副業割合

更新日:2024年5月14日

誰もが自ら希望する働き方を実現し、多様なキャリア形成のひとつとして、政府は副業・兼業を推進しています。副業に関する制度の整備も進んでおり、副業を認める企業も増加しています。そこで、副業の実態について調査してみました。

サマリ

アンケート調査によると、副業を経験している人は17.9%という結果になりました。所属企業が副業を認めているかどうかも聞いたところ、「認められている」26.4%、「禁止されている」41.7%となっており、副業を認める企業が増加しているとはいえ、副業禁止の企業が多くあるようです。また、認められていると答えた人の割合が多かった業界は、「Web・インターネット業界」や「IT・通信業界」でした。副業経験者が副業を始めたきっかけは、「将来への備え・貯金を増やしたいから」が38.7%、「お小遣い・趣味に使える収入を増やしたいから」44.7%と、金銭面での理由が上位となっています。

1. 副業実態調査

まず、アンケート調査から見えてきた副業経験者の割合や副業を認めている企業の割合をご紹介します。

正社員として働く全国のビジネスパーソン18,022人に副業経験を聞いてみたところ、「現在副業をしている」と回答した人の割合は6.8%という結果になりました。「現在はしていないが、副業をしたことがある(11.1%)」を足すと、副業を経験している人は17.9%という結果に。また、副業の経験はありませんが、「副業するか検討している」と回答した人は22.7%となっています。

男女別の副業割合

副業を認めている企業の割合

所属企業で副業が認められているかどうかも聞いてみたところ、「認められている」が26.4%、「禁止されている」が41.7%と、禁止が容認を上回りました。また、副業を検討していない人も多いため、31.9%は「わからない」と回答しています。

業界別で見た副業が認められている企業の割合

副業を認めている企業の割合を業界別で見ると、「認められている」と答えた人の割合は「Web・インターネット業界」が最も多く、次いで「IT・通信業界」「コンサルティング業界」という結果に。一方で、「禁止されている」という回答が多かったのは、「化学・素材業界」と「金融・保険業界」という結果になりました。

2. 副業している人はどのような人?始めたきっかけや活動内容は?

副業を経験している方に、副業を始めたきっかけや活動内容についても聞いてみました。

副業を始めたきっかけ

副業経験者が副業を始めたきっかけを複数回答で聞いたところ、上位3つはいずれもお金にまつわる理由となっており、一番多かったのは「お小遣い・趣味に使える収入を増やしたいから」の44.7%でした。次いで、「将来への備え・貯金を増やしたいから(38.7%)」「将来の収入への不安を感じたから(31.6%)」という結果になっています。収入面以外では、「時間を有意義に使いたいから(29.4%)」、「スキル・経験を身につけたいから(18.0%)」と、空いている時間を有効に活用しようとする回答が上位となりました。

いつ活動しているのか

副業に費やしている時間帯についても複数回答で聞いたところ、「休日」が圧倒的に多く71.7%という結果に。次いで「勤務終了後」が44.7%、「勤務中の休憩時間」が11.2%となっています。働き改革の一環として推進されている副業ですが、過重労働を招くのでは本末転倒です。厚生労働省が作成している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、副業・兼業を行う際は「過重労働の防止や健康確保が重要」とされています。副業を無理なく長く続けるためには、時間の効率的な使い方や自己管理が重要なポイントとなりそうです。

出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996750.pdf

どのような副業をしているのか

副業の内容で最も多いのは「サービス業(接客・販売)」で18.5%。次いで高いのが「アンケートモニター/ポイントサイト/レシートのスキャン」で9.0%という結果になりました。また、「警備/軽作業」「事務作業」など、作業が中心の副業も上位に並んでいます。

「アンケートモニター/ポイントサイト/レシートのスキャン」や「データ入力」などの仕事は、パソコンさえあれば自宅で副業が可能で、案件によっては時給ではなく件数で報酬が発生するため、スキマ時間を活用し自分のペースで仕事をすることができるという特徴があります。

