
コミュニケーション手段としてメールやチャットツールが主流となっている昨今、ビジネスシーンで「電話をかける/受ける」ことに緊張を感じる人も多いようです。転職活動中の応募企業とのやりとりにおいて、ときには電話で会話する場面があるかもしれません。転職活動での電話の基本マナー、状況別のトーク例、好印象を持たれる電話コミュニケーションについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
転職活動における「電話の基本マナー」
転職活動の過程では、選考の日程調整や日程変更、緊急の連絡や確認など、電話でのやりとりが必要になるケースもあります。このとき、ビジネスパーソンとしてのマナーに疑問を抱かれないためにも、電話の基本的なマナーとして以下のポイントを押さえておきましょう。
電話前に整えておきたい「環境」と「準備」
こちらから電話をかける、あるいは企業からの電話を受けることが事前にわかっている場合、雑音が入らない静かな場所を選びましょう。静かな環境の確保が難しい場合は、相手の声を聞き取りやすいようにイヤホンを用意しておくのも一つの方法です。途中で通話が途切れないよう、電波状況の良い場所であることも重要です。
電話をかけるタイミングは、応募先企業の求人情報に記載されている就業時間内で、昼休みの時間帯は避けた方が良いでしょう。また、朝一番・昼休み直後・終業間際など、相手がバタバタしがちな時間帯も避けておくと、丁寧に対応してもらえる可能性があります。
電話で伝える用件をあらかじめ整理し、簡潔に伝えられるようにしておくことも大切です。メモを取れるように、筆記用具も手元に準備しておきましょう。
電話をかけるときの基本的な「話し方」と「言葉遣い」
電話をかけるときの名乗り方、基本な話し方・言葉遣いをご紹介します。トーク例を参考にしてみてください。
ステップ1:挨拶し、自分の名前を伝える
求人サイトなどを見て問い合わせる、あるいはすでに応募している場合は、その求人サイト名と応募職種を添えて名乗りましょう。選考に進んでいるのであれば、選考のどの段階にあるのかを伝えるとスムーズに運びやすくなります。
- 初めて電話する場合
お忙しいところ、恐れ入ります(失礼いたします)。
△△(求人サイト名)で求人広告を拝見いたしました◯◯(名前)と申します。
- すでに求人に応募している場合
お世話になっております。
△△(求人サイト名)より□□職に応募しております◯◯(名前)と申します
- すでに選考が進んでいる場合
お世話になっております。
△△(求人サイト名)より□□職に応募し、二次面接の日程をご調整いただいております◯◯(名前)と申します。
ステップ2:採用担当者を呼び出す
相手の部署名や名前を言い間違えないように、メモなどで確認しましょう。担当者の名前がわからないときは、「中途採用のご担当者さま」などと伝えてもかまいません。
〜〜(用件)の件にてお電話いたしました。
××部◯◯課の△△さまにお取り次ぎいただけますでしょうか。
あるいは
〜〜(用件)の件にてお電話いたしました。
××部◯◯課の△△さまはいらっしゃいますでしょうか。
あるいは
〜〜(用件)の件にてお電話いたしました。
××部◯◯課の△△さまはご在席でしょうか。
ステップ3:用件を伝える
担当者が電話に出たら、ステップ1の要領で再度名乗り、用件を伝えます。まずは「何の件についての電話なのか」を伝えてから詳細を話すと伝わりやすいでしょう。「今は取り込んでいるので、メールで連絡してほしい」など、電話以外の連絡手段を提示された場合は指示に従います。
(はい、採用担当の△△です)
○○(名前)と申します。今、お時間よろしいでしょうか。
(大丈夫ですよ)
ありがとうございます。本日は〜〜(用件)の件にてお電話いたしました。
ステップ4:相手の返答を聞いてから確認する
面接の日程や時間などは必ずメモを取り、復唱して確認しましょう。
- 相手の返答内容を確認する
- 疑問点があるとき
- 聞き間違いがあったとき
通話をスムーズに終えるための「締め方」
電話を切るときの挨拶は印象を左右するため、丁寧な言葉で締めくくりましょう。
引き続きよろしくお願いいたします。それでは失礼いたします。
また、相手が電話を切ったことを確認してから通話を終了するのが望ましいといえます。一般的には、「電話をかけた側が先に切る」ことがマナーとされていますが、上司や顧客などが相手の場合と同様に、「一刻も早く電話を切りたがっている」など、失礼な印象を与えかねないことに留意しましょう。
シーン別・電話対応のトーク例
転職活動中に想定される各シーンに応じた電話のトーク例を紹介します。
応募前に企業へ問い合わせたいとき
- 求人情報の内容について問い合わせるとき
こちらに記載されている△△についてお尋ねしてもよろしいでしょうか。
- メールに書かれていた内容に対し、質問があるとき
【ポイント】
電話する前に聞きたい項目を整理し、メモしておくと安心です。なお、求人情報やホームページなどを読めばわかることを質問しないように注意しましょう。
企業へ折り返し電話をするとき
- 相手が出たとき
先ほど人事部の△△さまからお電話をいただき、折り返しのご連絡をいたしました。
△△さまはいらっしゃいますでしょうか。
- 担当者が出たとき
先ほどはお電話に出ることができず、申し訳ございませんでした。
- 担当者が留守電を残していたとき
留守番電話の件、確認いたしました。ご連絡ありがとうございます。
【ポイント】
企業からかかってきた電話に出られなかったときは、当日のうちに、なるべく早いタイミングで折り返し電話をかけましょう。相手の終業時間を過ぎてから気付いた場合は、メールで連絡が遅れたことへのお詫びを伝え、「明日、XX時~XX時の間にお電話してもよろしいでしょうか」など、連絡可能な時間帯を提示して、相手に確認しましょう。
