【退職理由の伝え方】円満退職のポイント、みんなの転職理由ランキングを公開｜面接での答え方つき

転職を決意し、現職の企業に退職を申し出る際には、多くの場合「退職理由」を聞かれます。また、転職活動においても、面接の場で「退職理由」を聞かれることが多いでしょう。

所属企業から引き止められにくい退職理由の伝え方、面接で納得を得やすい退職理由の伝え方について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。言いにくい理由を前向きな表現に言い換える例文も紹介しますので、参考にしてください。

仕事を辞める理由は？転職理由ランキング

株式会社リクルート（現・株式会社インディードリクルートパートナーズ）が2024年、転職経験者にアンケート調査を実施。転職理由を聞いてみたところ、転職理由で1位となったのは「労働時間・環境が不満だった（26.7%）」という回答でした。第2位は「給与が低かった（26.1%）」、第3位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった（24.0%）」でした。

出典：年代別転職理由の本音

円満退職を実現するためのポイント

現職の企業を円満に退職するためには、次のポイントを意識してみてください。

就業規則を確認し早めに伝える

退職の意思を会社に伝える時期は、基本的には会社の「就業規則」に従います。仕事の引き継ぎや有給休暇の消化、退職手続きなどに時間がかかりそうな場合は、退職希望日の2～3カ月前には退職意思を伝えることが望ましいでしょう。特に転職先から内定が出ており、入社日まで1カ月を切っている場合は、すぐに退職の意思を伝えることをお勧めします。

まず直属の上司に相談する

一般的に、退職意思を最初に告げるのは「直属の上司」です。その上の上司や人事担当者に先に話すケースもありますが、特別な理由がない限りは、まず直属の上司に伝えるのが良いでしょう。

また、上司に退職の意思を伝える前に、職場で転職活動をしていることを伝えるのは避けた方が無難です。

後任への引き継ぎをしっかり行う

退職意思を伝えた後は、後任者への引き継ぎを行います。顧客や取引先への挨拶が必要な場合は、できるだけ後任者と一緒に行うと良いでしょう。

後任者がなかなか決まらない場合は、引き継ぎ準備を先に進めておきましょう。仕事内容をリストアップしてファイルなどにまとめておき、後任が決まったらファイルをもとに説明するとスムーズに運びやすくなります。

取引先や後任者に迷惑がかからないように、引き継ぎをしっかり行った上で有給休暇も消化できるよう、早めにスケジュールを組むことが大切です。

退職希望日を明確にする

退職希望日は、明確に伝えるようにしましょう。まず、時間を取ってもらったお礼とともに、退職の旨と「今までお世話になった」という感謝の気持ちも伝えます。このときに重要なのは、「○月○日に退職させていただきたいと思います」と期限をつけて、退職の意思が固まっていることが分かるように伝えることです。「退職を考えている」「検討している」などあいまいな伝え方をすると、「まだ退職の決心がついていない」と捉えられて引き止めの原因となってしまう可能性があるので注意しましょう。

嘘をつかない

仕事を辞める理由は人によりさまざまですが、嘘をつくのは好ましくありません。最初に嘘の理由を伝えてしまうと、途中で話の整合性が取れなくなる可能性があります。退職理由は「前向きな理由」に言い換えた方がポジティブな印象を与えますが、矛盾が生じると説得力を失ってしまうため、本当の理由とは関連のない嘘の理由を伝えるのは避けましょう。

引き止められにくい退職理由の伝え方と例文

退職を申し出たときに引き止められると、退職の手続きが停滞してしまう可能性があります。なるべく引き止められないようにするためには、上司の感情を刺激しすぎず、納得してもらえる退職理由を伝えることが大切です。伝え方のポイントと例文を紹介しますので、参考にしてみてください。

 前向きに言い換えた退職理由の例文

仕事や会社に対する不満から退職を決意した場合、退職理由をストレートにぶつけてしまうと、上司の心証が悪くなる可能性があります。お互い感情的になり、冷静な話し合いができなくなるかもしれません。

また、「不満な点を解消するので、思いとどまってほしい」と引き止められるケースもあり、希望するスケジュールでの転職が難しくなるケースも考えられます。本当の退職理由はネガティブだったとしても、前向きに言い換えて伝えることで、受け入れてもらいやすくなるでしょう。

