
転職エージェントを利用したいと考えた時、費用がかかるのか疑問を持つ人も少なくないようです。原則として、転職エージェントでは、求職者は利用料を支払う必要はありません。
本記事では、転職エージェントを利用する際に費用がかからない理由や転職エージェントの費用に関する疑問と回答を、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
求職者が転職エージェントを利用する際には、費用はかからないのが一般的
求職者が転職エージェントを転職活動に利用する際には、原則として費用はかかりません。
転職エージェントへの登録だけでなく、カウンセリングや求人の紹介にも利用料や紹介料などの費用はかからないのが一般的です。
ただし、一部の転職エージェントでは有料プランを用意しているケースもあるため、利用する際は自身で転職エージェントのサービス内容を確認するようにしましょう。
求職者が無料で転職エージェントを利用できる理由
求職者が転職エージェントを無料で利用できるのは、次の2つの理由があります。
- 転職エージェントは企業から成功報酬を得ているから
- 職業安定法で定められているから
これらについて、転職エージェントの仕組みについても触れながら解説します。
転職エージェントは企業から成功報酬を得ているから
一般的な転職エージェントのビジネスモデルは「成功報酬型」です。求人企業から人材紹介の依頼を受け、要件に合う求職者を紹介し、採用に至った場合、企業側から転職エージェントに「紹介手数料」として成功報酬が支払われる仕組みとなっています。
職業安定法で定められているから
前述のように、転職エージェントの主な収入源は「求人企業からの報酬」ですが、これは「職業安定法」が大きく影響しています。
転職エージェントは職業安定法に基づき、「有料職業紹介事業」の許可を受けています。有料職業紹介事業者には事業運営にあたってさまざまな規制が課せられていますが、その中の一つに「求職者から手数料を徴収してはならない」というものがあります。
そのため、転職エージェントが求職者に求人を紹介しても、その手数料を求職者から徴収することはできないのです。
第三十条第一項の許可を受けた者(以下「有料職業紹介事業者」という。)は、次に掲げる場合を除き、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。一 職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合
二 あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(手数料の種類、額その他手数料に関する事項を定めた表をいう。)に基づき手数料を徴収する場合
企業が費用をかけてでも転職エージェントを利用する理由
費用をかけてでも企業が転職エージェントを利用する理由は、主に次の4つと考えられます。
希望に合った人材を採用しやすいから
転職サイトや自社サイトなどで募集をした場合は、希望条件に合致した人ばかりが応募してくるとは限りません。一方、転職エージェントを活用すると、その転職エージェントに登録している多くの求職者の中から、経験・スキルなど自社が求める条件に合った人材を紹介してもらうことができます。
条件面のみならず、求職者の強みや持ち味などを把握し、自社の社風や文化とのマッチ度なども考慮した上で、入社後に活躍しそうな人を見つけ出してくれるでしょう。
採用活動を効率化できるから
採用活動を進める際は、社内の人事担当者だけでは手が回らないこともあります。転職エージェントを利用すると、企業の要望に沿った採用ターゲットの設定、選考方法の提案など、採用活動全般のサポートが得られます。
転職エージェントに登録した求職者の中から企業が求める人材を探して、自社に合った人材とマッチングを行ってくれることから、入社後のミスマッチによる早期離職リスクの低減も期待できます。
非公開で募集ができるから
例えば新規事業に関わる人材の採用や、重要な責務を担う幹部人材の採用など、社内外に知られずに採用活動を進めたい場合に、転職エージェントを利用するケースは少なくありません。
転職エージェント経由で「非公開求人」として採用活動を行うことで、秘密裏に求める人材を採用できる可能性があります。
初期コストを抑えられるから
