
転職活動を始める際「転職エージェントを使うかどうか」と迷うこともあるのではないでしょうか。転職エージェントを利用することで得られるメリットは数多くありますが、しかし、うまく活用するためには、デメリットを理解しておくことも大切です。
本記事では、転職エージェントを使うデメリットを解説するとともに、転職エージェントを利用するメリットやうまく活用するポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェントを使う5つのデメリット
転職エージェントの仕組みや特徴などから、人によっては次のようなデメリットを感じることがあるようです。
転職エージェントを活用するメリットについても後述しているので、デメリットとメリット両方の側面を理解したうえで、転職エージェントを利用するかどうかを判断すると良いでしょう。
デメリット1:希望する求人を取り扱っていない場合がある
転職エージェントは、各社それぞれ特徴があります。扱っている求人にも違いがあるため、利用したいと考えている転職エージェントが、自身の希望条件にマッチする求人を取り扱っていない可能性もあります。
デメリット2:企業の採用担当者と直接やりとりしないのが一般的
転職エージェントを利用する場合、基本的には転職エージェントの担当者が求職者と求人企業の間に入り、日程調整や条件交渉をサポートします。このことを「便利だ、助かる」と感じる求職者もいれば、「企業と直接やりとりしたいのにできない、自分のペースで転職活動を進めにくい」と感じる求職者もいるでしょう。後者の場合は、転職エージェントが間に立ち転職を支援する仕組みに対して煩雑さを感じるかもしれません。
デメリット3:紹介される求人は、全ての希望条件を満たさない時もある
転職エージェント経由で紹介される求人が、自分が希望する全ての条件を満たさない場合もありえます。例えば給与条件は満たしているものの、事業内容に興味が湧かないケースや、反対に、経験やスキルは活かせるものの給与が希望額に達していない、というケースもあるかもしれません。
転職エージェントは多くの求人を取り扱いますが、求められるスキルや経験は案件によって異なり、企業から提示されている条件もさまざまです。したがって、場合によっては自分の希望に合致する求人がそれほど多くはないことも考えられます。
特に相場よりも高い条件や好待遇を求める場合は、希望条件の見直しや緩和の検討が必要になることもあるでしょう。
デメリット4:サポート期間が決まっている転職エージェントもある
転職エージェントによっては、サービスの提供期間を設定しているケースもあります。例えば数年単位など長期でじっくりと転職活動を行いたい場合、サービス提供期間を超えてしまうと積極的なサポートを受けられない可能性があります。とはいえ転職活動を継続していれば希望によってはサービス提供期間が延長されるケースもあるので、転職エージェントに確認してみましょう。
デメリット5:転職エージェントを増やしすぎると手間も増える
複数の転職エージェントを同時に利用することは、多様なアドバイスを受けられたり幅広い求人と出会えたりするメリットがあります。ただ一方で、転職エージェントごとにやりとりが発生するため、転職活動が進めば進むほど、応募先企業や選考の進捗状況の把握やスケジュール管理が煩雑になる可能性があります。面接日程なども、転職エージェントごとに調整する必要があるため、利用する転職エージェントが多すぎる場合、負担を感じることがあるかもしれません。
なぜ転職エージェントでこうしたデメリットが起きるのか?
前述のようなデメリットが生じてしまう原因には、転職エージェントならではの特徴があります。
転職エージェントごとに得意分野やサポート体制が異なるため
転職エージェントは大きくわけて「大手・総合型」「業界・職種特化型」「属性特化型」の3つの種類があります。
「大手・総合型」は、あらゆる業界・職種の求人を網羅的に扱っている転職エージェントです。さまざまな業界・職種の転職支援を行っており、保有している求人数が多いという特徴があります。
「業界・職種特化型」は、特定の領域に特化した求人を扱っている転職エージェントです。「業界」に特化したところでは、例えば「製造業」「医療」「介護」「IT」などを強みとする転職エージェントがあります。
「職種」特化型では、例えば「エンジニア」「管理部門(経理、人事、法務など)」「クリエイター」など、求人ニーズが高い専門職を得意とする転職エージェントもあります。
「属性特化型」は、特定の求職者層や企業に特化している転職エージェントです。例えば「エリア」や「外資系」「スタートアップ」「第二新卒」「エグゼクティブ層」などが挙げられます。
このように、転職エージェントごとに得意分野や取り扱い求人数に違いがあるため、自身の希望にあまり合わない転職エージェントを利用すると、思うような求人が紹介されずギャップを感じてしまう可能性があります。サポート期間にも違いがあるため、利用する転職エージェントのサポート期間が自身の希望とずれていて、やりにくさを感じることもあるようです。
なお、転職エージェントの規模やポリシーなどによっては、契約している企業が少なかったり、求人を厳選して取り扱っていたりする場合もあるので、「紹介される求人数が少ない」と感じてしまうケースもあるようです。
人が介在するサービスだからこそ「相性」があるため
転職エージェントでは基本的に、キャリアアドバイザー(コンサルタント)が求職者と求人企業の間に入り、両者の橋渡しを行います。そのため、担当のキャリアアドバイザーとの相性は非常に重要であり、相性による満足度の違いが生じてしまう可能性はあります。
相性が合わないと、求職者がキャリアアドバイザーに自身の希望を言語化して伝えられなかったり、キャリアアドバイザーが求職者の希望をうまく引き出せなかったりする可能性があります。その結果、「思うように転職活動が進められない」「希望にマッチする求人を紹介されない」「サポートやアドバイスがずれている」と感じ、不満を覚えてしまうケースがあるようです。