また、「ネットビジネス(通販・アフィリエイト・ネットショップ運営など)」や「ハンドクラフト(手づくり)品の販売」といった副業は、企業が設定した時給や件数(単価)で働くのではなく、自分が制作した作品などの売上が収入になります。趣味や得意分野を活かしてニーズをうまく捉えれば、高収入ややりがいにつながる働き方と言えるでしょう。

副業での収入について(実際の収入と希望収入)

副業に対する希望収入と実際の収入を聞いたところ、希望収入は「10,000円以下」と答えた人が約半数におよびました。また、「10,001~30,000円(12.0%)」、「30,001~50,000円(15.0%)」、「50,001~100,000円(13.6%)」を足すと約4割となっており、10万円以上の副業収入を望んでいる人は少数派のようです。

では、実際の収入はいくらなのでしょうか。副業での実収入も聞いてみたところ、「10,000円以下」の割合は希望収入よりもやや少なく43.9%、「10,001~30,000円」と回答した人の割合は希望収入よりも高く19.0%となりました。ただし、10万円以上の実収入を得ている人は6.7%と、希望収入と同様に多くはないようです。

副業して感じたこと

副業の感想について聞いたところ、「視野が広がった」という回答が最も多く、39.8%という結果になりました。副業のきっかけの上位は「収入アップ」でしたが、「視野が広がった」「新たな視点を持つことができた」など、お金以外の効果を感じている方も多いようです。

感想の上位にはポジティブな回答が並びますが、反面で「体力的にきついと思った(17.4%)」、「時間のやりくり・管理が難しいと思った(11.7%)」など、本業との両立の難しさを感じた人も一定数いるようです。副業を続けるためには、体力や時間の余裕が必要であると言えるでしょう。

3. 本業と副業の関係

副業経験者は、本業で培った経験・スキルを活かして働いているのでしょうか。本業と副業との関係や、本業に与える効果について聞いてみました。

本業と副業の仕事内容の違い

副業と本業の一致度を聞いてみたところ、「副業と本業の職種はまったく同じ」と回答した人は9.8%と少数派で、半数以上が「副業と本業の職種はまったく異なる(56.4%)」と回答。「副業と本業の職種はまったく同じ」「ほとんど同じ」「半分くらい同じ」までを足し上げても約3割という回答になっています。

Q. 副業の本業への効果は?

本業への副業の効果について聞いたところ、トップとなったのは「視野が広がった(26.2%)」という回答でした。他にも、「金銭的な余裕が増えた(21.0%)」「新たな視点を持つことができた(16.9%)」「時間の使い方が上手になった(12.5%)」など、副業によって視野の広さや時間の使い方など、金銭面だけでない学びを得た方も多いようです。

Q. 副業をいつか本業にしたい?

副業を本業にしたいかどうかも聞いてみたところ、半数以上の人が「副業を本業にしたいと思わない(55.0%)」と回答しました。2割の人は「副業を本業にしたいと思う」と回答していますが、「あくまで副業は副業」として、本業とは切り分けている人が多いようです。副業に対する気持ちを、フリーコメントでご紹介します。

【副業を本業にしたいと思う】

・運送業を経験して魅力的な点が多く、そちらを本業にしたいと思うようになりました(52歳 その他販売・接客)

・生活に困らない程度の安定した収入が得られるようになってきた場合は考えなくもない(45歳 IT・技術・システム営業)

【副業を本業にしたいと思わない】

・副業は趣味に対する小遣い稼ぎや、本業での給料では足りない部分をまかなっているものであるため、本業とは違うものと考えている(32歳 金融・保険営業)

・本業にするとプレッシャーやストレスがかかり、楽しく働くことができなくなさそうだから。(42歳 その他(臨床心理士・カウンセラーなど))

Q. 副業をするなら、どのような気持ちで取り組む?本業との関わりは?

副業と本業の関係について聞いたところ、「本業ではできない経験をしたい(35.0%)」、「新しい視野を持ちたい(33.8%)」、「本業とは異なるスキルを高めたい(23.7%)」が上位となり、本業では得られない経験・スキルや視野を副業に期待していることがわかりました。本業の延長線上にはない職業体験を選ぶことによって、モチベーション高く副業に取り組むことができるのかもしれません。

