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【後編】変革の時代、転職市場の最前線から見えてくる「個人の新たな働き方・生き方」とは?

『リクナビNEXT』編集長/藤井 薫

『リクナビNEXT』編集長
藤井 薫

『リクナビNEXT』編集長。1988年リクルート入社以来、人材事業のメディアプロデュースに従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所Works編集部を歴任。リクルート経営コンピタンス研究所兼務。

 

持ち味を活かせる仕事、職場、ライフワークは多方面に広がっている

前回までに、個人の「職業寿命」は延びていて、「企業の寿命」は短命化していること、コモディティ化を避けるためには、企業も個人も「既存市場・既存事業」から、「新市場・新事業」に踏み出す必要があることなどをお伝えしました。

以上を踏まえ、これからの働き方を考えるうえでのキーワードは、「分散化」。
長年培ってきた経験、資源を「多方向」に「多重活用」することが大切です。まずは自らの持ち味を活かす仕事、職場、ライフワークの選択肢は、多方面にあるということを理解してください。

実際、転職市場においては、これまで壁と言われた「業界の壁」、「規模の壁」、「年齢の壁」、「地域の壁」といったかつての採用基準や合否のハードルが大きく変容しつつあります。

例えば、大手Web会社でデータサイエンティストとして活躍していた人が、自動車メーカーで自動運転の経路分析や最適化分析に携わっている例や、SIerでエンジニアをしていた人が上流のコンサルティングファームに転職する、セキュリティーなど領域特化型のベンダーでその道のスペシャリストになる、など「同業界・異職種」「異業界・同職種」に転身する例は、すでに当たり前になりつつあります。

もしくは、持っているビジネススキル、ヒューマンスキルを活かして、「異業界・異職種」という全くの未経験分野に転身する例も珍しいものではなくなります。例えば、大手ネット系企業で新規営業をしていた人が、異業界ベンチャーの事業開発、事業企画に携わり、力を発揮している例などがあります。

自身の経験、資源を因数分解すれば、可能性はぐんと広がる

豊富な経験を積み、専門性を磨き続けてきたハイキャリアの方ほど、今と同じ業界・職種ばかりに固執しがちですが、経験、資源を「多方向」に「多重活用」するためには、まずは自身の経験、資源を因数分解して、視野を広く持ってこれからのキャリアを考えることが大切です。

その際に、ポイントとなるのは次の3つの軸です。

1)職種スキル

その職種に特化した知識や特有のスキル、能力開発スキル、環境整備スキルなど。

2)業界知識

その業界に特化した知識。業界のしきたりや慣習、業界構造に関する知識、成長源泉知識、組織活性知識など。業界のフィクサー、キーマンに関する知識など、Know-howだけでなくKnow-whoも大切。

3)ビジネス&ヒューマンスキル

ビジネスプランニングスキル、プロジェクトマネジメントスキル。敵対する者、相反する考え方を持つ者同士をつなげる、皆の意見をうまくまとめるなどといった、コラボレーションスキル、ファシリティースキルも指す。

この3つの軸で自身の経験、資源を因数分解していくと、自身の可能性がぐんと広がりますので、ぜひ試してみてください。

「3C」と「H.B.L」を意識して、働く喜びを向上させよう

リクルートが、日本で働くビジネスパーソン約5000 人に調査したところ、「働くことに喜びを感じている」人は、就業者全体のうちわずか36.1%でした。その36.1%の共通項を調べたところ、次の3Cが浮かび上がりました。

●「働く喜び」を向上させる「3C」
Clear(持ち味の自覚、やりたいこと・自分軸の自覚)
Choice(持ち味を生かせる仕事・職場を選択)
Communication(上司・同僚との密なコミュニケーション期待がある)

自分の持ち味が自覚できていて(Clear)、その持ち味を活かせる職場を自ら選択でき(Choice)、さらに、上司や同僚などの仲間と深く期待し合っている職場がある(Communication)。それが「自分の持ち味が生かされている」という納得感につながり、「働く喜び」が生み出される――という構図です。
この3Cの考え方は、「働く喜びを感じられていない」63.9%の方に、「働く喜び」を持ってもらうためのヒントになると考えています。

ただし、「働く喜び」を向上させる「3C」の獲得は、一筋縄では行きません。最初の関門はClearです。「自分の目は、自分で見れない」ということわざがあるように、自分一人で自分の強みや持ち味をClearに言語化するのはハードルが高いのです。

まずは、第三者から客観的な意見をもらうといいでしょう。会社の上司や先輩、同僚のほか、キャリアアドバイザーをうまく使って因数分解するのも一つの方法。人間ドッグならぬ「キャリアドック」と捉え、定期的に自身の持ち味をClearにして、社会においてどれぐらい価値あるか確認するといいでしょう。

さらに次の関門Choice。Clearになった持ち味を生かせる選択肢である仕事・職場をどう選ぶか。こちらもも大切です。

Choiceの際に大事なのは、H.B.Lの視点。人が協働体に参加する際の魅力要因を指します。

Hは「Hill Top」。その職場の丘の上から自らの将来の希望が見えるか?
Bは「Batter Box」で、中途入社者が力を発揮できる裁量権や風土/環境があるか?
Lは「Lifework Fitting」で、生涯現役で活躍するための柔軟な働き方ができるか?

持ち味をClearにしたうえで、豊富な選択肢の中で情報を精査する際に、このH.B.Lが役立ちます。さらにH.B.L. は、「働く喜び」を構成する3C(Clear、Choice、Communication)とも通底します。多中心時代に、個人がうまく波に乗るための戦略として、覚えておいてほしい視点です。

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