
転職活動では、面接で失敗談や失敗体験を聞かれることがあります。このとき、「正直に話したらマイナス印象を与えるのではないか」と考え、どのように回答すれば良いのか悩む人もいるでしょう。企業が失敗談を聞く意図、答え方のポイントと注意点について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。ケース別の回答例文もご紹介しますので、参考にしてみましょう。
目次
企業が面接で仕事の失敗談を聞く理由
企業はなぜ、面接で仕事の失敗談を聞くのでしょうか。その目的や意図は企業によって異なりますが、多くの場合、次のような目的があると考えられます。
「何を失敗と捉えるのか」を知りたい
面接で話す失敗談として、どのような内容を選ぶかは人それぞれです。採用担当者は、「何を失敗と捉える人なのか」を知り、どのような考え方や着眼点を持っているのかを確認しようとすることがあります。失敗談を、応募者の考え方・価値観が自社にマッチしているかどうかを判断する材料としていると考えられます。
「失敗にどう対処したのか」を知りたい
失敗した際に、どのように状況を判断し、どういった視点や考え方を持って解決・改善に向かったのか、具体的にどのようなアクションを起こしたのかを知りたいと考えています。
仕事で失敗するのは珍しいことではありません。自身のミスではなく、そのときの状況や背景などが影響して失敗につながってしまうケースもあります。そこで、失敗したことではなく、失敗にどう対処したのかを聞き、「入社後もさまざまな失敗に対処できる力を持っているのか」に注目しています。客観的な分析力や判断力、課題解決力、対応力、ストレス耐性、周囲との連携力などを見極めようとしているといえるでしょう。
「失敗から何を学んだのか」を知りたい
失敗に対処しただけでなく、そこから何を学んだのか、これから自社でどのように活かせそうかに注目していることもあります。
仕事においては、「失敗から学び、次の成長につなげていくこと」も求められます。失敗した経験をそのままにせず、自分自身で振り返って改善すべき点を考え、そこに取り組んでいける人材かどうかを確認している可能性があります。
面接で失敗談を聞かれたときの答え方の4つのポイント
面接で失敗談を聞かれたときは、以下の4つのポイントを意識しながら話すと良いでしょう。
冒頭で結論を端的に伝える
面接で質問に回答するときは、「結論」を先に伝えると、相手が理解しやすくなります。失敗談を聞かれた際にも、冒頭で「どのような失敗をしたのか」を端的に伝えましょう。
失敗したエピソードを説明する
どのような失敗をしたのか、具体的なエピソードを話します。このとき、経緯や状況を説明するだけにとどまらず、「何を失敗だと思うのか」「なぜ失敗したと思ったか」まで伝えることも重要です。失敗に対する考え方や、失敗した理由について自分なりに分析していることを伝えれば、採用担当者は物事に対する着眼点や価値観などを把握できるでしょう。それがプラス評価につながることも期待できます。
どのように対処したのかを伝える
失敗した時、どのようにその状況を整理し、どういった行動をとったのか、どのように対処・改善することができたのかを具体的に伝えましょう。失敗にどう対処したのかを伝えることで、分析力や客観性、判断力、ストレス耐性などをアピールできます。
失敗から学んだことを補足する
その失敗によって何を学んだのかを伝えれば、向上心や成長性を感じてもらえる可能性があります。さらにはその経験を「今後、このように活かしていきたい」と補足すれば、入社に活躍・貢献できる人材であるという評価につながるかもしれません。
失敗談の回答例文
面接で失敗談を聞かれたときの回答例文を、ケース別にご紹介します。自身の失敗体験を振り返って答え方を組み立てるときの参考にしてみましょう。
「商談失注」の失敗談
入社4年目の頃、自分一人で大きな商談を進め、失注してしまったことがありました。先輩から引き継いだ顧客に年間契約額◯千万円のプレゼンを行ったのですが、競合他社への発注が決まったのです。理由を聞くと「課題の深掘りが足りず、提案内容がニーズに合っていなかった」とのことでした。
当時の私は目標達成を続け、上司からも評価されていたため、自分の力を過信していました。それ以降は、前任の先輩や上司、他部署の関係者などに相談や情報共有をし、さまざまな角度からの意見を取り入れることを心がけました。
提案の精度を高め、着眼点も広がったことで、翌年度以降は年間目標○%達成を続けています。今後も視野を幅広く持ち、周囲の人からの協力を得ながら成果の最大化を目指したいと考えています。
「発注ミス」の失敗談
総務部門にて、社内で使用するデスク・チェアを発注する際、商品を間違えるミスをしました。発注し直しにより、約◯万円の損失を出してしまいました。当時、営業事務に加えて総務事務を兼務するようになった矢先で、発注業務の手順を把握できていなかったこと、部署内のチェック体制が構築されていなかったことがミスを招いてしまったと思います。
