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【中編】変革の時代、転職市場の最前線から見えてくる「個人の新たな働き方・生き方」とは?

『リクナビNEXT』編集長/藤井 薫

『リクナビNEXT』編集長
藤井 薫

『リクナビNEXT』編集長。1988年リクルート入社以来、人材事業のメディアプロデュースに従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所Works編集部を歴任。
リクルート経営コンピタンス研究所兼務。

 

培った「経験資源」を活かしつつ、新しい領域に踏み出ることがカギ

前回、個人の「職業寿命」は延びていて、「企業の寿命」は短命化しているとお伝えしました。
個人は一生涯において20歳ぐらいから80歳近くまで、60年間ぐらい働くのが当たり前になると予想される一方で、企業寿命は年々短くなり、現在では20年を切っています。
単純計算では、たとえ1企業の中にいても、単純計算で4つ以上の事業を渡り歩かねばならない、ということになります。

それはつまり、「ずっと一つの仕事ばかりやっていては、価値の陳腐化、いわゆるコモディティー化の波に飲み込まれ、変化の波に乗ることができない」ということ。
企業短命化の圧力は、個人にもかかっているのです。

では、変化の時代に何をするべきなのか。
企業も個人も、「既存市場・既存事業」から、「新市場・新事業」に踏み出す必要があります。

例えば、商品・サービスの価値提供の範囲の拡張、いわゆるバリューチェーンを上流や下流まで広げる動きが有名です。
SIerがコンサルティング領域に進出する、逆にコンサルティング会社が自社でシステム構築や運用サポートまでする、というケースが一例です。
また、事業領域・対象市場の拡大も、多出するケースです。
メーカー各社が「日本市場は頭打ちだから海外市場に活路を求める」「流通各社がリアル店舗からオンライン店舗を強化する」のも同様です。
経営資源の多重活用、事業の多中心化によりイノベーションを起こすことが、企業継続の道だと理解しているからです。

個人も同様です。一つ仕事ばかりやっていては、スキルの陳腐化にさらされ、変化についていくことができず、うまく事業を渡り歩くことができません。
例えば、営業職ならば、新しいプロジェクトのプランニングを担当してみる、市場を知るためにマーケティングの勉強もしてみる…など、現在の担当領域から一歩踏み出して、新たなスキルを身につけることが大切です。

個人の「法人化」が進み、会社に依存せず個人が輝ける時代に

企業も個人も、自分たちが培った「経験資源」を活かして幅を広げながら、新たな領域や範囲に「多重活用」していくことが重要な時代――これはすなわち、「個人が1つの企業に属して、働き方やキャリア、生活を企業に一律にゆだねる」時代は完全に終焉していくことを意味します。
別の言葉で言えば、個人がまるで法人のように、自らの責任と権限を持って、複数のパートナーと共創しながら、持続的に成長してゆく。
つまり、「個人の法人化」が加速してゆく時代なのです。

前回申し上げたように、第4次産業革命において「Technology(技術)」による産業構造の変化が起こり、「技術」と「生身の人間」が切っても切り離せない時代になると見られています。
Technologyが進化すればするほど、情報編集・発信力や、世界中の人々との信頼構築力や価値交換力は、個人と企業の差がなくなっていきます。
実際、世界で注目される20代Youtuberや82歳のプログラマーなど、大企業をはるかに超える個人も多出しています。
「個人の法人化」は、個人が”企業に従属的に依存しなくても”、自らの「働き方、キャリア、生活」を主導できる時代なのです。

従って、現代は、時代の大きな変曲点にあると言えるのではないでしょうか?

これまでの「企業主導・一中心・束縛」(Uni・form-ism)、「企業にお任せでいい」「みんな同じがいい」「一生縛られるほうがいい」という時代から、これからは、「個人主導・多中心・紐帯」(Multi・form-ism)、「自分で選んだほうがいい」「みんな違っていい」「(信頼で)繋がっていればいい」という時代に変化します。

日本型雇用システムの恩恵を受け、終身雇用を全うできる正社員の数はごく一部になりますが、ポジティブに捉えれば、「(会社に貢献しつつ、かつ、会社に依存せずに)社会とともに永遠に輝ける」時代が到来する、とも言えます。

個人は、持続成長を望む企業や社会の変革を貢献し、企業は、生涯現役・多様な生き方を望む個人を支援する。これこそが、本質的な「働き方」改革の向かうべき道なのだと思います。

「trial and error」だけでなく「and learn」がますます重要に

変化の時代、多重活用・多中心化の時代に、最も重要になるのは「学び」です。学べる人は、変化に対するモチベーションが高いからです。

それを証明したのが、心理学者のJ・リチャード・ハックマンと経営学者グレッグ・R・オルダム。彼らは、やる気と満足度(MPS=Motivation Potential Score)と、それに影響を及ぼす仕事の5つの要素(①技能多様性、②タスク完結性、③タスク重要性、④自律性、⑤フィードバック)を定式化しました。

①求められるスキルの多様さ(技能多様性)、②部分ではなく全体を把握(タスク間歇性)、③他者への影響を通じて、仕事の意義を理解し(タスク重要性)、④自律性の高い仕事の進め方で、結果に対する責任を持つようになり(自律性)、⑤自身の実践効果への評価により、成果に関する知識を豊かにする(フィードバック)。この一連の経験が、やる気と満足度を高めると述べているのです。

中でも、特に大事なのは④と⑤。どんな困難にぶつかっても自律する、そして他者からの声や評判を受け止める。ここに学びがあるのです。

会社に属さないフリーランスの多くは、この④(自律性)と⑤(フィードバック)が強いから、トライアンドエラー、アンド、ラーン(learn)のサイクルがうまく回っています。会社に属していると、上からの厳しいフィードバックを上司が一旦受け止めて、かみ砕いてメンバーに伝える…など、間に人が入る機会が多いため、「ラーン」がどうしても弱くなる。従って、自身で意識して、学び続ける努力が必要です。

実際、企業においても、実績よりもラーナー(learner)を評価する動きが出始めています。組織もまた、変化に対するラーンが重要だからです。個人の脳や身体も経験を蓄積する組織だとすると、「学習する組織」の重要性は、ますます高まる一方なのです。

プロ野球選手やプロサッカー選手が、国内でも十分な収入と活躍の場を得られているのに海外を目指すのは、ラーンが得られて、さらに自分を伸ばすことができるからです。
ハイキャリアの皆さんこそ、彼らのように学び続ける姿勢が大事。今一度、今の職場・仕事環境で、MPSの5要素がどこまであるのかを自己点検することをオススメします。
特に、④(自律性)と⑤(フィードバック)が損なわれているとしたら、ラーナー(learner)としては不利な環境にいると言わざるを得ません。
今一度、MPS環境を再整備し、学びながらプロフェッショナルとしての自身の幅を広げ、いろいろな顔を臨機応変に発露しながら、変化の波をイキイキと乗り越えてほしいと願っています。

今回紹介した「個人主導・多中心・紐帯」の生き方・働き方の時代を受けて、次回は「具体的に個人は、どういう働き方を選択すればいいのか」について解説していきます。お楽しみに。

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