＜例文＞
残業の多さなど、労働環境に不満がある場合

人間関係や組織風土に不満がある場合

会社の将来性に不安を抱いている場合

現職の企業では実現できない退職理由の例文

「やりたい仕事がこの会社ではできない」と伝えると、言い方によっては「否定」「批判」の印象を与えてしまうかもしれません。否定するのではなく、「新しいことに挑戦したい」という意欲や、「自分が望む方向性との違い」を示すと良いでしょう。

＜例文＞

個人の事情による退職理由の例文

育児・介護・家族の転勤といった家庭の事情、あるいは心身の不調など、個人の事情で退職を申し出る場合、自分が話すことに抵抗感がない範囲で、率直に伝えましょう。

プライベートな事情をそのまま伝えたくない場合は「家庭の事情」とだけ伝え、くわしく話さなくても問題ないでしょう。

＜例文＞

【退職の申し出Q＆A】このようなケースはどうしたら良い？

退職を申し出るとき、状況によっては伝え方に迷うかもしれません。よくある3つのケースについて、対応策をご紹介します。

短期間で退職する場合

転職先に入社したものの、「面接で聞いていた話と違う」「募集要項と違う」と、入社後すぐに退職を検討することもあるかもしれません。この場合、「聞いていた話と違うので退職したい」のように一方的に伝えるのは避けましょう。いきなり退職を切り出すのではなく、事前に提示された条件と異なっていることを具体的に伝え、改善の可能性があるかどうかを探りましょう。

改善の余地がない場合も、退職を申し出る際に会社側に一方的な非があるような伝え方をすると、お互いの関係が悪くなりかねません。会社の批判をするのではなく「自分の確認不足があったかもしれない」など客観的な視点も合わせて伝えると良いでしょう。

また、直属の上司や教育担当者など、直接関わった人には感謝の気持ちを伝え、退職理由をポジティブに表現することで、引き止めを避けスムーズに退職できるかもしれません。

急遽退職しなければならない場合

「高齢の親の急病で、看護が必要になった」「家庭の事情で急遽引っ越すことになった」「突然の怪我や病気で仕事の継続が難しい」など、自分の意思とは関係なく急遽退職しなければならない場合もあるでしょう。その場合は、可能な範囲で事実をそのまま話し、緊急であることを伝えましょう。

法律上、原則2週間前までに退職の意思表示を伝える必要があります。ただし上記のようなやむを得ないと認められる事由に該当する際は、会社の合意が得られれば即日退職が認められるため、会社側に相談してみましょう。

上司が忙しくて時間が取れない場合

退職の意思を伝えたくても直属の上司が出張などで会えなかったり、シフト制で時間が合わなかったりと、先延ばしになってしまうケースもあるかもしれません。

その場合は「相談したいことがあるのですが、お時間いただけますでしょうか」と事前にメールを入れてアポイントを取りましょう。部下の相談を聞くことも上司の仕事の一つです。気を遣いすぎる必要はありませんが、それでも連絡がない場合は人事に相談しましょう。

企業が面接で退職理由を聞く意図

ここからは、転職活動の面接における退職理由の伝え方についてお伝えします。まずは、企業が面接で退職理由を聞く意図を理解しておきましょう。それにより、適切な回答を準備しやすくなるでしょう。

企業が面接で退職理由を聞く目的は、企業によって異なりますが、大きく分けると「定着性」「仕事の価値観」を確認しようとしているケースが多いようです。

定着性を判断するため

自社で長く活躍してもらえる人を採用したいと考える企業もあります。採用担当者は、現職（前職）を辞める理由を通じて、「入社後に同じ理由で辞めてしまわないか」を確認している可能性があります。

仕事の価値観を確認するため

退職理由を通じて、応募者が仕事で大切にしていることが分かることもあります。仕事の価値観を確認することで、採用担当者は自社のカルチャーにマッチしているかを判断していると考えられます。仕事の価値観がマッチしていれば、社風に馴染んでイキイキと働いてもらえる可能性が高くなるからです。

面接で退職理由を聞かれた際の答え方と例文

現職（前職）に不満があった場合、それをそのまま伝えるとネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。不満の裏側にあるポジティブな気持ちに目を向け、退職理由を言い換えてみましょう。