4. 副業するうえでの注意点

副業を許可している企業でも、その運用ルールは様々です。企業によっては所定の申請書に必要事項を記載して許可を受けたり、業種や時間などに制限があったりするケースもあります。これから副業を始める場合は、所属企業が副業に対してどのようなルールを設けているのかを就業規則で確認しましょう。また、オーバーワークを防ぐための自己管理も重要です。副業に集中しすぎると、本業に支障が出る可能性もあります。働きすぎにならないようにスケジュール管理を徹底し、適切な業務時間を意識して十分な休息を取るようにしましょう。

5. 副業する前に押さえておくべきこと

副業をする前に抑えておきたい、代表的な項目をまとめました。

副業の契約形態

副業の場合は、社員やアルバイト、業務委託として働くのが一般的です。社員やアルバイトとして働く場合は雇用契約を交わしますが、業務委託の場合は「委任契約」と「請負契約」の2種類の契約形態があります。Webデザイナーを例に挙げると、「月に○時間のWebサイト保守運用業務を行う」という契約が「委任契約」となり、業務時間に対して報酬が発生します。「請負契約」の場合は、「Webサイトを○月○日までに納品する」など、定められた仕事の完成に対して報酬が発生します。業務内容や企業・労働者双方のニーズによって契約形態は異なるので、自分の希望にマッチした働き方や報酬となっているかを判断しましょう。

確定申告

副業収入が年間で20万円以上になる場合は、確定申告が必要です。慣れないうちは確定申告の書類作成に時間がかかる可能性があるので、事前にやり方を学んで準備しておきましょう。 

参考:国税庁「【確定申告・還付申告】」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/02.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2019/kisairei/sp/pdf/03.pdf

家族への同意

本業と副業で労働時間が長くなり、自宅の一部や自家用車などを使用するケースもあります。家族のライフスタイルにも影響を及ぼす可能性があるので、副業を始める場合は仕事内容や就業時間などを共有し同意を得ておきましょう。

解説

兼業・副業に関しては、企業からすると本業をおろそかにしてしまうのではなか?会社をやめてしまうことに繋がらないか?といった不安がまだまだあるのではないでしょうか。しかし、弊社の別の兼業・副業に関する調査からは、副業実施者は本業の満足度が高く、キャリアへの関心が高い傾向だということがわかっています。

参考:株式会社リクルート「兼業・副業に関する動向調査 2022」を追加分析」https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240123_work_01.pdf

分析結果からも、本業と副業は別物で対立するものであるというわけではなく、副業実施によってその経験を本業の仕事に活用することができており、本業・副業それぞれの経験が、互いに好影響を与えていると言えることがわかりました。  

今回のアンケート結果でも、働く個人へ副業と本業の関係について聞いたところ、「本業ではできない経験をしたい(35.0%)」、「新しい視野を持ちたい(33.8%)」、「本業とは異なるスキルを高めたい(23.7%)」が上位となり、本業では得られない経験・スキルや視野を副業に期待しておりポジティブな目的が原動力になっていることもわかっています。企業は、社員を縛り付けるのではなく、外へ開放していく方が、結果として自社にとってもいい影響を得られるのではないでしょうか。 

■解説者:株式会社リクルート HR統括編集長 藤井薫
1988年
リクルートに入社
『TECH B-ing』編集長、『Tech総研』編集長、『アントレ』編集長などを歴任。
2014年
リクルートワークス研究所Works兼務
2016年
『リクナビNEXT』編集長就任
2019年
より現職
著書に『働く喜び 未来のかたち 転職市場の最前線から「未来のはたらく」が見えてくる』(言視舎)がある。

調査概要

調査1
【調査方法】インターネットによるアンケート調査
【調査対象】20歳〜59歳の男女のうち、過去1年以内に転職経験がある正社員
【調査期間】2024年1月30日〜2024年2月2日
【有効回答数】329名

調査2
【調査方法】インターネットによるアンケート調査
【調査対象】20歳〜69歳の男女のうち、過去1年以内に中途採用関与経験がある正社員
【調査期間】2024年1月31日〜2024年2月5日
【有効回答数】305名