
転職活動を進めるなかで、面接を辞退することがあるかもしれません。予定されていた面接の辞退を企業に申し出るときは、どのように伝えれば良いのでしょうか。面接を辞退する際の基本的なマナー、メールと電話の使い分け、伝え方のポイント、辞退する前に考えたいことなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。また、辞退理由別のメールの書き方例文、電話でのトーク例もご紹介します。
目次
面接を辞退するときの基本的なマナー
面接を辞退すると決めた場合、企業への連絡にあたって心がけたいマナーをお伝えします。
できるだけ早く連絡する
採用活動を行っている企業は、選考状況を見ながら、採用枠が予定通り充足するように求人募集や選考スケジュールを調整していると考えられます。
例えば、採用枠1名に対して選考中の1名に辞退されてしまったら、企業は採用活動を継続して選考対象者を追加しなければなりません。企業の採用活動や他の応募者の転職活動にも影響を及ぼしかねないため、辞退の意思が固まったら、直ちに応募企業に連絡しましょう。
辞退の旨は簡潔にまとめて伝える
辞退を伝える際は、回りくどい表現をしたり、長々と言い訳をしたりするなど、情報量が多くなるほど要点は伝わりづらくなるものです。「お礼」「辞退の意向」「辞退の理由」「お詫び」を簡潔にまとめて伝えると良いでしょう。
面接の無断キャンセルはしない
「面接辞退の連絡をするのが気まずい」「説得されそうなので会話を避けたい」といった理由から、応募企業に連絡せずに面接をキャンセルするのは、ビジネスパーソンとしてのマナーに反します。
今後のビジネス活動のなかで、その企業の関係者と関わる可能性もあります。マイナスの印象を残さないためにも、連絡は必ず入れておきましょう。
面接辞退はメールと電話どちらが良い?
面接辞退の連絡をメールでするか電話でするか、判断のポイントをお伝えします。
基本的にはメールでOK
面接を辞退したい場合の連絡方法は、面接の直前でなければメールでもかまわないでしょう。電話だとタイミングによってはつながらないこともあり、他の人に伝言しても必ず伝わるとはかぎりません。メールの方が確実性は高いといえるでしょう。
しかし、文章だけでは真意が伝わりにくいと感じる場合や、より丁寧に伝えたい場合は、メールを送った後に採用担当者に電話し、お詫び・お礼の言葉を直接伝える方法もあります。
当日の急なキャンセルの場合は電話もする
面接の前日や当日など直前に辞退を決めた場合は、メールを送っても採用担当者の確認が間に合わない可能性があるため、電話で連絡します。
多くの場合、募集要項や企業から送られる面接案内メールなどに、採用担当者の連絡先や緊急連絡先が記載されています。案内されている連絡先に速やかに電話しましょう。
採用担当者が不在だった場合は、氏名・応募職種・面接日時と辞退の旨を伝え、伝言を依頼します。その上でメールも送っておくと良いでしょう。
【メール】 面接辞退の基本構成と書き方のポイント
面接辞退を企業に伝えるメールを作成する際の、基本構成と書き方のポイントをご紹介します。
件名の書き方ポイント
メールの件名は、ぱっと見て用件が分かるようにしましょう。面接辞退の旨だけでなく予定日時も入れることにより、採用担当者はすぐに対応すべきかどうか判断がつきやすくなります。件名の後には氏名も記載しておきましょう。
宛名の書き方ポイント
宛名は、社名・部署名・担当者氏名を記載します。社名は「株式会社」を(株)と省略せず、正式名称で記載しましょう。面接案内メールに採用担当者の氏名が記載されていない場合は、「採用担当者様」と記載します。
本文の書き方ポイント
本文では、「面接の機会を設けてもらったことへのお礼」「辞退する旨」「辞退の理由」「お詫び」を簡潔にまとめます。
氏名・面接予定日・選考段階を伝える
まずは、氏名、面接予定日時、選考段階(2次面接/最終面接など)を伝えます。選考途中の応募者が大勢いる場合、面接予定日や選考段階が欠けていると、採用担当者が混乱する可能性がありますので、最低限の情報として明確に伝えましょう。
面接案内・設定のお礼を伝える
面接の機会が設けられたことへのお礼を伝えると、丁寧な印象となります。
面接辞退と理由を伝える
面接を辞退する旨と、辞退の理由を伝えます。
企業側としては、応募者に辞退された場合、その理由を聞きたくなるものです。「辞退理由をお聞かせください」など、メールのやりとりが続くことになる可能性があるため、辞退を申し出る時点で簡潔に伝えておくことをおすすめします。詳細まで述べる必要はありません。
面接までの感謝と、辞退のお詫びを伝える
これまでの選考・面接に時間と労力を割いてもらったことへのお礼と、辞退することへのお詫びを伝えます。失礼にならないように、誠意を示すことが大切です。
締めの言葉の書き方ポイント
「末筆ながら、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます」と、定型文で締めくくりします。ビジネスメールの締めでよく使用する「今後ともよろしくお願いいたします」といった表現は適切ではありません。
面接辞退の理由別メール例文