人材を採用できるかどうかわからない状況で、転職サイトへの広告出稿などの初期コストをかけられないという場合に、転職エージェントを利用するケースもあります。
転職エージェントの多くは成功報酬型であり、採用が実現した場合のみ費用が発生します。また、採用活動の効率化も実現できるため、「人事担当者の労力も軽減できるため、採用コスト全体を抑えられる」との意見もあります。
費用面だけじゃない!求職者が転職エージェントを利用するメリット
求職者が転職エージェントを利用するメリットは、無料であるだけではありません。費用面の他に、主に次のようなメリットが考えられます。
希望条件に合った求人を紹介してもらえる
転職エージェントは求職者の履歴書や職務経歴書、そして面談でヒアリングした情報などをもとに、求職者に合っていると思われる求人を紹介します。
扱っている求人の中から、希望にマッチした求人を提示されることで、より適切な選択がしやすくなるでしょう。その求人に対する情報提供やアドバイスなど、応募するためのサポートも得られる可能性があります。
転職市場の動きや相場観がつかめる
転職エージェントは、転職市場における業界・職種の人材ニーズ、各業界の動向などを詳しく把握しています。人材ニーズが多い業界・職種や、求職者が少なく需給がひっ迫している業界・職種といった情報を転職エージェントから聞くことで、スムーズに転職活動を進められる可能性があります。
また、転職エージェントは転職市場の潮流をリアルタイムで把握しています。特定の業界や職種でどのようなポジションが求められているのかなど、企業の要件や求められるスキルについても把握している可能性があり、転職に有益なアドバイスを得られるかもしれません。
非公開求人に出会える可能性がある
転職エージェントによっては、転職サイトや自社サイトでは公募されていない「非公開求人」を数多く取り扱っています。非公開求人は、公募すると応募が多く集まりすぎる希少・人気ポジションや、新規事業など経営戦略に関わる重要ポジションなどが少なくありません。転職エージェントを利用しなければ出会えないような、魅力的な求人に応募できる可能性があります。
面接対策など採用選考のサポートを受けられる場合がある
転職エージェントによっては、求人企業やポジションに応じた応募書類の添削や面接対策も行っている場合があります。応募企業の社風や価値観、求められる人物像などに合ったアピール方法などのアドバイスを受けられるかもしれません。
選考の日程調整を任せられる
転職エージェントでは、求人の選定や企業との面接日程調整など、手間がかかる作業をサポートしてくれるケースがあります。特に現職が忙しく、仕事と転職活動の両立に難しさを感じている人は、メリットを感じる場面が多いと思われます。
転職エージェント利用時の転職活動の流れ
転職エージェントを利用する場合の、基本的な使い方を理解しておきましょう。一般的には、以下のような流れが考えられます。
利用登録
転職エージェントの公式サイトから利用登録をします。申し込みフォームにアクセスし、転職希望時期や希望勤務地、職種、希望年収などの必要事項を入力します。
面談・相談
利用登録後、多くの場合は担当キャリアアドバイザーから初回面談の日程調整について連絡があります。対面のほか、オンラインや電話で面談できる場合もあるので、自分に合った方法を相談してみましょう。
初回面談では一般的に、転職エージェントのサービス概要の説明のほか、転職目的や転職先に求める条件の確認、これまでのキャリアの確認などが行われるケースが多いようです。
求人紹介
面談の内容などをもとに、経験・スキルや希望条件にマッチする求人が紹介されます。より希望に合った求人を紹介してもらうためには、希望条件を明確に伝えることが大切です。
応募書類作成・面接対策サポート
転職エージェントによっては、履歴書・職務経歴書の作成アドバイスが得られる場合があります。また、応募企業に合ったアピールのアドバイスなど、面接対策のサポートを得られるケースもあります。
内定後サポート
応募企業から内定を得た後、入社するかどうかを判断するにあたってキャリアアドバイザーからサポートが得られる場合があります。転職エージェントによりますが、条件交渉や入社日調整などのアドバイスが得られる可能性もあるでしょう。
転職エージェントを利用する際の注意点
