
「転職の軸」とは、転職する際に譲れない大切なことや条件です。転職の軸を設定しておくと、応募先選びや内定承諾の際も迷いが少なくなるかもしれません。では、転職の軸はどのように決めたら良いのでしょうか。そこで、転職の軸が必要な理由や作り方、面接で聞かれた場合の答え方や回答例文について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職の軸とは?
「転職の軸」とは、転職する際に譲れない大切なことや条件です。転職の軸を決めておくことで、転職活動の判断に一貫性が保たれ、迷いが少なくなるでしょう。
転職理由との違い
転職活動では、「転職理由」もよく聞かれる項目のひとつです。転職理由とは、転職で実現したいこと(=転職の目的)を指します。転職の軸とは、転職理由を実現する企業を選ぶための、譲れない条件や、その優先順位を示すものと言えるでしょう。
例えば、転職したい理由・目的が「営業として高いソリューションセールス力を身につけたい」場合、実現のために重視する条件は「ソリューションセールス力が身につく法人営業のポジション」「様々な分野のトップセールスが在籍している職場環境」などの転職の軸が考えられます。
転職活動で転職の軸を聞かれる理由
面接で、応募企業から転職の軸を問われるケースがあります。企業の採用担当者は、転職の軸の質問を通じて、応募者が転職で重視したいことや仕事の価値観を確認していると考えられます。転職の軸がマッチし、仕事の価値観が自社のカルチャーにフィットしていれば、入社後の活躍の可能性が高まり、定着性が期待できるからです。
転職活動に転職の軸が必要な理由
転職活動ではなぜ転職の軸が必要なのでしょうか。転職の軸が必要な理由を3つ解説します。
転職の方向性を定めるため
転職の軸を設定せずに転職活動を始めてしまうと、一貫した判断ができず成り行き任せの行動になってしまう可能性があります。結果的に転職活動が長引いてしまったり、自身の仕事の価値観にマッチしない転職先を選んでしまったりするかもしれません。
希望条件の優先順位をつけるため
勤務地や企業規模、年収や福利厚生など、応募企業に求める条件が多くなるほど、条件に合致する応募先が少なくなってしまいます。また、同じ条件を持つ複数の企業から内定が出た際に、希望条件の優先順位をつけておかないと、選ぶことが難しくなってしまうでしょう。転職活動では、「絶対に譲れない条件」と「できれば叶えたい条件」に分けて、希望条件の優先順位をつけることが大切です。
納得度の高い選択をするため
転職の軸を決めておかないと、目先の条件だけで選んでしまい、意に沿わない企業を選択してしまう可能性があります。納得度の高い選択をするためには、事前に転職の軸を定めておき、軸に沿った意思決定を行うようにしましょう。
転職の軸に必要な「譲れない条件」一覧
転職の軸を考える際は、譲れない条件から探すという方法もあります。人が企業に期待する4つの項目で分類した、具体的な「譲れない条件」の例を一覧化しているので、自分に合うものを探してみましょう。
人が企業に期待する4つの項目
- 「目的への共感」=企業理念に共感する、社長の思いにワクワクできる
- 「活動内容の魅力」=仕事内容が魅力的である
- 「構成員の魅力」=社風が良い、優秀な社員が多い
- 「特権への魅力」=福利厚生、勤務先の立地やアクセス、評価体制、教育・研修制度などが充実している
「目的への共感」
- 会社のビジョンに共感できる
- 社会課題の解決に取り組んでいる
- 持続可能な社会づくりを目指している
- 顧客第一主義を大切にしている
- 誠実な企業文化を重視している
- 利益よりも信頼を大切にしている
- 地域社会に貢献する姿勢がある
- 多様性・インクルージョンを掲げている
「活動内容の魅力」
- 自分のスキルや経験が活かせる
- 新しい技術に挑戦できる環境がある
- 専門性があり市場価値を高めることができる
- 社会的意義のある事業に携われる
- 仕事を通じて成長できる
- ビジネスモデルに独自性がある
- 顧客からの評価が高く、信頼されている
- 業界トップクラスのシェアがある
- グローバルに活躍できる
「構成員の魅力」
- 優秀で刺激を受けられる人が多い
- 上司や先輩が丁寧に指導してくれる
- 相談しやすく風通しの良い職場風土
- チームで協力し合う文化が根づいている
- 年齢や役職に関係なく意見を言える環境
- フラットな人間関係が築ける
- 自律的に働くことが推奨されている
- 離職率が低く長く働きやすい環境
- ワーク・ライフ・バランスを大切にする風土
「特権への魅力」
- 年収が上がる
- 残業が少なく、自分の時間を確保できる
- フレックスタイムやリモート勤務が可能
- 休暇制度が整っている
- 住宅手当・家賃補助などの福利厚生が充実している
- 産休・育休制度が整っており復帰しやすい