面接辞退をメールで連絡する場合の例文を、理由別にご紹介します。
他社から内定を得て、入社を決めた場合
〈件名〉
○月○日○時の面接辞退のご連絡/○○○○(氏名)
〈本文〉
株式会社△△△△
人事部 □□様
○月○日○時より、○次面接のお約束をしております、○○○○です。
このたびは面接の機会をいただき、誠にありがとうございます。
しかしながら、慎重に検討いたしました結果、他社への入社を決意しましたため、
今回の面接を辞退させていただきたく、ご連絡を差し上げました。
ご多用のなか、日程を調整していただいたにもかかわらず誠に申し訳ございません。
これまでの選考に貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。
また、メールでのご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
末筆ながら、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
〈署名〉
○○○○(氏名)
〒000-0000
○○県□□市△町00-00
電話番号:090-0000-0000
メール:aaaa@aaaaaa.ne.jp
条件や社風が合わないと判断した場合
〈件名〉
○月○日○時の面接辞退のご連絡/○○○○(氏名)
〈本文〉
株式会社△△△△
人事部 □□様
○月○日○時より、○次面接のお約束をいただいております、○○○○です。
このたびは面接の機会をいただき、誠にありがとうございます。
しかしながら、今回の面接を辞退させていただきたく、ご連絡を差し上げました。
理由といたしましては、面接を通じて貴社への理解を深めた結果、
目指す方向性が異なっており、貢献することが難しいと感じました。
ご多用のなか、日程を調整していただいたにもかかわらず誠に申し訳ございません。
これまでの選考に貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。
また、メールでのご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
末筆ながら、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
〈署名〉
○○○○(氏名)
〒000-0000
○○県□□市△町00-00
電話番号:090-0000-0000
メール:aaaa@aaaaaa.ne.jp
【電話】面接辞退の基本的な流れと理由別のトーク例
面接日の直前に辞退を決意し、電話で連絡する場合、基本的には次の流れで話します。
●氏名と面接を予定している旨を伝え、担当者につないでもらう
↓
●担当者が出たら氏名を名乗り、面接設定のお礼と面接辞退の旨を伝える
↓
●辞退の理由を簡潔に伝える
↓
●辞退のお詫びとこれまでの選考のお礼を伝え、通話を終える
理由別のトーク例は、以下を参考にしてみてください。
現職に残るという判断をした場合
辞退の理由を聞かれたら、「今後のキャリアプランを慎重に検討した結果、現職にとどまる決断をいたしました」などと伝えましょう。会話のやりとり例は以下を参考にしましょう。
自分「大変お世話になっております。私、○月○日○時より、○次面接のお約束をいただいております、○○○○と申します。人事部の□□様はご在席でしょうか?」
人事「はい、私が□□です」
自分「先日は誠にありがとうございました。急なご連絡で大変恐縮ですが、お約束した面接を辞退させていただきたく、お電話を差し上げました」
人事「そうですか。差し支えなければ、辞退の理由を教えてもらえますか」
自分「今後のキャリアプランを慎重に検討した結果、現職にとどまる決断をいたしました。面接日程のご調整をいただいたにもかかわらず、大変申し訳ございません」
人事「そうですか。残念ですが仕方がありませんね」
自分「丁寧にご対応いただき、心より感謝しております。ご連絡が直前となってしまい申し訳ございませんでした。それでは失礼いたします」
転職の方向性を見直した場合
辞退の理由を聞かれたら、「転職の方向性を見直した結果、他社での選考を進めていこうと考えております」「転職の方向性を見直した結果、他社への入社を決意いたしました」などと伝えましょう。会話のやりとり例は以下を参考にしてください。
自分「大変お世話になっております。私、○月○日○時より、○次面接のお約束をいただいております、○○○○と申します。人事部の□□様はご在席でしょうか?」
人事「はい、私が□□です」
自分「先日は誠にありがとうございました。急なご連絡で大変恐縮ですが、お約束した面接を辞退させていただきたく、お電話をいたしました」
人事「そうですか。差し支えなければ、辞退の理由を教えてもらえますか」
自分「転職の方向性を見直した結果、他社での選考を進めていこうと考えております。面接日程のご調整をいただいたにもかかわらず、大変申し訳ございません」
人事「そうですか。残念ですが仕方がありませんね」
自分「丁寧にご対応いただき、心より感謝しております。ご連絡が直前となってしまい申し訳ございませんでした。それでは失礼いたします」
正直に伝えづらい理由がある場合はどうする?
