
自己PRで「柔軟性」をアピールする際に「効果的な伝え方や柔軟性をアピールするエピソードの具体例が知りたい」「自己PRの例文や言い換え例が知りたい」と考えている人もいるでしょう。転職活動の自己PRで「柔軟性」を効果的にアピールするために役立つ方法や言い換え例などについて組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。「柔軟性」の自己PR例文も紹介するので参考にしてみましょう。
目次
「柔軟性」とは
「柔軟性」とは、場面や状況に応じて行動や機能などを素早く変化させて対応できるような性質を意味します。ビジネスシーンにおいては「その場に応じて臨機応変な対応ができる」「自分の考えにとらわれず、新しい発想を生み出せる」「変化に対応して適切な行動・処置ができる」などのスキルを指すことが一般的でしょう。
ただ相手や物事に合わせるのではなく、判断基準となる軸をぶらさずに意思決定する力といえばわかりやすいかもしれません。
「柔軟性」と「協調性」の違い
協調性は柔軟性と混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。それぞれの違いを理解し、柔軟性を自己PRする際に活かしましょう。
【柔軟性とは】
軸となる自分の意見を持っており、相手の考えを尊重しつつ意思決定できるスキル。
【協調性とは】
立場や意見の違いを理解した上で、協力して物事に取り組めるスキル。
自己PRで「柔軟性」をアピールすることは有効?
柔軟性をアピールする場合、以下のようなメリットがあると考えられます。
- 仕事におけるさまざまな場面で臨機応変に対応していける力があることを印象付けやすい。
- 人当たりが良さそうなイメージを持たれやすい。
- 仕事をすぐに吸収し、早期に活躍する姿を想像してもらいやすい。
ただし、伝え方によっては以下のような印象を持たれることもあるでしょう。
- 周囲に流されやすいと判断される可能性がある。
- 優柔不断だと思われる可能性がある。
柔軟性があるタイプの特徴
柔軟性があるタイプの特徴としては、以下のような一例が挙げられます。
- 素直に仕事に取り組める。
- 冷静かつ客観的に物事をとらえる。
- 臨機応変に物事に対応できる。
- 過去の経験にとらわれない発想力・行動力がある。
- 相手の立場になって物事を考える想像力がある。
- 相手の意見を聞き入れるコミュニケーション力がある。
企業が評価する「柔軟性」のポイント
ここでは、企業が評価する柔軟性について解説します。
企業が「柔軟性」を評価する理由
中途採用の場合、前職の業務スタイルや仕事の手法にとらわれ、そこで得た成功体験に固執してしまうケースがあります。それにより、新たな仕事に必要なことを吸収できずにパフォーマンスを発揮できなかったり、配属先の職場に馴染めず孤立したりすることもあるようです。
しかし、一般的に中途採用においては“即戦力人材”を求める傾向があり、「早く仕事内容を吸収し、職場の仲間と一緒に働きながら成長していけること」を重視する企業が見られます。「柔軟性」の持つ特徴は、こうした面で評価されやすいと言えるでしょう。
また、入社後の活躍可能性に期待できる人材も評価されやすいと言えます。柔軟性についても「応募企業の仕事において発揮して、活躍・貢献できる」と判断された場合は、評価につながりやすいでしょう。
「柔軟性」を評価する企業の一例
企業の採用ページ、求人などに記載されている求める人物像や仕事内容、事業の方向性から「柔軟性」を評価する企業の傾向を掴むこともできるでしょう。
【柔軟性を評価する企業の一例】
- 状況に応じて臨機応変な対応ができる人材を求めている。
- 技術革新などの変化が激しい領域で事業を展開している。
- 新規事業の立ち上げなどに積極的で、新しいチャレンジを続けている。
- 顧客の幅が広い、関連する取引先が多岐に渡るなどで、多角的な視点が求められる。
- ベンチャー企業やスタートアップ企業など、事業や組織の変化が日常的にあり、キャッチアップを求められる。
- グローバル展開を進めるなど、異なる文化や環境の拠点とのコミュニケーションが求められる。
履歴書・職務経歴書・面接で「柔軟性」をアピールする自己PRの例文【職種別】
営業職と事務・企画職の職種別に、柔軟性をアピールする自己PRの例文を紹介します。
営業職の自己PR例文
【履歴書の自己PR例文】
前職で、訪問営業からオンライン営業に切り替わるという大きな変化を経験した際には、先進事例を学び、約20社の顧客への説明と社内向けの講習会によって、オンライン営業の導入効果を上げる施策を取りました。その結果、売上減少幅を当初の想定よりも低い昨年対比90%に収めることができ、部署全体の業績に貢献しました。自ら考え行動し、大きな環境変化も乗り越えていく柔軟な対応力を活かし、貴社に貢献していきたいと考えております。
【職務経歴書の自己PR例文】