この失敗を受け、社内外に大きな影響を及ぼす業務では、ダブルチェックを行う仕組みを作り、ミスを防ぐようにしています。また、部署内の情報共有に役立つITツールの導入提案なども行い、業務改善に取り組んでいます。
御社においても、正確な業務遂行はもとより、新たな仕組みの提案も続け、部署全体の業務改善に貢献したいと考えています。
「クレーム誘発」の失敗談
カスタマーサポート業務において、顧客からの重要な問い合わせへの返信が遅れ、クレームに発展してしまいました。失敗の要因は、すべての問い合わせを同列に扱い、時系列で対応していたことにあります。対応の緊急度や顧客の重要度を正しく判断できていなかったのです。
この一件への反省から、問い合わせの件名や内容によって優先度を5段階に分類するルールを整備し、対応ステータスを可視化した管理表を作成しました。チーム内で共有し、運用することで、クレーム発生件数は○%減となっています。
この学びと経験を活かし、御社においてもお客様の満足度向上を追求したいと考えています。
「チームの機能不良」の失敗談
新規プロジェクトのリーダーを任された際、強引な進行が原因でチーム内の関係性を悪化させてしまいました。自分のアイデアに強い自信を持っていたため、成果を急ぐあまり、周囲の意見を十分に聞かずに進めてしまったことが原因です。結果、メンバーとの信頼関係が崩れ、意見が出にくい空気になり、最終的にはチームとしての機能不良に陥ってしまいました。
この経験から、「合意形成」や「感情への配慮」の大切さに気付き、プロセスと対話に時間をかけるようになりました。企画の初期段階でメンバーの意見や懸念を吸い上げる場を設け、進行中も定期的に相互フィードバックを実施しています。この結果、プロジェクトが円滑に進み、メンバーの主体性も高まっています。
今後もメンバーが主体的に取り組めるチームビルディングを大切にしたいと考えています。
「情報管理エラー」の失敗談
人事部門で採用活動を行っていた際、面接日程の調整を誤り、候補者の辞退を招いてしまいました。幹部候補として期待を寄せていた候補者を面接に招く際、その方の希望と異なる日時で役員面接を設定してしまったのです。再調整に時間がかかって心証を損ね、選考辞退という結果となりました。
失敗の要因は、全募集職種の応募者とのやりとりを1人で管理していたことにあります。情報がクローズドな状態となり、情報の管理が不十分でした。
この反省から、ATS(採用管理システム)を導入して情報を可視化し、社内での情報共有を促進しました。人事アシスタントも配置して業務負荷を分散し、相互チェックにより単純ミスを防ぐ体制も構築しました。採用活動を円滑に行う体制作りのノウハウは、これから採用を拡大される御社で活かせると考えています。
失敗談を伝える際の注意点
面接で失敗談を伝える際には、以下のポイントに注意しましょう。
仕事上の失敗談を話す
仕事とは関係がない失敗談を話すことは避けましょう。仕事上の失敗談を話してこそ、採用担当者は応募者の仕事ぶりをイメージでき、失敗への対処や失敗からの学びを「自社でも活かせそう」という評価につながります。
他責の印象を与えないようにする
失敗の原因を話すとき、自分自身に対する評価が下がらないように他者のせいにしてしまうと、逆効果となりかねません。「他責」は、マイナス印象につながりやすいといえます。
同僚や後輩のミスが失敗を招いたことが事実であっても、それを強調することはせず、どのように対処したのか、その経験をどのように活かしているかにフォーカスして話すと良いでしょう。
成功談を聞かれる可能性も考えておく
失敗談と同時に、「成功談」を聞かれる可能性もあります。こちらもアピールのチャンスなので、成功体験を振り返って整理し、答えられるように準備しておきましょう。
成果を出したり高く評価されたりした体験を挙げ、その成果・評価を得るに至ったプロセスをストーリーにして話します。そのプロセスを「自社でも再現できそう」と思われることが重要なポイントになるため、成功体験を踏まえて応募企業にどのように貢献したいと考えているかまで伝えると良いでしょう。
面接が不安な場合は、転職エージェントに相談を
面接での質疑応答に不安を抱いているなら、転職エージェントに相談するのも一つの方法です。これまでのキャリアの棚卸し作業をサポートしてもらえるため、対話を通じて経験や考えを整理でき、自身の強みの発見につながる可能性があります。
アピールできる強みを認識しておけば、失敗談や成功談を聞かれても、自信を持って語れるでしょう。転職支援のプロの視点を、活用してはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。