- 研修・資格支援制度があり、スキルアップできる
- キャリアアップのチャンスが豊富
転職の軸の作り方
転職の軸はどのように作れば良いのでしょうか。転職の軸の作り方をご紹介します。
転職理由を明らかにする
まず、転職で実現したいことを明らかにしましょう。例えば、「正しく評価される職場で成果を出し、年収アップを実現したい」「何でも言えるフラットな組織で働きたい」など、転職で実現したいことを具体的に挙げますが、転職理由は1つとは限りません。思いつく理由を全て洗い出しましょう。
明らかになった転職理由の優先順位をつける
転職で実現したいことが複数あった場合に、全てを叶えようとすると選択肢が狭まってしまう可能性があります。そこで、洗い出した転職理由の優先順位をつけてみましょう。転職で最も譲れないものが転職の軸となります。
転職市場の動向をリサーチする
転職の軸の優先順位が決まったら、転職市場の情報収集を進めましょう。転職の軸が叶えられる業界・職種・企業にはどのような候補があるのかを確認します。もし、転職の軸に合致する企業が極端に少なければ、転職の軸を見直すのも1つの方法です。転職の軸を基準に求人を探していくうちに、思わぬ企業に目が留まるなど、応募先の選択肢が増えることもあるでしょう。
転職活動を進め転職の軸を具体化する
転職活動を始めたばかりの段階では、転職の軸が曖昧・抽象的で、希望条件も複数あるなど、優先順位がつかないこともあるかもしれません。しかし、求人を探し情報収集を続け、面接で企業から話を聞くことで、転職市場の相場観が掴めるようになります。相場観に合わせて希望条件の優先順位をつけて、転職の軸を具体化するようにしましょう。場合によっては、転職活動を進めるうちに大事にしたいことや優先順位が変化し、転職の軸が変わることもあるでしょう。
転職の軸を聞かれた場合の答え方のポイントと回答例文
面接で転職の軸を聞かれたら、以下の構成で答えると伝わりやすいでしょう。また、転職理由や志望動機など、他の回答との一貫性も意識しておきましょう。
- 転職で何を実現したいか(結論)
- その理由
- 入社したら実現したいこと
新しい挑戦がしたい(営業)
転職の軸は、「新たな挑戦を追求すること」です。これまでの営業経験を活かしつつ、新しい環境や業界での経験を積みたいと考えて応募しました。私は継続的に自己研鑽や自己啓発に積極的に取り組んできており、新たなスキルを習得し、新しい視点を持つことに興味があります。また、SDGsへの先進的な取り組みをされている点にも魅力を感じています。
ワーク・ライフ・バランスを充実させたい(事務)
自分の専門知識やスキルを活かしたい(エンジニア)
社会貢献がしたい(広報)
私はビジネスが社会や環境に与える影響が非常に重要だと感じています。以前の職場では、CSRプロジェクトや持続可能性イニシアティブをリードし、ビジネスが環境への影響を減らし、地域社会に対する貢献を最大化する方法を模索しました。御社のCSRへの取り組みや社会的な使命に共感し、その一員として貢献したいと考えています。
チームワークを活かして働きたい(企画)
私の転職の軸は、「チームワークを活かして働きたい」ということです。前職ではチームで協力しながらプロジェクトを進める機会が多く、周囲と連携する中で成果を出していくことにやりがいを感じてきました。企画職は未経験になりますが、これまでに培った連携力・巻き込み力などを活かして、御社の事業成長に貢献したいと考えております。
転職の軸で気をつけたいこと
転職活動を始める際に、転職の軸を定めるのは重要なことですが、転職活動を進める過程で情報収集が進み、自分の考え方や優先順位が変わってくることもあります。転職の軸は、転職活動の方向性を明らかにして、納得感のある意思決定をするために設定するものです。最初に設定した転職の軸にこだわりすぎて、自分の意思決定に後悔が生じないように、転職活動の方向性に変化があった場合は、転職の軸を見直してみましょう。
転職の軸に迷ったら転職エージェントに相談してみよう
「転職の軸がなかなか定まらない」「転職活動を続けるうちに優先順位が分からなくなった」など、転職の軸に迷ったら、転職エージェントに相談するという方法もあります。自分ひとりで考えていると、答えが出ず思うように転職活動が進められなくなることもあるかもしれません。転職エージェントは、転職活動の方向性やキャリアプランへのアドバイスも行っています。転職市場の動向や相場観も把握しているので、転職活動に役立つ情報を得られるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2024年10月31日
記事更新日:2025年09月10日 リクルートエージェント編集部
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