
営業職にやりがいや魅力を感じる人がいる一方で、「自分には合わないかもしれない」「営業はもう続けたくない」と悩み、他職種への転職を検討する人もいるでしょう。今回は、営業職の人が営業職以外に転職するときのポイントや転職活動時の注意点、営業経験を活かせる職種の具体例について、組織人事コンサルティングSeguros代表の粟野友樹氏が解説します。
目次
営業職の人が営業職以外に転職したくなる原因
営業職に就いている人が、営業職以外の職種に転職したくなる原因を分析します。
外的要因:成果重視の文化と密度の濃い人間関係
厳しいノルマや上司から過度に期待されることによる重圧や、自分を信頼してくれる相手に過度に商材を勧めることへの葛藤、常に明るい振る舞いを求められることなどによる疲れが、精神的な負担につながっている可能性があります。加えて、残業の多さや休みの取りにくさなど、様々な場面で消耗を感じることで、他職種への転職を考える人もいるようです。
内的要因:ありたい自分の姿と仕事が合わないという違和感
「人と関わるのは好きなのに、売ることが目的になると苦しい」と違和感を覚えたり、テレアポや飛び込み営業への冷たい対応によって自分自身が否定されたように傷ついてしまったりすることもあるでしょう。理想とする自分の姿と仕事で自分がしていることとのギャップに悩み、他職種への転職を考えるようになるケースもあるようです。
将来不安:長く営業職を続けるイメージが持ちづらい
営業に長く携わる中で、「この仕事を長く続けられるだろうか」という将来への不安を抱く人もいます。精神的・体力的な負荷が大きく、年齢を重ねても続けられるイメージが持ちづらいことや、「営業しかできない」「専門性が身に付かない」というキャリアの将来性に不安を感じることが原因で、営業以外の職種への転職を検討するケースが見受けられます。
営業職以外へ転職をする場合の職種の選択肢
営業職で培った経験を活かしやすい職種の一例を紹介します。どのスキルや経験が応用できるかを、自身の強みと重ね合わせながら参考にしてください。
営業企画
営業企画では、市場や顧客の分析をもとに営業戦略を立て、実行する力が求められます。とくに「課題解決力」「提案力」「説得力」といった論理的・戦略的思考が重要です。
営業で「売るための方法」を実践してきた経験は、企画立案に役立ちます。加えて、商材や業界の知識がある場合は、より精度の高い戦略づくりに活かせるでしょう。
マーケティング
マーケティングは市場や顧客の動向を分析し、売れる仕組みを設計する仕事です。「デジタル」「SNS」などの分野も含めた分析力や柔軟な対応力が求められます。
営業で培った「売るための工夫」や市場感覚は、マーケティングにおいても戦略立案に活かせます。商材や業界が共通する場合には、蓄積された知識もそのまま強みになるでしょう。
カスタマーサクセス
SaaS型企業でニーズの高いカスタマーサクセスは、顧客満足度と継続利用を促進する役割です。主な業務は製品活用支援、アップセル提案、要望の社内共有などであり、顧客との「信頼構築力」「社内連携力」「課題対応力」が求められます。
営業で培った顧客対応や提案・交渉力は、導入後のフォローや改善提案で活かされるでしょう。商材や業界に共通点がある場合、知識や理解が業務に直結することも期待できます。
コンサルタント
顧客の課題に対して提案や助言を行うには、論理的思考力とともに、分析力・提案力・コミュニケーション力が必要になるでしょう。ヒアリング力や交渉力も、ニーズを正確に把握し効果的な提案へ導くうえで重要です。
営業で培った的確な顧客理解力や提案力、課題対応力もコンサルタント業務に活かせるでしょう。業界知識やソリューション型営業の経験があれば、柔軟で的確な提案が可能となり、課題解決に直結する力となりそうです。
広報
企業や自社製品・サービスの魅力を社内外へ伝える広報では、情報発信のためのコミュニケーション力や、信頼性・誠実さなどが重視されます。経営層や事業部門との連携も必要でしょう。
営業で鍛えた商品理解力や提案力、顧客との信頼構築力は広報にも通じる部分があります。誠実な対応力や対話スキルが、企業の魅力を効果的に発信する際に役立つでしょう。
人事
人事の業務は採用・労務・教育・制度設計など幅広く、応募者との円滑な対話スキルや社内外の信頼構築力が重要です。自社の魅力を伝えるプレゼン力も採用活動で高く評価されると考えられます。
営業で培った提案力や信頼構築力は、企業の信頼をアピールすることに役立てられるでしょう。。商品理解や対話スキルも強みとなることが期待できます。
営業経験を活かして営業以外に転職するコツ
営業以外の職種への転向を希望する場合は、以下の点に留意して転職活動を進めると良いでしょう。
営業経験が活かせる仕事を選ぶ