無料で利用でき、かつ転職サポートが得られる転職エージェントですが、注意したほうが良い点もあります。利用に際しては、主に以下の点に留意しておきましょう。
希望しても応募できない場合がある
気になる求人があり、応募を希望しても、転職エージェント経由では応募できない可能性があります。
転職エージェントは、求職者の経験・スキルや条件などと、企業の採用要件とのマッチングを行うのが役割です。したがって、求人内容と自身の経験・スキルがマッチしていない場合は、希望しても求人を紹介してもらえなかったり、応募できなかったりするケースはあります。
キャリアアドバイザーとの相性が合わないケースもある
転職エージェントは、キャリアアドバイザーという「人」が間に立つサービスであるため、相性はとても重要です。担当キャリアアドバイザーのコミュニケーションスタイルや経験の度合い、強みを持っている分野などによっては、うまくコミュニケーションが取れなかったり、自身の経験・スキルや希望などをなかなか理解してもらえなかったりする可能性もあります。
なお、どうしても相性が合わないと感じたら、担当変更を希望することも可能です。
希望条件に合う求人が少ない場合がある
転職エージェントによって、取り扱っている業界や分野などに専門性や特徴があるため、希望する求人を取り扱っていなかったり、少なかったりする場合もあります。
転職エージェントに登録しても、その転職エージェントが自身の経験・スキルや希望する条件にマッチした求人を扱っていない場合は、サービスそのものを受けられない可能性もあるでしょう。
転職エージェントの費用に関してよくあるQ&A
転職エージェントの費用に関して、多くの求職者が抱く疑問と、それに対する回答を紹介します。
Q1.転職エージェントに登録や相談だけして求人に応募しなくても費用はかからない?
A.転職エージェントに登録をしたものの、何らかの事情で求人応募に至らなくても費用は発生しません。
キャリアアドバイザーとの面談で、自身の市場価値や転職市場の動向、今後のキャリアの可能性などについて情報提供やアドバイスを受けた結果、「今は転職のタイミングではない」「現職に残ってもっと経験を積もう」と判断する場合もあるでしょう。
転職意思が固まっておらず、「転職するかどうか迷っている」「キャリアの方向性に悩んでいる」といった状態であっても、転職エージェントを利用できます。無料で利用できるため、気軽に始めてみても良いかもしれません。
Q2.複数の転職エージェントを掛け持ちして他で内定しても費用はかからない?
A.他の転職エージェントで内定が決まった場合も、違約金など何らかの費用を支払うことはありません。
ただし、選考中の企業がある場合や転職支援を受けている最中に他の転職エージェントで内定が決まった時は、すぐにその旨を申し出るようにしましょう。
Q4.転職エージェントを利用して内定を獲得した後に、内定を辞退しても費用はかからない?
A.内定を辞退しても、費用はかかりません。
転職エージェントでは「登録」「面談」「相談」「選考」「内定」「入社」のどの段階であっても、求職者が料金を支払うことはありません。転職エージェント経由で応募した企業の内定を辞退する場合も同様です。
なお、入社を迷った場合は、キャリアアドバイザーに相談すれば、迷っているポイントについて企業に直接確認してくれたり、面談の場を設けるように調整してくれたりすることもあります。
Q5.転職エージェントを利用して転職をした後に、早期退職しても費用はかからない?
A.転職エージェント経由で入社した企業を早期退職したとしても、違約金などの費用が発生することはありません。ただ、料金が発生しないとはいえ、ミスマッチによる早期退職はできるだけ未然に防ぎたいものです。例えば、面談時に希望条件を十分に伝えておく、入社を検討する際に不安や懸念点があればキャリアアドバイザーに相談するなど、ミスマッチを軽減できる方法はあります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2022年11月30日
記事更新日:2023年07月04日
記事更新日:2024年03月21日
記事更新日:2025年01月08日
記事更新日:2025年12月3日 リクルートエージェント編集部
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