在職時の経験が活かせるためすぐに成果を上げやすく、即戦力となりやすい点が挙げられます。さらに、転職先で培った新たな経験やスキル、人脈などが加わり、在職時より活躍できる可能性もあるでしょう。

組織や風土にすぐになじめる

組織風土や企業文化を理解しているので、たとえ在職時とは別の部署に配属となっても、新たな環境になじみやすいかもしれません。職場に顔なじみの人がいることで相互理解が進めやすく、仕事における社内コミュニケーションも図りやすいでしょう。

人間関係の構築がスムーズ

通常の転職の場合、職場の人間関係は入ってみないとわからないものです。一方、以前働いていた会社であれば、上司や同僚など職場のメンバーの人となりがわかっているため、スムーズに関係性が構築できるでしょう。

転職活動の負担が減らせる

出戻り転職の場合、書類選考が免除になるなど選考プロセスが短縮されるケースもあります。また、通常より少ない面接回数で内定を出す企業もあるようです。
業務内容や仕事内容などを熟知しているため、企業研究をしたり面接対策をしたりといった転職活動にかかる労力も、他の企業への応募に比べると大幅に省力化できるでしょう。

出戻り転職のデメリット

一方で、出戻り転職にはデメリットと言える部分もあります。出戻り転職を目指す際には、次のような可能性がある点にも留意しておきましょう。

辞めた理由が解消されていない可能性がある

退職した理由がまだ解消されていない場合、出戻り転職しても、同じ理由でまた悩んだり、不満を抱えたりする可能性があります。
例えば「業務量が多く残業が当たり前となっている」という理由で退職した場合、それが現在も改善されていないのであれば、業務量の多さに不満を覚え、再び退職を検討することになるかもしれません。

待遇や労働条件が以前と変わる可能性がある

出戻り転職の場合、在職時と同等の待遇や労働条件で採用されるとは限りません。給与やポジションが下がる可能性や、同じ部署やチームで働けない可能性があることを理解しておきましょう。

すべての人が出戻りに肯定的とは限らない

一度辞めた人がまた戻ってくることに、ネガティブな印象を持つ人は一定数いるようです。「なぜ今さら戻ってくるのか」「戻ってくるならば辞めなければよかったのに」などといった意見を持つ人がいる可能性もあることに留意しましょう。

出戻り転職で歓迎される人の特徴

出戻り転職においては、どのような人が歓迎されるのでしょうか?その特徴についてご紹介します。

在籍中の評価が良かった

在籍時に活躍し、高い評価を得ていた人は、出戻り転職でも歓迎されるでしょう。戻ってきたらまた即戦力として活躍してくれそうだ、他社の経験も武器にこれまで以上に自社に貢献してくれそうだなどと期待され、責任ある仕事を任されたり、良いポジションを与えられたりする可能性があります。
反対に、在籍時に一定以上の成果や評価が得られていなかった場合は、「出戻りで採用しても活躍が期待しにくい」と判断され、選考がスムーズに進みづらくなるかもしれません。

在籍中の人間関係が良好だった

在籍中に、元同僚や上司、先輩などと良好な関係性を築けていた人であれば、出戻り転職に対してネガティブな感情を抱く人も少なく、元の職場にもスムーズになじめると考えられます。出戻り後も、周囲とうまくコミュニケーションを取りながら力を発揮してくれそうだと期待できるでしょう。

円満退職だった

引き継ぎを十分に行うなど「立つ鳥跡を濁さず」を実践し、円満に退職した人は、元上司や同僚などとの信頼関係が失われておらず、出戻り後もスムーズに復職しやすいでしょう。
一方、引き継ぎをしないまま有休消化に入るなど、退職時に周りに迷惑をかけたりトラブルを起こしたりした人は、どうしてもネガティブな印象を持たれてしまうかもしれません。

転職先で成果を上げている、スキルアップしている

転職先で成果を上げ、スキルアップした上で出戻りを考えている人は、「在籍時よりもさらに貢献してくれそうだ」と期待されやすいでしょう。他社での経験を武器に活躍するだけでなく、社内に新たな風も吹きこんでくれそうだと評価する企業もありそうです。
反面、転職先で思うような成果が上げられなかったことから、元いた会社に戻りたいと考えている人は、歓迎されにくいでしょう。

出戻り転職の選考で見られているポイントとは?

出戻り転職の選考では、主に次のような点を確認されています。採用選考ではこれらに気を配りアピールすると良いでしょう。

在籍中に成果を挙げていたか

過去に在籍していた人材だからこそ、企業は在籍時の詳細な情報(実績、人柄、仕事ぶり、周囲との関係性など)を正確に把握することができます。在籍時に成果を上げて組織貢献をしていればプラス評価につながるでしょう。在籍時の成果に自信がないという場合は、転職先での実績やスキルアップの度合いをアピールすることが大切です。

転職先でどんな経験・スキルを積んだか

在籍時に成果を上げていただけでなく、「転職先でどのような経験を積み、スキルを身につけたのか」「どのような成果や実績を上げてきたのか」も見られているでしょう。在籍時からの変化や成長ぶりを伝え、自分を採用するメリットを認識してもらうことが重要です。
転職先で思うような実績を上げられなかった、身についたスキルも特段ない…などという場合は、「敢えて退職者を採用するメリットはない」と判断されてしまうかもしれません。