前職で、訪問営業からオンライン営業に切り替わったときにも、柔軟な発想と行動力を活かして環境の変化に対応していきました。まずはオンライン商談の先進事例を学んで、約20社の顧客への説明を実施。理解を得られるようにわかりやすい資料の作成にも注力しました。さらに社内でロールプレイングを行い、修正・改善を重ねて成功事例をもとに社内で定期講習会も行いました。その結果、売上減少幅を当初の想定よりも低い昨年対比90%に収めることができ、部署全体の業績に貢献しました。上司からも評価を得て、好事例として社内にも共有されました。自ら考え行動し、大きな環境変化も乗り越えていく柔軟な対応力を活かし、貴社に貢献していきたいと考えております。
【面接の自己PR例文】
状況・環境の大きな変化にも、柔軟に対応していける力を強みとしております。
前職では訪問型の営業が難しい状況となり、オンラインでの営業に手法が切り替わるという大きな環境変化を経験しました。
これまでは顧客への訪問頻度を高め、対面で提案をするという営業手法を取っていました。 泥臭く顧客接点量を確保し、営業成績を上げていく形だったため、オンラインに切り替わることで売上の大幅減少が見込まれました。
これまでにない環境の変化に対応すべく、自分にできることを考え、迅速に行動していきました。まず、オンライン商談の先進事例を学び、必要な情報や機材を入手し、約20社の担当顧客に向けて事前にオンライン商談ツールの使い方の説明を行いました。
また、顧客の理解を得るために、提案資料もわかりやすくシンプルな内容に変更することにしました。有志の仲間とオンライン商談のロールプレイングを実施しながら修正・改善していきました。さらに成功事例をもとに、資料作成方法やプレゼン方法などのノウハウをまとめ、社内で定期講習会も行いました。
その結果、当初の想定より売上の減少幅を抑えることができ、昨年対比90%を維持できています。
この経験を活かして大きな環境変化に直面した際にも、最適な方法を自ら考えて行動し、御社に貢献していきたいと考えております。
事務・企画職の自己PR例文
【履歴書の自己PR例文】
前職の経営企画部では、主力事業の国内市場が○%縮小する事態に直面し、迅速に資金計画を修正しました。外部データを収集し、売上予測のシナリオを3パターン作成した後、不採算領域や投資領域の見直しも実行。削減すべき投資領域や成長事業への追加投資、新規サービス展開などの方策を経営陣に提案しました。これにより、想定○億円規模の営業赤字を回避し、最終的に営業利益○億円を確保できました。
客観的な分析と迅速な行動で柔軟に対応していく力を活かし、入社後は環境変化に対応したベストな経営戦略に貢献していきたいです。
【職務経歴書の自己PR例文】
私の強みは、大きな環境変化にも柔軟に対応し、計画を実行に移せる点です。
前職の経営企画部では、主力事業の国内市場が○%縮小する事態に直面し、迅速に資金計画の修正に向けて行動しました。
まずは外部データを収集し、売上予測のシナリオを3パターン作成した後、不採算領域や投資領域の見直しを行うことに。広告・イベントへの投資○%削減、成長が見込めるクラウドサービス事業への追加投資○億円、中小企業向けSaaS支援サービスの推進チーム設置などの方策を盛り込み、経営陣に提案しました。
これらの提案が実行された結果、当初に想定されていた○億円規模の営業赤字を回避し、最終的に営業利益○億円を確保できました。客観的な状況分析と迅速な行動でスピーディに最適な解決策を打ち出した経験を活かし、貴社に入社後も、柔軟な対応力で環境変化に対応したベストな経営戦略の実現を支援したいと考えております。
【面接の自己PR例文】
私の強みは、大きな環境変化にも柔軟に対応し、計画を実行に移せる点です。
前職の経営企画部では、主力事業の国内市場が○%縮小し、当初○億円を想定していた売上計画が現実的ではなくなる事態に直面しました。
迅速に変化に対応すべく、すぐに外部データを収集し、これをもとに売上予測のシナリオを「楽観」「中立」「悲観」の3つのパターンで作成し直しました。
さらに、今後の資金計画を修正するために、全社における支出を見直し、不採算領域の広告費やイベント投資を○%削減する方策を打ち出しました。その一方で、成長が見込まれるクラウドサービス事業に○億円を追加投資し、新規プロジェクトとして「中小企業向けSaaS導入支援サービス」チームの新設なども盛り込み、経営陣に提案しました。
これらの提案が実行に移されたことで、当初に想定されていた○億円規模の営業赤字を回避し、最終的に営業利益○億円を確保することができました。
こうした経験から、私は変化に直面した際にも状況を客観的に分析し、スピーディに最適な解決策を実行していける力があると自負しています。御社においても、柔軟な対応力で環境変化に対応したベストな経営戦略の実現を支援したいと考えております。
自己PRに役立つ「柔軟性」の言い換え例とエピソードの具体例
柔軟性は「発想力」「対応力」という2つのパターンからアピールすることもできます。それぞれの言い換え例と共に、エピソードの具体例も紹介していきます。
「発想力」をアピールする言い換え例
- 既存の手法にとらわれない発想を活かし、顧客に多様なアプローチができる。
- 世の中の変化をキャッチし、新たな企画を発想できる。
- 業界の常識にとらわれず、多様な業界の視点を取り入れて仕事に活かせる。