面接辞退の理由を正直に伝えづらい場合は、「諸般の事情」「一身上の都合」といった形式的な表現を使う方法があります。理由を明記しない分、お詫びは丁寧に伝えることを心がけましょう。
<伝え方例>
○月○日○時より面接のお約束をいただいておりましたが、諸般の事情によりこのたびの選考を辞退させていただきたく、ご連絡を差し上げました。ご多用のなか、日程を調整していただいたにもかかわらず誠に申し訳ございません。
面接を辞退する際に考えておきたいこと
面接を辞退するということは、転職先の選択肢を減らすことになります。安易に辞退して「やはり選考を進めておけば良かった」と後悔することにないよう、以下の観点を考えてみることをおすすめします。
判断するための情報に不足はないか
転職先企業を選ぶにあたっては、事業内容・仕事内容・労働条件・組織風土・働く環境・一緒に働く人・キャリアパスなど、さまざまな角度から検討してこそ納得感が高い決断につながるでしょう。
しかし、判断するための情報が不足していると「働くイメージが湧かない」「志望理由を思いつかない」という理由で、気分に任せて辞退してしまうことがあるかもしれません。そういった状況であれば、次の観点をチェックしてみましょう。
- 自分の転職の軸は何なのか(どのような選択基準を重視するのか)
- どういった情報があれば、その企業のことをしっかり理解できるのか
- 「印象」だけでなく、他企業としっかり比較検討するのに必要な情報が揃っているか
新たな情報を入手・確認することで、選考継続の意欲が湧くこともあるでしょう。実際に面接で話した結果、自分がマッチすることに気づき、志望度が高まるかもしれません。
辞退理由を整理できているか
「自分は何を理由に辞退するのか?」を一段掘り下げて考え、整理してみてください。今回の転職の目的や大切にしたい軸、今後のキャリアについての考えがより明確になるでしょう。
「何となく印象が良よくない」とか「合わないような感じがする」など、理由が曖昧なまま辞退するのはもったいないことと考えられまです。何となく感じている要素は今回の転職において本当に重要なのか、印象や雰囲気が合わないと感じるのは具体的にどういうことなのかを考えてみましょう。
そこから「自分が大切にしたいのは○○○」など言語化をしておくと、その後の転職活動もスムーズに進みやすくなるかもしれません。
他に転職したい企業はあるか
面接辞退は、転職先の選択肢を減らし、転職活動の幅を狭めることにつながる可能性もあります。他社の方が良さそうだと思っても、採用を見送られたり、あるいは面接を受けてみると期待と違っていたりする可能性もあります。最終的に選択肢がなくなったとき、後悔するかもしれません。
これからの転職活動を見据えて、他に転職したい企業が複数あるのか(選択肢があるのか)、ここで辞退して後悔したり心理的に自分を追い込んだりすることにならないかを検討してみましょう。
転職エージェント経由の応募は、転職エージェントに連絡を
転職エージェント経由で応募している場合、面接を辞退すると決めたら、まずは転職エージェントに連絡を入れます。企業宛の連絡と同様、面接日まで期間があるならメールで、面接の直前であれば転職エージェントだけでなく、応募先企業の緊急連絡先にも電話して伝えましょう。
また、辞退を決意する前にキャリアアドバイザーと相談してみることで、新たな情報を入手できたり、辞退することが本当に得策かどうかのアドバイスを得られたりするかもしれません。辞退を検討する段階でも、転職エージェントのサポートを活用してみましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年05月25日
記事更新日:2023年10月03日
記事更新日:2024年07月05日
記事更新日:2025年10月21日 リクルートエージェント編集部
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。