面接で退職理由を聞かれた場合の伝え方のポイント、例文を紹介しますので、参考にしてみてください。

人間関係に不満があった場合

「上司の指導方法に不満がある」「同僚とうまくコミュニケーションがとれない」など、人間関係に不満がある場合は、その裏に「人間関係の良い職場でイキイキ働きたい」「チームワークを重視して働きたい」などの思いが潜んでいることもあります。

＜言い換え例＞

• チームがバラバラで一体感がない → 皆と連携を取りながらチームワーク良く仕事を進めたい、お互いにサポートし合える環境で気持ちよく働きたい。
• 上司と合わない → 自分が求める働き方がしたい、現場の目標や戦略に共感して働きたい。

仕事が合わないなど不満があった場合

「仕事に面白味を感じられない」「扱う商品・サービスが好きになれない」「ノルマがきつい」など、仕事内容に不満がある場合は、その裏にもっとやりがいを持てる仕事に就きたい、顧客1社1社と向き合い喜んでもらいたいなどの前向きな理由が隠れている場合もあります。

＜言い換え例＞

• 仕事が面白くない → やりがいのある仕事にとことん打ち込みたい、仕事で介在価値を感じたい。
• 商品・サービスが好きになれない → 自信をもって自社商品・サービスを売りたい、ありがとうと感謝されたい。
• ノルマがきつい　→　顧客とじっくり向き合える営業がしたい、顧客と強固な信頼関係を築ける仕事がしたい。

病気など体調不良の場合

体調不良と面接で伝えたい場合は、無理のない範囲で伝えましょう。業務遂行に影響がある場合は、どのような制限があるのかを具体的に伝える必要があります。ただし、「選考に影響するかもしれない…」と不安な表情で伝えてしまうと、採用担当者も不安になってしまう可能性があるので、働く意欲を伝えるために前向きな姿勢を意識することが重要です。

介護など家庭の事情がある場合

「離れて住む家族が急に倒れた」「家族が退院し介護をすることになった」「家族が交通事故で介護が必要になった」など家庭の事情を伝えたい場合も、体調不良同様に基本的に言い換える必要はなく、伝えられる範囲で伝えましょう。

給与や待遇に不満があった場合

「給与が安い」「ボーナスが少ない」など報酬に対する不満は、「自身の成果を適切に評価されたい」という前向きな思いの表れかもしれません。会社の評価制度と自身の働き方や思いが合わなかったというケースもあるでしょう。

＜言い換え例＞

• 給与が安い → 実績を正当に評価してほしい、成長を実感しながら働きたい、自分に合った評価制度の会社でバリバリ働きたい。

労働時間・環境に不満があった場合

「残業が多くてきつい」「シフトが不規則で身体的に辛い」など、労働環境に不満がある場合は、どのような環境であれば気持ちよく働けると思うか考えてみるという方法があります。自分が求めているものが見えてくるでしょう。

＜言い換え例＞

• 残業が多い → オンとオフのメリハリをもって働きたい、効率的に仕事をしてさらに成果を挙げたい。
• シフトが不規則 → ワーク・ライフ・バランスを重視してイキイキ働きたい。
• 人手不足で労働量が多い → 自分が担当する業務に集中してパフォーマンスを出したい。

会社に将来性が感じられない場合

「業績が不振で将来が不安」「昔ながらの企業体質で新しいことを取り入れようとしない」などの理由で退職を選んだ場合は、安定した環境で腰を据えて働きたいという思いや、トップの理念に共感して働きたいという思いが隠れている可能性があります。

＜言い換え例＞

• 業績不振で将来が不安 → 腰を据えて長く働きたい、安定的な環境でとことん仕事に打ち込みたい。
• 社長についていけない → 自分の目指すキャリアの方向性に合致するところで働きたい。
• 会社の戦略や方向性に納得いかない → 企業理念に共感して働きたい、自分の目標に合った働き方がしたい。

退職理由に迷ったら転職エージェントに相談を

転職活動の結果、志望企業から内定を獲得できても、退職交渉がうまく進まないと入社日までに退職が間に合わなくなる可能性があります。転職エージェントを活用すると、退職の段取りや退職交渉についてのアドバイスを受けられることもあるため、担当キャリアアドバイザーに相談してみるのも一案です。

面接での「退職理由」の伝え方に迷う場合など、面接対策に不安を抱いたときにも、転職エージェントのサポートを活用することを検討してみましょう。