出戻り転職の理由に納得感があるか

前述のように、自社を良く知る退職者を採用するメリットは企業にとって大きいものの、どうしても「また同じ理由で辞めてしまうのではないか」との懸念は付きまといます。そのため、「出戻りを希望する理由」は選考においてかなり重視されるポイントです。例えば「外に出たからこそ、元の会社の良さや強みを再認識した」「転職先で得た経験やスキルを活かして貢献したいと思った」など、前向きで納得感のある転職理由を伝えることが大切です。
「転職先が自分に合わなかった」「年収などの労働条件が下がって不満だった」といった漠然とした理由や条件・待遇だけが理由である場合などは納得感が薄く、「採用しても、不満を覚えたらまたすぐ辞めてしまうのでは」と懸念されてしまう可能性があるので注意が必要です。

出戻り転職を実現するためのポイント

出戻り転職を実現するためのポイントをご紹介します。

「辞めた理由」を振り返る

なぜ退職を選んだのか、その理由やきっかけを振り返りましょう。当時抱いた不満点が解消されていなければ、出戻り転職をしても満足のいく働き方ができず、不満を溜め込んでしまう可能性があります。
辞めた理由が現在は解消されているのかどうか面接時などに確認し、解消に至っていない場合は「今の自分なら許容し乗り越えられるのか」をじっくり考えてみることが大切です。
なお、元同僚や上司、先輩など今もつながりがある人からもヒアリングすると、精度の高い情報が得られる可能性があります。

なぜ出戻りたいのか、思いを整理する

なぜ一度辞めた会社にまた戻りたいと思うのか、自身の思いに向き合い整理してみましょう。「他社を経験したことで、前職の強みや良さに気づいた」など、前向きな思いを志望理由として伝えれば、採用担当者も納得できるでしょう。再入社したら実現したいこと、目指したいことなども整理しておくと、熱意や意欲が伝わりやすいと考えられます。

転職先で培った経験・スキルを洗い出す

出戻り転職でも、通常の採用選考と同様、自身の経験やスキルを効果的にアピールすることが重要です。
多くの企業は、自社を退職した後、他社でどのような経験を積み実績を上げたのかを、何より知りたいと考えています。転職先で得た経験・スキルを振り返って棚卸しを行い、数字やエピソードを交えながら、わかりやすくアピールすると良いでしょう。

出戻り転職のための方法を紹介

出戻り転職の方法としては、主に次の3つが挙げられます。

「カムバック制度」「アルムナイ制度」を活用する

「カムバック制度」「アルムナイ制度」など、退職者を採用する制度がある場合は、それを活用しましょう。企業によって制度の名称や内容、応募の手続き方法などは異なりますので、事前に確認すると良いでしょう。

つながりのある元上司や同僚などに相談する

在職時の元上司や先輩、同僚などに相談してみるのも良いでしょう。出戻り転職に関する実績があるか、出戻り転職を歓迎していそうかどうか、社内事情を教えてもらえる可能性があります。これらのツテをたどって、人事担当者に出戻りを希望していることを伝えてもらうのも一つの方法です。

転職エージェントを活用する

出戻り転職を制度化していない企業の場合は、通常の求人に応募するのも方法です。応募書類を見れば退職者であることがわかるため、なぜ出戻り転職したいのか、他社でどのような経験・スキルを積んだのかを、わかりやすく伝えると良いでしょう。
なお、転職エージェントを活用すれば、出戻り転職を実現するためのサポートが得られる場合があります。出戻り転職に対する熱意や意欲、他社で培った経験・スキルがどのように活かせるのかなどを、企業側に効果的に伝えてくれる可能性もあるでしょう。

出戻り転職で注意したいこと

出戻り転職を目指す際には、次の点に注意しておくことが大切です。

以前の仕事のやり方にこだわりすぎない

実際に出戻って再入社してみたら、退職時とは組織体制や仕事の進め方などが想定以上に変わっている可能性もあります。特に、退職してある程度の時間が経っている場合や、出戻り先の企業の規模感や事業方針などが大きく変化している場合は、職場の体制や仕事の進め方なども変わっているかもしれません。
「職場の雰囲気や仕事内容はよくわかっているから」と、面接できちんと確認しないまま入社を決めてしまうと、入社後にギャップを感じ、再び転職を検討することになる可能性もあります。過去に在籍した企業であっても、組織体制や仕事の進め方などを確認し、現時点での職場環境を理解しておきましょう。

雇用条件を確認する(以前と同じとは限らない)

在籍時のポジションや所属部署、待遇などの条件が、出戻り転職後も同じであるとは限りません。入社後の条件は、その時の社内の人材ニーズや、求職者の実績や人物面の評価、面接選考の結果などから総合的に判断されます。
退職前は課長クラスだったのに、出戻り後は係長クラスになるなど、退職時とは異なる役職でオファーされるケースもあるでしょう。
一方で、他社で得た経験・スキルが大きく評価された場合は、退職時よりも条件がアップする可能性もあります。出戻り転職と言っても、一般的な転職活動と同様に、「内定が出るまでは、正式な雇用条件がどうなるのかはわからない」ということを念頭に置いておきましょう。

出戻り転職先と他の転職先候補をフラットに比較検討する

出戻りなかは、職場環境のイメージがある程度つかめているため安心感が強く、複数の選択肢のなかでも優先順位が上がる傾向にあります。しかし、フラットな状態でほかの選択肢と比べてみると、より自身の経験・スキルを活かすことができて、キャリアビジョンにも合った企業があるかもしれません。「前職ならばすぐになじめるし活躍できそうだ」というバイアスをいったん外し、客観的視点で他の候補企業と比較してみると良いでしょう。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

記事作成日:2022年07月13日
記事更新日:2024年08月29日
記事更新日:2025年09月11日 リクルートエージェント編集部

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

リクルートエージェントでは、転職でお悩みの方に適切なアドバイスをお送りしています。また、企業の面接対策や職務経歴書の作成サポートや、スムーズな退職のためのサポートを行っています。お悩みの方はぜひ一度相談に来てみてください。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。