「対応力」をアピールする言い換え例
- 臨機応変に要望に応えていく顧客対応力がある。
- 相手の立場や意見を尊重し、柔軟にプロジェクトを取りまとめていける。
- 人の意見を取り入れて、成長していくことができる。
- 新たな環境や人間関係に素早く適応し、スムーズに仕事を進められる。
「柔軟性」のエピソードの具体例
柔軟性を活かしたエピソードには、以下のような例が挙げられます。自分の経験に照らし合わせて、アピールするエピソードの参考にしてみましょう。
【柔軟性を活かしたエピソード例】
- 顧客ごとの要望に合わせ、柔軟な対応をした。
- 既存の手法でうまくいかない点を分析し、新たな方法を考えて状況を打破した。
- 異業界や他部署の考え方を学び、自分の仕事の進め方に取り入れた。
- チームのメンバーの反対意見も取り入れ、プロジェクトを成功させた。
- イレギュラーなトラブルに対応し、顧客の信頼を得た。
- 相手に合わせた柔軟なコミュニケーション力でチームをまとめた。
履歴書や職務経歴書の自己PRで「柔軟性」を上手にアピールするポイント
柔軟性を履歴書や職務経歴書で上手にアピールするために役立つポイントを解説します。
「柔軟性」をほかの表現に言い換える
「柔軟性」は一般的に使われる言葉でもあるため、より自分らしくアピールできるよう、ほかの言葉に言い換えをするのも一案です。先に紹介した言い換え例を参考に、「発想力」と「対応力」を活かした経験を振り返りながら、自分らしい表現を考えてみましょう。
具体的なエピソードを入れる
エピソードでは抽象的な表現をせず、より具体的に伝えることが大事です。柔軟性を活かして取り組んだ経験を軸に、どのような考えや目的を持ち、どういった行動をしてどのような成果を挙げることができたのかまで伝えることがポイントです。「状況」「課題」「意志・行動」「結果」までしっかりと書きましょう。
応募企業・職種で活かせる点を伝える
応募企業や志望職種の働き方を想定した上で、どのような場面で柔軟性を発揮できるのか、どういった成果につなげていけるのかを具体的にアピールしましょう。自己PRの締めの文章では「入社後にどのような活躍・貢献ができるのか」をイメージしてもらうことがポイントとなります。応募企業の仕事内容と自分が持つ強みについて重なる部分を書くことが大切です。
自己PRで「柔軟性」をアピールするときの注意点
自己PRで柔軟性をアピールするときに注意したい点を紹介します。
柔軟性がアピールできる企業か確認する
柔軟性は仕事において役立つスキルと言えますが、評価につながるかどうかは企業によっても異なります。あらかじめ決められた業務を正しい手順で進めることが求められる企業では、柔軟性よりも「真面目さ」「正確性」などが求められる可能性があります。企業のビジョンや働き方、求める人材像などから、柔軟性が必要とされるかどうかを判断することが大切です。
「すぐに転職するのでは」と思われないように気を付ける
どのように柔軟性をアピールするかによっては、「周囲に流されやすく、主体性のない人材かもしれない」などの印象を持たれ、定着性を懸念される可能性もあります。採用担当者はできるだけ長く働いて活躍してくれる人材を求めています。そのため成果が出るまで時間のかかる業種や、ひとつのプロジェクトに長く携わる職種の場合は、忍耐力や継続力を持っていることもアピールするとより効果的でしょう。
面接の自己PRで「柔軟性」をアピールするときのポイント
面接では応募書類に記載した内容について、より深掘りされるため、背景や考え方を掘り下げておくことが大事です。面接時に想定外の質問をされた場合にも、臨機応変に回答するように心がけ、「柔軟性」があることに説得力を持たせましょう。
また、長所と短所は表裏一体と言えます。先にも述べた通り、「柔軟性」の伝え方によっては、「周囲の意見に合わせて流されやすい」「自分の意見や考えがない」「主体性がない」という印象を与える可能性もあります。自分の意見を持っている上で、周囲と協働していける力や相手の意見を尊重して取り入れていく姿勢などを伝えることがポイントです。
転職の自己PRで悩んだら転職エージェントに相談しよう
転職活動の自己PRで「柔軟性」をアピールするケースは珍しくないため、自分らしさが伝わるように工夫することが重要です。先に紹介した自己PR例文や自己PRを作成する際のポイントなどを参考に、説得力を持って自分ならではの強みをアピールしていきましょう。
自己PRの作成や面接での伝え方に悩んでいる場合は、転職エージェントに相談してみるのも一案です。転職支援のプロから客観的なアドバイスを受けることで、よりアピールできる自己PRを作成できるかもしれません。応募書類の添削や面接対策などを行う転職エージェントもあるので、まずは相談してみることをおすすめします。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2022年12月23日
記事更新日:2023年11月28日
記事更新日:2025年10月21日 リクルートエージェント編集部
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。