転職エージェントにはデメリットだけじゃない!利用する6つのメリット
ここまでデメリットについて解説してきましたが、転職エージェントを活用するメリットも多数あります。代表的なメリットは、次の6つです。
メリット1:キャリアアドバイザーからアドバイスをもらえる
転職市場の動きをリアルタイムで掴んでいるキャリアアドバイザーからは、現在の経験・スキルをどのように活かせば良いかアドバイスを受けられます。キャリアアドバイザーとの対話を通じて、自分では認識していなかった「強み」に気付けることもあるでしょう。
メリット2:非公開求人を紹介してもらえる
転職エージェントは、転職サイトや企業サイトの採用情報ページなどで公開されていない「非公開求人」を多数取り扱っています。
具体的には、専門性の高い人材を求めるピンポイント採用、競合他社に戦略を知られたくない採用(管理職や上位の役職者、新規事業メンバーなど)、応募が殺到してしまう可能性がある人気職種の採用などが挙げられます。企業側も、「良い人がいれば採用を考えたい」といった長期視点の採用については求人を公開せず、転職エージェントのみに依頼するケースも多々あります。
このような求人に出会えるには、転職エージェントならではのメリットと言えるでしょう。
メリット3:自分の経験・スキルに合った求人を紹介してもらえる
キャリアアドバイザーは求職者の経験やスキル、今後目指すキャリア、年収、社風などの希望にマッチする求人を探して紹介します。そのため、独自で自分に合う求人を探すよりも、効率的に転職活動を進められるでしょう。
ときには「自分の経験・スキルがこんな業界でも活かせるのか」と、思いがけない選択肢を発見できることもあるでしょう。
メリット4:履歴書・職務経歴書作成のアドバイスがもらえる
転職エージェントの中には、履歴書・職務経歴書作成のサポートを行っているところもあります。「この経験は高く評価されるのでより具体的に記載してアピールしたほうが良い」「このポジションを希望するなら、この経験を厚めに記載したほうが良い」などのアドバイスによって、書類選考通過につながる可能性があるでしょう。
メリット5:面接対策のサポートを受けられる
企業によって面接で重視するポイントは異なるものです。面接対策にあたり、キャリアアドバイザーから、その企業が面接で聞く可能性が高い質問や、注目しているポイント、面接担当者の人物タイプなどのアドバイスが得られることもあります。
メリット6:応募や面接の日程調整をサポートしてくれる
転職エージェントに、応募先企業との面接日程の調整を依頼することができます。企業が指定する期間・時間内に面接を受けられない場合、別日で実施できるよう調整してくれることもあります。また、複数企業に応募する場合、各社の選考スケジュールを踏まえて「第1志望の結論より先に第2志望以下の結論が出ないようにする」といった調整を図ってもらえる場合もあり、転職活動がより効率的に進められるでしょう。
デメリットを解消し転職エージェントを活用する4つのポイント
前述のようなデメリットを避け、転職エージェントをうまく活用するためには、次の4つのポイントを意識すると良いでしょう。
ポイント1:希望条件に優先順位付けをする
希望条件に優先順位を付けておきましょう。そうすることで、転職エージェントの担当者に対しても希望を明確に伝えられるようになり、希望に沿った案件の紹介を受けやすくなるでしょう。希望条件の優先順位を付け、譲れない条件を明確に伝えておくことも大切です。
ポイント2:求めるサポートを事前に伝えておく
転職エージェントに対して求めるサポートを事前に伝えておくことも、転職エージェントをうまく活用する方法の1つです。例えば「キャリアプランを一緒に考えてほしい」「この条件に合致する求人だけ紹介してほしい」など、自分が求めるサポートスタイルを伝えておくといいでしょう。
転職エージェントが合わないと感じる原因は「相性」だけではなく、「相談者が求めているサービス」と「キャリアアドバイザーが提供しようとしているサービス」にズレが生じているケースも少なくありません。転職エージェントへの希望を事前に伝えておくと、ギャップやズレを防ぎ、必要なサポートを必要な時に受けられるでしょう。
ポイント3:事前にサポート期間を相談しておく
転職エージェントによっては、サポート期間を定めている場合もあります。しかし中には、定められた期間を過ぎても相談に応じてくれたり、マッチする求人が出てくれば紹介してくれたりする転職エージェントもあります。
「良い条件の案件があれば転職を考える」など、長期を前提とした転職活動を希望している場合は、事前に相談しておくと、サポート期間満了に対して焦ることなく自分のペースで転職活動に取り組めるでしょう。
ポイント4:利用する転職エージェントを絞る
利用する転職エージェントを絞るのも1つの方法です。
複数の転職エージェントを同時に利用すると、各転職エージェントとの連絡が煩雑になり手間も増えてしまいかねません。ただ、各社のさまざまなサービスを受けるうちに、自分に合う転職エージェントが見えてくるでしょう。
相性の良い転職エージェントに絞って利用することで、やりとりの煩雑さを最小限に抑えつつ、転職エージェントの利点を最大限活かせるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年04月28日
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記事更新日:2025年07月02日 リクルートエージェント編集部
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