一口に営業と言っても、扱う商材の特徴や顧客層、営業手法などにより、培われるスキルはさまざまです。たとえば「相手の本音を引き出す傾聴力」「課題を整理する分析力」「課題に応じた企画提案力」「他部署との連携調整力」など、自分の得意分野を活かせる職種を意識して選定すると良いでしょう。
営業をやりたくない理由を自己分析する
「なぜ営業以外に転職したいのか」「どんな課題を解消したいのか」といった点を自己分析によって明確にしておくことも重要です。「やりたくない」の背景には「やってみたい」があり、「避けたい状況」の裏には「理想とする働き方」が隠れているものです。不満の解消だけにとどまらず、自分の希望に意識を向けることで、納得感のある転職につながることが期待できます。
同じ業界で職種を変える
たとえ営業職を離れても、これまで培った業界知識や経験は十分に強みとなります。まずは同業界で営業以外の職種にどのような選択肢があるかを調べてみましょう。応募時には業界経験を積極的にアピールすることで、評価される可能性があります。
資格や専門スキル・知識を身に付ける
未経験職種への転職を目指す場合は、資格取得や専門スキルの習得が有効でしょう。即戦力が求められる傾向がある中途採用においては実務経験が重視されがちですが、アシスタントなどからスタートするポジションの場合、基本的な知識を備えていることでも採用の後押しとなる場合があります。
営業以外の仕事に転職するときの注意点
営業以外の職種であっても、仕事には何らかの厳しさやストレスが伴うものです。営業を辞めたい一心で転職を急ぐと、「想像と違っていた」と後悔する可能性もあるため、以下の点を踏まえて慎重に行動しましょう。
年収が下がる可能性がある
企業によっては、未経験業界への転職によって年収が減るケースがあります。営業職から他職種への転職も例外ではなく、収入面の変化を想定しておく必要があります。
どの職種でも成果は求められる
営業特有のノルマからは解放されるかもしれませんが、他の職種でも成果に対する評価が重視される点は変わりません。たとえば、エンジニアは納期や品質、コスト面での達成目標があり、事務職でも高い正確性が求められます。また、営業と違って、売上という明確な数字が出にくい分、努力が可視化されづらく、評価や昇給に反映されにくいことに違和感を覚える可能性も想定しておく必要があるでしょう。
どの職種でもコミュニケーション力は求められる
「顧客対応に疲れてしまった」といった理由で営業職から離れたい方もいますが、他職種でも社内での調整や連携が必要になる場面は多々あります。むしろ社内でのやり取りには別の難しさがあり、調整や合意形成に時間を割くこともあるかもしれません。相手が顧客か同僚かではなく、コミュニケーションの重要性はあらゆる職種で共通していると捉えておくことが大切です。
営業職以外への転職が実現した事例
営業職の人が営業職以外の職種に転職した実例を紹介します。
[転職実現例]
機械メーカーの国内営業 → 同業種の大手グループメーカー(BtoB)の事業企画
年齢:30代半ば
転職理由:顧客ニーズを把握して対応する立場から一歩進み、製品戦略や中長期的な事業計画の立案に関与できる役割へとキャリアを広げたいと考えたため。
企業から評価された点:現場で培った業界・市場への深い理解力や、競合動向の分析に基づいた営業活動の経験に加え、企業の収益構造を踏まえた提案型営業を実現してきた点。
転職エージェントへの相談もおすすめ
転職活動を始める際は、転職市場の相場や採用トレンドを把握し、自分の希望条件に対する優先順位や方向性を明確にしておくことで、実現の確率を高められます。しかし、独力で進めようとすると、最新の市場動向がつかみにくかったり、視野が限定されてしまったりして、本来あるはずの選択肢を見落としてしまうこともあるでしょう。
そんなときは、転職エージェントに相談するのも一つの方法です。転職エージェントのキャリアアドバイザーは、豊富な転職支援の経験に基づいた具体的で実践的なノウハウを熟知しています。相談を通じて、自身の希望に沿った求人を提案してもらえることに加えて、キャリアの方向性を明確化したり、応募書類のブラッシュアップや面接対策のアドバイスを受けたりすることも期待できるでしょう。「どう動けばいいか分からない」「転職が本当に自分にとって良い選択か不安」といった場合は、ぜひ転職エージェントへ相談してみることをおすすめします。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年05月22日
記事更新日:2024年10月08日
記事更新日:2025年09月30日 リクルートエージェント編集部
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