終業時間以降に電話がかかってきて、留守番電話に「折り返しがほしい」というメッセージが残されていた場合は、気付いた段階で折り返しましょう。ただし、あまりにも遅い時間帯だと、常識に欠ける印象を与えかねないので、メールで連絡する方が無難です。
選考日程の再調整を申し出るとき
大変申し訳ございません。○日にどうしても外せない用事が入ってしまいましたので、
面接の日程を再調整していただくことは可能でしょうか。
【ポイント】
日程変更を希望する理由を正直に話す必要はありませんが、相手が納得できる程度に簡潔な理由を伝えましょう。「どうしても外せない用事」「現職の仕事の都合」「やむを得ない事情」などです。また、候補日を用意しておき、「○日と○日でしたら調整可能です」と伝えれば、再設定がスムーズに運ぶでしょう。
面接に遅刻しそうなとき
- 電話がつながったら
- 採用担当者に取り次いでもらったら
- 対応してもらった後で
【ポイント】
遅刻しそうなときは、到着予定時間を伝えます。このとき、ギリギリの到着時間でなく余裕を持たせた時間を伝えると良いでしょう。仮に間に合わなかった場合、再度電話をかけることになってしまいます。
内定辞退や選考辞退の電話をするとき
この度は内定(面接)のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
大変申し上げにくいのですが、慎重に検討させていただいた結果、
御社からの内定(選考)を辞退させていただきたく、ご連絡をいたしました。
【ポイント】
内定(面接設定)に対するお礼を伝えた上で、辞退したい旨を伝えます。辞退の理由についても、「他社の内定を承諾することにした」「改めてキャリアの選択肢を考え直すことにした」「希望するキャリアに合致していなかった」「現職に留まることにした」など、簡潔に伝えましょう。
担当者が不在(外出・会議中)だった場合
何時ごろお戻りのご予定でしょうか。その時間に改めさせていただきます。
【ポイント】
「またお電話します」だけで終わるよりも、相手につながりやすい時間を聞いておくと良いでしょう。
相手から折り返すと言われた場合
【ポイント】
折り返し電話をもらっても受けられない可能性がある場合、こちらから再度電話する旨と、都合の良い時間帯を聞いておくことをおすすめします。
電話がきた時にこちらの対応が難しい場合
恐れ入ります。ただ今、移動中のため、改めてこちらからお電話を差し上げてもよろしいでしょうか。
ご都合のよろしい時間を教えていただければ幸いです。
【ポイント】
折り返し電話する旨を伝え、都合の良い時間帯を確認しておきましょう。
相手の声が聞き取りにくいとき
あるいは
【ポイント】
「声が小さい」「聞こえません」といった直接的な表現では、相手が不快に感じる可能性があります。自分側の環境に原因があるような伝え方をしましょう。
留守番電話につながったとき
△△の件にてご連絡いたしました。
後ほど、こちらからお電話いたしますので、よろしくお願いいたします。
【ポイント】
留守番電話にメッセージを残す際には、「自分が誰なのか」「用件は何か」の情報をしっかりと残しましょう。
転職活動中の電話で好印象につなげる工夫
電話で話した印象は、評価に影響する可能性も考えられます。なるべく好印象を持ってもらうには、次のことを意識してみると良いでしょう。
「時間を取ってもらっている」という意識を言葉で示す
電話は相手の時間を奪うコミュニケーション手段であるとも考えられています。「今お時間よろしいでしょうか?」「お忙しい中、恐れ入ります」といった一言を添えると、相手への配慮が伝わりやすくなるでしょう。
声のトーンを高めにし、ハキハキとした口調で話す
電話は表情が見えない分、声のトーンや口調が印象を左右することがあります。声のトーンを一段高くし、ハキハキとした口調を意識すると、好印象を与えられる可能性があります。
話すスピードを相手に合わせて調整する
緊張すると早口になりやすいため、注意が必要です。しかし、ゆっくり過ぎても、相手が忙しいタイミングだともどかしさを感じさせてしまうかもしれません。相手が話すスピードに合わせて調整することを意識してみてください。
用件を明確に区切り、冒頭で簡潔に伝える
最初に用件を明確にします。用件が複数あるときは、「本日は2点お伝えしたくお電話しました。1点目は○○の件、2点目は△△の件です」などと前置きした上で、用件ごとに明確に区切り、冒頭で簡潔に伝えると、相手は心の準備がしやすくなるでしょう。情報が整理されていれば、「論理的に話せる人」という印象にもつながることが期待できます。
仕事中に電話を受けたくない場合は?
働きながら転職活動をしている場合は、業務中など電話に対応できない場合も多いものです。業務中の電話対応を避けるための対処法を紹介します。
連絡の取りやすい方法を伝える
通話可能な時間帯を履歴書の電話欄・備考欄などであらかじめ伝えておきましょう。その際は一方的な要求とならないように、「この時間帯(方法)の方が迅速にお返事できると思いますので、ご対応お願いできますでしょうか」といった配慮も示すことが大事です。
また、電話に出られる時間帯が読めない場合、「勤務中はお電話を受けられない可能性がございます。その場合、留守番電話にメッセージを残していただけましたら、なるべく早急に折り返しいたします」などと伝えておいても良いでしょう。
転職エージェントを活用する
転職エージェントを通じて応募すると、面接日程の調整、企業への質問、内定(選考)辞退の連絡など、企業とのさまざまなやりとりを代行してもらえます。そのため、企業と電話で話す必要性が生じることはあまりないといえるでしょう。電話でのやりとりに苦手意識を持っている方は、転職エージェントのサポートを活用してみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年11月05日
記事更新日:2025年10月21日
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